「お姉さま! 私と勝負をして下さい!」
雪ちゃんのこんな一言から始まった生け花対決。
勝負自体は、雪ちゃんと何度もしているから何の問題も無かったんだけど、
今日はいつもと少しだけ違っていた。
「因みに、負けた方はこの衣装を着る事になっています」
そう言って雪ちゃんが大きめのTシャツを取りだした。
「身体測定の時のお姉さまの噂は聞いていますよ。それはそれは、とても美しい姿だったそうで……」
うぐ……っ。身体測定の話は思い出したくないエピソードの一つなんだけど……
「千早お姉さまは逃げたりしませんよね?」
物凄く嬉しそうな笑顔で微笑む雪ちゃん。
「い、いいでしょう。その勝負受けます」
負けなければいいんだ。幸い? 僕はまだ一度も雪ちゃんに負けた事は無い。
だから今回もきっと……
いや、確実に勝つんだ! そうしなければ、身体測定の時と同じあれを――
大きめのTシャツ一枚だけという羞恥プレイをしなければいけなくなる。
それだけは絶対に嫌だ!
と、意気込んで始めた勝負の行方は――
「……雪ちゃんの方が素晴らしいですわ」
「ええっ!?」
「やったー♪」
最悪の罰をかけた勝負は、僕が負けるという最悪の結果になった。
「う、雅楽乃……ほ、本当に私の負けなの?」
「ええ。残念ですが、今回は雪ちゃんの方が勝っています」
「そ、そんなぁ……」
僕が負けるなんて……普段なら雪ちゃんの成長を喜べるけど、今回だけは全然喜べない。
だって、僕が負けたという事はつまり――
「千早お姉さま。分かってますよね?」
「う……っ」
雪ちゃんが実に嬉しそうにTシャツをチラつかせる。
「千早お姉さま。ここは大人しく罰を受けて下さい」
「う、雅楽乃!?」
雅楽乃も僕にあのTシャツを着せようとしてるの!?
雅楽乃はそんな事しないと思っていたのに……
「申し訳ありません、千早お姉さま。私も興味がありますので」
「さ、お姉さま。早く着替えて下さい♪」
も、もう何処にも逃げ道が無い。
また、あの恥ずかしい想いをしなければならないのか……
さ、最悪だ……
「わぁ……す、凄い……」
「素敵です。千早お姉さま……」
「~~~~~~~~っ!」
だ、誰か僕を殺して……
「全てが綺麗だけど、特にTシャツの裾から覗く太ももが……」
「ええ。本当に素敵な太ももです……」
嫌だ。男で太ももが素敵なんて嫌すぎる!
しかもその評価って、身体測定の時も言われたよ! 何で皆太ももに興味があるの!?
う、うぅ……何で、こんな事になったんだろうか。
全ては、雪ちゃんを侮っていた僕のせいか。
はぁ……
ふ、不幸だよぉ……
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ほい。コンテスト二作品目です。
ちょっと短いかもな話です。
そして、もう一個くらい書く予定……(きっと)