No.188931

真・恋姫無双 魏end 凪の伝 37

北山秋三さん

逃亡した雪蓮達は小さな村へと逃げ込んだ。
そこで出会ったのは、意外な二人で・・・。

2010-12-10 15:25:35 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4508   閲覧ユーザー数:3624

建業の街から南西方向へ逃げた雪蓮と明命は、人口がわずか300人程の小さな村へと到着した。

 

穏がしっかりとお膳立てをしていてくれたおかげで、この村では疲労が極度の馬の交換と、

 

旅の準備が整っている。

 

今は古い民家の一室を借りてそこにいるが、一刀は猿轡を外されただけの状態で床に転がされていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・天罰だと思う」

 

一刀のジト目状態で放たれたボソッとした小さな言葉に、部屋の隅の暗がりにいたなぎの体がビクッ!とする。

 

今のなぎの格好は、下がすっぽんぽんの状態で後ろを向いて体育すわりをしていた。

 

ズボンとパンツは雪蓮が

 

「お母さんが洗ってあげるわよぉ♪」

 

と言って持っていってしまった。

 

明命はその間に寝具を取りに行っている為、なぎはその格好で屈辱を味わっている。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

何と無く子犬がしょげているイメージを思い浮かべ、ちょっと可哀想になった一刀は追撃を諦めた。

 

再び続いた痛い沈黙の後、一刀はこれからどうなるのか考えるが、どうしようもないのでそっちも諦めた。

 

「たっだいまぁ♪お着替え持ってきたわよ~なぎちゃん♪」

 

そこへバターン!と勢い良く扉を開けて入ってきたものがいる。

 

「おっきがっえ~♪」

 

上機嫌の雪蓮だ・・・が、その手には何かが持たれていた。

 

(着替え・・・にしてはなんかモコモコしてないか?)

 

一刀が不思議に思う通り、着替えというよりは何かの毛皮のようにも見える。

 

「おーきーがーえーしーまーしょ♪」

 

そのあまりの上機嫌さになぎは猛烈な嫌な予感がして恐怖に震えた。

 

「あ、ちょ、ま、いえ、それは!」

 

「さぁさぁさぁさぁ♪遠慮しないでねー!!」

 

逃げようとするなぎをむんずと掴んで無理やりお着替えをさせる。

 

「隊長たすけてくださいーーー!」

 

という悲鳴を聞き流し、一刀はさっきの雪蓮との会話を思い出す。

 

 

「どういうつもりだ!」

 

民家に連れ込まれ、猿轡を外された一刀の第一声がそれだった。

 

明命と『なぎ袋』は先に話があるので外で待つようにと言われて待機している。

 

もっとも、なぎはそれどころではなかったが・・・。

 

「ごめんなさい・・・あの時はああするしかなかったの」

 

「え・・・?」

 

突然しおらしくなった雪蓮の態度に驚く。

 

見上げればその瞳には涙さえ浮かんでいた。

 

雪蓮がマスクを取りながら一刀の目をしっかりと見る。

 

「私もこんな事をするつもりは無かったけど・・・私の事は分かる・・・?」

 

「あ、ああ・・・雪蓮・・・だ・・・」

 

雪蓮の必死な様子に戸惑う。

 

呉の者達と真名を交わした時には雪蓮はいなかったが、雪蓮も冥琳同様、何故か脳裏にその名があった。

 

「幻で見た私は・・・毒矢によって命を落としていたわ・・・」

 

その言葉でハッとなる。

 

一刀の『南海覇王』は今は雪蓮が持っており、その剣に目が行く。

 

「私は何があっても貴方を守るわ・・・その為に今回の行動を起こしたの」

 

「どういう・・・事だ・・・?」

 

「もう、明日にでもなれば魏の武将達が建業の街に到着する・・・いいえ。今日にも先遣隊が到着して

 

いるでしょうね・・・名目は三国同盟の確認・・・でも、その本当目的はただ一つ。貴方を確保する事。

 

もし確保されればどうなるか・・・火を見るより明らかね」

 

真剣な表情の雪蓮に思わず唾を飲み込み、貂蝉の言葉が思い出される。

 

『魏の武将全員と関係を持っていた』

 

(武将全員とはいえ、まさか曹操や夏侯惇とか夏侯淵とまで関係を持ってないよな?)

 

と思いつつ、横山光輝版の曹操、夏侯惇、夏侯淵の顔を思い浮かべて頭痛がする一刀だった。

 

「確保されれば確実に連れ戻される・・・そんな事をさせるわけにはいかないの・・・」

 

「まあ、オレも色々困るんだが・・・」

 

魏にはニセ凪がいる。

 

一刀が捕まれば確実にニセ凪と会う事になり、『南海覇王』を奪われるかも知れない。

 

そうなればニセ凪は────

 

そこで雪蓮は後ろを向き、涙を拭う仕草をする。

 

「恥ずかしかったけど、あそこまで派手にやらないとみんなの目を誤魔化せなかったんだ・・・」

 

涙を拭いながら、えへっと笑う雪蓮。

 

「そうか・・・ありがとう・・・」

 

一刀の言葉に少し俯いた雪蓮が気恥ずかしげに声を出す。

 

「えと、あのね・・・さっき・・・いきなり真名を呼ばれてちょっとビックリしちゃった」

 

「あ!!ご・・・ごめん!!そうだった!!」

 

雪蓮とは正式に真名を交換していない事を思い出し、慌てて雪蓮の背中に謝る一刀だが・・・。

 

「真名は大切なもの・・・わかるよね?」

 

「・・・本当にすまない。どうやって償ったらいいか・・・」

 

項垂れる一刀だが、雪蓮からは泣いているような気配がする。

「償うだなんて・・・一つだけ、私のお願いを聞いてくれればいいのよ・・・」

 

「ああ!何でも言ってくれ!できる事ならなんでもするよ!」

 

一刀は・・・雪蓮の恐ろしさを知らなかった。

 

他の者が聞けば噴出してもおかしくない雪蓮の態度だが、一刀はそれを知らない。

 

何故、雪蓮が今までほとんど一刀に会いに来なかったか。

 

何故、雪蓮は一刀に真名を教えなかったか。

 

何故、城の者達に自分の事を話さないように厳命していたのか。

 

何故、一刀となぎを連れて逃げたか。

 

それらは全てこの時の為────

 

 

ニヤリと雪蓮は微笑んだ。

 

「今はいいよ。後でお願いする事があるわ・・・それと、正式に私を雪蓮って呼んでね」

 

そう言って振り返った雪蓮は極上の笑顔を浮かべていた────

 

 

 

 

「いやあああああぁぁぁぁ~♪かっっっわいいいぃぃぃぃぃ!!!」

 

そこまでを思い返していた時、雪蓮の黄色い歓声が聞こえ、そっちを見た一刀も思わず絶句した。

 

そこに居たのは・・・立ち上がった犬。

 

それも柴犬だった。

 

「ぶふぅ!!!」

 

マジマジと見てから噴出す。

 

「隊長・・・ひどいです・・・」

 

柴犬の開いた口の所からなぎが涙目でしょぼくれた声を出すが、それがさらに一刀のツボにはまる。

 

雪蓮の持ってきたもの・・・それは柴犬の着ぐるみだったのだ。

 

凄まじいまでのハマリ具合に逆に感心する。

 

『なぎワンコ』誕生の瞬間だった。

 

「雪蓮さま!お客様です!」

 

そこへ明命が部屋に入ってきて『なぎワンコ』を見た瞬間、ほわ~っという声を出してなぎの側に擦り寄る。

 

「ななな、なんという事でしょう!かわいいです!かわいいです!」

 

「うぐー」

 

ぎゅう~っと抱きしめられて苦しがるなぎが逃亡しようとするが、またすぐに捕まった。

 

「明命・・・猫もあるわよ・・・」

 

「一生ついていきます!雪蓮さまっ!!」

 

なぎをだっこしたまま目を輝かせる明命の頭を撫でていると、扉の所に人の気配がする。

 

一刀がそちらを見ると、二人の女性がいるのに気がついた。

 

「あの~・・・そろそろよろしいでしょうか~」

 

「失礼しますー・・・」

 

「げぇ!七乃!斗詩!なんであんたらがここにいるのよ!!」

 

驚く雪蓮だが、一刀も驚いた。

 

「め・・・メイド服・・・?」

 

七乃と斗詩の二人が着ているもの・・・それはメイド服だったのだ。

 

「あらぁ?この方は・・・どうされました?」

 

七乃が指差すのは簀巻き状態の一刀。

 

「あ・・・忘れてた・・・てへっ☆"」

 

まったく悪びれずに自分の頭を小突く雪蓮の姿に、一刀はもしかして、まずい約束をしたんじゃね?と今更思う。

 

 

(まさかこの二人が張勲と顔良だとは・・・)

 

囲炉裏を囲んで聞いた七乃と斗詩の話は、美羽と麗羽、猪々子の三人を助けて欲しいというものだった。

 

事の起こりは、麗羽がいつものごとく我が侭放題を言い出し、斗詩と猪々子、白蓮を巻き込んで成都から

 

飛び出した事から始まる。

 

途中の街で麗羽が美羽と七乃を捕獲して無理やり旅の道連れにした後、何としても引きとめようとした

 

白蓮と離れ、五人は旅をしていたらしい。

 

だがいつしか路銀が底をつき、路頭に迷ったあげく、七乃と斗詩が定食屋であるばいとをしていた時に

 

麗羽と美羽、猪々子が消えたという。

 

消えた三人を探そうにも、完全に路銀の尽きていた二人はあるばいとを続けるしかなかったと・・・。

 

「まったく・・・ことごとく何時も通りね・・・」

 

呆れたような雪蓮の言葉に、「もうしわけありません・・・」とこちらも何時も通りに涙ながらに謝る斗詩だが、

 

七乃はようやく拘束から開放された一刀に興味深々だった。

 

「あれあれーどこかでお会いしましたよねー」

 

「え。いや、初対面ですよ」

 

七乃としてはカマをかけたつもりだったが、あっさりと普通の状態で返され、肩すかしをくらう。

 

(おやー・・・?おかしいですねー?『天の御遣いさん』だと思ったんですが・・・)

 

七乃の頭に疑問符がつくが、一刀はごく自然の顔で薪を火の中にいれた。

 

そして明命にぎゅーっと抱っこされているなぎを見て、微かに微笑む。

 

────ドキン!

 

(あ、あれ?おかしいな・・・何故だろう・・・胸がドキドキする?そんな筈は・・・)

 

一刀の微笑む横顔を見て、ドギマギする自分を不思議に思うが、その理由がわからなかった。

 

七乃は幻視を見ていない。

 

だが、流れ込んだ記憶は微かに七乃にもあったのだった。

 

(────・・・美羽さまがいない今のうちにちょっと味見をしてみても・・・)

 

────ピタッ

 

七乃がそんな事を考えた途端、七乃の首筋に『南海覇王』の剣の刃がピタリと当てられた。

 

「あああああああああああの、雪蓮さん?こここここここれは当たってるんじゃないですか?」

 

「当ててんのよ」

 

『南海覇王』を構えた雪蓮が壮絶な笑顔で嗤う。

 

その様子を見て七乃が真っ青になって両手を降参するように上げる。

 

「今、私の勘があんたは敵と認識してんのよねー」

 

「ままままままままさかー・・・もうそんな事は無いですよぉ!!」

 

「本当に・・・?」

 

「もちろんです!!」

 

頷こうとして剣の刃が当たっている事を思い出し、頷くのを思いとどめた。

 

「ならいいけど・・・それで?あの三人は今どこにいるの?」

 

その様子を見ながら、しぶしぶといった感じで『南海覇王』を鞘に戻す。

 

「あ。それが、『にゃあ黄巾党』を前にらいぶをしてるんですよ」

 

「「「はぁ?」」」

 

雪蓮の問いに斗詩があっさり答え、七乃と斗詩を除く全員の声が揃う。

 

「あ・・・もしかして、張角、張宝、張梁を名乗っているのは麗羽さん、猪々子さん、美羽さん、という事ですか?」

 

「そうなんですよー」

 

明命がなぎを抱えたまま聞くと、あっさりと七乃が答えた。

 

「それでですね。この村の近くで次のらいぶがあるんですよ」

 

「「「はぁ???!!!!」」」

 

七乃がピッと指を立てて言うと、再び七乃と斗詩をのぞく全員が唖然とするのだった・・・。

 

 

森の中で跪く一人の男がいる。

 

どこにでもいるような顔・・・それは冥琳にあの書簡を渡した男だ。

 

その男が跪いた先には、一人の黒い服を着た女の姿がある。

 

暗闇でもはっきりと分かるほど、その女の存在は顕著だった。

 

「御命令通り、あれを渡しました」

 

「ご苦労様でした。では、札に戻ってくださいね」

 

女がその言葉を発した途端、男の姿が消えてその場には一枚の札がハラリと舞った。

 

「クスクスクス・・・冥琳さんが反対することで、呉はまとまらない・・・」

 

女は静かに微笑む。

 

「蜀はもちろん、魏もバラバラ・・・三国同盟崩壊も間近・・・クスクスクス・・・」

 

月を遮っていた雲が晴れ、月明かりが女を照らす。

 

そこに居たのは朱里────

 

「そろそろ出てきてもらいましょうか・・・管輅さん・・・フフフフッ・・・早くしないと、

 

"また"雪蓮さんと冥琳さんが死んじゃいますよ・・・クスクスクスクス────」

 

朱里は笑い続ける。

 

朱里のいる場所は、一刀達の村の目と鼻の先だった。

 

 

夜中1時過ぎ、一本の電話がありました。

 

「あっははははははははは!!!今ね。今ね~アニメ見てたの!!」

 

ベロンベロンに酔っ払った声でした。

 

「でね!でね!妹がこんなに可愛いわけがない!!ってやつなんだけどねーー!!アハハハハ!!!」

 

・・・。

 

「それに出てくる地味子!!あっれ性格も外見もそのまんま秋三じゃん!!アハハハハハハ!!!

 

京介紹介してよ!!きょうす────」

 

ブチッ。

 

携帯切りました。

 

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を現在2巻まで読みました。

 

正月に会ったらとりあえず殴ろうと思いました。

 

秋三です。

 

今までテキストで6kb縛りをやっていましたが、最近どこで切るかが悩みの種となっていましたので、

 

6kb縛りをやめました。

 

実は第二部に入ってから、6kbだったのは2話だけという・・・。

 

では、ちょこっと予告。

 

建業の街に向かっていた華琳達だったが、近くに黄巾党が集まりつつあるという情報を得る。

 

「一方的な再会」

 

ではまた。

 

 


 
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