瞬間移動する能力をなくした一刀ちゃんですが……
この間は特に問題ないように話をしていたものの、
「あ、御使いお兄ちゃん!!球飛んでいくよー!」
「?」
どすん!
「ぁ!」
「一刀様!大丈夫ですか?」
「……ぁ゛…」
何かに飛んできて当たるのって、今日で三度目ですね。
普段なら本能的に避けるのに、一刀ちゃんはあれのせいで素の運動神経は随分と下のようです。
「大丈夫ですか?」
『…体は大丈夫だけど、そろそろ心が折れてしまいそうだよ』
というか、凪さん、護衛(もとい警邏)ちゃんとしてあげてください。
『使えたものが使えないようになるって大変だね』
「はぁ……」
護衛で凪さんがついたわけですが……あまり役に立っていません。
一刀ちゃんとあまり距離がありすぎて。
凪さん、デレはいいですから護衛仕事ちゃんとしてください。
一刀ちゃんの体が持ちませんから。
動きが鈍くなった一刀ちゃんのためにいくつか案を持ってきました。
先ずは自転車です。
あ、まさか二輪は乗れないとか言いませんよね?
「……」
…え?
【いや、あのね?そういうの乗ることなかったから…】
ああ、そういえばそうでしたね。これは気が利きませんでした。
【ううん、これから練習したらいいし……】
いいえ、よく考えてみたら、自転車はどこから持ってきたのかと聞かれたら色々面倒なので没にしましょう。
次はこれローラブレードなんですけど、輪の部分は靴に隠せるようになってる形で、普通に歩いてて、急に早く走らなければならない時に使えると思います。靴が結構高さがあるので背が高くなる効果もあります。
【その辺に触れるとたとえさっちゃんでも許さないよ】「(にこっ)」
あ、はい、サーセン。マジでごめんなさい
【他には?】
はい、最後は自身物です!
なんと!ドラ○もんさんから借りてきた、
【言わさない!】
あ
・・・
・・
・
しばらくお待ちください。
・
・・
・・・
せっかく準備したのに……(。。)ぷんぷん
【最後のはどう考えても問題起こすでしょ?】
まあ、確かにやりすぎた感もしなくもないですね。自重しますw。
【笑うな】
それで?どうしますか?って、ローラーブレードしか選択地ありませんね。どっちにせよ街で使ったら余計に見物にされかねないですが、
【…うん、やっぱローラーブレードで】
乗れます?
【小さい頃描き大会で入賞して副賞でもらって乗ってみたことある】
はー…それじゃあ、問題ないでしょうね。
でもこの世界は舗装道路が少ないですから、そこらへんは気をつけて……
「…(こくっ)」
すぃー
「……」
取りあえず城の中を回りながらちょっと慣れる練習をしています。
城内には舗装されたところが多いですから転ぶ心配も減りますし。
あ、でも曲がり角とかでは注意してくださいね。
巻物を山ほどもっている桂花さんとかとぶつかったら大変なことになりますから
【ちょまっ!それってフラグ!】
いえ、フラグじゃありませんよ。僕が先に角曲がって一々確認していますから、曲がり角から誰か急に出てくることはありません。
【…ほんと?】
はい。
「……」
すぃー
僕のことを信じてまた速度を上げる一刀ちゃん。結構走るんですね。
まあ、いつもの一刀ちゃんの動きを考えたら足で移動するという感覚自体遅いし、不便だと思っても仕方がないことなんですけどね。
ほんと、できたものができないって厄介なものです。
「……」【うん、このぐらいなら大丈夫かな】
大丈夫ですか?
【うん、今度は街に出て…】
って、余裕だからってこっち見ながら喋ったら…
がらり
「!?」
「え?」
ちょうど華琳さんの部屋の前を通っていたのですが、華琳さんが運悪く本を何本か持って出てきてしまって一刀ちゃんの移動線上に立ってしまいました。
一刀ちゃん、ブレーキ
【無理、無理!】
「!!」
ドスン!!
「っ!」
「……??」
あら?
「危ないじゃない。こんなところで走ったら」
ぶつかって大惨事、ってことになるだろうと思ったのが、華琳さんは両手で一刀ちゃんを抱いてぶつかって倒れるのを止めました。
両手というのはもちろん、持っていた本は手にないというわけで、本たちは地面に落ちてます。
華琳さんが本を落として一刀ちゃんから守ったのです。
「……」『ごめん』
「怪我は…ないようね。…て、珍しいものを履いているわね」
「……!」
華琳さんを見ていた一刀ちゃんは、ふと本たちが落ちてるのを見て、ローラーブレードを元に戻して、落ちた本を拾い始めました。
「あら、ありがとう」
それを見た華琳さんも一緒に座って本を集めました。
というか、華琳さんが何で自ら本運びなんかを?普段は桂花さんや侍女に任せるはずなんですか…
全部集めてから、一刀ちゃんは拾った本を持って、華琳さんをじっと見ました。
「……」
「うん?…そう、持ってくれるのね」
「…(こくっ)」
「ありがとう。では、手伝ってもらおうかしら」
そう言った華琳さんは自分の分を本を持って先に歩いて、一刀ちゃんもその後について行きました。
…って
あれ?
書庫はそっちじゃないはずですが……??
たっ
ある部屋の前で華琳さんは止まりました。
「……??」
がらり
「!?」
部屋を開ける華琳さんをみて、一刀ちゃんは慌ててその後について「自分の部屋」に入りました。
部屋に入った華琳さんは、疑問で頭いっぱいになってる一刀ちゃんの顔を見て言いました。
「これらは全部、あなたの本なのよ」
「!」
びっくりした一刀ちゃんは本の中で一冊を開いてみました。
これは…絵本ですか?
「前に聞いたわよ。あなた、絵本とか結構読んでるみたいじゃない」
「……」
ええ、一刀ちゃん本読むの結構好きですよね。やっぱそういう趣味になるしかなかった状況だったのですから。
でも、こっちの本を買うには小遣いではとても無理だったので、本屋さんに貸与金と保証金をあげて借りる形で?そんな風に見てました。道理でいくら本を読んでも一刀ちゃんの部屋の本棚はいつも空なわけです。
「先ずは何冊か用意して来たから、後また読みたい本ができたら私に言いなさい。買ってあげるから」
「!(あわあわ)」
一刀ちゃんは慌てました。手が宙を舞っています。
いや、ほんと高いんですよ。本とか?買ってあげると言っても絵本だからってそんな戦略本より易くないんですよ。
でも一刀ちゃん、この場合、相手は州牧なのですが、大丈夫じゃないんですか?
「何?遠慮することはないわ」
「……」
それでもちょっと不安気味な一刀ちゃん。
「そうね。今度休んで一緒に川にでも出ようかしら?」
「!!」【さっちゃん!この華琳お姉ちゃん偽者だよ!】
そこまで即決な判断をしなくても…いや、正直僕も思いましたのが否定しませんが…
「何?私と一緒に行くのが気に食わないのかしら」
「!(フルフル)」『そんな事ない!いい!嬉しい!すっごく嬉しいよ!』
「そ、そう?」
そんな一刀ちゃんの反応を見た華琳さんは少し驚いた顔をしました。ちょっと嬉しそうです。
規則破ってまで仕掛けた甲斐はあったという、ゲフンゲフン。
さて、華琳さんと一刀ちゃんが持ってきた絵本を本棚に差し込んだら一行が全部詰りました。
これで当分は沢山本を読めますね。
「それじゃあ、私は仕事に戻るからね。遊ぶのはいいけど、先みたいに走り回って『怪我したら大変だから』ほどほどにして頂戴」
「……(コクッ)」
「じゃあ」
がらり
華琳さんは一刀ちゃんを残して部屋を出て仕事に戻りました。
「……<<ぽかーん>>」
確かにちょっとぽかんってなりますね。
僕も流石ここまで効果があるだろうとは思いませんでした。
しかも、怪我したら大変って…言うのが完全にお母さんふりです。
……偽者ですね、アレ
「……!」
一刀ちゃんはふと正気に戻って一度本棚を見てから、また華琳さんが出た引き戸を見てから、一度自分の頬を抓ってみました。
「!!(涙目)」
いや、普通自分で涙出るまで抓りませんよ?
「………(パァーッ)」
そして、一刀ちゃんは痛いように手で抓った頬を触りながら、今まで見せたことない明るい笑顔になるのでした。
・・・
・・
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終わりがあったのでちょっとサービスしました。
こんな華琳さんもいいですね。
萌将伝でりりちゃんを膝に乗せていた華琳さんには素直に萌えました。