No.185112

真・恋姫無双 魏end 凪の伝 26

北山秋三さん

えー。とても閲覧注意です。
蜀ファンの皆様ごめんなさい。

2010-11-17 18:00:45 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5433   閲覧ユーザー数:4289

 

「申し訳ございません、桃香さま。ご主人様をお連れする事ができませんでした」

 

五胡の城の玉座の間では玉座に座る桃香の前に愛紗が跪き、俯いていた。

 

その場には朱里、鈴々、恋も顔を揃えている。

 

「愛紗ちゃん・・・」

 

静かな怒りを湛えた桃香の声が聞こえ、愛紗の肩がピクッと震えた。

 

「嬉しいのを堪えながら謝っても、全然まったくこれっぽっちも心が篭ってないよ?」

 

呆れたような声に「え?」と愛紗が顔を上げれば、愛紗の顔はにっこにこと満面の笑みだ。

 

「ぶーぶーぶーぶー!ズルイよ愛紗ちゃん!ご主人様に力いっぱい殴ってもらった上にキスまでするなんて!」

 

ぷんぷん!と怒り顔の桃香がむくれる。

 

「そうなのだ!ズルイのだ!こんなことなら鈴々がいけばよかったのだ!お兄ちゃんに会いたいのだ!!」

 

「愛紗さん・・・ズルイです」

 

槍をぶんぶんと振り回す鈴々は涙目だ。

 

朱里も腕を組んでむくれ顔をしている。

 

「・・・」

 

恋はしょぼーんとしたような顔だ。

 

「な、何を言う!これは私の役目だ!それに予想以上にご主人様が素晴らしすぎるのがいけないのだぞ!」

 

愛紗の顔が赤くなり、怒った様な声だがその表情は相変わらず蕩けたまま。

 

「まーねー。まさかご主人様が恋ちゃんのデータをインストールしちゃうなんて思わないもんね」

 

桃香が足をぶらぶらさせながら溜息をつく。

 

「さっすがお兄ちゃんなのだ!鈴々もびっくりしたのだ!」

 

目を真ん丸くする鈴々の横で朱里が腕を組んだまま、表情を曇らせる。

 

「でも・・・どうしてあれが発動したのでしょうか。それにあの時、確かに"予約システム"が発動

 

していました・・・そんな予約はしていない筈ですけど・・・」

 

考え込む朱里の言葉に少しうーん・・・と悩む桃香だったが、

 

「まぁ、ご主人様だからねー。女の子が絡めば何でもありじゃないかなー?」

 

と能天気に言う言葉に、誰も否定できなかった。

 

「しかし、『靖王伝家』を失ったのは私の失態です」

 

「だーかーらー。嬉しそうな顔のまま言ってもダメだってば」

 

桃香の呆れ声に愛紗が縮こまる。

 

「まぁ、でもぉー。これはこれで面白そうになったんじゃないっかなー♪」

 

「そうですね。どうやら『靖王伝家』は魏の国に持っていかれたようですし」

 

ウキウキとした表情の桃香に朱里が頷く。

 

「じゃあ、やっぱり魏を攻めるの一時ちゅうだーん♪

 

「そうですね。こんな面白そうな事をわざわざ妨害するまでも無いです」

 

「じゃあじゃあ、いつものように『にゃあ黄巾党』を使ってひっかきまわして頂戴!朱里ちゃん!」

 

「はい!お任せください!」

 

ビシッ!と桃香が敬礼するのに合わせて朱里もビシッ!と敬礼する。

 

「ふんふんふーん♪先に三国同盟をつぶしちゃわないとねー♪そうすればすればぁー♪

 

ご主人様をお迎えする準備が整うよねー♪」

 

「ご主人様が来るのが"予定"より早かったですから、"予定"に合わせるのには丁度よかったです♪」

 

 

「あ。そうだ。愛紗ちゃん、いったん戻ってねー」

 

言うが早いか、愛紗の纏っていた黒い神事服がいつもの愛紗の服に変わった。

 

「ふぅ。ようやく一息つけます」

 

にっこりと笑う愛紗の様子を見た鈴々が桃香の元へと走り寄る。

 

「桃香おねーちゃん、今度は鈴々が行きたいのだ!」

 

「ええー。んー。どうしよっかなー?」

 

「こら、鈴々。お前が"于吉のデータ"を使っても文字が読めないお前では使いこなせないぞ。

 

ただでさえこれを使っている時は我らの力は半減するというのに」

 

「ううー。それでもいいのだ!飛べさえすればすぐにお兄ちゃんの所へ"遊び"に行けるのだ!」

 

「またお前はそうやって!この前も五胡の民を何千人も殺したではないか!大切な『素材』が勿体無い!」

 

愛紗が立ち上がり、鈴々といがみ合うのを桃香がまぁまぁ、と抑えようとする。

 

「愛紗ちゃんもそんなちっちゃな事いいじゃない。それよりも喧嘩しないの、二人とも!ぷんぷん!

 

あ。そうだ。素材と言えば王我ちゃん死んじゃったねぇ」

 

あっけらかんと、桃香が、言う。その言葉を。

 

「あの馬鹿者はどうしようもありません。役に立たないばかりか我らの邪魔をしました」

 

愛紗がツンとソッポを向く。

 

その事では相当苛立っている様子だ。

 

「ホントに役に立たなかったですね。よりにもよってダウンロードを中断させましたし」

 

朱里も呆れ顔で溜息をついた。

 

「あれってレジューム効いたっけ?」

 

「効いた筈ですけど、あのあとすぐにご主人様が『靖王伝家』を投げ捨ててしまったので

 

キャンセルされました。一度キャンセルされたデータはもう一度ダウンロードしなければなりません」

 

「うへぇー・・・やっぱりご主人様は凄いよね。接続状態の"コレ"を外せるなんて」

 

そういった桃香の手に持たれたのは

 

 

 

 

 

 

 

『靖王伝家』

 

 

 

 

 

 

 

もう一本の『靖王伝家』だった。

 

「でもいなけりゃいないで、他の部族の抑えとか色々面倒だよねぇ」

 

自分の目の前でプラプラと剣を振りながら考えていると、ピン!といい事を思いついたような顔をする。

 

「そうだ!そういえばこの前つかまえた魏の細作がいたね!連れて来てー!」

 

「はーいなのだー」

 

 

ニコニコと笑顔の桃香の前に、体を縛られた細作の男が鈴々によって連れて来られる。

 

だがその目は潰され、口には猿轡が嵌められていた。

 

「かわいそうだねぇー。いったそぉー♪」

 

桃香のケラケラと笑う声に男の体がビクッと震える。

 

「ねぇねぇ。もう一度最後に聞くけど、『鏡』はどこにあるの?」

 

玉座から立ち上がり、その男に近づいた桃香が猿轡を外す。

 

「────グハッ!、知らねぇって言ってるだろ!このバイタが!!さっさと────!!!」

 

男の言葉は続かなかった。

 

桃香の手によって男の腹に『靖王伝家』が深々と突き立てられたからだ。

 

がくりと膝から崩れ落ちた男だが、まだ息はある。

 

「知らないっていうのは、分かってたんだぁーよねぇー」

 

クスクスと桃香が笑う。

 

「・・・あ・・・?」

 

「ごっめぇーんねー。あの拷問って、ぜぇーんぶただ面白いからやってたの!ホントごめん!」

 

両手をポンと合わせて軽く話す桃香に男は小さく呻いた。

 

「それに・・・もう死ねると思ってた?」

 

桃香の声が冷たく変わる。

 

<<マスターシステム起動>>

 

『靖王伝家』が青く光った。

 

その鍔にある玉から合成音のような音が響く。

 

桃香が、ニタリと口を吊り上げる。

 

<<強制データインストールを開始します>>

 

「ぎいいぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

男があまりの激痛にのた打ち回るが、全員が冷たい目で見つめるだけだった。

 

<<王我データをロード>>

 

「あああああああああああああああああ!!!!!」

 

「もぅ、うるさいなぁ。ご主人様はそれに耐えてたんだよ!やっぱりすごいよご主人様!」

 

男の腹に突き刺さった『靖王伝家』を抜く事無く桃香が叫ぶ。

 

<<インストール、完了しました>>

 

その声と同時に男がピクリとも動かなくなったのを確認して、『靖王伝家』を引き抜く。

 

<<変異、開始します>>

 

倒れていた男が青い光に覆われ、その姿が変わる。

 

やがて青い光の中から現れたのは、王我だった。

 

王我は即座に桃香の前に跪き、臣下の礼をとる。

 

「我が主よ、ご命令を・・・」

 

「うんうん。いいねいいね。じゃあ、朱里ちゃんに手伝って『にゃあ黄巾党』で暴れてきてねー」

 

「ははっ!」

 

王我が玉座の間を後にするのを見届けて愛紗が溜息をついた。

 

「はぁー。また邪魔をしなければいいのですが・・・」

 

「ま、まぁまぁ。そこはほら。失敗したらまた作ればいいんだしぃー」

 

桃香がパタパタと手を振った時、恋がトコトコと愛紗に近づく。

 

「・・・ん?どうした?恋」

 

「・・・いいことを思いついた」

 

「いいこと?それは────んんっ!?」

 

突然、愛紗の唇が恋の唇で塞がれる。

 

愛紗はジタバタと逃れようとするが、恋の力には敵わない。

 

桃香と鈴々と朱里は「おおおー!!」と目を丸くして見ていた。

 

しばらくジタバタと暴れていたがやがて愛紗がぐったりした時にポンッ!と恋が唇を離す。

 

「れ、れ、れ、れ、恋さん?ど、どうしちゃったのかなー?」

 

桃香が恐る恐る満足そうな恋に訊ねると、恋はぽわんと頬を赤くする。

 

「これでご主人様と間接キス・・・」

 

「「「!!!!!!」」」

 

恋のその言葉に衝撃がはしった。

 

「「「いい考え!!!」なのだ!!!」です!!!」

 

残りの三人にも襲われるが、愛紗はぐったりとしたままだった。

 

 

「────う・・・」

 

一刀が明るい日差しで目覚めた時、一刀は昨日の事を全て覚えていた。

 

「白蓮っ!!────つッ!!??」

 

寝台から慌てて起き上がろうとしたがその左手に激痛が走る。

 

どうやら痺れが取れないままのようだった。

 

服も『黒い閻王』もそのままで、傍らには『南海覇王』が置かれている。

 

だが、なぎの姿が無い。

 

ハッ!として顔をあげた一刀が見たのは、部屋から静かに出て行こうとしていたなぎの背中だった。

 

「なぎ・・・?どうしたんだ・・・?」

 

掛けられた声になぎの体がビクッ!とする。その手には何かが持たれていた。

 

(まさか、白蓮は────あるいは、昨日のオレの姿か────)

 

恐ろしい想像しか出来ない。

 

沈黙が続く。

 

なぎの肩は小さく震えている。

 

(泣いているのか・・・?)

 

意を決して一刀が寝台から立ち上がろうとした時、何かに触れた。

 

それを見た一刀の顔が驚愕する。

 

「────なぎ、まさか────!?」

 

 

「おねしょか・・・」

 

「うわぁぁぁぁぁーーーー!!!」

 

なぎが顔を真っ赤にして部屋から飛び出す。

 

手に持っているのはシーツ。

 

そして一刀の触れたもの・・・それはなぎの作った世界地図だった・・・。

 

 

お送りしました第二部26話

 

表現的にキツイので4回程書き直しました。

 

これでも表現5割落としです。

 

ここからまたしばらく桃香サイドはあまりでないので、まぁいいかと。

 

敵は震えが来る程恐ろしいのがいいという・・・まるでフリーザ様のような・・・。

 

蜀のファンの皆様御免なさい!

 

では、ちょこっと予告

 

「広げられた世界地図」

 

ではまた。

 

 

 


 
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