No.182100

軍師†無双 ~策がなかなか決まらない~ その2

ショタでもロリでもない恋姫…………難し過ぎる!

2010-11-02 15:50:09 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:12752   閲覧ユーザー数:9496

 

 

 

とりあえず水鏡女学院へと輸送された一刀。

道中、それぞれの名前を聞いたところ吃驚仰天してしまった。

 

 

なんせ全員が全員三国志の歴史に名を連ねる者たちばかりだったのである。

 

 

そんな者たちを手元に置いている水鏡先生はどんな酔狂な人物かと思っていると、これまた麗しの婦人であったことに驚く。

 

 

「北郷さん、なぜあなたはここに来たのですか?」

 

 

水鏡先生――司馬徽に見つめられながら問いかけられ、ちょっぴり恥ずかしくなる一刀。

 

 

「気付いたら森の中で寝てました」

「まあ。それは大変でしたね。これから行く宛てはあるのですか?」

「あるはずもないです」

 

 

あったら逆に怖い。

 

 

「ならここに泊っていきませんか?」

『えっ?』

 

 

周りにいる者たちが一斉に声をあげる。

皆、司馬徽の提案に少なからず驚いているようだ。

 

 

「あの、お気持ちは嬉しいのですがここって女学院ですよね?」

「はい」

「男は?」

「一人もいませんよ」

 

 

微笑む司馬徽に、がっくしくる一刀。

 

 

 

 

「それはさすがに問題があると思うんですが?」

「そ、そうです先生! 男なんか泊めたら孕んじゃいます!」

 

 

一刀の言葉に激しく同意する桂花。

しかし言っていることはむちゃくちゃだ。

 

 

「まあ。桂花はそのようなことを想像していたのですか?」

「ち、ちがいます! そんなことありえません!」

 

 

その話題に激しく反応する者が数名いた。

 

 

「北郷さん」

「はい」

「こんな時こそ人は助けあって行かなければなりません。ですからとりあえず今後の方針が決まるまではここにいなさい」

 

 

司馬徽の言葉に一刀は折れる。

というより本当はとてもありがたかったのである。

知らない世界にやってきて初めて落ち着けるのだから。

 

 

「ありがとうございます。みんなには迷惑かけるけどしばらくお世話になります」

 

 

一刀は頭を下げた。

司馬徽はただ微笑むのだった。

 

 

「それじゃあ今日は北郷さんの歓迎会を開きましょう。みんな手伝ってください」

『はい』

 

 

その日歓迎会が行われ、他の生徒たちにも一刀は紹介された。

 

 

 

 

「あっ、それはこう書きましゅ」

「あ~、また間違えた」

「あわわ、でも凄く上達がはいれしゅ」

 

 

一刀がやって来て一月が経過した。

初めは得体のしれない男として警戒されていた一刀だが持ち前の人柄や性格でいまでは人気者になっていた。

 

 

空いてる時間などは、こうして勉強したりしている。

穏だけは禁止されていた。

 

 

「みんなのおかげで大分わかって来たよ。ありがとうね、孔明に士元」

 

 

一刀は二人の頭を撫でる。

 

 

「はわ~ん」

「あわ~ん」

 

 

二人は気持ちよさそうにしていた。

 

 

「おや、北郷に字を教えに来たのだが先客がいるようだな」

「あっ、公瑾」

「こ、こんにちは一刀さん」

「子明も来てくれたんだ」

 

 

その後も次々と部屋に入って来た。

どさくさにまぎれて穏もいた。

 

 

「これはなんて読むんだ?」

「さっさと死になさいよ」

 

 

 

ちゃっかり桂花もいたりする。

 

 

 

 

ある夜、一刀は司馬徽に呼び出されていた。

 

 

こんな夜に呼び出されるなんてまさかあんなことやこんなことになってしまうのかと淡い期待をしながら一刀は部屋を訪れた。

 

 

「もう生活には慣れましたか?」

「はい。おかげさまで」

 

 

そんなムハーな展開になるはずもなく普通にお茶を飲んでいた。

 

 

「したいことは決まりましたか?」

「…………はい。俺に出来るか分かりませんが」

 

 

司馬徽の問いに一刀は目を逸らさずに答える。

 

 

「大丈夫です。あなたならきっと支えになってくれる人がたくさんいますよ」

「だといいんですけどね」

 

 

一刀がこの世界に来て最初に知ったこと。

黄巾党が大陸に蔓延っていて、民が苦しめられていること。

それを抑制するはずの漢王朝が崩壊しかけていること。

 

 

それだけなら一刀はどうこうしようとする気にはなれなかった。

 

 

しかし、この水鏡塾にいるほとんどの者が家や家族を奪われた者たちと聞いたとき、一刀の中で何かが変わった。

辛いはずなのにそれを感じさせず前向きに生きている彼女たちが眩しかった。

そして、一度賊に襲われた街を見に行った。

そこで一刀の心はきまった。

 

 

天の御遣いとして出来ることがあるはずだ、と。

 

 

「いつごろ発つのですか?」

「あと一週間くらいはお世話になるかと」

「わかりました」

 

 

 

 

そして約束の一週間が過ぎた。

 

 

「水鏡先生、お世話になりました」

「いえいえ。こちらこそ色々と助かりましたよ」

 

 

男手のなかった水鏡女学院では一刀は大いに役立った。

 

 

「あの、みんなは?」

「うふふ。今朝から姿が見当たりませんでした。何処行ったんでしょうね?」

 

 

意味ありげに含み笑いをする司馬徽だが、一刀は見送りに来なかった事を残念に思っていた。

 

 

「行き先は決まっているのですか?」

「はい。とりあえず街に出て義勇軍で募って見ようかなと思っています。まあどうなるか分かりませんけどね」

「ふふふ。前も言った通りあなたはたくさんの人に支えてもらえるでしょう」

 

 

司馬徽にお墨付きをもらい、なんとなく自信がでる一刀。

 

 

「みんなによろしく言っといてください。それじゃあ、行ってきます!」

「ええ。頑張ってくださいね」

 

 

こうして一刀は水鏡女学院をあとにした。

 

 

「みんなをよろしくお願いしますね」

 

 

 

 

山道歩いていた一刀は前方に人影があることに気がつく。

 

 

それが見慣れたものだと言うことにも。

 

 

「な、なんでみんなここに?」

 

 

皆、それぞれ荷物を抱えていた。

 

 

「はわわ、置いて行かないでくださいよぅ」

「あわわ、私たちも連れて行ってくだしゃい」

「アンタ一人でどうこう出来ると思ってんの!?」

「まだまだお前には教えることが多いからな」

「一刀さんはまだまだお子様ですからね~」

「ねねがいないとなんにもできないくせに、調子に乗るなです」

「風はお兄さんを支えたいのですよ。ついでに程昱に改名しました~」

「一刀殿には我々が必要ですからね」

「わ、私もお供させてください」

「私は仕方なくよ。塾で張り合う相手がいなくなるから仕方なくよ! 仕方なくよ!」

 

 

「み、みんな……」

 

 

軽く涙が出る一刀。

 

 

「ありがとうみんな! 俺、頑張るから。これからもよろしく!」

 

 

こうして一刀は最強の頭脳を手に入れた。


 
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