No.188150

真・恋姫†無双 北郷史 2

たくろうさん

受験終わったべがー……。まあ、そんなことはどうでもいいか。
その2です。 さてさてどうなるのやら。

2010-12-05 18:15:46 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:12433   閲覧ユーザー数:8848

今、一刀は文字通り光になっている。そして物凄い速度で落ちている。

だが一刀はいたって平然としていて、この状況の中でもくつろいだ格好をしている。

 

「前回も多分同じだったんだろうから死ぬことはないだろうな。というより我ながらこの落ち着きよう、年をとったのぅ……」

 

一刀は老人の真似事をしながら地に降り立つのを待つ。

雲を突き抜け、どんどん地上の景色が大きなものとなっていく。だが一向に速度が変わらない。

 

「えっ、ちょっ待っ……ヤバイって……これホントヤバイって!!」

 

一刀は焦り始める。だがそれでも速度は変わらず、遂に地面が一刀の目前までやって来た。

一刀は一瞬悲鳴を上げたが最悪の事態にはならなかった。地面と触れる寸前に光が炸裂して一刀の周りが無重力状態になり地面との直撃を避けれたのだ。

 

「寿命減るってこれ……まあ今更寿命うんぬん言う歳でもないけどさ」

 

一刀はまず周りを見渡す。一刀の周りにあるのはただ広がる荒野のみ。だが一刀は何百年も景色の無い空間にいたため周りの光景がとても新鮮に映る。

 

「さて、たしかここで華琳と会うはず。……いや待てよ、何かその前に一悶着あったような気がするな。えーっと……なんだっけ?」

 

一刀は昔の記憶を頭から引きずり出そうするが上手くいかない。

そうして悩んでいると三人の男が一刀の傍に近付いて来た。

 

「おう兄ちゃん。 珍しい格好してるじゃねぇか」

 

兄貴格の男が一刀にいやらしい笑みを浮かべながら近付いて来る。とりあえずここではアニキと名付けることにする。残りの二人は小さい男をチビ、デブをデブとする。

 

「い、痛い目に遭いたくなかったら大人しく服を置いていくんだな」

 

デブが一刀に詰め寄る。

 

「コラコラ、お兄さん達、老人を苛めるんじゃない」

 

一刀は言葉と裏腹に爽やかな笑顔で三人に対応する。

 

「あん? 何訳の分からねぇこと言ってんだ!!どう見てもお前のほうが若けぇだろうが!!」

 

(そうか、思い出した。ここで俺はこいつらに襲われるのだったな。で、確かここであの三人が助けに入るんだっけか)

 

一刀は三人を無視して深く考えこみ始めてしまう。一刀は長らく貂蝉以外の人物と接触しない生活が続いたため一人思考に没頭する癖がついたのだろう。

 

「アニキ、こいつ頭がおかしいんじゃねぇですか?」

 

「ああ、俺もそう思っていたところだ」

 

アニキとチビが一刀の先程からの奇行に若干嫌な顔をする。

 

「ああもういい、おいデブ! そいつの服剥ぎ取っちまえ!! 血で汚すんじゃねぇぞ!!」

 

「わ、わかったんだな」

 

アニキの命令に従いデブが一刀に詰め寄る。そしてデブが一刀の服に手を掛けた。途端に一刀の顔が険しくなる。

 

「Don`t touch me! Wryyy!!」

 

「ひでぶ!?」

 

一刀は服に触れられた途端に物凄い勢いでデブを殴り飛ばした。デブは二メートル程吹き飛んだのち痙攣し始める。

 

「あ、悪い。 大男に服を脱がされるという状況につい防衛本能が働いてしまった。軽く貂蝉とのやり取りがトラウマになってるかもしれないな」

 

一刀は申し訳なさそうに頭をさげる。そしてさり気無く自身の鍛錬の成果が出ていることにニヤける。

 

「野郎! 舐めやがって!!」

 

アニキとチビが剣を抜いて一刀に突きつけた。だが一刀は刃の前に微塵も戸惑いはしない。

 

「二人とも、やめておいたほうがいい。俺は剣よりもっと恐ろしい全身凶器の男と対峙してきたんだ。下半身のモノで物を両断できるようになってから出直せ」

 

一刀はそう言いながら周囲を確認する。

 

(ここでそろそろ三人が着く頃だろうな…)

 

「待てぇい!! 三人で一人によってたかって襲いかかるとは言語道断!! 私が成敗してくれる!!」

 

一刀の狙い通り一刀とアニキ達の間に声が割り込む。

 

「ビンゴ」

 

白い服と赤い槍が輝く一人の少女が現れてアニキとチビの残りの二人を撃退する。

一刀は予測通りの事態にご満悦の表情をつくる。

撃退には成功したが前回と同様にアニキ達三人は隙を突いて逃げ出してしまった。

そして一刀は曇らせた表情をつくる。

 

(何か俺大切なこと忘れてる気がするんだが……あっ、しまった。あいつらから「太平要術の書」を回収するの忘れてた。いや、でも黄巾の乱が無ければ三国時代は始まらないからいいのかな…)

 

「怪我はござらぬか?」

 

「ん? ああ、大丈夫だよ」

 

一刀は少女の言葉で思考を遮り笑顔で自身の身が大丈夫であることを示す。

 

「大丈夫ですかー?」

 

「ふむ、怪我はないようですね」

 

(風…稟…。 いかん、涙が出そうだ。我慢我慢)

 

一刀は溢れそうになる涙を必死に抑える。

 

「本当に大丈夫ですか? 目が涙目になっておりますぞ。 やはり何処か怪我をしたのでは」

 

「いや、目から汗が……じゃない、目にゴミが入っただけさ。そんなことより自己紹介させてくれ。俺は北郷一刀(昔はここで大目玉を食らったなぁ…)」

 

一刀は話を逸らすついでに自己紹介に入る。少しの懐かしさを滲ませながら。

 

「北郷一刀? 変わった名ですな」

 

「ちなみに言うと字も真名もないよ。そういう場所の生まれなんでね」

 

「ほぉ…それは奇なる所の生まれのようで。 ああ、私は趙雲、字は子龍だ」

 

「私は程立ですー」

 

「私は戯志才と名乗っております」

 

(うーん、やっぱり二度目の自己紹介は変な気分だなぁ…)

 

わかってはいるがやはり違和感を一刀は感じてしまう。だがそれは無視して一刀はこれからのどう動くかを考える。

 

(まずはどうするかだな。華琳と会う……のは駄目か。それじゃあの時と同じになってしまうからな)

 

「三人は何処に向かってるんだい?」

 

一刀はとりあえず質問する。そしてあわよくば旅に同行しようと考えた。

 

「私は公孫賛のもとで客将をしようかと考えてるので幽州に向かうところですぞ」

 

「私と稟ちゃんはもうしばらく大陸を回ろうかと考えておりますー」

 

「良かったら旅に同行させて貰えないかな? 俺もここに長く留まる気はないし、さっきみたいに盗賊に襲われたら命が幾つあっても足りやしない」

 

「それは構いません…と言いたいところですが貴殿は見たところ何処かの貴族とお見受けする。貴族を連れての旅は厄介事に巻き込まれるゆえ…」

 

ああ、そうか。と一刀は納得する。確か前にもこのようなやり取りをした。だが今回は華琳達のもとに行くわけにはいかないから簡単には引き下がれない。

 

「いや、俺は貴族じゃないよ。まあ確かにこの格好だとそう思うのも仕方ないね。ならこれは脱ぐからそれで了解してもらえないかな?」

 

一刀は聖フランチェスカの制服を脱いでから頭を下げる。

 

「頭を上げられよ。そこまで頼み込まれたら断るにも断れない。風、稟構わぬか?」

 

趙雲が困った顔して一刀の申し出を了解して風と稟に了解を得ようとする。

 

「私は別に構いませんよ。一人旅とは危険なものですしね」

 

「風も構いませんよー。まあお兄さんが狼にならなければ、ですけどー」

 

「ああ、それは安心して貰って構わない。北郷爺さんは絶倫する年齢ではないからね」

 

一刀は少しおどけたようにそう言う。

 

「はッはッはッ、北郷殿は面白いことを言う。見たところ色事に夢中な歳真っ盛りだろうに」

 

「とりあえず大丈夫ってだけ心に留め置いてくれればいいさ」

 

ひとしきり会話をし終えた後、四人は陳留の刺史である華琳に会うと厄介事になるのでその場を後にした。

四人は道という道をひたすらに歩く。

 

「しかし北郷殿、先程一人旅が不安と言っておったがアレは嘘であろう?」

 

趙雲が唐突に一刀に質問をする。

 

「どうしてそう思うんだい?」

 

一刀は首を傾げる。本当に一人旅をするのは不安だと思っている。何故そんなことを聞くのか一刀は理解できない。

 

「実は先程北郷殿が大男を殴り飛ばすのを遠目で見ておりましてな。それに近くで見たところやはり一般人には見えない。それこそ老将の風格さえ漂っていると錯覚させられます」

 

「それは言い過ぎだよ。まあ盗賊とかに関して不安と言ったのはタテマエであることは認めるよ。だけど俺は弱いから言ってることは本当さ。一人や二人相手なら勝てると思うけど多数によってたかって襲いかかられたらあっという間にあの世行きだよ」

 

「ご謙遜はよろしくありませんぞ。この趙子龍の目は誤魔化せませぬ。北郷殿の放つ気は幾つもの戦いを駆け抜けたもののそれだ」

 

「じゃあそういうことにしておこうか。そこまで言ってくれるならその気がハリボテになってくれるかもしれないしね」

 

一刀はどこ吹く風といった態度である。それだけ自分の実力を熟知して評価が身の程に合ってないということを理解しているからだ。

 

「ふむ、掴みどころのないお方だ」

 

趙雲は唇に手を当ててひとつ溜息をつく。人をからかうのが得意な趙雲としてはこうも軽くあしらわれるというのはあまりないことだからだ。

 

「そういえばお兄さんは何故旅を?」

 

風が一刀に質問をする。

 

「何故かと言われたら…そうだな、まずは自分の居場所の確保かな。ここの生まれじゃないから居場所がないからね」

 

「では先程曹操さん達の軍と一緒に陳留に行けばよかったんじゃないですかー?」

 

「そうするわけにはいかない。拠点を見つけたら義勇軍でも立ち上げようかと思ってるからね」

 

誰の配下に加わることなく天下を取るにはまず義勇軍の立ち上げが最良の選択だと一刀は考えている。

 

「それは立派な志を持っておいでで。しかし今の世でただの旅人である北郷殿のもとに兵が集まるとは思えませんが」

 

稟が言葉を挟む。確かにそうだ。ただの旅人であれば義勇軍の立ち上げなど不可能だろう。だが一刀にはかつての肩書きがある。

 

「まあ、見ておきなって。北郷爺さんは志だけで収まるようなタマじゃないからさ」

 

一刀は微かに笑ってこれからの予定を考え始める。

四人で旅をして幾分かの日が経った。四人は冀州と涼州の間で冀州よりに位置する街の前に着いた。だがそこは盗賊に荒らされた後であろうか各所で黒煙を上げ、家々は傷付き、街の人々は疲弊しきっていた。

 

「これは酷いですね…」

 

稟が道に打ち捨てられている死体を見て苦い顔をする。

 

「とりあえずは街の状況を聞こうか」

 

一刀がそう提案して三人もそれに賛成して人が集まっている建物に行くことにした。

 

「一体何があったんですか?」

 

一刀が街のまとめ役であろう男にそう尋ねる。男は普段なら気の良い街商人なのだろうが今は表情苦々しく顔を下に向けている。

 

「最近噂になっている黄色の布を巻きつけた盗賊の集団に襲われてな。ご覧の有様だ。アンタ達も早くこの街から逃げたほうがいい。またあいつらが略奪しにここに来る筈だ」

 

「今まで盗賊達に抵抗は?」

 

一刀は質問する。表情は真剣み帯びていて何処か怒気を孕んでいる。

 

「勿論したさ。だが数が違いすぎる…。屈強な男達も結構な数やられちまった。もう死を待つしかない…」

 

男は呻く。どうしようもない状況にただ呻いて死を待っている。

 

「……ふざけるなるよ」

 

一刀がそう言葉を言い放った。そしてさらに続ける。

 

「何が死を待つしかないだ、アンタ達はまだ生きているだろう。何故戦おうとしない!!この街を、家族を見捨てたくないからここに居るんだろ!!ならば戦え!!」

 

「そうは言ってもこんな状況じゃ戦っても結果が知れている……!」

 

男は一刀の放つ気配気圧されながらも言い返す。男も諦めたくないのは当然だ。

一刀はそれもすべて飲み込んでここの場にいる全員に向けて言い放つ。

 

「俺が勝たせてやるよ。愛する街を守りたいと思うのなら俺に付いてこい!! 我が名は北郷一刀!! 天の御使いなり!! お前達には天の加護があると心得よ!!」

 

一刀は言い終えると脱いでいた聖フランチェスカの制服に再び袖を通す。少しでも威厳を持てるように、人々が希望を自分の背中に見つけられるように。かつて一刀自身が見ていた覇王である少女の背中を脳裏に浮かべながら。

 

「天の御使い? あ、あんたがあの噂されてる天の御使いだってのか!?」

 

「ああ、証明はこの服と、そしてこれからの行いで証明してやる」

 

「お、おお確かに光輝いてなんと神々しいお姿。 勝てる、勝てるぞ!! 我らには天の御使い様の加護がある!!」

 

男は一刀に感化されて希望を持ち顔に生気が帯びる。

 

「さあ剣を、無ければ農具でもいい、とにかく武器を持て!! 愛する街を守るのだ!!」

 

一刀の最後の言葉が引き金となりその場にいた全員が咆哮をあげた。

一刀は案内された一室でこれから起こる戦いに向けての策を練り始める。

すると趙雲が一刀のもとにやって来た。

 

「見事な号令でしたな、北郷殿」

 

「趙雲か、いや、実際やってみると緊張するもんだね」

 

一刀は苦笑いで返す。これを常日頃やっていた華琳は大したものだと一刀は改めて評価する。

 

「しかし貴殿が噂される天の御使いだったとは。字と真名が無いのと奇妙な服装だったのはこれで納得がいきましたな」

 

趙雲は値踏みするように一刀を見る。

 

「天の御使いかどうかはこれからの行いで決まるさ。いくら大言壮語を吐いても実が無ければ無意味だ」

 

「それもそうですな。僭越ながら私もこの戦いに加勢いたしましょう。民を見捨てるなど私の武の道が許しませんからな」

 

「ああ、それは助かる。常山の昇龍、趙子龍が味方してくれれば百人力だ」

 

「んん? 私はこれから名を上げる予定だったのだが何故北郷殿が私の肩書きを知っておいでか?」

 

「フフ、それは俺が天の御使いだから、さ」

 

一刀はいたずらっぽく含み笑いをする。

 

「まったく、北郷殿には敵いませぬな」

 

詮索を諦めたのか趙雲も笑いで応える。

「楽しげな雰囲気に水を差すようで悪いですけどお兄さんはどうやって盗賊達を退けるつもりですかー?」

 

風と稟も扉から一刀のもとにやって来る。

 

「聞いた話によると盗賊の数はおよそ五千、それに対してこちらはたったの二千。怪我人を含めても二千五百。二倍近くある差をどうにかするのは容易なことではありませんよ?」

 

風と稟の絶望的だが確かなもの言いに一刀はまったく動じない。

 

「そりゃあまともにやりあったらただでさえ疲弊してるこっちに勝ち目はないさ。それに戦いの基本は兵の数。だけどそれはあくまで基本だ。基本に忠実なのは大切なことだがそれでどうにかならない時は他のやり方を選ぶ、ただそれだけさ」

 

「お兄さん、何か策があるのですかー?」

 

「ああ、とっておきのな。この戦い、こちらは一人の死者も出さなくて済むよ」

 

「一人も?」

 

風は一刀の言葉に眉をひそめる。

 

「ああ、一人もだ。この街の建物、そして天候も俺達の味方をしてくれているからね」

 

「言ってることがよくわかりません」

 

「まあ後のお楽しみさ。 断言するよ。この戦い、俺は矢一本ですべての戦況を傾かせてやる。さっ、戦いの準備だ。 趙雲、程立、戯志才、これから民に指示を出すから手伝ってくれ」

 

一刀はそう言って戦いの準備を始める。

 

「星で構いませぬ」

 

「……いいのかい?」

 

「これから背を預けて戦う相手に真名を名乗るのは礼儀というもの。……それに、もしかしたら……フフッ」

 

「どうしたんだい?」

 

一刀は趙雲の怪しげな笑みに首を傾げる。

 

「何でもありませぬ」

 

 

「では風も真名を預けましょうかねー。 風ですー」

 

「私は稟です。 あなたの策、見させて頂きましょう」

 

「ああ、有り難く真名を預からせて貰うよ。俺は真名がないから一刀と呼んでくれ。 じゃあみんな、勝ちにいくぞ!!」

 

「「応!!」」

 

四人はこれから起こる戦いに向けて立ち上がった。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
90
5

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択