『過去』
・・・少し明るい。ここはどこだ?俺はだれなんだ?それより、どうして俺はここに居るんだ。もしかして、俺はここで死ぬのか。嫌だ!!生きたい。生き続けたい。誰か、俺を助けてくれ
そして俺は、また暗闇に消えていった。
・・・また少し明るくなった
「あぁ、可愛そうに」
・・・誰?
「今、家につれて帰ってあげるからな」
・・・俺は助かるのか?
「黒鋼(こくり)さん。この子は私が持ちますから。先に帰って湯を沸かしといてください」
「しかし・・・わかった」
俺は助かる事が分かった途端にまた暗闇へと消えた。
「あら、これは何かしら?」
「香華(こうか)。あの子はどうだ?」
あの後、私が家に帰ると黒鋼さんが丁度いい温度の湯を持ってきてくれました。私はその湯で拾ってきた子供の体を拭き、お爺様から貰ったゆり籠の中に子供を寝かしつけた所に黒鋼さんがやって来ました。
「今はぐっすりと眠っていますよ」
「それはよかった」
「えぇ。それより黒鋼さん。相談があるんですが」
「相談?」
「この子を家の養子にしませんか?」
「!? 確かに家にはまだ子供がいないが、もしできた時この子が大変な目にあうかも知れんぞ」
「大丈夫ですよ。この子はきっとこれから生まれてくる妹を大事にしてくれます。私はそう感じていますよ」
「妹前提なんだな、香華。・・・わかった。この子を養子にしよう。まずは、名と真名を考えないとな」
「黒鋼さん。真名はもう考えてあるんです」
「なに?」
私はゆり籠の隣に掛けてあった剣を黒鋼さんに見せました。その剣はこの国にはない不思議な形をしていました。
「香華。それは?」
「この子の近くに落ちていました。多分この子の両親がこの子に預けたのでしょう。自分達の代わりとして・・・」
「かもしれないな。それで香華、この子の真名は」
「一刀」
「一刀・・・いい名だ。なら、私からは仁を授けそう」
「曹仁。いい名前です」
「ありがとう」
私は眠っている一刀の頬に優しく手を当てた。
「一刀。これからあなたは私達曹家の一員です。あなたが生きる時代は恐らく乱世の時代になると思いますが、しっかりとあなたの妹を助けてあげてくださいね」
「妹確定か!!」
「えぇ」
私は自分の夫に満面の笑みを見せた。
俺が曹家の養子となって五年が経つ。俺は曹家の人間として恥ずかしく無いように文学と武術に毎日費やした。しかし、俺がどんなに頑張っていても褒めてくれるのは父上と母上。それと叔母の千華(曹鼎)さん位のものだった。その他の人からはいつも嫌な目線しかなかった。そんな俺も、もうすぐ兄となる。
「父上。少しは落ち着いたらどうですか」
「一刀は落ち着きすだ。全く誰に似たんだが」
「それは、母上に決まっているじゃありませんか。それに俺は千華さんより父上の暴走を止めるよう言伝を頂いています」
「うっ!千華め。余計な事を」
「それにしても、少し遅いですね。もう生まれてきてもいい頃合なのに」
「やっぱ、香華に何かあったんだ。どうしよう」
「父上。落ち着いてください」
俺は騒ぐ父上を落ち着かせながら母上と生まれてくる子供の無事を祈った。
「オギャー!オギャー!」
「「!?」」
「御兄さん!!生まれましたよ。元気な女の子です」
「そうか・・・女の子か」
「はい!!母子共に健康です」
「それはよかった」
「一刀君も、これからはお兄さんだからね。しっかりと妹の面倒見てあげなさいよ」
「わかっていますよ。千華さん」
「うん。いい返事だ」
そう言うと千華さんはまた部屋に戻った。
「父上は行かないのですか?」
「行ってもいいのか一刀?」
「えぇ。俺はいつでも会えますが、父上は忙しいですからね。会える内に会っといてください」
「すまんな。・・・そうだ、一刀。妹の名前は操だ。真名は香華が考えているから後で聞きなさい」
「わかりました。それより父上はやく」
父上はそのまま部屋に入って行った。
母上から真名を聞きなさいと言われても、本人から許しが出なければ呼べないじゃないか。全く父上は何を考えているんだ。それに、真名には華と言う文字が入っているはずだから母上なら『華琳(かりん)』か『桃華(とうか)』にするに違いない。それよりも・・・
俺は色々考えながら自分の部屋に戻ろうとした時、後ろから千華さんに呼び止められた。
「一刀君。どこにいくの?」
「自分の部屋に戻ろうかと。千華さんは?」
「私は御兄さんが部屋に入ったとたんに泣き出したから。ここは邪魔かなって思って出てきちゃった。テヘ」
千華さんは恥ずかしそうに舌を少し出した。
「その歳で、それは不味いと思いますが」
「あ~~~。一刀君。可愛くな~~~い」
「別に可愛いとは思われたくありませんよ」
「あらそう。それで、何考えていたの?お姉さんが相談に乗るよ」
全く。この人には敵わないな
「これからの事を考えていました」
「これからの事?」
「はい。俺は今まで子供が出来なかった本家に養子として来た事は知っていると思いますが、今さっき出来ました。そうなると俺を良く思わない連中から恐らく何かが来ると思います」
「何かって?」
「隠密を出して俺を殺しに来るか。あるいは、無理難題を出して出来なければ曹家から追放するか・・・」
俺の話を聞いていくうちに千華さんの手から血が流れていた。恐らく強い力で握ったのだろう。手には爪の痕がくっきりと出ていた。
「大丈夫よ、一刀君。そんな事私がさせない。姉さんだってそんな事はさせないはず。だから今は安心して」
最後に千華さんは俺に満面の笑みを見せてくれた。俺がそれを見て少し頬を赤く染めると
「一刀く~~~ん。顔赤いよ。可愛い」
俺を茶化して来る。
「それじゃ、私はそろそろ戻るわ。姉さんと御兄さんもそろそろ終わっていると思うから」
そう言うと千華さんは、また部屋に戻っていった。俺もそのまま部屋に戻った。
「兄さん。どこへ行くの?」
「ん!これから討伐に行くのだが。聞いてなかったのか曹操」
曹操が生まれてから五年。妹は神童と言われるほど天才だった。文学はすでに俺を追い抜き、武術はまだ俺が勝っていたがいずれ抜かれるだろう。俺は千華さんと一緒に討伐の仕事をしていた。母上から討伐に命令を下すたびに「ごめんなさい」とよく言われるが、俺は気にしていない。
「聞いて無いわよ。それに妹なんだから真名で「一刀様。飛龍をお持ちしました」」
「ありがとう。秋蘭」
「ちょっ!」
俺は秋蘭(夏候淵)から飛龍を受け取ると腰に差した。この飛龍は十歳の誕生日に母上から貰った物で、俺を拾った時に、俺の近くに落ちていたらしい。
「それじゃ、行って来るよ。曹操、秋蘭」
「兄さん!!」
「はい。いってらっしゃいませ」
俺は妹の声を無視して、そのまま千華さんの待つ城門へと向った。
「・・・ねぇ、秋蘭。討伐命令なんていつでたの?」
「先ほどです。民から賊が出たとの報告を受けまして。香華様が将を曹鼎様に、副将を一刀様に任命して向わすところです」
「・・・・そう」
「どちらに行くのですか?」
「母様の所にいくのよ」
「しかし、一刀様もう討伐へ向われています。何ゆえ曹嵩様のところへ?」
「秋蘭。あなたは兄さんの家臣でしょう。今の貴方に関係ないわ」
「・・・申し訳ございません」
「私も少し言いすぎたわ。ごめんなさい」
「いえ。ところで姉者はどちらに行かれたのでしょうか?」
「春蘭なら今頃「華琳様。どこですか~~」私を探しているわ」
「はぁ~~~。姉者」
秋蘭はその場で頭の上に手を置いて溜息を吐いた。私はそれを見ながらゆっくりとその場を後にした。
「母様。ひとつ聞きたい事があります」
「なにかしら?」
「兄さんのことです」
「!?」
私が兄さんの名前を出すと母様は少し暗い顔をしてしまった。
「・・・まだ、真名を言われないのですね」
「はい。どうして、兄さんは私の真名を呼んでくれないのですか?」
「おそれく・・・けじめだと思います」
「!? な、なんのけじめですか」
「それは今の私には言えません。しかし、華琳。これだけは覚えといて。あなたのお兄さんは貴方のことを嫌っていません。むしろ逆に愛している事を」
「なら、どうして真名を・・・」
「貴方も辛いでしょうが、一刀の方がもっと辛いのです。だから、今は兄を信じて待っていてあげなさい。お母さんからはこれ以上言えません。下がりなさい」
「・・・はい」
私は母様に言われるままに部屋を後にした。その後どのようにして今日を過ごしたのか全く覚えていない。あんな悲劇があったせいで。
第一話 完
「三作目。投降です」パチパチパチ
「まさか、私に兄が出来るなんて」
「曹仁は本当は曹操の弟なんですが、ここでは兄にしてみました」
「それで、どうして真名が一刀なのかしら?曹家は皆『華』を付けるのでしょう」
「それは、お話を呼んでくれたら分かります。それとこの作品は月間感覚なんで更新が遅いです。それだけは皆様の御両所ください」
「なんだか、あやふやね」
「まぁ~~~いいじゃありませんか。それでは皆さん。残りの二つもろもろよろしくお願いします。それではBY]
「バイ」
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曹家。それは後漢時代より名を挙げてきた一族。特に三国の一つ魏を作り上げた曹操はずば抜けていた。そんな曹操には実は兄が存在していた。これは、その兄が曹操を補佐し三国を統一するお話