はじめに
この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です
原作重視、歴史改変反対な方
ご注意ください
はたしてこの状況は何なのだろうか?
袁本初…麗羽は自身を取巻く現状に対して首を傾げていた
彼女の眼前
背を向けて立つは高覧
彼女がかつて最も信頼し、傍に置いた男が腹心
彼女は自身が主を
自身が周りを取り囲む兵達を遮るように仁王立ちし、弩~黄麟を構え周囲を油断なく睨んでいた
彼女の肩越しに見えるのは英心
高覧が構えた弩の弓の先端が鼻先に達さんというのにその表情は余裕、ヒュウ♪と口笛を吹き尚も嘲笑を浮かべていた
「化けの皮が剥がれたね高覧…で?どうするのさ?」
肩を震わせくくくと喉を鳴らす英心、その姿に釣られるように周りを取り囲む兵達もまた口元に薄ら笑いを浮かべジリジリと近づきだす…と
「…動くな」
少女特有の甲高い、しかし殺気を込めた声が凛と響くと英心は右手をスッと上げ、それを見た兵達の足が止まる
場を覆うは束の間の静寂…息を呑む静寂
先に口を開いたのはまたも英心、やれやれといった風に肩を竦めておどけてみせる
「往生際が悪いね君も…『彼』も」
口振りとは裏腹にこの場を窮地だとは微塵にも感じさせぬ余裕の表情
上げた右手を胸の前へと持っていき腕組みをして高覧を見上げる
無邪気に笑ってみせる英心を睨む高覧は目を細めフンっと鼻を鳴らす
「あなたみたいな高慢ちな餓鬼の思い通りに行くほど世間は温くないのよ」
「まるで解りきったような口を聞くね」
少年に有るまじき人を食ったような笑みを浮かべる英心とそれを睨む高覧
再び訪れた沈黙を破ったのは当主のつぶやいた一言だった
「てゆうか…何ですの一体?」
麗羽の言葉に逸早く反応を返したのは英心、噴き出した笑いが治まることなく腹を抱えて笑いだす
少年の反応に麗羽がムッとするのが更に可笑しくて仕方がない
眼尻に浮かんだ涙を人差指で拭い高覧の背の向こうの人物へと視線を向け歪んだ口元を結び直すように咳祓いをし
「貴女という人はどうしてこうも…否、故に貴女か」
意地の悪い笑みを浮かべる様に頭の上に?マークが浮かぶ
全くもってこの状況が理解できない
眉間に皺を寄せ不機嫌を表情に浮かべ目の前に立つ二人に目配せをする
説明なさいと
「謀反です、主」
「謀反ですよ、袁本初」
主に対し背を向けたまま高覧が答え
さも何事でもないかのように英心は満面の笑みで答えた
「便宜があるなら聞きましょう」
それまでの彼女とは違う
低い
怒りを含んだ声が英心へと向けられる
「この袁本初に対し狼藉を企てようだなんて…さては素晴らしい最もな弁が伺えるのでしょう?」
彼女を視線を受け尚も涼しい表情を保つ少年の口から紡がれたのは
「狼藉も何も…僕は最初から貴女の味方ではない」
『否定』
「僕は最初から貴女を支持などしていない」
握った拳が怒りに震える
「僕は最初から貴女を覇に導こうなどと考えていない」
彼女の双眸が大きく見開かれる
「僕は僕のために存在しているのであって貴女のために在るのではない」
許さない
「袁家など所詮は木の枝と同じ、例え一瞬に羽を休めに留ったところで」
こんな奴を私は…
「僕にはみすぼらし過ぎて性に合わない」
あー清々した♪
そう英心が繋げた途端に彼女は叫んでいた
「その狼藉者を斬り捨てなさい!」
「ところがそれが出来ない」
怒りが熱となって頭に昇るのを遮るように冷たい言葉が彼女に突き刺さる
「視界が狭い貴女に教えて差し上げるがこの場には僕の味方しかいない」
見渡せば誰もがその言葉に頷き同じように冷めた視線が突き刺さる
「故に彼女は動けない」
英心に向け弩を構えている高覧から舌打ちの音が麗羽の耳に届いた
「さて…袁紹殿が状況を理解したところで本題に戻ろうか?」
再び高覧と英心の視線が交錯する
「僕としては曹操に手土産が渡せればそれで良い、ああでも…首だけなら持ち運びも楽かな?」
英心の舌がゆっくりと自身の唇の上をなぞりその口元が更に歪んだ
ゾクリ
少年の声色に鳥肌が立ち、無意識に自身の体を抱きしめる麗羽
この少年は…どこまで!?
我が身に訪れるやも知れぬ光景が脳裡に浮かび、先程とは別の意味で体が震えだす
(怖い)
蒼白になる彼女を見て
「ようやくご理解頂けましたか」
(斗詩、猪々子)
「貴女の味方は今ここにいないことを」
(何故私の傍にいないのです)
「貴女を救える者は今ここにいないことを」
(何故私から離れたのです)
「貴女は今独りだということを」
(比呂!比呂!!)
少年の言葉に膝を付きそうになったその時
「…が……い」
それまで沈黙を続けていた高覧の呟きに英心が首を傾げる
「は?」
「視界が狭いと言ったのよ…餓鬼」
笑みを浮かべていた表情が一変、眉を顰める
「一体お前は…」
英心が問いかけたその瞬間
「「「「「うあああああああああああ」」」」」
地面を揺らすような怒号と地響きが起こり
一瞬
ほんの一瞬
高覧を除いたその場全員の意識が彼女と麗羽から逸れた
「味方だけが助けになると思うなんて浅はか過ぎるのよ」
意識を再び高覧に向けた英心の目に映ったのは彼女が引き金を引くその様
「くっ!?」
とっさに頭を逸らして矢を交わした直後、否、同時に
「ごはぁっ!」
高覧が繰り出した蹴りが少年の溝に入り、彼女のヒールがめり込む
「逢紀様!?」
バヒュッ!
遅れて動きだした兵の眉間を彼女から放たれた矢が突き刺さり、それを見届けるまでもなく彼女は次の動きを始めていた
「袁紹様!此方へ!」
同じく呆気にとられていた彼女が返事をするまでもなくその手を取り駆け出す
「貴様あ!」
ようやく我に返り二人の行く手を塞がんとする兵達に向けて更に引き金を引く高覧
バヒュッ
バヒュッ
『黄麟』
弓を始めとする飛び道具を武器とする部隊においても彼女だけが持ち得るその弩は
部隊を同じくする他の兵達の弩のそれとは違い連射が利く唯一の物
(悠…弓も引けんコイツを俺の処に任されても困る)
(うーん…じゃあちょっと特別な物を彼女に差し上げましょうか)
たて続けに放たれた弓が次々と目の前を遮る兵達の眉間へと突き刺さり、崩れていく
そして、予め近場に繋いでいた馬へと飛び乗ると麗羽を体ごと引き寄せた
「しっかりお捉り下さい!」
「高覧貴女は!?」
駆け出す馬の背でようやく麗羽が驚嘆の声を上げる
「悠様は開戦時から今日この日を予見しておられました…先ずは陣からの脱出を!」
「田豊さんが!?」
本陣へと奇襲を仕掛けた魏の兵と英心の兵が入り乱れる中を一心に駆け抜けてゆく
既に小さく遠ざかる二人の姿にギリリと奥歯を噛締め、憤怒の形相で英心が叫ぶ
「何をしている!?あの二人を追え!!」
言うが早く自身の馬を駆り二人を追う英心とその部下達…そして
「逃がすな!奴らの先に袁紹はいる!」
秋蘭を長とした魏の奇襲隊がそれを呑みこまんと駈け出した
「さあて、ここからが本番ですよ」
遠く響く馬の蹄の音
夜の闇に染まり始めた空を見上げ
悠は目を細めた
あとがき
ここまでお読み頂き有難うございます
ねこじゃらしです
どうやらTINAMIのメンテには間に合いましたな
つってもほとんどの人が明日の昼近くまで見ることができないわけですがwww
まあ、いいか
それでは次の講釈で
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第56話です。
タイヤ一つ交換する毎に休憩が必要な今日この頃…