No.185233

みらいけ 才編

戦国さん

みらいけ

未来才の過去の話を投稿します

皆さん暖かい目で見てください

2010-11-18 10:06:47 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1131   閲覧ユーザー数:1060

 

一人の青年は月を見ていた

 

「満月か・・・・・いい月だ」

 

それは、とてもきれいで・・・・そして、暗い街を明るく照らしていた

 

「・・・善弥・・・・ジイ様・・・・俺、やっと家族を見つけた」

 

青年の名前は未来才

 

現在では未来孤児院の一人として暮らしている

 

「・・・・そう言えば、あいつらとであったのもこんな月をしていたな」

 

彼は、いつしかの記憶、まだ数年しか経っていないがそれでも懐かしい記憶を思い出した

 

 

 

 

未来才という人物が存在したのは今から五年前

 

 

 

未来光が孤児院にやってきてから一年がたつ頃だった

 

 

 

 

そこは、とある豪邸だった

 

「才お坊ちゃま・・・おはようございます」

 

才が起きるとそこにはいつものように執事の老人が立っていた

 

「ああ、おはよう善弥(ぜんや)」

「お召し物は準備しております・・・・朝食はすぐに持ってきさせますので」

「いや・・・着替え終わったら、俺が行くよ」

「しかし・・・」

「善弥・・・俺は今日から十五になるんだぜ・・・もう直、高校生・・・子供じゃないんだ」

 

才はゆっくりベッドから起き上がり、首を振った

 

「おお、この善弥・・・地天家(ちあま)に仕えて三十年・・・才お坊ちゃまが成長された瞬間を見られて本当に感激です!」

 

老人はポケットに入れていたハンカチを取り出し号泣した

 

「おおげさだな・・・・それで、親父とお袋はどうした」

「・・・・それが、朝早くから出かけておりまして」

「また、本家の所か」

「・・・・・はい」

「まあ、良い。それより、車の準備をしておいてくれ。朝食は車で食べる」

「またですか、学校が始まるまでまだ二時間はありますが」

「良いさ、今日も早く登校した気分なんだ」

 

 

これが、才の日常だった

 

 

親は、仕事で家にいることはめったにない

親からは愛情を注がれる事無く、物心がついた頃はすでに親は仕事で忙しく彼と会話する事は無い

彼にとって、唯一家族と認めているのがそばに居る老人、善弥と才の祖父、平成家の元当主、平成帝(みかど)のみである

 

彼のそばには常に使用人がおり、毎日のように英才教育を受けさせられていた

才はその生活に不満を持っていた

自分は将来、親の後を継ぐことを義務付けられている事に不満を持っていた

 

「善弥・・・俺は本当に平成家の当主にされるのかな」

「才お坊ちゃまが望んでおるのなら、私は全身全霊でお坊ちゃまを手助けします」

 

平成家とは、現在世界企業の三本指に入るほどの巨大会社

才がいる地天家の当主と平成家の当主は兄弟

誰もが平成財閥の次期党首は平成財閥の子供が継ぐだろうと思っている

しかし、才にもその平成財閥を継ぐ権利がある

 

「なあ・・・・善弥・・・俺は正直継ぐ気は無いんだ・・・本家を吸収しても俺は何も出来ない・・・平成家の姫だって分かっているはずだ・・『平成家と地天家は互いに助け合うから『地平天成』となる』・・・・ジイ様が言ってた言葉がよくわかるよ・・・・なのに、親父たちはつまらない事に意地張って・・・喧嘩なんかして・・・・・」

 

現在、平成家と地天家では度々衝突を繰り返している

その原因となるのが次期当主を決める事

そのため、才の両親は度々本家に足を踏み入れて宣伝をしているのだ

 

 

才は着替え終わってベランダの空を見上げた

 

「今日はいい天気だな・・・・月がきれいに見れそうだ」

「・・・・お坊ちゃま・・・・聞き流しても構わないですが聞いてください」

 

善弥は真面目な顔で才を見た

 

「才お坊ちゃまには人をまとめる才能があります・・・・それは私だけでなく元当主である帝様も認めています・・・ですから私は才お坊ちゃまに平成家の継ぐ素質があると確信しています・・・・・平成家の宝姫(ほうひ)お嬢様と手を組むのも素晴らしいお考えです・・・しかし、やはり才お坊ちゃまこそ、上に立つ資格があると思います」

 

「・・・・善弥・・・悪い・・・やっぱり俺にはどうすれば良いのか分からないや」

「・・才お坊ちゃま」

 

才の頭の中は完璧に悩みでいっぱいだった

しかし、そうなったのは今日だけではない

親から常に『お前は平成家の当主になる男だ』など言われてきた

その度に彼は悩んだ

 

自分の将来を決められている事に何故か不満があった

しかし、その答えがよく分からなかった

 

「さて、車を呼んでくれ。準備が出来た」

「かしこまりました」

 

 

学校

 

そこは、唯一才が家以外の場所で落ち着く事が出来る場所

 

「ありがとうな、善弥・・・・帰りはいつものように足で帰るから」

「は!」

 

才が乗っていたリムジンはそのままUターンして家に戻った

 

「オッス!才!」

「雷牙か・・・ウッス」

 

才がリムジンを見送ると、後ろからバンと背中を叩かれた

才が振り向くとそこには友人の天文雷牙(てんぶん らいが)がいた

 

「今日は早いな・・・・いつもの朝錬か?」

「ああ、他の奴らももう来ている・・・・お前も参加するか・・それとも、いっそのこと入部するか」

「・・・・いや、結構・・・・・まあ、がんばれよ」

「応!・・・じゃあ、授業でな」

「ああ」

 

そう言って、雷牙は剣道部へ向かい、才は校舎に向かった

 

「部長、さっきのは誰?」

「ああ、俺の同級生で・・・・いずれ、俺たちと一緒に全国大会に出場する奴さ」

「ふーん」

 

剣道部員は物珍しそうに才の後姿を見ていた

 

才は校舎に入り、そのまま屋上へ行った

 

そこには誰もいなかった

 

「やっぱり、ここは落ちつくな」

 

才はそのまま、寝そべり空を見上げた

 

「いい空だ・・・・雲一つ無い空なんて見たことあったけな」

 

彼にとって、空を見る事が毎日の楽しみにしていた

 

「そういえば、そろそろ、あの時間だな」

 

才はそう言うと、起き上がりすぐ近くの病院のほうへ見た

正確には病院の隣にあるやや大きめの家だった

 

「いたいた」

 

才が見るとそこには一人の女性が五人ぐらいの子供たちと楽しそうに食事をしていた

 

それは、平凡な家庭ではよく見る光景なのかもしれない

しかし才にとって、あそこにいる家族が自分の理想な家族に見えた

 

彼は知っている・・あそこの家族は本当の家族ではない全員孤児であることを

 

それでも、羨ましかった

 

自分の家族よりも、家族ではないあの家の人たちのほうが断然に幸せな家族に見えた

 

「はは、今日もあの人が暴れている」

 

才はこの孤児たちの日常を見る事が楽しかった

 

「やっぱり、良いな・・・・・家族って」

 

そして、子供達が家を飛び出し学校へ向かった

 

「さて、俺も勉強がんばるか」

 

そう言って、才は自分のクラスに向かった

 

 

 

そして、いつも通りの授業が始まり、いつものように終わりの鐘が鳴った

 

「じゃあな、雷牙・・・部活がんばれ」

「ああ」

 

そう言って,才は早足で出口に向かった

 

そんな時、一人の少年とぶつかってしまった

 

「お、悪い・・・大丈・・・お前・・・・」

 

才は驚いた

 

ぶつかった少年はいつも見ている孤児院の少年だった

 

「あ、すみません・・・・・先輩・・・であっているよね・・・三年生のバッチをつけているし」

「ああ、お前一年生か」

「はい、未来光と言います・・・・すみません、今急いでいるので」

 

少年は一度お辞儀をして外に出た

 

「・・・あいつ、ここの生徒だったんだ」

 

才は少年の後ろ姿を見た

 

それは、とても明るく、そして生き生きした姿だった

 

「・・・やっぱり、羨ましいのかもしれないな」

 

そんな時、才の携帯から着信音が鳴った

 

「善弥?・・・・もしもし、どうした・・・・・・・親父とお袋が!」

 

 

地天家

 

「親父!お袋!」

 

才が駆け込むとそこには両親の遺体がベッドの上で寝ていた

 

「何で・・・・・・・・・なんでだよ!!!・・・なんで自殺なんかしたんだよ!」

「・・・・旦那様が・・・・・無茶な企業で失敗してしまい・・・・それがショックで・・・奥様と共に・・・自殺を」

「・・・・・・・・・バカだろ!一度や二度の失敗でなんで自殺を・・・・・・・」

 

才の頭は真っ白だった

 

親から愛情も注がれないで育ってきた才にとって、両親は他人に等しい存在だった

 

だが、胸が痛かった

 

それは、おそらく家族というものを築きたかった思いがそうさせたのだろう

 

「・・・・・善弥・・・本家は何て言ってた」

「・・・はい、才お坊ちゃまを養子として引取り・・・・地天家の企業を全て平成家が吸収する・・・と」

「・・・そうか・・・・他の使いの者達は・・・・・・善弥はどうなる」

「・・・・は・・・・地天家の者達は平成家の企業に移されます・・・使用人たちも同じです」

「・・・・・善弥は?」

「私も本家から声をかけられています・・・・・できれば才お坊ちゃまの執事として働かしていただきたいかと」

「・・・・・・・・・少し、出てくる」

「・・・才・・・・お坊ちゃま」

 

 

 

 

才は暗い街を一人で走っていた

 

「畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、」

 

ただ、がむしゃらに

 

どこに走っているのすら考えていなかった

 

そして、たどり着いたのが

 

「・・・・ここは・・・・・『未来孤児院』・・・・・」

 

 

才が憧れていた家族がいる場所だった

 

 

 

「馬鹿だろ俺・・なんで、ここに来ているんだ?・・・・・馬鹿じゃないかよ」

 

才は家の前に立ち、眺めていた

 

そこには、一般の家と比べたら大きめな家が建っており

それ以外は差異が無い

 

だが、家の中から聞こえる騒ぎ声はとても楽しく温かい気持ちにさせてくれた

 

「・・・・・行こう・・・・ここは俺みたいな奴が来るような場所じゃない」

 

そう言って、才はどこかへ歩いて行った

才がどこかに行った後、孤児院の扉が開き少年が外に出た

 

「あれ?・・・・・今、誰か家を見ていたような・・・『おーい、光、・・お前の番だぞ早くババを引け!』・・『皆、気をつけろ、院長がババを持っているぞ』・・あ、はーい、今行きます」

 

少年はそのまま、扉を閉め・・・暖かい家族の元へ向かった

 

 

まだ、彼等が再び会う運命はまだなのかもしれない

 

 


 
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