――外史
――樊城
まだ日も登っていない早朝、樊城付近には不穏な空気が漂っていた。小鳥のさえずりは消え、動物たちの姿は見えない。
「始めるか、リンクス」
「ああ」
『俺達の理想にこれで一歩近づく』
リンクスが手を振り下ろした。
その瞬間樊城周辺に集結していたPMCUの次世代強化兵士……地上を這うオクトパス型、陸を駆けるウルフ型、そして他の二つより数は少ないが空を裂くレイヴン型が樊城に向かって作戦を開始した。
しかし次の瞬間、レイヴン型が一機撃墜された。
自軍の壮観な侵攻を眺めていたリンクス、マグナ、そしてエンドは驚愕した。次の瞬間にはもう一機。そしてもう一機。
そう作戦が読まれていたのである。
そんな彼らをあざ笑うかのようにゴーストの声が大音量で聞こえ始めた。
『手前らの行動なんか百手先までおみとおしだぜ!』
一番狙撃しやすい城壁には誰もいない……ように見えていた。
「奥の手は本当の最後(最終話)までとっておくもんだぜ!」
途端にWolfに跨ったゴーストの姿が城壁に現れた。光学ステルス迷彩だ。これなら相手からゴーストを確認できず射程距離に入ったときに狙撃が始まったのだ。そしてWolfのサイドカーには如何にも物騒な……戦車砲のたぐいが装備され、ゴーストはアンチマテリアルライフルを構えていた。
「舐めてくれる」
リンクスはすぐさまウルフ型に指示をだした。レイヴン型を失うのは制圧的にも非常に惜しい物がある。
しかしそのウルフ型が城門を越えるには地上の覇者を超える必要があった。
「トーレ・フォックス!ここにあり!!」
「……恋もいる」
城壁に殺到したウルフ型は地上最強の二人を前に数を減らし始めたのだ。それも結構な勢いで。
城門は蛇腹剣と鞭剣、そして背中に槍を背負ったフォックスと、方天画戟をもった恋が守っていた。
『ちなみにいうなら住民はとうの昔に退避済みだぜ、ボンクラども!これでこっちも全力で戦争できるってことだ!』
ゴーストの音声はリンクスたちには届いていなかった。
もうすでにPMCUの三人は行動を開始していたのであった。
最終話 蒼天の向こうへ
航空戦力な外史にはない。それもそうだ。外史の技術力は正史の約1800年ほど前のものだ。だからこそゴーストは航空戦力を全部たたき落とすという、一番困難で責任ある役目を果たしていた。
そしてレイヴン型も数を減らしてきたその時、明らかにスピードの違う一機が彼のサイトが捉えた。
「ちっ!エンド・スネークか!」
すぐさま迎撃の準備をするが、エンドは彼に興味がないかのように通り過ぎ城壁を突破した。
しかしゴーストはそれを許すわけにはいかない。
「墜ちろ!」
『させんよ』
ゴーストの目の前に現れたのは宙に浮かぶ異形。そして頼まれても聞きたくない声が聞こえてきた。
「マグナぁぁ!!」
途端にP90に持ち替えたゴーストはマグナに向かってぶっぱなした。
しかし電磁波防御帯を装備しているマグナは、前進できないもののその連射は受け付けていなかった。
『なるほど、アトモス・スネークは間に合わなかったようだな』
「はっ!スネークがいなくてもどうにでもできるぜ!このカマキリモドキ!!」
『貴様、その名前で俺を呼んだこと!後悔させてやる!!』
* *
「ケイン、ここは恋に任せる」
「そうか、気をつけろよ」
「華琳達……雪蓮達……桃香達……守る」
「ああ」
城壁の向こう側には将たちが控えていた。
ある程度の予測は三国が誇る軍師たちとゴーストが立てていた。しかし不測の事態とは常に起こるものだ。
例えば城壁上のゴーストがマグナによって動きを止められ一部の強化兵士が城門を突破したことなどだ。
加えて思った以上にウルフ型が城門にこず、中に数機、そしてオクトパス型がほぼ全機侵入してしまったのは完全に失敗であった。
たしかに恋も心配だが、彼女はこんなガタクタ連中に負けることはないだろう。ただ無事を祈るだけである。
どちらかといえば城内にいる愛紗率いる蜀勢、祭率いる呉勢、そして春蘭率いる魏の精鋭が迎撃に当たっている。そちらの援護のほうが重要だろう。
そう思って城壁と飛び越えようと思ったその時だった。広がる平原から爆音が響き渡る。
光学ステルス迷彩を解除した強化外骨格が姿を現した。背中にブースターを背負いホバーで高速移動を可能にしている。
「リンクス!」
いくら恋でもあの規格外には分が悪い。
そう思ったフォックスはリンクスに突進し彼の槍を掴んだ。リンクスの勢いを押しとどめようと試みるが、いかんせんブースターという装置にはサイボーグであっても分が悪い。
「このまま城門を突破させてもらおう」
「ほう、面白い!」
そう叫んだフォックスは足を地面から離し加速に身を任せた。
そのままリンクスとフォックスはつながったまま城門にぶつかり突き破って行った。
「さあ、スネークの仇取らせてもらうぞ!」
「あの時ままだと思うなよ!英雄!!」
城壁ではゴーストとマグナが因縁の戦いを繰り広げていた。
『見える、見えるぞ!ゴースト!貴様の恐怖が!怒りが!憎しみが!』
理論の分からない空中浮遊を行いながらマグナはゴーストを嘲笑った。
「ちぃ!」
レイヴン型はあらかた撃墜した。わずかに残っているが後は外史に任せるしかない。
今、目の前にいるマグナのほうが圧倒的に厄介であった。
『レイヴン型より私のほうが厄介?光栄だね!!』
マグナが空中にナイフを浮かせた。
それぞれが意志を持っているように蠢き、ゴーストの首を狙うように襲いかかる。
それに対してゴーストはハンドガンを選択し、迎撃を開始する。刃物恐怖症でもある彼にナイフは天敵であった。そしてこの数避けきれるものではない。
しかしマグナの意志は別のところであった。
ゴーストが迎撃に重みをおいた選択をした瞬間、その心を読み取り高周波ブレードを手に一気に吶喊した。
ゴーストも意識をマグナにおいていたものの、僅かな隙を読み取れるマグナには意味のないことであった。
『あの女のもとへ逝け!幽霊!』
死を覚悟したその時だった。
そう、ゴーストはこの戦争を最終話と言った。最後の役者が実に都合よく、なおかつ格好良く現れたのだ。
バイクの激音が鳴り響き、ブレードを振りかぶっていたマグナが吹っ飛ばれる。
「……スネーク!?」
「パーティ会場はここでよかったみたいだな」
アトモス・スネークが今までのWolfとは違う……新型の戦術支援バイクに跨り、そして羽織袴に身を包んで転送されてきたのだ。
しかも都合よくマグナを吹き飛ばして。
「都合良すぎね?」
「何、ほんの天文学的数字をたまたま拾ってしまっただけだ」
「たまたまねぇ」
エメリッヒ博士なら拾いかねない。そう呟くのであった。
『スネーク!』
衝撃でバラバラに別れた体のパーツを回収したマグナがスネークに叫んだ。
それを見たスネークは、ゴーストに如何にも無骨な銃を手渡した。
「ゴースト、エメリッヒ博士の新作……もといびっくりどっきりメカ、三連装アサルトライフルだ」
「本当に天文学的数字を拾えるのか、あの人は……」
どこをどう聞いても信じられない三連装という言葉に驚くが銃口が本当に三つあることに驚愕を覚えた。
「もううんざりだろ、こんな因縁は」
「全くだな!!」
ゴーストがマグナに向かって三連装アサルトライフルを乱射した。
同時発射数が多い分、電磁波防御帯をくぐり抜ける確率が増えるということか。P90よりも濃い弾幕を形成した。
「行け、スネーク!お前もお前の因縁を終わらせてこい!!」
聞くのが早いか、スネークは既に新型のバイクで城門を飛び降りていた。
再び城壁上では二人の激戦が始まった。しかし心を読めていたマグナが徐々に劣勢となり始めていたのだ。
ゴーストの心には恐怖や、怒り、憎しみが小さくなっていったのだ。そして代わりに彼の心を満たし始めたのは……
『馬鹿な!未来だと!!』
「そうだよ!俺は過去に絶望しちゃいない!そりゃ後悔はある!だけどな!過去がなきゃ今の俺は居ないんだよ!!」
ゴーストの強い希望に対して、逆に畏れを覚えたマグナは不快感を拭えず行動パターンが単調になり始めた。
その様子を本能で察したゴーストは一気に勝負に出た。アンチマテリアルライフルを担ぎ、一気にマグナに吶喊した。
「お前は笑えないんだよ!だけど俺は笑えるんだよ!心の底から!!」
『く、来るなぁぁぁぁぁ!!』
ナイフの暴風雨がゴーストに向けられる。しかしゴーストはその先端に恐怖を感じなかった。
「終わりだ!」
アンチマテリアルライフルを頭部に押し当て静かにトリガーを引いた。
その時、幽霊を縛っていた因縁が消えた時でもあった。
「俺は笑えるんだよ……なあ、アンジェ」
リンクスの突撃に身を任せたフォックスは樊城の大公園までたどり着いていた。
ここがどこか確認したフォックスは途端に足を地面におろし、巴投げの要領でリンクスを投げ飛ばした。
しかしリンクスは地面に叩きつけられることもなく、空中でブースタとホバーをうまく動かし着地した。
「アトモス・スネークはどうした?」
「ご挨拶だな。戦場で戦士が出会った以上問答は無用」
そういってフォックスは蛇腹剣と鞭剣をそれぞれ右手と左手にもつ。
対するリンクスも槍を構え、背中のブースタを吹かし始める。
「「参る!」」
双方正面からぶつかり合った。
しかし押し合いは間違いなくリンクスのほうが有利で、フォックスは徐々に後ろへと下がっていく。
「どうした、英雄!?」
「俺は力だけで英雄になったのではないのだよ!!」
フォックスは強引に蛇腹剣を払い、リンクスに道を譲るように受け流す。
しかしリンクスは体を強引に捻り、すぐさま旋回を行う。普通なら尋常ではないその行動に誰も対処できていないだろう。この英雄を除いては。
すでにフォックスは空中へと飛び上がり蛇腹剣を伸ばし、鞭剣と交差させるようにリンクスに叩きつけた。
だがリンクスは何事もなかったようにフォックスの下をくぐりぬけた。だがフォックスは次の行動に移っていた。こちらも空中で体を捻り、二つの鞭を再びリンクスに叩きつけた。
「ふん!」
リンクスはそれを槍で弾く。まるで意に介していないようだ。
もっともフォックスにとってこの行動は着地の隙をつくることなので気にはしなかった。収穫が一つできたからだ。
「その強化外骨格の下は……サイボーグ化しているな」
「如何にも」
一刀から義手と聞いたときには既に違和感を感じていた。
人という壁を突破するには体を弄らなければならない。それが薬であれ、機械であれ、遺伝子であれ。
リンクスは自分と同じ選択をしている。戦士としての勘であった。
「だがそれだけでは俺には勝てんぞ」
「そうだな、だから貴公から先に始末するまでだ」
リンクスがそう呟いた瞬間、大公園にグレネードが多数投げ込まれた。空中からだ。
しかし全てが殺傷能力をもつものだ。スタンやスモークなど一時しのぎのものではない。確実に殺しにかかっている。
フォックスはこの危機に空中に跳躍することを選んだ。彼の脚力をもってすれば爆発の効果範囲まで逃れることができるし、何よりも今死なない。
そして次に対処しなくてはいけないのは空中から襲いかかってくるエンドへの対応であった。
「くっ」
フォックスの頭の中には今までの経験が脳裏をよぎる。しかしこんな場面出くわすのはまずありえないだろう。
エンドがRGL40の照準を合わせたとき、地上から閃光が夜空を引き裂いた。
それを確認したフォックスは背中に背負っていた槍に持ち変える。
グレネードは爆発した。なら地上からはあいつが襲ってくるはず。黒煙の中からリンクスがブースタを器用に吹かせ空中に跳び出した。
槍の一撃を、これまたフォックスも槍で受け止めた。
「邪魔が入ったようで残念だな!」
空中では外力を得ているリンクスのほうが有利だ。フォックスはなすがままに地面に叩きつけられることにした。地上ではきょうだいが拾ってくれる。
その確信は正しく、地面に叩きつけられる瞬間に首根っこを掴まれ九死に一生を得た。
「すまんな、スネーク」
「勝手に死なれても後味は悪い」
「了解した」
先ほどゴーストの援護をしたスネークが、今度はフォックスの救援に間に合ったのだ。
「この運の良さ、流れはこちらに来ているようだな」
お互いの役者は揃った。
これから双方顔合わせといったところだ。フォックスもリンクスも矛先を下ろし、エンドは空中にホバリングを始めた。
「想像以上に丈夫だな。スネーク」
リンクスの感想。しかしスネークはその一言にバイザーもあげず、ただ一丁の銃をバイクから取り出した。
「リンクス、あんたのいうパトリオットとはこれだろ」
短く切られた銃身、無限大の形をしたドラムマガジン。
真の愛国者から偉大なる英雄に渡され、世界を延命させ続けた男に渡された英雄の証。名銃パトリオットだ。
「ソリッド・スネークの遺品の中にあった。たしかに歴史を感じるな、思いというか……もはや魂が宿っているいっても過言ではない」
「……どちらが相応しいかはこの戦いで決める」
リンクスが構えた。同時にフォックスも構え、エンドも銃口をこちらに向けた。
「エンド、場所を変えるぞ。ここで戦うと味方に斬られかねない」
「……そうだな」
エンドは方向転換しあさっての方向に飛び去る。
「場所を決めるのは手前か」
スネークも追うようにアクセルを噴かせ大公園を後にする。
ここには男が二人取り残された。邪魔するものはもういない。ただどちらが強いか決めるのみ。
「貴様を殺す」
「やってみろ!山猫!」
再び正面からぶつかり合う。
しかし今回はさっきとは大きく違う。一合斬り合った瞬間にリンクスの右手が吹き飛んだのだ。
「なん……だと……」
サイボーグ化しているため痛みはあまり感じない。しかし身体的な痛みより精神的な痛みのほうが大きかった。
さっきは自分が圧倒した。しかし今回は相手の動きが見えなかった。
「俺は槍が一番得意でな。蛇腹剣や鞭剣は遊びだ」
そう、結局はリンクスも外史の英雄たちですらフォックスには及んでいなかったのだ。
彼は今まで本気を出さず戦ってきたのだ。
「結局どこにも俺を楽しませる奴はいなかったということか……」
「くっ!」
逆上した。
一瞬でも冷静を失ったのだ。片腕を失ったディスアドバンテージは大きいのだ。ここは冷静になるべき。しかしフォックスの呟きで一気に沸騰した。
冷静さを失ったリンクスの攻撃は単調だ。突っ込んで斬るか薙ぐか突くか。
その何れもフォックスには一切届いていなかった。すべてがいなされかわされ。
「阿呆、逆上して突っ込んできたのが最大の敗因だ」
フォックスの言葉はリンクスに届いただろうか。フォックスはリンクスの槍を紙一重で交わし、逆にリンクスは差し出されていた槍に自ら突っ込んだのだ。
リンクスの腹にフォックスの槍が深く刺さっている。強力故に利用されたリンクスの強化外骨格の弱点であった。
「俺は……英雄に……なれ……」
口と腹から血を吹き出すリンクスはフォックスに手を伸ばした。しかしその手は届かずリンクスは静かに冷たくなっていった。
「貴様は英雄とは何かを理解していない……英雄とはなりたくてなれるものではない。俺だってなりたくてなったわけじゃないのだよ」
樊城の大通りでは最終決戦が行われていた。
まだ建設途中の建物も多く首都機能を有していないこの場所は、戦うのにはあまり適してはいない。
しかし空中からエンドが砲撃を行う以上野放しにはできない。
「きょうだい!己れたちは次世代に進むべき人間だ!だからこそ己れたちの旗に集うべきなのだ!」
「戦争自体が正しいというのか!?」
「そうだ!人類が進化するためには戦争しかない!歴史がそれを証明している!戦争とは大量消費!そうして人類は進化してきた!!それがわからないわけでもあるまい!!」
確かに人の歴史は戦争の歴史。そして戦争で経済が回っているのは米国が証明していた。戦争は局地的に見れば悲劇だが、長い歴史でいえば大量消費、つまり経済活動の起点となるのだ。
「なぜその考えに固執する!俺はそんなに人類に……英雄たちが残した世界に絶望しちゃいない!!」
「……あくまで賛同しないというのであれば!」
とうとうチェイスは終了のようだ。エンドが一気にスピードを上げ旋回を行い、スネークの正面からRGL40を構えた。
これに応戦するようにスネークはパトリオットを右手に持つ。そして左手で羽織袴を脱ぎ捨てた。そこにはHydraの二本の蛇頭ではなく、四頭のスネークアームがエンドを睨んだ。
スネーク専用の新型強化外骨格OROCHIだ。新型戦術バイクからM240を掴んだそれぞれの頭は突っ込んできたエンドに銃口を向ける。
これに驚いたエンドは一気に急上昇を行い正面から当たるのを回避した。合計五門からの迎撃だ。グレネードランチャーなど途中で迎撃されるのは眼に見えていた。しかし驚異はそれだけではなかった。
スネークが遠くにいるエンドを殴るように左手を思いっきり振りかぶった。初速を与えるように腕から射出されたのは対象を挟めるようになっているアンカーだ。しかも射出スピードが尋常ではない。高速で飛行するエンドを捉えようとしたのだ。
「何!?」
すんでのところで回避するが、エンドはますますスネークに近づけなくなったのだ。
弾幕が濃い上に空中にいる敵をも捉えることができるロケットアンカー。厄介極まりない強化を施されていた。
「どうした、エンド!こっちも一世代進んだだけだぞ!」
そこでエンドが考えたのは機動力を断つ作戦だ。
ある程度ひらけた大通りから脇道にそれ、込み入った居住区に移動し始める。道が狭いためバイクが使いにくいのだ。
スネークも機動力を断たれる危険は承知であったが、この作戦にあえてのる。バイクをAI制御に任せ、自分の足でエンドを追いかけ始めた。跳躍力は十二分だ。屋根を飛びながら移動はできる。
これを見たエンドは空中でホバリングを初め、RGL40を構えた。ドットサイトにスネークを捉えるとした次に瞬間、スネークは大きく跳躍した。7m以上は軽く跳躍している。対するエンドもRGL40の着弾速度と効果予測も考慮してさほど高高度にいるアドバンテージもなかった。
エンドは攻撃に備え高度をあげるが、スネークの本位はむしろこちらだった。再びロケットアンカーだ。これの対応に遅れたエンドは上空で体を捻り回避する。しかしアンカーは左手だけではない。直ぐに右手のアンカーが飛ばされ、とうとうエンドを捕まえた。挟んだ部分は左肩だ。
「くそっ!」
相手はブースタ持ち。下手をすれば振りほどかれるがバレても美味しくない。一気にアンカーを巻き上げエンドに接近した。攻撃に連続性がありすぎて対応しきれていなかったエンドは、なすがままにスネークの左ストレートを受けよろめく。しかし体を回転させ始め、スネークを振りほどこうとするが、遠心力を利用したスネークは再びアンカーを巻き上げブースタ部分に一撃を加えた。
出力が落ちたブースターで高高度は維持できない。加えて人二人と強化外骨格二着分の重量に耐え切るとは思えない。スネークは素早く離脱し、エンドの自滅を地上におり待った。しかしエンドはブースタの出力を調整したのか、飛行を維持し続けていた。
「やっと地に足の着いた状態になったな。どうだ、頭も冷えたか?」
「思考や思想は変わらん。きょうだい、お前がそのようにな!」
だが低空になったということはグレネードの射程範囲に入ったということだ。
総合的にはあまり変わっていないかもしれない。RGL40を発砲し中距離戦闘となる。
「我々は腐敗した世界を再生する!もはや国は必要ない!」
グレネードの爆風と黒煙によってスネークの姿が消える。しかしスネークが再び跳躍しエンドの上へと躍り出る。
これにエンドが対応できなかった。というよりブースタをやられているのだ。機動力を失っているだろう。
「イデオロギーを押しつけるな」
それを確認したスネークは両脛の装甲に内蔵された高周波ブレードを展開する。主に蹴撃や踏みつけ攻撃の際に使用する内蔵ブレードだ。
「終わりだ!」
脛のブレードがエンドのウイングを捉えた。
これでエンドは空中を飛行できなくなった。あとは翼をもがれた蛇同然の戦闘力になる。ウイングをパージしたエンドは前転で衝撃を殺しながら着地し、スネークは轟音を立てて着地した。
スネークはこの隙にも彼の強化外骨格を観察する。どうやら強化外骨格自体にもブースターが付いているらしく背中にも小型のものが搭載されていた。爆弾を背負っているのにはかわりない。
「押しつけではない!国はもはや民を導く能力も価値もない!資本主義も共産主義も終わったのだ!!」
そう叫んだエンドはナイフを取り出し、バイザーをあげ顔を……彼にとっては目を露出させた。
「ヒプノシス!」
一瞬スネークは身構えた。しかしバイザーを上げていないスネークは現実を見ていない。カメラを通した映像を見ているのだ。催眠術にかかる道理はない。では誰に向けたか?
「まさか自己催眠で……」
身軽になったエンドは一気にスネークに肉薄した。突き出された拳を受け止めたスネークは、背負い投げの要領でエンドの体ごと後ろに放り投げる。
自己催眠で肉体を強化したようだ。一撃が重い。
再びストレート。単調だが、ブースタで初速を与えているせいか衝撃力があり外骨格を装備していても中まで衝撃が伝わってくるだろう。
もっともエンドの体もそれには耐え切れない。おそらく彼は体をボロボロにしてまで勝ちたいのだろう。
それに答えるようにスネークは拳を手のひらで受け止める。
「スネーク!時代が変わる時が来ている!何故それがわからん!!」
「企業による体制が新たなイデオロギーになるというのか!?」
「その通りだ!!利益が!欲望が!戦争が!人類を進化させる!!」
反対の腕で再びストレート。
「それは強制的な進化だ!時代に干渉してはならない!ありのままの世界をありのままに残すことが重要なんだ!!」
しかしこれを読んでいたスネークはエンドの顎に向けてアッパーを放つ。エンドの体が浮き上がるほどの威力だ。
空中でわずかにブースタを吹かしたエンドは一回転し、間合いを開け叫んだ。
「これ以上は人類の進化が止まる!今が転機なのだ!!」
「それを決めるのは貴様じゃない!」
――世界だ!!
「……もはや問答は無意味!」
エンドの目が黒く染まる。バーサーカーだ。
「誇り高き我が兄よ!越えさせてもらうぞ!!」
「笑止!!」
ならばこちらも応じるべきだ。バイザーを開いたスネークの目が深紅に染まっていく。
「「バーサーカー!!」」
終焉だ。
結局一刀は兄弟と分かり合えることはできなかった。
エンドはブースタで最大限に加速して拳に全ての力を込めた。
これに対しスネークは全力で電力を発生させ拳に集めた。これを放つことはしない。相手が真正面から向かってきている以上それを迎え撃つのみ。
「スネェェェェェク!!」
「エンドォォォォ!!」
――次の瞬間、樊城に雷鳴が鳴り響いた。
一刀は吹き飛ばされたエンドのもとへ歩み寄った。真正面から何千万ボルトの電流を喰らったのだ。無事では済まない。口からは血を吐き、もう長くはないだろう。
「何故人の進化に固執する」
「このままでは……人類は自らの……自らの愚行により……進化の道を閉ざされる」
「何故そこまで今の人に絶望する?」
エンドは震える手で一刀を指さす。
「己れたちが、生まれた。それが……証拠だ。何れ分かる……人類は……自分達の業で……宇宙への道を……閉ざす」
「人類なんかどこにもいないさ」
一刀の視界に朝日差し込んでくるのが見えた。
闇夜のむこうには青空が、そしてあの蒼空の向こうには宇宙が広がっていた。
「陽はまた昇る……」
キャスト(敬称略)
蜀
桃香/劉備
CV:後藤麻衣
愛紗/関羽
CV:黒河奈美
鈴々/張飛
CV:西沢広香
朱里/諸葛亮
CV:鳴海エリカ
雛里/鳳統
CV:後藤邑子
星/趙雲
CV:本井えみ
翠/馬超
CV:小林眞紀
紫苑/黄忠
CV:雨宮侑布
桔梗/厳顔
CV:荒井静香
焔耶/魏延
CV:平田宏美
蒲公英/馬岱
CV:青葉りんご
璃々/黄叙
CV:澄田まりや
ネクストジェネレーション計画
次世代計画と題されたそれは、次世代の人間を創る計画。
呉
雪蓮/孫策
CV:米島希
蓮華/孫権
CV:櫻井浩美
小蓮/孫尚香
CV:ひと美
冥琳/周喩
CV:瑞沢渓
穏/陸遜
CV:やなせなつみ
思春/甘寧
CV:田中涼子
明命/周泰
CV:大久保藍子
祭/黄蓋
CV:MARIO
亞莎/呂蒙
CV:水橋かおり
これから人は宇宙に旅立つ。宇宙という過酷な環境で生き抜くための、人間という生物の「再設計」であった。
そしてその計画は誰かの遺伝子が使われることとなった。
魏
華琳/曹操
CV:前田ゆきえ
春蘭/夏侯惇
CV:浅井晴美
秋蘭/夏侯淵
CV:吉田愛理
桂花/荀彧
CV:壱智村小真
稟/郭嘉
CV:今井麻美
風/程昱
CV:氷青
凪/楽進
CV:小野涼子
真桜/李典
CV:中川里江
沙和/于禁
CV:加澄もも
季衣/許緒
CV:澄田まりや
流琉/典韋
CV:天神林ともみ
霞/張遼
CV:茂呂田かおる
張角
CV:岡嶋妙
張宝
CV:梅原千尋
張梁
CV:吉住梢
しかしその計画は大きく方向転換を余儀なくされる。
時代は宇宙開発ではなく戦争を求めたのだ。宇宙という過酷な環境で生きるということは、戦場においても応用できると考えたのだ。
董卓
月/董卓
CV:いのくちゆか
詠/賈駆
CV:友永朱音
恋/呂布
CV:萩原えみこ
音々音/陳宮
CV:結本ミチル
袁家
麗羽/袁紹
CV:加藤雅美
文醜/猪々子
CV:神崎ちろ
顔良/斗詩
CV:羽月理恵
美羽/袁術
CV:中村繪里子
七乃/張勲
CV:たかはし智秋
他
美以/孟獲
CV:井上みゆ
シャム
CV:梶田夕貴
トラ
CV:高田初美
ミケ
CV:永田依子
普通
公孫賛/白蓮
CV:河原木志穂
そして子供たちには人外の力が与えられた。
正史
??/雷電
CV:堀内賢雄
ハル・エメリッヒ/オタコン
CV:田中秀幸
美玲/メイ・リン
CV:桑島法子
Roy・Campbell/Chicken・Fox
CV:青野武
リメイキングキャラクター
干吉/Lynx
CV:子安武人
左慈元放/End・Snake
CV:緑川光
オリジナルキャラクター
北郷一刀/Atomos Snake
ImageCV:宮野真弓
ジェームス・R・伊達/Ghost
ImageCV:白熊寛嗣
ケイン・ウェルナー/Tre・Fox
ImageCV:大塚明夫
??/Acid・Snake
ImageCV:小山剛志
??/Magna
ImageCV:中村悠一
しかし研究者たちは子供たちにある希望を託したのだ。
スタッフ(敬称略)
シナリオ設定
しがない書き手
演出設定
しがない書き手
軍事・武器設定協力
友人K
その他設定協力
友人N
オリジナルキャラクター設定
しがない書き手
脳内保管
スペシャルサンクス、スペシャルリスペクト
メタルギアシリーズのスタッフの皆様
恋姫†無双シリーズのスタッフの皆様
TINAMIのスタッフの皆様
応援してくださった皆様
閲覧してくださった皆様
支援してくださった皆様
お気に入りにいれてくださった皆様
かつて恐るべき子供たちと称された奴らは次世代に生きた証を残すことができなかった。そう、子をなすことができなかったのだ。
だからこそ研究者たちは、宇宙という目的のため、何よりも贖罪のために、未来を残したのだ。
お前たちは残すことも伝えることもできる。
……出来るなら……出会いたかった。
名も顔も知らない子供たちへ。
――ソリッド・スネークより
1964
バーチャス・ミッション、スネークイーター作戦
1970
サンヒエロニモ半島事件
1974
ピースウォーカー計画
1995
アウターヘイヴン蜂起
1999
ザンジバーランド騒乱
2002
マグナ生誕
2005
シャドー・モセス事件
ケイン・ウェルナー生誕
2007
タンカー沈没事件
2009
ビッグ・シェル占拠事件
2010
アシッド、アトモス・スネーク生誕
ジェームス・R・伊達生誕
2014
リキッド・オセロット蹶起事件
プレイステーション発売20周年。
2015
中東でアトモス・スネークが実戦に投入される。
2020
ブラウリオの惨劇
その惨劇の後FOXHOUNDが再結成する。
この頃ソリッド・スネーク他界。
2021
中東の都市消滅事件
2026
ウェルナー夫妻が死亡。ケイン・ウェルナーが失踪する。
2028
ケイン・ウェルナー、FOXHOUNDに入隊。
2029
ジェームス・R・伊達、アメリカ陸軍に入隊。
北郷一刀、米国の薬理系の学部に進学する。
2031
ケイン、FOXの称号を得る。
ジェームス、マグナの離反により恋人アンジェを失う。
2032
一刀、オタコンと雷電の推薦で軍に入隊。前歴を買われFOXHOUNDに。
2034
アザーワールド作戦
オペレーション・ロイヤルハリティア
2035
BIGBOSS生誕100年
オペレーション・ノア
2036
三人の御遣い。一度正史に戻りFOXHOUNDの一員として日本に派遣される。
2037
山猫の放火事件
最後の蛇事件
2064
正史においてPMCUの解体、及び国連の国際傭兵法の制定により一連の事件は終焉を迎える。
ザ・ボスの死から100年後、月へのテラーフォーミング計画が始動する。
METALGEARCROSS~OUTERHEAVEN~
「産まれたか!?」
「焦りすぎですよ、一刀様」
「一刀様はどんな名前を考えたの?」
「名前か……私が名前をつける立場になるとは思わなかったな」
「どんな名前がいいかな、一刀様?」
「そうだな、名前は……」
To Be Continued Forever.
―――学園都市。
あらゆる学問が集い人が進化していく街。その街は、怪人が闊歩するという七不思議があった。
そしてもう一つ、七不思議にはこうあった。
その怪人と戦う・・・仮面ライダーがいると。
KamenRider Eins
「さあ、派手に行こう」
しがない書き手の次回作にご期待ください。
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強く鼓動する希望の物語。