No.189441

真・恋姫†無双~恋と共に~ #16

一郎太さん

#16

2010-12-13 03:09:11 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:17913   閲覧ユーザー数:12215

 

#16

 

 

 

俺たちは、『大魔王』との戦いに勝利した。

美以の仲間たちは、村に戻って大蛇の倒れた姿を見ると、歓喜の叫び声をあげる。

 

 

 

「すごいにゃ!あの『大魔王』を倒したのにゃ!!」

「一刀や恋は凄いにゃ!」

「ありがとう。でもね、皆、美以が助けてくれなかったから、本当は危なかったかもしれなかったんだ」

「か、一刀!?」

「どうした、美以?本当のことだろう?」

「で、でも……そんな風に褒められると、恥ずかしいにゃ!!」

 

 

 

そう言って美以はぽかぽかとその大きな手袋をはめた手で叩いてくる。

 

うむ…肉球が気持ちいい………ではなくて!

 

 

 

「そんなことないよ。ほら、皆を見てごらん?」

 

 

 

俺がそう言うと、美以は叩くのを止めて、周囲を見渡す。

 

 

 

「美以様……」

「……一刀たちを助けたにゃ?」

「…すごいにゃ」

 

 

 

そんな囁きは次第に声へと変わり、ついには、歓声へと変わった。

 

 

 

 

 

「「「「「さすが我らが大王にゃ~~~っ!!!」」」」」

 

「そ…そうかにゃ?」

 

 

 

 

 

そう困ったような顔をする美以の頭を、俺は撫でてやる。

 

 

 

「あぁ。美以は立派な、南蛮大王だよ」

「そうかにゃ?そうなのかにゃ?………そうにゃ。そりゃそうにゃっ!!美以はこの南蛮の大王猛獲様にゃ!!友達を助けられないで、何が大王にゃ!!」

 

 

 

胸を張って高笑いを上げる美以に、ミケやトラ、シャムに、それに仲間たちも、さらに歓声を上げて、美以を褒め称えるのであった。

 

 

 

 

 

 

さて、今、俺たちは宴の準備をしている。まぁ、宴と言っても、料理は蛇の蒲焼と果物だけなのだがね。

 

短刀をノミ代わりに石で打ちつけ蛇の胴体に突き刺すと、底を皮切りにどんどん蛇を刻んでいく。だいぶ時間がかかったが、俺のやり方を真似して、恋や美以たちも大蛇の身体をだいたい1メートルごとに切っり、開いていく。そしてすべてが切り終わると、その数はゆうに20を超えていた。

 

 

 

「こんなに長かったんだな…」

「…にょろ」

 

 

 

俺は木を切り倒して3メートルくらいに切り、恋たちと協力して先を尖らせると、それぞれを数個の肉塊に突き刺すと、焼いていく準備を始めた。

どうも美以たちには火を使うという習慣がなかったらしく、火のつけ方と焼き方を教えると、皆でこぞって手伝い始めてくれた。

 

 

 

 

 

「一刀、あとは美以たちがやっておくにゃ!その間に、一刀と恋は、身体についた大魔王の血を流してくるといいにゃ」

 

 

 

 

 

美以のその言葉に、俺は彼女たちに調理を任せると、近くに流れているという川へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、最近は風呂にも入れてなかったからな。ちょうどいいし、ここで身体も洗っておくか」

「…ん」

 

 

 

 

その言葉に恋は頷くと、俺の目を気にすることもなく、服を脱ぎ始めた。

 

 

 

 

 

「ちょ、恋!?俺はあっちに行くから、それまで脱ぐのは待っててくれよ!」

「………なんで?」

「いや、『なんで?』じゃなくて―――」

「一刀は、恋と水浴びするの……いや?」

「………………………………………………………………………………嫌じゃ、ないです」

「…ん」

 

 

 

 

 

俺が恋に逆らえるはずもなく、恋の言うがままに、自分も服を脱いだ。

できるだけ恋を見ないように、下を向いて川へと足をつけたが、そのひんやりとした感触に、思わず顔を上げると―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そこには、一糸纏わぬ恋の姿があった。

張りのある形のいい胸に、きれいに湾曲したくびれ、水面から出ている上半身には刺青が入れられ………そのすべてが、完成された芸術品のようであった。

 

 

 

 

 

 

「………どうか、した?」

「きれいだな、って………」

「っ…」

 

 

 

俺が、思ったままの感想を伝えると、恋は顔を赤らめて、向こうに顔を背けてしまった。

普段の俺ならば、恋が恥ずかしがっているということがわかったのだろうが、この時の俺は、その普段の状態ではなかった。

 

これまで恋が俺を拒絶したりすることはなかった。しかし、その恋の姿を目にし、そして視線を外され、俺はなぜか………恋が離れていくような気がしたんだ。

 

その芸術のような肢体に目を奪われ、そして恋が、俺の手の届かないところに行ってしまうかのように錯覚した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやだ………行かないでくれ……………―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は無我夢中で水を掻き分け、そして、恋の背中を抱き締めた。

 

 

 

 

 

「………?」

「恋…頼む。俺から………離れていかないでくれ………………」

「………………………………」

 

 

 

 

 

俺のその言葉に恋は答えずに、胸の前に回された腕をとり、そして解いた。

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

俺は本当に馬鹿だ。なぜだか俺は、そのとき、本当に拒絶されたと思ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

しかし、そうではなかった。

恋は俺の腕を解くと俺に向き直り、俺を………ゆっくりと抱き締めた。

 

 

 

 

 

「だいじょうぶ。………恋は、一刀が好き。何があっても………ずっと一緒にいる」

「っ!………………………………………………あぁ、俺も恋が大好きだ。ずっと、一緒にいる」

 

 

 

 

 

俺は、左腕を恋の背にまわすと、右手を恋の顎に添え、軽く持ち上げた。

 

 

 

 

 

 

軽い、触れるだけの口づけ………。一瞬か、数秒か。…それとも数十秒か。

俺は恋の唇から離れると、恋の目を見つめ、口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恋。俺は、恋を愛している。…………誓うよ。何があっても、必ず恋と共にいると」

「ん…。恋も、一刀と、ずっと一緒」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋へ抱く感情を、この日、俺は初めて自覚した。

 

 

 

 

 

 

「一刀、恋!遅いにゃ!さっきからずっといい匂いがしてて、もう美以たちは我慢できないにゃ!!」

「「「「「にゃぁあああぁああっっ!!」」」」」

 

 

 

俺と恋が水浴びを終えて広場に戻ると、なるほど、確かに肉の焼けるいい匂いが漂ってくる。

 

 

 

「そうだな。じゃぁ、そろそろ食べ始めようか」

「………(じゅるり)」

 

 

 

俺がそう言って隣を向くと、恋はすでに臨戦態勢のようだ。

いきなり喰らいつきそうになる恋を宥めると、俺は美以たちに地面に大きな葉っぱは敷くように頼み、恋と二人で木の両端を持つと、そこに肉を置いた。

と、その途端皆が飛びかかろうとするので、それを抑え、俺は短刀で肉を捌いていく。

それを繰り返して、全員に料理が行き渡ったのを確認すると、俺は皆に語りかける。

 

 

 

「みんな!今日は宴だ!遠慮せずに食べてくれ。…ただし、一つだけ、覚えておいて欲しいことがある。

確かに大魔王はみんなを苦しめてきた。しかし、今日は、その大魔王の命を貰って、明日への糧にして欲しい。

大魔王が多くの糧を奪ったように、みんなもこいつの命を奪うんだ。

だから、今日、命を貰えることに感謝して、明日からも精一杯生きて欲しいと思う!

じゃぁみんな、手を合わせて?

………………………いただきます!!」

「「「「「いただきますにゃ!!」」」」」

「…いただきます」

 

 

 

 

 

それからはもう、ひどい有り様だった。皆が一気に肉を平らげると、次の肉を所望するのであった。彼女たちに果物を与える間に俺は次の肉を焼き始める。皆の食欲はすごいもので、気がつけば、数十メートルの大蛇は、すべて恋や彼女たちの腹に収まっていた。

 

 

 

「もう、食べられないにゃ」

「「「「「にゃぁ~…」」」」」

「………けぷ」

 

 

 

久方ぶりの肉に満足したのか、みな寝転がり、腹をさすっている。

中には満腹感から、すでに眠っている娘たちもいた。

 

 

 

「恋、満足したか?」

「ん、おいしかった。………でも、みんなで食べたから、昨日よりもっとおいしかった」

「そうだな。みんなで食べると美味しいよな」

「…ん」

 

 

 

俺が頭を撫でてやると、恋はもぞもぞと身体の向きを換え、俺の膝に頭を乗せる。

 

 

 

「なんか、今日はいつもより甘えん坊だな、恋?」

「…おなかいっぱいで、幸せ。でも、一刀にくっついているときが、一番幸せ………」

「………………………………あぁ、俺も、恋とくっついている時が一番幸せだよ」

 

 

 

俺はそれだけ言うと、火が完全に消えるまで、恋の頭を優しく撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――絶対に、離すもんか。

 

 

 

 


 
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