No.186700

孫呉の龍 第一章 邂逅 前編

堕落論さん

どうも10日弱程開いてしまいましたが「孫呉の龍」本編第一章 邂逅 前編 投稿させていただきます。

この作品を読まれる方々に…この話は真恋の魏√アフターにおける呉の話をオリ主中心で展開していく話となっております。背景も登場人物等も私の観念世界での話となっておりますので、その様なモノが苦手な方は御遠慮して頂いた方が宜しいかと思われます。
それでも読んで良いよと思われる優しい方は一時の間お目汚しでしょうがお楽しみくだされば幸いです。

2010-11-26 19:25:25 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2811   閲覧ユーザー数:2492

雨が降っている、その雨に濡れながら俺は見た事の無い男を腕の中に抱いていた。

 

俺の腕の中の男は華美な戦衣装に身を包んでいたが、その戦衣装は返り血と左肩に深々と刺さった矢による出血でどす黒く変色していた。

 

 

 

「伯符っ!!伯符っ!!おいっ!!しっかりしろっ!!」

 

「ああ、――――か……、どうやら天は俺を見放したみてぇだな……」

 

「何、馬鹿な事言ってやがんだっ!!天が、お前を見放すもんかよっ!!ここは一旦退いて兵を立て直すぞっ!!」

 

「無理だ―――。テメエの身体はテメエ自身が一番良くしっている。俺はもう駄目だよ。」

 

「ざけんなよっ!!伯符!!公瑾や俺達との約束はっ!!皆で天下取るんだろうがよっ!!」

 

「すまねえな―――。後の事は公瑾や子布と共に……それと仲謀を…弟の事と国の民達の事をくれぐれも頼ん…だ…ぞっ。」

 

「伯符――――っ!!俺を、俺を措いて逝くなぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

冷たくなっていく男の身体を抱きしめながら俺は漆黒の天に向かって叫んでいた……

 

ピピピッピピピッピピピッ…ピッ

 

けたたましく目覚ましのアラーム音が耳元で鳴り響くのを手さぐりで止めて、伸びをしながらベッドから起き上がる。

 

「うぅ、うっ~~ん、はぁぁ、眠いっ…しっかし、またあの夢か……最近またよく見るようになったなぁ。」

 

誰に聞かせるでもない独り言の様に呟き、顔を洗うために学生寮の自室から出て洗面所に向かう。彼の名は子義 龍虎、聖フランチェスカ学園に通う高校生である。

 

(段々と夢が生々しくなってくるなぁ……以前は目が覚めたら殆ど忘れていたというのになぁ。)

 

歯磨きをしながら、幾分寝惚けた頭で先程迄の夢を思い出す。

 

(伯符って事は『三国志』に出てくる呉の孫策なんだろうけど、何で俺が孫策と一緒に居るんだろう??)

 

ここ数ヶ月、今の様な夢をよく見る様になった。ある時の夢では伯符と呼ばれた、その青年と一対一で真剣勝負をしていたし、またある時の夢では戦場で多くの敵がいる場所に龍虎が単騎で突っ込んで行くと言う、かなり物騒なモノもあった。

 

(やっぱり、孫策は俺に話しかけているんだろうなぁ……でも何で肝心の俺の名前だけはハッキリと聞こえないんだろう??)                              

 

龍虎の見る夢の中では伯符と呼ばれる青年が笑顔で話しかけて来るし、その仲間達との会話もあったりするのだが、何故か自分の名前の部分だけが龍虎には聞こえない。

 

(それに以前から俺の中にある違和感も最近は酷いし……俺、どうかしちまったのかなぁ……)

 

龍虎の感じる違和感、それは自分の中に自分では無いもう一人の誰かがいる様な奇妙な感覚。時に自分の身体が自分の物で無い様な動きをしたり、自分が知らない様な事象を知識として持っていたりする感覚である。

 

(でも、その違和感の原因が最近見る夢にあるのは間違いなさそうだな。なんで『三国志』の話になるのかは分かんないけど……)

 

確かに『三国志』や『三国志演義』も読んだ事はあるし、それらをモチーフにしたゲームもやった事はある。しかし、それだけの事であって、自分自身が物語の登場人物となって云々という妄想など皆無と云ってよかった。

 

「まっ、あれこれ考えてもしょうが無ぇしな。朝飯食って、朝練に行こう。とりあえず部室の鍵を持ってと……」

 

龍虎は机上にあった部室の鍵をポケットに突っ込み、自分の弓が入った袋と学生鞄を持つと部屋の鍵を閉めて、食堂へ向かうのであった。

 

 

 

龍虎が部屋を後にした直後、誰も居ない筈の部屋に突然人が現れる。いや、まあ、人であろう筈なのだが、どうも人とは認めたくない様な物体が妙に腰をくねらせながら部屋の真ん中で身悶えていたりする……

 

「あっらぁ~ん♪あの子が覚醒するのは、まだまだ先の筈なのにねぇん。これも御主人様が、こちらに戻って来た影響かしらん♡ そ・れ・と・も『外史』を越えて迄も強く引き合う絆がもたらす奇跡なのかしらん♪」

 

その物体……いやいや、人物は、それだけ言うとまた空間に溶ける様に消えていった。

 

静寂な空気を裂く様に、一筋の軌跡を残しながら弓矢が的に向かっていく。それは、いとも簡単に的の中心を射抜き突き刺さる。

 

(よし、ラスト一本!!)

 

これもまた正確に的の中心を射抜く。近的とは言え約30m程の距離があり、その上的は僅か36㎝しかない、しかし龍虎は矢を射だしてから一時間余り経つが、最初から一本も的を外してはいない。

 

(ふーっ、疲れた。)

 

朝の清々しさの残る弓道場で、用意してあった矢を全て射尽くした龍虎は、射場の板の間に胡坐を掻いたままで弓の手入れをしながら一息吐いた。

 

(さて、そろそろ道場の掃除をしなきゃぁな。)

 

まだ一般の生徒達が登校してくるには間があるが、諸々の片付けを済ます頃には丁度良い時間であろうと思い、龍虎は雑巾片手に道場の清掃を始めた。

 

しばらくして射場の雑巾掛けを終え、弓道場の鍵を閉め部室に向かおうとした時に、向かいの剣道場から裂帛の気合が籠められた声が聞こえてきた。

 

(んっ?剣道部も朝練やってんのか?恐らくは3年の不動先輩だろうけれど、打ち合っている竹刀の音だと好い勝負みたいだな。)

 

剣道場から漏れてくる声を聞きつつ、女性にしておくには惜しい程の実力を持つ剣道部の主将の姿を思い浮かべる。

 

(でも不動先輩と、此処まで同等に打ち合える部員なんて、うちの剣道部にいたっけかなぁ?)

 

龍虎の記憶では不動と練習でも互角に打ち合える者など、剣道部には一人もいなかった筈である。それ故、剣道部の大きな試合の前には、不動の練習相手として、弓道だけで無く武芸全般に秀でている龍虎が駆り出されるのが、いつもの事だった。

 

(誰か新しい部員でも入ったのかなぁ?それとも専属のコーチでも雇ったかな?何にせよ気になるから、ちょっと覗いてみよう。)

 

そう考えた龍虎は道着のままで剣道場に向かい歩きだそうとした、その途端に龍虎の周りの風景が突然色を失った様になり、それと同時に龍虎を強烈な立眩みが襲う。

 

「うっ、うぅっ、ぐがっ……なっ、何だっ、これは……」

 

立眩みと共に、龍虎の脳裏に自分の記憶では無い、他の誰かの記憶が奔流の様に流れ込んでくる。

 

満月の夜、その月光を映しつつ流れる小川で一組の男女がいる。連れであろう男性に背を向けた女性は顔はよく分からないが金髪の少女だった。何故か少女の肩は小刻みに震えている。一方男性は驚いた事に自分と同じ聖フランチェスカの制服を着ている。二人は何事か会話をしているようであるが、龍虎には何も聞こえない。暫くすると男性の姿が徐々に霞み始め、そして完全に消えてしまった。何故か男性が消える間際の最後の台詞だけがハッキリと龍虎には聞こえた。

 

「さようなら……愛していたよ華琳。」

 

龍虎と同じ聖フランチェスカ学園の制服を着た男性は、確かにそう言った。そして消えて行く男性の顔を確認した時、より一層の驚愕が龍虎を襲った。

 

「一刀…なのか……何故……お前が……」

 

 

脳裏に浮かんだ映像が急に消え、辺りの景色が元の色を取り戻した所で立眩みは止んだ。四つん這いの状態で荒い息を整え、自分自身を落ち着かせた後、ゆっくりと立ち上がった龍虎は先程脳裏にフラッシュバックした映像の事を考える。

 

「何で……アイツが…消えていくって……でも…どうして……」

 

未だに正常な思考が出来ずに言葉が上手く出て来ない、先程までの立眩みは止まったが、精神的に言い様の無い程の疲れが有り、このまま直ぐにでも倒れてしまいそうな気さえするが、龍虎の内の何かが剣道場に行けと告げる。まるで何かに憑かれたかの様にフラフラとした足取りで剣道場に向かった。

 

ふらつきながらも剣道場に着いた龍虎は、二人の邪魔にならぬ様に、極力気配を消して開いている入口迄行き、中の様子を窺う。

 

(やはり不動先輩だったか、しかし驚いたな、あの不動先輩があれほど息を切らせているなんて……相手は…一刀なのかっ!!)

 

龍虎から見て左側には朱塗りの胴の不動が中段の構えを取っているが、微妙に剣先が揺れている。対して一刀は不動と同じく構えは中段であるが、かなり余裕がみてとれる。

 

「セェェェェェェェェェイッ!」

 

不動の連撃が始まる。相手の籠手をを窺いながら、変化をつけて面に行き離れ際に貫き胴を打つ。

 

(流石不動先輩、打ち込みが早くて正確だ。けど全て浅いな。いや、浅くは無いな。普通の奴なら決まっているのか…一刀が全ての打撃を当たる瞬間に微妙にズラシているんだ。)

 

龍虎が一刀の動きに驚いていると、その一刀の構えが中段から八双の構えに変化した。不動の構えは変わらないが、二人の間に一気に緊張感が高まってゆく。

 

(八双か…不動先輩の打ち込みを誘う為の変化だろうけれど、でもさっきよりは不動先輩の息が整っているし、お互い、次の一撃が勝負だな。)

 

じりじりとお互いの距離が詰まっていくのと比例して、お互いの闘氣も急激に膨れ上がる。その刹那に相手を誘うよう不動の剣先が沈むと次の瞬間一陣の風の様に、不動の竹刀が相手の左腕を払いに行く。対する一刀は最小限の動きで、腕を払いに来た不動の竹刀を紙一重で避けると、流れる様に己の竹刀を不動の左側面に叩き込もうとする。払い上げを避けられ両腕が伸びきった不動は咄嗟に左手一本で一刀の左側面を狙う。

 

(アイツ、不動先輩の動きが全部見えているのか?紙一重の様に見えるが、かなり余裕を持って先輩の切先を見切っているじゃないか。それにしても一刀の動きが何処か不自然だな。)

 

「キェェェェェェェェェェェイッ!!」

 

「ウオォォォォォォォォォォォッ!!」

 

裂帛の気合と共にお互いの側面を打ち合うようにして体が入れ替わると、二人は荒い息を吐きつつ、そのまま暫く相対したまま動かなかった。そしてどちらからともなく竹刀を下し互いに礼をして稽古の終了となった。

先程迄の倦怠感もいつの間にか消えて、龍虎は二人の稽古に目を奪われていた。そして二人の稽古の終了を見届けると同時に思わず声が出てしまう。

 

「お見事っ!!良い勝負を見せてもらいました。」

 

拍手をしながら道場の入口から龍虎が二人に声を掛けると、二人共驚いた様に龍虎の方に振りかえる。

 

「いやあ、子義君でござったか、これは恥ずかしい所を見られたでござるな。」

 

面を外しながら不動が整った顔立ちに苦笑いを浮かべて近付いて来る。

 

「そんな事ないですよ、最後の数合しか見る事が出来ませんでしたけど、あそこまで真剣な不動先輩は久々に見ましたよ。それも相手が一刀じゃぁないですか。何かの間違いかと思っちゃいましたよ。」

 

勤めて軽い感じで不動には応えるが、一刀に対しては言葉に出来ない違和感を抑えきれない龍虎である。

 

「酷ぇなぁ…クラスメートに向かって、傷付いちゃうよ俺。」

 

面を外しながら人懐っこい笑顔を浮かべて一刀もこちらに来る。

 

「いやいや、最近の北郷君の成長は目を見張るモノがあるでござるよ。立会中に少しでも気を抜けば、それがしが打ち込まれるでござるからな。」

 

「へぇ~そうなんですか、今までの一刀からすれば俄かには信じられんなぁ。」

 

「もともと御実家が剣術道場をされているので基礎は出来ている筈でござろうから、このぐらいは出来て当然とい言う事ではござらんか。そりゃぁ以前は相当手を抜いていた様に見えたでござるからなぁ。」

 

「何言ってるんですか、俺にはそんな素質なんて……それに今の稽古だって先輩について行くのが、一杯一杯ですよ。」

 

一刀が勘弁してくれと言うように不動に応えているのを横目で見ながら龍虎は、全く別の印象を持っていた。

 

(先程の動きが一朝一夕で身に付く筈がない、あれだけの動きをするには達人クラスと真剣に手合わせを長期に亘ってしてもらうか、己の命を遣り取りするかの様な強烈な事でもない限り、あそこまで冷静に相手の切先を見切れる力はつかない。以前に手合わせをした時には、全くそういう気配を感じなかった。それに先程俺に流れ込んできた一刀らしき奴の映像。一体どういう事だ。)

「さて、そろそろ他の生徒達も登校してくる頃でござろう、我々もそろそろ……」

 

一頻り三人で談笑した後に不動が退去の言葉を出す。

 

「そうですね、じゃぁ俺は道場の掃除をしてから行きますので、先輩は先に部室の方へどうぞ。」

 

「片付けならば、それがしも手伝うでござるよ。北郷君。」

 

「いえいえ、先輩に無理を言って朝練付き合ってもらってるんですから、掃除ぐらいは俺にやらせて下さい。お願いします。」

 

「しかし、それでは……」

 

自分も使用した剣道場の後片付けを後輩だけにやらすのが不満なのであろう不動に龍虎が声を掛ける。

 

「不動先輩、一刀の言うとおりにしてやってください。それに掃除ならば一人でなくて俺が一緒にやりますし、ちょっと一刀に話もありますから。」

 

「むぅぅっ、些か不本意ではあるが、北郷君と子義君がそうまで言うのであれば、御厚意に甘えさせてもらうでござる。この埋め合わせは必ずさせてもらうでござるよ。」

 

渋々と言った表情を残しながらも不動が着替えに部室の方へ去って行く。

 

「助かったよ、子義。でも悪いなぁ、無理に手伝わしちまったみたいで。」

 

道場を出て行く不動に目礼をした後、頭を掻きながら一刀が済まなさそうに龍虎に言う。

 

「なに、別に構わんよ、今迄見た事も無い様な一刀を見せてもらったんだ。このくらいの礼は当然の事さ。」

 

「何だよ、そりゃぁ??」

 

「言葉通りの意味だよ。さっ、時間も余り無いんだし掃除をしちまおうぜっ。」

 

「何か納得がいかんなぁ~……まっ良いかっ。じゃぁ俺は床の雑巾掛けをするから、子義は道場の窓の戸締りヨロシク!!」

 

「了解!!戸締りしたら俺も逆側から雑巾掛けをしよう。」

 

お互いの役割分担が決まると二人はテキパキと道場の片付けを終わらしていく。

 

「ところで子義、さっき俺に話があるって言ってたけど、何の事なんだ??」

 

ほぼ片付けが終りかけた頃に一刀が龍虎に声をかける。

 

「んっ、そうだな色々聞きたい事があってな……」

 

「聞きたい事??」

 

「ああ、そうだ。どのようにして一刀が、あの不動先輩と互角以上に張り合えるようになったのかってのが一つ。」

 

「あぁ、やっぱりその事か…」

 

「あと、二人の立会を見ててずっと違和感を感じていたんだが、一刀は態と自分が不利になる様に動いている。これは何故なんだってのが一つ。」

 

「うっ、そんな所迄分かるんだ…」

 

「それに、ここ数カ月で以前の一刀からは感じられなかった氣の流れが…と、言うよりは以前の一刀では到底出せない様な氣が発せられているのは何故かと言うのが一つ。」

 

「子義、お前って氣の流れが見えるのか?」

 

「それと、これが一番聞きたい所なんだが……あの金髪の少女。華琳って何者だ??」

 

そこには何か信じられない物でも見たかの様に茫然とした一刀の顔があった。

 

 

 

 

……to be continued

あとがき……のヨウナモノ

 

 

どうも今晩わ10日程ぶりですが皆様お元気でしょうか?堕落論です。

「孫呉の龍」本編第一章 邂逅 前編 をお届けさせて頂きました。

う~んいつにもまして説明文が多い様な……(汗)あいも変わらず文才が決定的に足りていない事を痛切に感じますねぇ……(涙)

見ての通り第一章はオリ主の龍虎君と一刀君の出会いから一刀君が望む、あの『外史』に帰還するまでを書いていく予定でございます。文中にあのピンクビキニパンツの、あのお方も友情出演されていましたがww今後は重要な役処で再度登場していただこうかなとは思っております。

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

とりあえず第一章は多少シリアス場面が多くなると思います。第二章以降で一刀君は龍虎君と共に魏に帰還を果す予定です。それ以降は、オリ主は呉、一刀君は魏で拠点話を挟みつつ進んで行く事となりますので、よろしかったら皆様お付き合いくださいませ。

 

また、このssに対するコメント、アドバイス、お小言等々お待ちしております。「これはこうだろう。」や「ここっておかしくない??」や「ここはこうすればいいんじゃない」的な皆様の意見をドンドン聞かせていただければ幸いです。皆様のお言葉が新米小説家を育てていきますのでどうか宜しくお願いいたします。

 

 

ではでは次回の講釈でまたお会いいたしましょう。 堕落論でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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