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真・恋姫無双アナザーストーリー 雪蓮√ 今傍に行きます アフターストーリー第2話

葉月さん

お久しぶりです。
仕事が忙しくなり中々話を書くことが出来ませんでした。

さて今回は、華琳のお話になっています。
揺れる恋心?が表現できていたらいいなと思います。

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2010-11-09 23:26:21 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:8294   閲覧ユーザー数:5797

真・恋姫無双アナザーストーリー 

雪蓮√ 今傍に行きます アフターストーリー第2話

 

 

 

 

【素直になれない私、揺れる恋心】

 

「はぁ、昨日は呑みすぎたわ」

 

優未の暴露話を聞くために皆して王座の間で酒盛りをした翌朝、頭を軽く押えながら城内を歩く。

 

「……いい作りをしているわね。見渡す限り、隔てるものが無く落ち着いているわ」

 

廊下から中庭を見て素直にすばらしいと思った。

 

「やはり、呉には呉のいい所があるわね。やはり手に入れたいわね……ん?」

 

指を口元に当てて考えていると何処からか何かを振る音が聞こえてきた。

 

「何かしら?」

 

音のする方へと向ってみる。流石に自分の城ではないから自由に歩き回れないけど、中庭なら問題ないと言われているしね。

 

「はっ!はっ!はっ!」

 

「一刀?」

 

「え?ああ、華琳。おはよう。起きるの早いね。まだ、朝餉まで時間があるのに」

 

「ええ、起きてしまったのよ。それに、少し頭が痛くてね。一刀は平気だったの?昨日あんなに呑まされていたけれど」

 

「あ~、実はまだ少し抜けきってないんだよね」

 

一刀は苦笑いを浮かべながら汗を拭っていた。確かに、少し顔色が悪いわね。

 

「……ちょっとこっちに来なさい一刀」

 

「え?でも、まだ鍛錬が」

 

「いいから、来なさい」

 

無理やり一刀を連れてさっき見つけた長いすに座った。

 

「えっと……」

 

一刀はどうすればいいのかわからず立ち続けたまま、私を見ていた。

 

「少し休みなさい。そんな状態で鍛錬なんてしたって身に付かないわよ」

 

「やっぱり、そうかな?」

 

一刀も分かっていたのか呟きながら頭をかいていた。だったらやらなければいいのに。

 

まあ、日ごろの習慣はそう簡単には止められないのでしょうけどね。

 

「とにかく少し横になりなさい」

 

「ああ、そうさせてもらうよ」

 

そう言うと一刀は長いすの横に生えていた木を背に座った。

 

「……ちょっと一刀?」

 

「え、どうかしたか?」

 

「どうかしたか?じゃないわよ。これはどういうことかしら?」

 

「どうって、華琳が休めって言うからこうやって休んでるんだけど」

 

はぁ、ホント何処に居てもいつの時代でもこいつは朴念仁ね。私が態々ここまで連れてきた意味をわかっていない。まあ、分かっていた事だけれど。

 

「とにかくここに座りなさい」

 

私は長いすを叩いて一刀に長いすに座るように伝えた。

 

「……ちょっと、なんでそんなに遠くに座るのかしら?」

 

「え?いや、だって汗臭いだろ?」

 

一刀は変な気を回して離れて座っていた。

 

「はぁ、別に気にしないからもっと近くに座りなさい」

 

「いや、俺が気にするよ」

 

「い・い・か・ら!」

 

「わ、わかった」

 

一刀は渋々と言った感じでわたしの横に座ると居心地が悪そうにソワソワしだした。

 

「なに?そんなに私の横が嫌なわけ」

 

「え?いや、違うよ!なんか、誰かに睨みつけられてるような視線を感じてさ。華琳は感じないか?」

 

「視線?……ああ」

 

そう言えば、感じるわね。あの茂みの辺りかしら?

 

「……いいえ、感じないわね。一刀の気のせいではなくて?」

 

私はさも当たり前の様に、何も感じないと伝えた。

 

「そうなのかな~」

 

「体調が悪いのでしょ?それが原因かもしれないわよ」

 

「う~ん、そうなの、かな?まあ、華琳がそういうならそうなのかもな」

 

いつも思うけどなんでこいつは他人を疑うと言う事をしないのだろうか?

 

一度、まあ、前に居た世界での一刀の事だけど聞いたことがあった、その時は……

 

『え?だって、そんな疑って掛かったら誰も信用出来なくなるだろ?だったら、信用するだけさ。まあ、裏切られると流石に堪えるけどね』

 

なんて言ってたけど、ホント考えが甘い、呉にだってあなたを利用する輩は居るでしょうに……

 

「ん?俺の顔に何か付いてるか?」

 

「な、なんでもないわよ……それより少しよ、横になったらどうかしら?少しは楽になるかもしれないわよ?」

 

「そうだね。それじゃ少し部屋で休んでこようかな」

 

――ずるっ

 

こ、こいつはホントにイライラさせてくれるわね。

 

立ち上がろうとする一刀の手を思いっきり引く。

 

「うわっ!ちょ、華琳一体なに、を……」

 

思いっきり引っ張ったせいか、一刀は長いすに手を突き勢いを殺そうとしたその結果、一刀の顔が私の目の前に来てしまった。

 

「っ!」

 

あと少しで唇と唇がくっ付いてしまう距離で一刀は体を硬直させて止まっていた。

 

「……ちょ、ちょっと、早くどきなさいよ」

 

「ご、ごめん、だけど変に動くと倒れそうなんだ」

 

――チチチッ

 

そんな時だった何処からとも無く小鳥が飛んできたのだ。

 

――チチッ

 

小鳥は暫く空を旋回すると一刀の肩に降り立った。その瞬間、一刀は体制を崩して倒れてきた。

 

「「んっ?!」」

 

触れるだけの軽い口付けだったけどそれだけで私は顔を真っ赤にして……

 

「あ、ああ朝からいい度胸ね一刀っ!」

 

「ま、まて!今のは不可抗力っ」

 

――バチーーーーンッ!

 

一刀の頬に思いっきり平手打ちをして私はその場から離れた。

 

別に一刀が悪いわけじゃないのは分かってるけど、それでも行き成り口付けなんてされれば驚いても仕方が無いわよ。

 

中庭を歩きながら指で唇をなぞる。そこに、一刀の唇の感触を感じるかのように。

 

「……華琳様」

 

「あら、やっぱり秋蘭だったのね」

 

茂みから秋蘭が現れて家臣の礼をとってきた。

 

「はっ、不要かと思いましたが、護衛させていただきました」

 

「問題ないわ。春蘭はどうしたのかしら?」

 

「姉者はまだ寝ております。そろそろ起きて来る事でしょう」

 

「そう。では、春蘭が起き次第、朝餉にしましょう」

 

「御意……華琳様」

 

私が歩き出すと後ろから秋蘭が呼び止めてきた。

 

「何かしら?」

 

「失礼とは思いますがお一つお聞かせくださいませ」

 

「……申してみよ」

 

「はっ……華琳様はあの男、北郷一刀をどうお思いなのですか?」

 

「秋蘭にしては曖昧な質問ね。許す、正直に話しなさい」

 

「……華琳様はあの男に好意を抱いておいでではないかと」

 

「……ふっ、馬鹿馬鹿しい、そんな事か、一刀は天の御遣い。ならば、一刀を手に入れれば天を手に入れたも同然。ただそれだけだ」

 

そう、ただそれだけ……魏の王にして、大陸の覇王になる為のね。一刀はそれだけの存在……

 

「……失礼ながら、私にはそうは見えませんでした」

 

「……っ!では、どう見えていたと言うのだ、説明してみせよ」

 

「華琳様はあの者の事を好いているのではございませんか?」

 

「っ?!」

 

簡潔で的確過ぎる言葉に何も言えなくなる。確かに私はあいつを、一刀の事が好き、なのかも知れない。だけど、それは叶わぬ恋なのよ。一刀は呉の天の御使い、そして私は魏の王……敵対した国どうし、民同士ならまだしも、国の上に立つもの同士が一緒になることはありえないわ。

 

「ふぅ……なんで戻ってきてしまったのかしらね」

 

そう、ずっとあの世界いられれば一刀と国なんかを気にしないで一緒に居られたのにね……

 

「は?」

 

「いいえ、なんでもないわ。とにかく、今の私には色恋事に現を抜かしている暇は無いわ」

 

秋蘭の言った事を否定しない言い回しをした。それを秋蘭も分かったのか。

 

「この夏候淵、華琳様の為に尽力を尽くしましょう」

 

膝を突き礼をとった。

 

はぁ、分かりすぎると言うのも困り者ね。まあ、可愛いから問題ないんだけど。

 

「ははは!そんな攻撃でこの夏候元譲を倒せると思うなよ!」

 

「おのれぇ~!先程の言葉を取り消せ、夏候元譲」

 

「うん!だったら私を倒してみるのだな!」

 

「言われなくても!」

 

昼過ぎ、春蘭の笑い声が聞こえたから中庭に出てみると良く分からない光景が目の前にあった。

 

「……何をしているの?」

 

「え?ああ、華琳か、いや、実はな……」

 

一刀から事の成り行きを聞いた私は、

 

「はぁ~、あの娘は……」

 

一刀の話によると愛紗が一刀の鍛錬の相手をしている時に、春蘭が来て、

 

『そんな男と鍛錬とは関羽も落ちぶれたものだな!はっはっは!』

 

と言って、愛紗が怒り出したのだそうだ。

 

まあ、自分の武を貶されたのだから仕方ないとしても、こいつ分かってるのかしら?

 

「一刀、あなた愛紗がそれだけで頭にきていると思ってるの?」

 

「え?それ以外になにかあるのか?」

 

「はぁ~」

 

「な、なんだよその溜め息は」

 

そりゃ吐きたくもなるわよ。

 

「あなたねえ。愛紗はあなたの為に怒ってもいるのよ」

 

「え?」

 

「はぁ、春蘭は『そんな男』と言ったのよね。つまりは見下していると言う事よ。それで愛紗は怒ってるのよ」

 

「そうだったのか……」

 

「わかった?分かったなら止めに行って来なさい」

 

「えぇぇええ?!あ、あの猛攻の中に突っ込めって言うのか?!無理無理無理!死んじゃうよ!」

 

「男でしょ!なら逝って来なさい!」

 

――どんっ!

 

一刀の背中を思いっきり押し出し、春蘭と愛紗が打ち合いしているところに飛び込ませた。

 

「ああ、くそ!こうなりゃ自棄だ!愛紗!それに夏候惇さん!二人とも止めてくれ!」

 

一刀は開き直ったのか自ら春蘭と愛紗の間に立ち両手を広げて止め様とした、が……

 

――ぷにっ

 

「……え?」

 

「か、かか一刀様、なにを!」

 

愛紗は顔を真っ赤にして自分の胸を隠すように離れた。

 

「うわぁ!わ、ワザとじゃないんだ!二人を止め様として!」

 

見事に二人の喧嘩を止めた一刀だったけど……なに、この腹の底から湧いて来る感情は!

 

「き、貴様……私の胸に触っていいのは華琳様だけなのだ!それを触るとは許せん!成敗してくれる!」

 

「うわっ!ちょ!これ真剣!当たったら死ぬって!」

 

「当たり前だ!そのつもりだからな!でやぁぁあああっ!」

 

「か、華琳、助けてくれ!」

 

「貴様が華琳様の真名を呼ぶなんて一億光年早いわ!」

 

「一億光年は年じゃなくて距離だ!うぉぉおおっ!」

 

「そんな事はどうでもいい!大人しくその首を落とさせろ!」

 

「大人しくするわけ無いだろ!あ、愛紗助けてくれ!」

 

「うぅ、か、一刀様が私の胸に手を……ああ、嬉しいのですが、このような人が居るところでなんて……しかし、一刀様がどうしてもと言うなら……」

 

「あ、愛紗~~?!」

 

愛紗は、目をトロンとさせて妄想に耽ってるわね。

 

「はぁ、仕方ないわね。春蘭止めなさい」

 

「し、しかし華琳様!」

 

「元々はあなたが原因なのでしょ?だったら大人しく武器をしまいなさい」

 

「……はい」

 

「ふふふ、素直な子は好きよ」

 

「華琳様~~♪」

 

「た、助かったよ華琳」

 

「……」

 

「な、なに?」

 

「いいえ、別に。さぞかし、愛紗と春蘭の胸の触り心地は良かったのだろうなと思っただけよ」

 

「なっ!あ、あれは不可抗力であって決してワザとじゃ!」

 

「信じられないわね。知ってる?魏でのあなたの噂」

 

「……聞きたくないけどなんでしょうか?」

 

「呉の種馬」

 

「ぐはっ!」

 

一刀自分の胸に手を当てて天を仰ぎ見ていた。

 

「まあ、大方、呉から来た商人が言いふらしているのでしょ」

 

「はぁ、そんなつもり無いんだけどな」

 

「あなたになくても、周りからはそう見られているってことよ。少しは自覚したかしら?」

 

「気をつけるよ……あれ?今日は耳にイヤリングつけてないんだね」

 

「え?ええ。別に毎日つけるものでもないでしょ」

 

「まあそうだけどさ。付けてると綺麗だからさ」

 

「~~っ!だ、だからそう言う所が!はぁ、もういいわ、どうせ言っても無駄でしょう」

 

「な、なんだよ。失礼だぞ華琳」

 

「失礼だと言う前に少しは自分で考えなさい」

 

まあ、無駄でしょうけどね。肩を竦めながらその場を離れようとしてある事を思い出した。

 

「ああ、そうだったわ。一刀」

 

「……え?なんだ?」

 

「明日、街に買い物に行きたいのだけれど許可とって貰えるかしら?」

 

一応、招待という形にはなっているけど、町に出るには許可が必要だった。

 

「わかった聞いてみるよ。夜にでも連絡するよ部屋に居るよな?」

 

「ええ、待っているわ。春蘭、秋蘭行くわよ」

 

「「はっ!」」

 

一人、身悶える愛紗と一刀を置いて中庭を後にした。

 

――コンコン

 

「一刀?開いているわよ」

 

この世界でノックをするのは限られている。桃香や愛紗もあっちの世界に居たけど、一度も私の部屋にきたことがない。

 

そうなると必然的に私に用がある人物になる。

 

「こんばんわ。まだ起きてた?」

 

「ええ、本を読んでいたところよ。それで、街に下りる許可は下りたのかしら?」

 

「ああ、下りたには下りたんだけど、華琳だけだって言われたよ」

 

「そう、それじゃ、春蘭と秋蘭にはここに居てもらわないといけないって事ね」

 

「ああ、なんとか二人も行かせてあげたかったんだけどさ」

 

「仕方の無い事よ。気にしなくていいわ。それより誰か見張りが着くのではなくて?」

 

「ああ、俺が見張り役兼案内役をするよ」

 

……え?今、一刀は何と言った?

 

「一刀、今何と言ったのかしら?」

 

「え?だから俺が見張り役兼案内役をするって」

 

「他には誰が?」

 

「ああ、なんかその日は皆忙しいみたいでさ。俺だけ非番なんだよ。それで、俺に白羽の矢が立ったってわけ」

 

「そ、そう。なるほどね。所でこの事は誰に話したのかしら?」

 

「え?、めいり、周喩だけど」

 

「そう……」

 

――パタンッ

 

薄暗い部屋の中、本を閉じて考え込む。

 

この呉の中で一番の要注意人物は雪蓮に優未だろう、彼女たちに知られればきっと面白がってつけてくるに違いない。だけど一刀の話を鵜呑みにするとまだ知られてはいないことになる。

 

「一刀」

 

「なんだ?」

 

「明日はその……私と一刀だけなのよね?」

 

「ああ、そうだけど」

 

「そ、それじゃ、その……で「華琳様っ!いらっしゃいま、す……か」……」

 

なんて時に来てくれたのよ春蘭……

 

「北郷、貴様!なぜ華琳様の部屋に居る!」

 

「ええ!?いや、俺は昼間の街に下りる許可が下りた事を報告に……」

 

「嘘をつけ!抵抗できない華琳様をいいことに慰み者にしようとしたのであろう!」

 

「なっ!しゅ、春蘭あなた何を!」

 

「華琳様!こやつは獣ですぞ!近づいてはなりませぬ!」

 

「はぁ、姉者。少し落ち着くのだ」

 

あとから入ってきた秋蘭は落ち着いた様子で姉の春蘭を落ち着かせようとしていた。

 

「落ち着いてなどいられるか!こいつは華琳様を華琳様を!ええい!死ね、北郷ぉぉぉおおおっ!」

 

「お、おい!部屋の中で振り回すな!うぉあっ!」

 

「ええい、うるさい!春蘭そこに座りなさい!」

 

「華琳様?!」

 

「いいから座る!」

 

「は、はい……」

 

「はぁ、はぁ……春蘭、あなたの忠誠心には感服するわ」

 

「か、華琳様~~」

 

春蘭は嬉しそうに頬を染め、

 

「しかし、ここは私たちの国ではない。しかも、相手は呉の重鎮、殺したとあれば、私たちは生きて魏に帰れる保証は無いそれを分かっているのか!」

 

「か、華琳様~~」

 

今度は逆に頭を垂れた。

 

「一刀には明日、街に買い物に行ける様に手配してもらっていたのよ。その報告を今受けていたのよ」

 

「あぅ……」

 

「それと春蘭。あなたは明日、一歩も部屋から出てはダメよ」

 

「な、なぜですか?!それでは華琳様をお守りできません!」

 

「街に下りる許可が下りたのは私だけ、あなたの事だから無理やりにでもついてくるというからよ」

 

「そ、そんな~」

 

「秋蘭。春蘭の見張りを頼むわ。決して部屋から出してはダメよ」

 

「御意。さあ、姉者。部屋に戻るぞ」

 

「あぅ~、か、華琳様~~~」

 

春蘭は妹の秋蘭に連れられて部屋から出て行った。

 

「よ、よかったのか?あんなにきつく言って」

 

「大丈夫よ。どうせ、明日になったら忘れてるのだから。それより、明日は朝餉のあと出るわ。ちゃんと準備をしておきなさい。一刀」

 

「了解。それじゃ、俺は部屋に戻るよ。お休み、華琳」

 

一刀は笑顔で頷くと部屋から出て行った。

 

「お休み、か……ふふふ」

 

一刀にそう言われた事が嬉しくてそのまま寝床に倒れこむ。

 

こんなに明日が楽しみなのはいつ以来かしら。いえ、きっと初めてね。

 

「……お休み。一刀」

 

呟くように、愛する人の名前を呼んで目を瞑り今日一日を終わらせた。

 

「遅いわよ。一刀」

 

腕を組み一刀を睨みつけるように出迎える。

 

「ご、ごめん!朝の鍛錬が長引いてさ」

 

「言い訳は聞きたくないわ。ほら、さっさと行くわよ」

 

まったく、折角楽しみにしてたのに遅刻するなんて。

 

「ま、待ってくれよ!そんなに急がなくても時間はあるだろ」

 

「遅刻してきた割に随分と言うじゃない一刀」

 

「う゛……」

 

「それだけ楽しみにしてたか……」

 

「え?」

 

「な、なんでもないわよ!ほら行くわよ!」

 

一刀の手を無理やり取り歩き出す。

 

「わ、わかったから!それで何処に行きたいんだ?」

 

「そうね……ふふ、まずは服屋かしらね」

 

「了解。なら華琳に似合いそうな服が置いてある所を案内するよ」

 

一刀は微笑むと今度は逆に私の手を引いて案内してくれた。

 

「~~~っ」

 

一刀は気にしてないみたいだけど、私は緊張で心臓が張り裂けそうだわ。

 

「……」

 

「ん~、華琳はどんな服が似合うかな~」

 

チラリと見上げると一刀はホントに楽しそうな表情で笑っていた。

 

はあ、緊張してる私が馬鹿みたいじゃない。これじゃ……

 

無性に腹立たしく思ってきた私は、ある事を思いついた。

 

そうだわ。ふふふ、見てなさい一刀。あなたの慌てふためく顔を見せてもらうわよ……

 

「着いたよ。まずはここから見てみようか」

 

「そう、それじゃ、一刀の目がどれ程のものか確かめさせてもらおうかしら」

 

私が何か企んでるとも知らずに一刀は一軒目の店を案内してくれた。

 

「いらっしゃいませ。これはこれは御遣い様。本日はどのような御用で?」

 

「今日は俺じゃないんだ。俺は案内係。用があるのはこっちだよ」

 

「ここにある下着を全て持ってきなさい」

 

「す、全てでございますか?」

 

「ええ、ただし、安物はいらないわ」

 

「か、かしこまりました。直ちにお持ちいたします」

 

店主に下着を持ってこさせている間に軽く店の中を物色したけど、私の知らない服が多く飾られているわね。

 

「一刀、随分と珍しい服が並んでるわねここは」

 

「ああ、ここは俺の御用達の店でさ。ただで服を作ってもらう代わりに、店で売ってもいいって事になってるんだよ」

 

なるほど、あっちの世界の服か、確かに私もあっちの世界での記憶はあるのだけれど、覚えているのは、一刀たちとの思い出だけでそれ以外は全然覚えていないのよね。

 

「お待たせしました。こちらが当店で扱っている中でも上質なものでございます」

 

「ありがとう。一刀」

 

「ん。更衣室はあっちだよ」

 

「違うわよ。ちょっとこっちに来なさい」

 

「え?ああ、いいけど……」

 

一刀を姿見の前まで来させて私は一番上に載せてあった下着を手に取り胸に当てた。

 

「これなんてどう?」

 

「え……い、いいんじゃないかな?」

 

「そう、ならこれは?」

 

「それに似合ってると思うよ」

 

「……これは?」

 

「華琳なら似合いそうだよね」

 

こ、こいつは……

 

「一刀」

 

「え、なに?」

 

「私、前にも言わなかったかしら?」

 

「え?あっ……」

 

「思い出したようね。どれもこれもいいじゃ、全部買わなければいけなくなってしまうじゃない」

 

「だ、だってさ。どれを身に着けてても華琳ならすっごく似合いそうだしさ。そ、そのやっぱり男がこういったの選ぶのって変じゃないか?」

 

「何言ってるのよ。女を魅力的に見せるには実際に見せなくてはいけないのだから男に聞いたほうが早いでしょ」

 

「だ、だったら店の人とかさ」

 

「いやよ。そんな他人に肌を見せるなんて」

 

「え?」

 

「え?……っ?!い、いいから早く選びなさい!」

 

「いてっ!べ、別に殴らなくてもいいだろ?」

 

「うるさい!さっさとしなさい!」

 

誤魔化す様に一刀の腹を殴り腕を組んでそっぽを向く。なんてことを口走ってるのよ私は……

 

「ん~、これも似合いそうだしな~。いや、これも中々……」

 

「ちょっと、まさか私の体想像してないでしょうね?」

 

「え?だって、そうしないと似合うか判らないじゃないか」

 

「な、何考えてるのよ!今すぐやめなさい!」

 

「痛っ!痛いって!よ、よしならこれだ!」

 

一刀は殴られながらも一つの下着を手に取って私に手渡してきた。

 

「っ!そ、その根拠は?」

 

「これが一番可愛かったから!」

 

「~~~~っ!こ、この変態!」

 

「ぐへっ!な、なんで……」

 

「ふんっ!一刀は外で待ってなさい。これを買ってくるわ」

 

「ふ、ふぁぃ……」

 

一刀はお腹を押さえて店の外へ出て行った。ちょっとやりすぎたかしら?いいえ、そんな事無いわね。だ、だって……私の体想像したんだから……

 

「あ、あのお客様……」

 

「ああ、済まなかったわね。これを……っ!ちょっといいかしら?」

 

「はい、なんてございましょうか」

 

「お待たせ」

 

「随分と遅かったな」

 

「そうかしら?それより、はい」

 

「はい?」

 

「なに?私に荷物を持たせるつもり?」

 

「あ、ああ。そう言うことか」

 

「他に何があるのよ。さあ、次の店に行くわよ」

 

「また服屋?」

 

「ええ、色々と回りたいからね」

 

「了解。それじゃ、もう一箇所、俺の行き付けの店に行こうか」

 

「そこはどんな服が置いてあるのかしら?この店みたいな変な服とかなら却下よ」

 

まったく、下着はまともだったけど、置いてある服はどれもこれも変なものばかりだったわよ。なんだったかしら?なあす?みこ?ホント、一刀の世界の服はわけがわからないわね……私もそこに居たのだけれどね。

 

「所でさ、夏候惇さんは大丈夫なの?昨日、凄い泣いてたけど」」

 

「ああ、気にしなくても大丈夫よ。今朝、笑顔で挨拶してあげたらすごい元気に挨拶してきたわよ。あの娘はホント素直で可愛いわ」

 

「……それって、たんじゅ、いや、そうだね」

 

「ふふふ、そこが可愛いのよ」

 

歩きながら一刀と他愛無い会話をする。それでも私の胸はとても温かくなる。

 

「あらあら、北郷さんに曹操さんではありませんか」

 

そこへ、落ち着きのある声が聞こえてきて、振り向くと管輅が微笑んで椅子に座っていた。

 

「管輅さん。こんな所で何をしているんですか?」

 

「ええ、このお店の横を借りて占いを」

 

「そんなところでやらないでもっと大通りでやればいいじゃないですか。雪蓮に頼めば許可書くらい手配してくれますよ?」

 

「ふふふ、こういうところだから出来る占いもあるのですよ。北郷さん」

 

「そんなもんですか」

 

「そんなもんですよ」

 

「……」

 

「っ!か、華琳?どうかしたか?」

 

「え?っ!な、なんでもないわよ」

 

無意識だったのか一刀の服の袖に握り締めていた。一刀に言われて慌てて手を離す。

 

「??」

 

な、なんで私……まさか、この私がヤキモチを?あ、ありえないわ!なんで、私が一刀なんかに……

 

「ふふふ……そうですわ。ここであったのも何かの縁でしょう。お二人を占って差し上げましょうか?もちろん、御代はいいですわ」

 

「え。それは悪いですよ。折角商売してるんだからちゃんと払いますよ」

 

「あらあら、律儀ですね。では、まずは曹操さんから占って差し上げましょう。北郷さんは少し離れていてくださいね」

 

「え、なんでですか?」

 

「ふふふ、女には秘密が一杯あるのですよ」

 

「は、はぁ……」

 

一刀は私達から離れていった。

 

「さて、何を占って欲しいですか?」

 

「私が天下を取れるか」

 

「あらあら、簡潔ですわね。ですが……」

 

「なに?まさか占えないとでも?」

 

「いいえ。占えますが。曹操さんは私が天下を取れると仰っても信用しませんわよね?」

 

「当たり前よ。私は占いなんてものは信じない。信じるものは私の目に映るものだけよ」

 

「ですから、その占いは意味を成さなくなってしまいます……と、言うことで恋占いにしましょう♪」

 

「なっ!こ、恋占い?!」

 

「しー。声が大きいと北郷さんに聞こえてしまいますよ?」

 

「っ!」

 

慌てて振り向くと一刀はいつの間にか子供達に囲まれていていて気がついてないようだった。

 

「ふふふ。お相手は北郷さんでよろしいですか?」

 

「か、勝手にすれば?別に一刀なんてどうでもいいのだけれど、管輅がどうしてもって言うなら占ってもいいわよ」

 

「では、どうしても占わせていただけませんか?」

 

「うっ……し、仕方ないわね。そこまで言うのなら、占わせてあげるわ」

 

「ありがたき幸せ……では、占ってみましょう♪」

 

「あなた、嬉しそうね」

 

「そう見えますか♪」

 

「ええ、ものすごく、ね」

 

「気のせいです♪」

 

絶対気のせいなんかじゃないわよね。

 

「さて、では早速占ってみましょう」

 

そう言うと管輅は真面目な顔をして水晶玉を覗き込み始めた。

 

「……」

 

「……なるほど……まっ!……あらあら♪……すごい」

 

「ちょっと」

 

「なんでしょうか?」

 

管輅は水晶玉から目を放さず話しかけてきた。

 

「結果はどうなったのよ」

 

「もう少々お待ちください。今いいとこっ!あらあらまあまあ!流石ですね」

 

「ちょっ!何がいいところなのよ!いいから教えなさいよ!」

 

「ふぅ……曹操さん」

 

「な、何よ……」

 

「ご馳走様でした♪」

 

「だ、だからなにがよ!ご馳走様ってどういう意味よ!」

 

「聞きたいですか?」

 

「いいから教えなさい!」

 

「仕方ないですね。では、お耳を拝借」

 

「し、仕方ないわね……」

 

「では、ごしょごしょごにょごにょ……で、もにゅもにゅむにむに……と、なります」

 

「~~~~~~っ!?!?!?!?!」

 

な、何言ってるのよ!あ、ありえないわ!

 

「もう、占いは終わったのか?」

 

「あら、北郷さん」

 

「っ!!!!」

 

「それじゃ次はお、「行くわよ一刀!」ええ?!まだ、俺占ってもらってないよ!」

 

「いいから行くわよ!管輅、御代はここに置いて行くわよ!ほら、さっさと次の店に案内しなさい!」

 

「ちょ!な、何があったんだよ華琳!」

 

「ふふふ、またのお越しを~~~♪」

 

管輅は笑顔で手を振って見送ってきた。

 

「お、おい。どうしたんだよ華琳?」

 

「なんでもないわよ」

 

「そうは見えないぞ?管輅に変な事言われたのか?」

 

「っ!ち、違うわよ!」

 

「別に気にすること無いだろ?所詮、占いなんだからさ」

 

「……っ!所詮?所詮占いですって?」

 

「え?ああ、占いなんて目安みたいなもので人生を左右されるもの、じゃ……華琳?」

 

「っ~~~!そうよね。所詮、占いですものね。それに左右されるなんて馬鹿みたいよね」

 

「お、おい。どうしたんだよ華琳?」

 

「うるさい、うるさい、うるさい!」

 

「あっ!か、華琳!待てよ!」

 

「着いて来るな!」

 

「そ、そう言うわけには行かないだろ?!って、足早っ!」

 

全力で駆け抜ける。なんで、自分が必死に走ってるかなんか考えたくも無い!

 

「~~~~~っ!」

 

後ろで一刀が叫んでいるけど知ったことじゃないわ。今は一刀の顔を見たくない!

 

「はぁ、はぁ」

 

無我夢中で走り抜けてきた私はいつの間にか街を出て清流が流れる森の中に居た。

 

「はぁ、はぁ、不味いわね。私としたことがこんな所、呉の誰かに見つかったら言い逃れできないじゃない」

 

今更自分の犯した行動に反省しても遅い。起きてしまったのだから直ぐにでも街に戻らないと……

 

「……戻ってどうしろと?どうやって一刀の顔を見ろというの?」

 

きっと、あの時、思いっきり見られてしまったわよね。

 

「はぁ~、こんな状態じゃ戻るにも戻れないわね……不本意だけど暫くここで時間を潰しましょう」

 

近くに大きな岩場があったからそこに腰を下ろす。

 

こんな所で時間を潰しても何の解決にもならない事はわかっている。だけど、今の状態で一刀に会いたくないのもまた事実。

 

「まったく、なんでこんな事に……そうだったわ。管輅の占いでこうなったのだったわね」

 

はぁ、彼女の占いは占いじゃないわよ。あれはどう聞いても……

 

「予言、よね。しかも現実味がありすぎて嘘っぽく聞こえないのよ」

 

『ふふふ、曹操さんは将来、北郷さんの子を身ごもるでしょう。羨ましいですね。私も子供を宿して見たいものです♪』

 

あんなの聞かされたら一刀の顔なんてまともに見れないわよ……

 

他にも色々と言われたけれど、あの言葉のせいで殆ど耳に入ってくることは無かった。

 

「ふっ、馬鹿馬鹿しい。そんなことあるわけ無いのにね」

 

――ガサガサッ!

 

「だれ!」

 

しまった!こんなにも周りに集中していなかったなんて!

 

「や、やっと見つけたよ華琳」

 

「か、一刀?!」

 

警戒しながら茂みを睨みつけていると出てきたのは苦笑いを浮かべた一刀だった。

 

「もう、勝手に走り出すから探すのに手間取っちゃったよ」

 

「……」

 

「ちょ!無言で歩いていかないでくれよ!」

 

一刀から離れるように歩き出すと一刀は慌てて追いかけてきた。

 

「森の中を一人で歩くのは危険だよ」

 

「はぁ。わかったわよ」

 

仕方なく立ち止まり近くの岩に座り込む。

 

「はぁ、はぁ、なんで急に走り出したんだ?」

 

「べ、別にいいでしょ。一刀には関係ないことよ」

 

「そう言うわけには行かないよ。だって華琳さっき泣い「それ以上言わないで!」……華琳」

 

思わず叫んでしまい一刀から顔を背ける。

 

「……やっぱり、俺が何か悪いことを言ったんだね。ごめん……」

 

「ちがっ!違うわよ。一刀が悪いわけじゃないわ」

 

「それじゃ、一体誰が華琳を泣かせたって言うんだ?」

 

「そ、それは……」

 

言える訳が無い。一刀が占いに対して否定したことが原因だなんて。

 

「はぁ、困ったな。黙ったままだと判らないんだけどな……そうだ!華琳!」

 

「え?!ちょ!か、一刀?!」

 

一刀は私の手を取り走り出した。

 

「きゃっ!か、一刀!そんなに早く走ったら転んでしまうわ」

 

「え?ああ、ごめん。よっと!これなら転ばないよね」

 

「ちょ!え?え?えええ?!」

 

一刀は何を思ったのか私を抱き上げてまた走り出した。

 

「お、降ろしなさい一刀!」

 

「痛てっ!か、華琳、暴れないでくれ!ば、バランスが取れなくなる」

 

「分けのわからない言葉を使わないで頂戴!いいから降ろしっ!きゃっ!」

 

「うぉ!だ、だから暴れるなって言っただろ。直ぐ着くから大人しくしててくれよ」

 

「わ、分かったわよ……」

 

一刀に言われて大人しくする。

 

「それで?何処に連れて行ってくれるのかしら?いい加減に降ろして欲しいのだけれど」

 

「もう少しで着くよ」

 

一刀は微笑みながら私の顔を覗き見てきて、私は恥ずかしくなり思わず顔を背けた。

 

「はぁ、はぁ」

 

「……」

 

一刀はまた前を向いて走り出す。私は上目使いで一刀の顔を覗き見る。整った顔立ちにその優しい瞳、でも、至って普通の顔なのにこの顔からはあれほどの微笑が生まれてくることに驚きを隠せないわ。

 

「~~~っ!」

 

思わず、一刀の笑顔を思い出して顔を赤くしてしまった。くっ!この曹孟徳とあろうものがたった一人の男にこんなにも心を乱されるなんて……

 

それでも、あちらの世界の記憶がある以上、この気持ちを受け入れないわけには行かない。それに……呉の王座の間で私は一刀に言ってしまった。

 

『……バカずと、もう何処にも行くんじゃないわよ』

 

この言葉はあの雰囲気が言わせたのか、自分の思いが言わせたのかなんてことはわかりきっている。そう、私は一刀に何処にも言ってほしくないのだ。出来ることなら魏につれて帰りたいくらいだ。しかし、それは叶わぬ思い。なぜなら一刀は呉の人間だから。

 

たったそれだけ、でも、とても重大なこと。その一点が私を苦しめている事に他ならないのだ。だけど、一刀を手に入れることは出来る。それは呉を攻め勝ち取ってしまえばいいこと、そうすれば土地も手に入り、一刀も私の元へ来る。しかし、私は魏の王。私欲で兵を動かすわけには行かない。それに、勝ったとしても叛乱を起こさせないようにするために将を殺さなければいけない。もちろん、天の御遣いである一刀も例外ではないわ。一刀はこの国で前王である孫策と対等な立場に居た人物。もし一刀だけを生かしていれば呉の住民が一揆を起こし魏に攻め入る可能性だって無いわけじゃない。

 

「はぁ、ホント厄介なことだわ」

 

「え?何か言った?」

 

「何でも」

 

「?あっ、もうすぐ着くからさ。目を閉じててくれるかな?」

 

「目を?……変なところ触らないでよね?」

 

「そ、そんなことするわけ無いだろ?」

 

「ホントかしら?呉の種馬さん」

 

「ぐはっ!ど、どうしてそれを?!」

 

「私が知らないと思って?この国にだって間諜を送っているのだから情報くらい入ってくるわよ」

 

「ぐっ!そ、それは誤解なんだって!俺は別に無理やり彼女たちとしてるわけじゃ!」

 

「はいはい。そう言うことにしておいてあげるから」

 

「うぅ、ホントの事なのに……」

 

「ふふ♪ほら、これでいいのでしょ?」

 

「あ、ああ」

 

なんだか、一刀をからかったらさっき考えていたことが馬鹿らしくなってきたわね。ホント、不思議な奴ね一刀は……

 

「着いたよ。目を開けてごらん」

 

「……っ!これは……」

 

一刀に言われて目を開けて見るとそこに広がっていた光景に目を奪われた。

 

「どう?凄いだろ?」

 

「ええ……こんな光景初めて見るわ……綺麗」

 

一刀に言葉を返すもその景色から目が離せないで居た。

 

「この景色見てるとさ、なんだか悩んでることが馬鹿らしくなってくるんだよ」

 

一刀の言ってることも一理あるわね。考えてることが馬鹿らしくなるわ。

 

「……ねぇ、一刀」

 

「ん?」

 

「一刀は、その……居るの?」

 

「え?」

 

「だ、だからす……きな人居るの?」

 

「ごめ、良く聞こえ……ぐはっ!」

 

ほんっとにこの馬鹿は!こっちは恥ずかしいんだから一回で聞き取りなさいよ!

 

「好きな人は居るのかって聞いたのよ!この朴念仁!」

 

「いてっ!痛いから!け、蹴らないで!」

 

「うるさい、うるさい、うるさい!一刀なんかこうしてやる!この!このぉ!」

 

――ゲシッ!ゲシッ!

 

「ちょっ!か、華琳!落ち着けって!何そんなに怒ってるんだ?!」

 

――ピキッ!

 

「何でですって?」

 

「か、華琳?」

 

「一刀なんか、一刀なんか……好きでもなんでもないんだからぁぁぁあああっ!」

 

――ボフッ!ヒューーン……ザッパーーーーーンッ!

 

一刀のお腹に見事に蹴りが入り一刀はそのまま川に飛び落ちた。

 

――ブクブクブクッ……プクッ……ザバンッ!

 

「げっほ!げっほっ!お、思いっきり水飲んじまった!」

 

「ふん、自業自得よ」

 

「なんだよ。俺は華琳の事好きなのに凄い仕打ちだな」

 

「……え?」

 

なに?一刀は今なんていったの?私の事が好き?

 

「あ~あ、乾かさないとな」

 

「ちょっと、一刀」

 

「え?」

 

「っ!」

 

振り向くと一刀は上半身裸で川から上がっていた。

 

「……はっ!」

 

水が滴る一刀を見て思わず見惚れてしまった。

 

「ん?どうかしたか華琳」

 

「な、なんでもないわよ。それより何脱いでるのよ獣」

 

「ひどっ!人を蹴落として置いてそりゃないぜ」

 

「ふん!一刀がいけないのじゃない」

 

腕を組みそっぽ向く私を見て一刀はやれやれといった感じで服を絞り大きな岩の上に広げていた。

 

……それにしても一刀って随分筋肉があるのね。

 

「ん~!いい天気だから帰るまでには乾いてくれるかな」

 

上着を岩の上に広げ終わった一刀は空を見上げて目を細めていた。

 

「……はぁ、折角の雰囲気が台無しだわ」

 

「ん?何かいっ、ぶはっ!な、何するんだよ華琳」

 

「ふふふ、こうなったのはあなたのせいなのだから責任取りなさいよね。一刀」

 

私は川に入って一刀の顔めがけて水をかけた。

 

「やったな~!俺も負けないぞ!」

 

「あら、一刀が私に勝てると思っているのかしら?」

 

「やってみないとわからないだろ?」

 

「わかるわよ。だって……」

 

「ん?うぉ!」

 

――ドボーンッ!

 

「ふふふ、そこは深いのよ」

 

「くっそ~、謀ったな華琳」

 

「こんなの謀るうちに入らないわよ。一刀が間抜けなだけよ」

 

一刀は尻餅をつきながら私を見上げる。それを私は勝ち誇ったように見下ろした。

 

「もう降参かしら?」

 

「まだまだ!華琳に参ったって言わせるまでは!」

 

「そう簡単にはいかないわよ。それっ!それっ!」

 

「うぉ!くっそ~!そりゃ!そりゃ!」

 

「きゃっ!ちょ、ちょっと一刀!髪が濡れちゃったじゃないの」

 

「ふっふっふ!俺が本気を出せばこんなもんだ!」

 

「……なら、私も本気を出してもかまわないわよね?」

 

「……え、そ、それだけは勘弁んんんっ?!のわ!」

 

「ちっ、逃がしたか」

 

「ちょ!か、華琳!そんなものどこから!」

 

「え?どこって別に何処でもいいじゃない」

 

「よくない!それは卑怯だろ!」

 

私の手には桶が握られている。それを見た一刀は顔色を変えて抗議してきた。

 

「男の癖に女々しいわね。ほらほら、早く逃げないと頭から水を被らせるわよ♪」

 

「ちょ!ま、待て!うぉ!」

 

「ふふふ。ほらほら、もう逃げないのかしら?」

 

「ぐっ!……」

 

うまく滝側に誘い込むことが出来たわ。ふふふ、もう逃げ道は無いわよ一刀。

 

「さぁ、観念してずぶ濡れになりなさい!」

 

「こ、こうなりゃ自棄だ!うぉぉぉおおおっ!……お?」

 

一刀は水に足を取られたのか前かがみに倒れ、って、えええええ?!

 

「え!ちょ、か、一刀?!」

 

――ザッパーーンッ!

 

「けほっ、けほっ!な、なんて事してくれるのよ一刀」

 

「……ごめん、華琳」

 

「それで?いつその手をどかしてくれるのかしら?」

 

「……え?」

 

――フニフニ

 

「うぉ!ご、ごめん華琳!こ、これはわざとじゃなくて不可抗力で!」

 

一刀は慌てて起き上がり頭を下げて謝って来た。

 

「別にいいわよ。もとは私がいけないのだから。それにしても全身ずぶ濡れね」

 

「重ね重ね申し訳っ……?」

 

「何度も言わせないで頂戴。別に一刀のせいじゃないのよ」

 

一刀の口に指を当てて謝罪の言葉を止めさせる。

 

「はぁ、こんだけ濡れてると清々するわね」

 

――ジャバジャバ

 

「華琳?そっちは深いぞ」

 

「いいのよ。だってこのまま泳ぐのだから。一刀もどう?」

 

そのまま水面に横になり、泳ぐことはせずただ目を閉じて水面に身をゆだねた。

 

「……気持ちがいいわね。久々だわ。こんなにゆっくりしたのも、遊んだのも」

 

目を開ければ雲ひとつ無い真っ青な空がそこにはあった。

 

「……ねえ、一刀」

 

「なんだ?」

 

「魏に来なさいよ」

 

「……」

 

一刀は何も喋らない、まあ、無理も無いわね。一刀は呉の将みたいなものなんだから……

 

「きっと魏も楽しいんだろうな」

 

「……え?」

 

「華琳が居て、夏候惇さんや夏候淵さんがが居て、他の武将の人とかも居てきっと賑やかなんだろうな」

 

一刀も空を見上げながら語ってくれた。

 

「でも、ごめん。雪蓮たちを放って行くことは出来ないよ」

 

「……分かっているわよ。冗談よ」

 

別に冗談なんかじゃない。私はいつだって本気だ。いつでも一刀の傍に居たい。一刀の笑っている顔を見ていたい。でも、今のままじゃそれは叶わない。

 

歯痒い……

 

もっと私が素直になったらそんなことはないのだろうか?いや、素直になっても一刀は私の元には来てくれないだろう。

 

最初に出会っていたのが雪蓮ではなく、私だったらとどうしても思ってしまう。

 

だけど、すでに起きてしまったことを思っても仕方の無いこと。

 

――バシャバシャ

 

水を掻き分けて一刀は私の元へやってきた。

 

「今はこれで我慢しくれないかな?」

 

「え?一刀、なにっ……ん」

 

一刀は私の肩に手を添えてそっと口づけをしてきた。

 

「んっ……ぷはっ。いきなり私の唇を奪うなんてどういうつもりかしら?」

 

顔を赤くしながら悪態をつく。

 

「えっと……雰囲気的に?」

 

ホント、この一言で全部台無しだわ。

 

「くちゅん!」

 

「大丈夫か?そろそろ川から上がらないと風邪ひいちゃうな」

 

「ええ、そうね。私も少しはしゃぎ過ぎたわ……で?いつまで抱き上げているつもりなのかしら?」

 

「いやだった?」

 

「べ、別に、一刀がどうしてもって言うなら仕方ないから許してあげてもいいわ」

 

「それじゃ、降ろそっ!いひゃいっ」

 

降ろそうとする一刀の頬を無言で引っ張る。

 

「ど、どうしても華琳を岸まで抱きかかえて行きたいな~。なんて」

 

「仕方ないから許してあげるわよ。岸までだからね♪」

 

満足の行く答えとは言いがたかったけどこれで許してあげるわ。

 

「それじゃ、お姫様ここでお待ちください」

 

岸にあがった一刀は安定した岩の上に私を座らせてくれた。

 

「火を熾してくるから悪いんだけどここで待っててくれるか?」

 

「早くしてよ?」

 

「ああ。おっとそうだった」

 

「?」

 

「うん、乾いてる乾いてる」

 

一刀は自分の上着を拾い上げて着るのかと思ったら私の方に歩いてきて……

 

「はい、そのままだと本当に風邪になるから火を熾すまで俺の上着でも羽織っててよ」

 

一刀は私の肩に一刀の上着を羽織らせてくれた。

 

「あ、ありがとう」

 

一刀は微笑むと枝や燃えそうな物を拾い集め始めた。

 

「……」

 

その間、私は一刀の上着の襟を寄せた。

 

一刀の匂いがする……

 

さっきまで太陽で乾かしていたからその匂いなのかもしれないが、なんとなくだけど違う気がした。

 

体は冷えているのに心はとても温かくてこのままこうしていたい気持ちになった。

 

「……か……ん……」

 

「んっ……」

 

誰?私を呼ぶのは……

 

「お……くれ…………りん…………」

 

この声は一刀?

 

「んっ……か、ずと?」

 

どうやら眠ってしまっていたようだった。一刀の声で起こされて目を開けてみるが一刀の姿は無かった。

 

「一刀?どこにいるの?」

 

「後ろだよ華琳」

 

「え?……っ?!」

 

横から声が聞こえ振り向くと一刀の顔が目の前にあり、あわや口づけしてしまいそうになった。しかも一刀は私を抱きかかえて座っていた

 

「な、ななっ!何抱きついてるのよ!」

 

「し、仕方ないだろ。火を起こして戻ってみたら眠ってて抱きかかえて火の前に連れて行ったはいいけど。いきなり首に抱きつくもんだから降ろすに降ろせなくなったんだから」

 

良く見ると今でも私の腕は一刀の首にまわして抱き付いていた。

 

「っ!し、仕方ないわね……許してあげるわ」

 

首に回していた手を離して立ち上がる。

 

「どう?体冷えてない?服とかも乾いてるといいんだけど」

 

「焚き木のおかげで体は冷えてないわ。服は若干湿っているだけだから大丈夫よ」

 

そういいながらも、まだ下着は濡れたままだ。こんな所で代えの下着が無いのだから着替えることも出来ないからそう言うしかない。……いや、一つだけあった。

 

「っ!一刀。私の下着が入った袋はどうしたのかしら?」

 

「え?それならここにあるぞ」

 

「貸しなさい。いい、覗くんじゃないわよ」

 

「わ、分かってるよ」

 

「ホントかしら?呉の種馬だものね。私襲われちゃうかも」

 

「そんなことしないよ!それに、無理やり行為に及ぶなんてことはしたくないんだ。するならお互い同意の上でしかしないよ」

 

「そ、そう……ならあっちで着替えてくるからここで待ってなさい。いいって言うまで来ちゃダメよ」

 

「わかってるよ。そんな何度も言わなくてもさ」

 

そう言うと一刀は私に背を向けて立った。

 

「……」

 

一刀に隠れて下着を着替え始める。

 

「はぁ、折角の計画が台無しだわ……それもこれもあの管輅がいけないのよ……あんなことを言うから……あんなこと……っ!」

 

自分で言っていて思い出してしまい、振り払うように首を振るう。

 

「……それにしても同意の上っか、私が許したらしてくれるのかしら……」

 

「北郷さんならきっと喜びますわね」

 

「え?」

 

「どうも、あの管輅です♪」

 

「……き、きゃぁぁぁあああっ!あ、あなた何処から出てきているのよ!」

 

「あらあら、そんなに大声を上げていいのですか?」

 

「え?」

 

「華琳?!何かあったのか!」

 

「か、一刀?!き、きてはダメよ!」

 

「かりっ……え?」

 

一刀は私の悲鳴を聞いて慌ててこちらに来てしまった。

 

「え……あ……」

 

一刀の顔が見る見る赤くなる。

 

私の心拍数がどんどんと早くなる。

 

「さ、さっさとあっちに行きなさ~~~~いっ!!」

 

――ドスッ!ドスドスドスッ!バチーーーーンッ!

 

「ごめんなさ~~~~~~いっ!!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

「あらあら、あんなに遠くまで飛ばさなくてもよろしいのではないかしら?」

 

「あなたのせいでしょ!急に現れるのだから!」

 

「あら、わたくしはあなた方に伝えることがあったので探していたのですが」

 

「……伝えること?」

 

「はい。そろそろ戻らないとお城の方が騒がしくなってきますわ」

 

「どういうこと?」

 

「どうやら、雪蓮さんと優未さんのお二人が北郷さんと出かけたことに気がついたようですわ」

 

「なるほど……で?」

 

「はい?」

 

「それはいつの話なのかしら?」

 

「と、いいますと?」

 

ニコニコと笑って、食えない女ね。

 

「あらあら、褒め言葉としてとっておきますわ」

 

「……はぁ、いいから。早く教えなさい」

 

「そうですね。大体一刻前くらいでしょうか」

 

「それであなたはその間何処に居たの?」

 

「はい、ずっと見ていましたわ」

 

「……」

 

「あら?聞こえませんでしたか?北郷さんと川原でイチャイッ「それ以上言わなくていいわ!」あら、残念」

 

「はぁ、頭が痛くなりそう……まあいいわ。一刀!」

 

「いてて、行き成り殴ること無いだろ?」

 

「うるさいわね。来るなって言ったのに来たあなたがいけないんじゃない」

 

「そりゃ、悲鳴をあげられたら心配するだろ」

 

「ふん、私はあなたより強いのだから敵に遅れなんてとるわけないでしょ」

 

「それでも女の子なんだから、好きな娘を守りたいって思うのは普通だろ?」

 

「~~~っ!」

 

嬉しさの余り何も言えなくなってしまった。そこへ……

 

「あらあら、大胆な告白ですね」

 

「へ?なんで管輅さんがここに?って聞かれた?!」

 

「ふふふ、ご馳走様でした♪」

 

「あは、あははは」

 

一刀は頬を赤くして顔を背けた。

 

「まあ、からかうのはこの辺に致しましょうか。そろそろ戻らないと後が大変ですわよ?」

 

「え?どういうことですか管輅さん?」

 

「戻れば分かりますよ」

 

「なんだか凄く戻りたくない気がしてきたんですが」

 

「あら、ならそのまま魏に来ればいいんじゃないかしら?」

 

「それはそれで、雪蓮と優未の怒りに染まった顔が目に浮かぶ……っ!」

 

「なら、戻るしかないわね。管輅はどうするのかしら?また傍観でもしているつもりかしら?」

 

「そうしたいのは山々ですがさせてくれそうにありませんね」

 

「当たり前よ。それじゃ戻るわよ」

 

「あっ、俺の制服!」

 

「まだ肌寒いから着させてもらってるわよ」

 

「え?さっき、温まったって……」

 

「いちいち気にしてるんじゃないわよ。ほら、早く戻らないといけないのでしょ?ああ、それとちゃんとそれも持って帰る事」

 

私は岩場に置かれている袋を指差した後、そのまま歩き出した。

 

「ま、待ってくれよ華琳!」

 

「あらあら、華琳さんも意地の悪い。これでは北郷さんがかわいそうですわね」

 

「ちょっと冥琳!一刀と華琳を探させに行かせなさいよ!」

 

「そうだよ!一刀君がとられちゃうじゃんよ!」

 

「ダメに決まっているだろうが!雪蓮にはまだ目を通してもらわなければいけない書簡があるんだ。優未はちゃんと穏から学べ!」

 

「書簡なんて一刀を探してきた後でもいいじゃない!」

 

「穏との勉強はこっちの精神が擦り切れるからやだ!一刀君に教えてもらいたい!」

 

城に戻ってくると案の定、門の前で雪蓮と優未が揉めていた。

 

「あなたたち、こんな所で何してるのよ」

 

「あっ!戻ってきた!ってなんで華琳が一刀君の制服着てるのよ!」

 

最初に気がついた優未は私の姿を見て声を荒げてきた。

 

「ああ、これ?激しかったわよ一刀」

 

「「……は?」」

 

雪蓮と優未の動きが止まる。ふふふ、分かりやすいわね。

 

「な、なな何言ってるのかな~華琳は」

 

「そ、そうね。私も良く分からなかったわ」

 

「あら、分かりやすく言ったつもりだったのだけれど。一刀の体は逞しくてとても激しい動きをするのね」

 

「う、嘘だーーーーっ!一刀君がそんなことする分けないよ!」

 

「なら、一刀に聞いてみたら?ほら、来たわよ」

 

「はぁ、はぁ。華琳、歩くのが早いよ」

 

「まあ、一刀にしてはあんだけ動いた後だ物ね。仕方ないわよね」

 

「まあ、あれだけ激しく動いたのは久しぶりだからな「「一刀(君)!」」うぉ!ど、どうしたんだ二人して」

 

「一刀あなたって人は私達を裏切るなんて……」

 

「へ?何の話だ?」

 

「とぼけないでよ!酷いよ一刀君!」

 

「だ、だから何のこと?俺には全然意味が」

 

「だからっ!ん?なにその袋?」

 

「え?ああこれ?これは華琳の着替えの下着で……」

 

――ブチッ

 

あ、何か雪蓮と優未から切れた音が聞こえたわ。

 

「あ、あのお二人とも?ど、どうしたのかな?」

 

「……との……」

 

「え?」

 

「一刀の……」

 

「一刀君の……」

 

「「バカ~~~~~~~ッ!!!」」

 

「な、なんで~~~~~~~っ!」

 

「あらあら、一刀が星になってしまったわね」

 

「はぁ、曹操殿。あまり、二人をからかわないでくれ」

 

「あら、良くわかったわね。流石は呉の大提督と言ったところかしら?」

 

「こんなことで言われても嬉しくは無いよ。それで、実際のところはどうなのですか」

 

「簡単なことよ。ただ川原で水遊びをしただけよ」

 

「そうか。なら一刀連れ戻し……その必要はなさそうだな」

 

「一刀ごめんね!今行くからね~~!」

 

「信じてたよ一刀君!」

 

雪蓮と優未はコロッと態度を変えて一刀を助けに行った。

 

「はぁ、これではまた仕事が遅れそうだな」

 

周喩はそういいながらも何処か嬉しそうな顔をしていた。なるほどね。

 

「一つ聞きたいわ」

 

「何か?」

 

「あなたにとって一刀、北郷一刀とはどういった人物なのかしら?」

 

「愚問だな。一刀は呉の……いや、私を支えてくれる大切な人だ。雪蓮と同じくらいにな」

 

そう言った周喩の顔はとても誇らしく、そして、恋をしている女の顔をしていた。

 

「私が一刀を連れ去ったらどうするのかしら?」

 

「そうしたら、呉の全将が全力を持って魏を攻め落とすだろうな。無論私も容赦はしない」

 

「怖いわね。まったく、一刀を好きになったのが運の尽きかしら」

 

「かもしれんな。だが、後悔はしていないさ」

 

「でしょうね。そんな顔をしているわ」

 

二人で話していると雪蓮と優未が一刀を抱えて戻ってきた。

 

「まったくも~華琳に騙されたわ。ごめんね一刀思いっきり殴って」

 

「ごめんね一刀君」

 

「別に気にしてないからいいよ」

 

「う~ん。だから一刀って好き♪」

 

「あ~!ずるい!私も一刀君の事大好きなんだから!」

 

「私の方が大好きよ」

 

「私の方が大大好き!」

 

「私の方が大大大好きなの!」

 

「私!」

 

「私だもん!」

 

「言い合いしているところ悪いのだけれど、しぇれ、孫伯符、話があるわ」

 

そして、私は気持ちを切り替える。一人の女から魏の王へと。

 

「ないよ。今大事な……いいでしょ。話なさい」

 

雪蓮も私の真剣さが分かったのか、王としての顔に戻り一刀から離れて私の前に立った。

 

「一年の停戦の後、私はまたこの地を手に入れるために攻めに来る。それまでに力をつけておくことね」

 

「いいだろう。この土地は先祖代々、我ら孫呉が守り続けてきたのだ。魏になどにくれてやる道理は無い。全力を持って阻止してくれようぞ曹孟徳よ」

 

「楽しみにしているぞ。一年後を……」

 

「ええ、我々も……」

 

暫く互いの目を見たあと目を閉じる。

 

そして、次に目を開けた時に一刀の顔を見て、私は伝えた。

 

「一刀。必ずあなたを手に入れるわ。覚悟して待っていなさい」

 

そのまま門を潜り抜けて城の中へと入っていく。

 

待っていなさい一刀。必ず私はあなたをものにするわ……私は手に入れると決めたものは必ず手に入れるのだから。一刀この大陸も……

 

私は微笑みながら一人廊下を歩き、充てられた部屋へと戻っていった。

 

華琳が城に戻った後、

 

「今まで以上に強敵になりそうだな」

 

「ええ、でも、望むところよ。絶対に一刀を渡さないんだから。でしょ?冥琳、優未」

 

「無論だ」

 

「もちろんだよ!」

 

「あらあら、わたくしの出番はなかったようですわね」

 

「あら管輅じゃない」

 

「管輅さま!いつからいたんですか?」

 

「最初から居ましたよ。それにしても今日はよく飛ぶ日ですね北郷さん」

 

「はぁ、俺なにか悪いことしてるかな?殆どが理不尽なような気がするんだが」

 

「日ごろの行いだな」

 

「日ごろの行いね」

 

「日ごろの行いだと思うよ」

 

「日ごろの行いかしら?」

 

「み、みんなしておんなじこと言うなんて!」

 

「だって、本当の事だし?」

 

「うむ、雪蓮の言う通りだな」

 

「だよね~」

 

「北郷さんはもう少し自分の行動に自覚を持つべきだと思いますわ」

 

「ガクッ!俺、本当に今日は踏んだりけったりだ」

 

うな垂れる一刀だった。

 

葉月「こんばんは!ご無沙汰しています葉月です!」

 

華琳「華琳よ」

 

葉月「やっと……やっとアップできました!」

 

華琳「ホント、何週間かけているのよ。それに話も滅茶苦茶じゃない」

 

葉月「う゛……それを言われるととても痛いです」

 

華琳「それで?遅れた理由は何なの」

 

葉月「普通に仕事が忙しくなって書く時間が減っただけです」

 

華琳「この話の滅茶苦茶さは?」

 

葉月「仕事から帰ってきて疲れた中書いているからだと思います。そう思いたいです!いや、思わせて!」

 

華琳「はぁ、折角の私と一刀の話だって言うのに……が無いなんて……」

 

葉月「は?今なんと仰いましたか?よく聞き取れなかたのですが」

 

華琳「な、なんでもないわよ!それで、読者から非難の言葉を受ける勇気はあるのかしら?」

 

葉月「ここは甘んじて受けましょう!」

 

華琳「潔い良いわね」

 

葉月「今更ですからね」

 

華琳「なら私からの非難も受け付けているわよね」

 

葉月「えっと……それは遠慮したいな~なんて」

 

華琳「それが許されるとでも?」

 

葉月「で、ですよね~はは、ははははは」

 

華琳「たっぷりと罵ってあげるわ。覚悟しなさい。このダメ人間」

 

葉月「がふっ!わ、私はダメ人間なんかじゃ!」

 

華琳「うるさい。喋るな!あなたは豚なのよ。豚はブーブー言っているのがお似合いなのよ」

 

葉月「ひどっ!」

 

華琳「仕方ないわね。ならあと数行待ってあげるわ。さっさと次の告知しなさい。この鈍間!」

 

葉月「うぅ~、なんだか華琳が変なことに目覚め始めちゃったので次回の告知します。次回は『みんなの愛娘』璃々ちゃんのお話にしようかと思います!もちろん紫苑も出て

 

きますから楽しみにしていてください!」

 

華琳「次は幼女なのね。どんだけ変態なの葉月は」

 

葉月「ひぃ~!と、とにかく、まだ仕事が忙しくて一週間以内にアップできる自信はありませんが出来るだけ早くアップできるように頑張りたいと思います!それでは皆さん

 

。次回もお楽しみに~~~!」

 

華琳「次回も読みなさいよ?さぁ、お仕置きの時間よ葉月!!」

 

葉月「や、やめて~~~~~っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

璃々「ねえ、おかあさん。葉月おにいちゃんと華琳さん何してるの?」

 

紫苑「璃々が大人になったらね」

 

璃々「えー璃々はもうおとなだよ?」

 

紫苑「あらあら、なら今度、北郷さまと一緒にお布団で遊びましょうか」

 

璃々「うん!璃々、おにいちゃんとおふとんであそぶー!」


 
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