宴は終わった。博士の築きあげてきた計画は終了した。
その結果を博士自身はどう表現したら良いものか、迷っている。
世間や社会はこのように言うだろう。博士達が築き上げてきた、大規模なテロ攻撃は、当局に
よって防がれ、壊滅的な被害を免れる事ができた。
そして、博士と、彼が生み出した人造生命体の計画は失敗に終わったのだと。そのように思っ
ているだろう。
しかしながら当局によって拘束され、現在は留置施設に入れられている博士は、そのようには
思っていない。
確かに計画は完全には成功しなかった。博士が計画していた最終攻撃についても当局の優秀
な捜査官達によって防がれてしまった。自分が生み出した人造生命体の姉妹達は全員拘束され
て、同じ拘置所に入れられている。
だが、それは計画の完全な失敗では無いのだ。
博士はすでに、自分の知能が、この社会に対して大きな脅威を与える事ができるという事を証
明する事ができた。
時代が少し早すぎたという事もある。この社会はまだ、人造生命体を受け入れる事ができるだ
けの器を有していないのだ。
だから姉妹達をこの社会で繁栄させようとする事は失敗した。
しかし当局はまだ甘い。彼らの下した判断によれば、人造生命体である姉妹達の人権を認め、
処分をする事無く、このまま保護観察処分にすると言うのだ。
姉妹達の中には危険な身体能力や反社会的な性格を持っている者もいる。彼女達は博士と同
じように長期にわたる拘束をされる事になっていた。
だが、まだ子供のように純粋な性格を持ち、博士自身にとって、道具として扱われてきたと判断
された姉妹達に関しては、情状酌量が下された。
彼女達は、ある程度の自由が保障された保護観察で済ませると言うのだ。
彼女達の存在は受け継がれていく事になるだろう。そして、この社会はいつか気づく事になるは
ずだ。人造生命体と言うものがどれだけ素晴らしい存在であり、社会の未来の為に必要になる事
であると言う事を。
それに、まだ社会は気づいていないだけだ。
この社会はまだ未熟であり、崇高な考え方をする事はできない。博士はそれを提供しようとした
が拒否されただけ、ただそれだけの計画だったのだ。
いずれ、誰かがこの意志を受け継ぐだろう。
それは博士自身なのか、それとも姉妹達の誰かなのかもしれない。そしてもしかしたら、まだ見
ぬ誰かが、この社会をより崇高な次元へと押し上げるために、大いなる働きをしてくれるはずだ。
博士はそれを期待して、自分が閉じ込められている狭き牢獄の中でほくそ笑んでいた。
彼の計画はまだ終わってはいなかったのだ。
完
Tweet |
|
|
1
|
1
|
追加するフォルダを選択
ナンバーズシリーズ完結になります。拘束された博士。しかしながら彼には、敗北の感情はありませんでした。