No.180803

真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第51話

第51話です

とうほぐ寒すぎわろたw

2010-10-27 22:45:55 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5504   閲覧ユーザー数:5080

はじめに

この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です。

原作重視、歴史改変反対な方

ご注意ください。

 

隣が好きだった

 

あんた達の隣にいることが

 

あたしね

 

あんた達の隣にいられることが

 

好きだった

 

いつだったか

 

あんた達と並んで見上げた空が奇麗で

 

空を見上げているあんた達の横顔が好きだった

 

いつだったか

 

あんた達と並んで歩いた帰り道に

 

あんた達が握ってくれた手がとても暖かくて

 

ずっとこのままだったらいいと思ってた

 

 

いつからだったか

 

 

あんた達があたしの前を歩くことが当たり前になって

 

あたしはあんた達の背中ばかりを見上げるようになって

 

いつか

 

あんた達の横に

 

もう一度いたくて

 

あんた達の背中をずっと追いかけていた

 

あんた達はずるくて

 

あたしが隣に並ぼうとすると

 

あんた達はまた遠ざかっていく

 

…悠

 

あたしが隣にいちゃ駄目?

 

…比呂

 

あたしが隣にいちゃ邪魔?

 

あたしは

 

あんた達と肩を並べて

 

あんた達の『横』にいたい

 

あたしは

 

あんた達の『横』がいい

 

 

「敵軍の兵糧を突きます」

 

短く、しかし力強く

 

少女の声に一同は顔を見合わせ

 

そして頷いた

 

「…よろしいのですね?」

 

眼鏡を拭きながら尋ねる稟

それが視線を合わさないようにと考えてのものだと理解した風は二人から同じく逸らすように眼を伏せた

 

「現状、袁紹軍は二枚看板である顔良、文醜を分散配置…この機会を逃す手立てはありません」

 

視線を背ける二人を余所に桂花は頷き

 

「此方の兵糧の輸送隊を狙う文醜を誘き寄せ、一方で顔良が陣取る鳥巣に奇襲をかけます」

 

幾多に放った伝令からの情報を分析し、かの軍の兵糧があるであろう鳥巣を指さす

此度の戦において兵糧に余裕を持っていないのは袁家も同じ

故に悠は魏軍の輸送隊を襲撃させその不足分を補うという荒技に出ていた

 

戦、ひいては自軍の士気を維持するのに最も重要なのは戦場において兵の状態を常に高く保つこと

 

まして兵が勿論のこと人間である以上、飢えは第一に回避せねばならない懸案事項である

 

その優位性を自軍に保つために悠は二枚看板を分散に配置してまで兵糧の確保を押し進めている

 

ならば

 

「二隊を本陣から遠ざけ、その隙を突き…」

 

戦場の見取り図に並べられた二つの駒を弾き、袁家本陣に自軍の駒を進める

 

「それを田豊殿が見逃すと?」

 

稟の問いに桂花は首を振り

 

「『田豊』がこれを見逃すと見逃さまいと関係ないわ」

 

此方が陣取る居城の周囲を無理やりに囲む袁家の現状

 

「こちらの動きを看破したところでこの配置では一方にしか動けないわ」

 

まして兵を動かせばせっかく誘き寄せるために張っていた策を捨てることになる

 

(ああ…でも)

 

ふと幼馴染の顔が浮かぶ

 

(動くんだろうな…あいつ馬鹿だし)

 

動かざるを得ないのだ

 

二枚看板の喪失は他の勢力が一人の将を失うのとは意味合いが違ってくる

 

袁家にとってこの戦で悲惨なのは将の数が圧倒的に足りていない事だ

 

勿論のことながら将一人の力など大多数同士の戦では意味を成さない…それこそ呂布級の規格外でもない限り…が、将の役割は軍を前線で率いることにある

 

今回の戦において将の数で勝る魏の勝機はそこにある

一度の行動(ターン)で動かせる駒が多いという事実が

 

袁家には

それを補っていたはずの人物が今はいない

 

(此処に比呂がいない)

 

つまるところ比呂の凄さはそこにある

前線にありながらに全体を見渡し、兵を手足のように、それも多方面同時に指示してみせる

 

駒が不足とくれば

 

不足分の駒は自らの駒をさらに分散させることで対処する

あたかもそれが最初から多数であるかのように

 

悠が戦略の天才であるように比呂は戦術の天才なのだ

 

戦においては後発の悠が入ることにより袁家は戦場において自軍主導に構え、且つ臨機応変に駆け回っていた

 

しかし

 

それが今回の戦では初めて後手に回される

陣をどっしりと構えて此方を覗っていた悠を動かすことができればそれは即ち隙を作らせることになる

 

そしてそれこそが

 

魏が

 

桂花がこの戦に投じる一石

 

彼女が彼に勝つための一石

 

「手始めに文醜隊を輸送隊に姿を装った奇襲隊で殲滅します」

 

先日も輸送隊が阻まれた道を差し輸送隊の駒を翻す

 

「敵軍にはここ数日の成果もあります」

「連日に輸送隊が同じ道を通ればこちらが兵糧確保に躍起になっていると見るでしょうねえ~」

 

眠たげに眼を擦る風に桂花も頷く

 

「武はあれど知が足りぬ猪よ…囲うのは簡単だわ」

 

目の前に餌をチラつかせれば確実に食いついてくる

彼女はその手の人間だ

 

「関羽…ようやく出番よ」

 

華琳の目配せに黒髪を束ねた稀代の勇将がゆっくりと頭を下げる

 

(あくまで従順を装うか…義姉妹の誓いとやらも大したものじゃない)

 

主君、劉備の自領通行の手形として預かった彼女は袁家対決の今日まで覇王の言に一切の否定を表情に示さず、唯頭を縦に振り続けてきた

 

魏武の大剣と賞される春蘭をもってして及ばぬ武、主君への一途なまでの敬愛、そしてその美貌

覇王の中で彼女に対する評価は日を追って高くなっており、今や劉備に返す気などさらさらにない

 

「鳥巣はどないすんねん?顔良は文醜ほど単純やないで?」

 

袁家三将軍において取分け思慮深く、『守』を主眼とした彼女の部隊を攻めるのは一筋縄ではいかない

奇襲、撹乱にも不意を突かれることはなく、その守戦の姿は他の勢力からしても評価され、守備とはかく在るべしとまで言われている

 

霞の言葉にそれまで一歩下がっていた凛が前へ踏み出し

 

「まともに相手をする必要はありません…あくまでも目的は敵の兵糧」

 

眼鏡の淵を人差し指で押し上げ鳥巣を取り囲むように筆を奔らせる

 

「火計にて一帯を焼き払い、顔良が守備する間もなく兵糧庫を落とします」

「事は迅速に…これは凪ちゃんにお任せいたしましょう」

 

風が手にした飴を向けられた凪が頷く

 

「二枚看板の片翼が落ち、兵糧を失ったとすれば士気の低下は必須…」

 

たとえ悠が本陣に罠を構えたとしても、矛と後ろ盾を失えば思うようには動けない

 

むしろ動いてくれば数と質に歩がある魏軍を前に成す術はない

 

(勝たせてもらうわよ…悠)

 

ふと、部屋の隅の人物に視線が行く

 

先ほどに彼女の部屋で軍師を問うた相手

 

『あいつ』と同じ事を言ってきた相手

 

(まさかあんたに思い出させられるとはね)

 

素知らぬ顔の天の遣いにフンと鼻を鳴らす

 

(退かないわよ)

 

あの日

 

袁家を出たあの日

 

決めたのだ

 

あんた達と肩を並べてみせるって

 

その為に

 

(私は此処にいるのだから)

 

 

 

 

(しかし…やはりお兄さんも泣かせてしまいましたか)

 

先ほどに桂花の部屋で何があったか

 

彼女の赤く腫れた瞼を見れば解る

 

(流石は魏が誇る種馬です、ですが…お兄さんのおかげで立ち直れましたか)

 

ズビシっと一刀に向け親指を立てた

 

視線の先の一刀はというと

 

荒縄にぐるぐるに巻かれ

 

天井から吊るされていた

 

というのも

 

桂花の絶叫に何事かと部屋に入り込んだ面々が見たのは

 

部屋の隅で目を真っ赤に腫らしすすり泣く桂花と

 

立ち尽くす天の遣いの姿

 

まあつまり

 

そういうことである

 

「だから何もしてないって!」

 

「北郷…往生際がわるいぞ」

 

「何もしてないのに何で桂花が泣いてんのよ!」

 

「戦の最中ゆうのに大したやっちゃホンマ」

 

「だから誤解だって!」

 

「誤解も何も現場押えられて言い訳はないの~」

 

「隊長…観念して罪を認めてください」

 

「おい凪回すなっ!…ちょっ…気持ち悪っ」

 

朝日が昇るまで彼への尋問は続き

 

「…おねが…い…しま…す」

 

「認めるのだな北郷?」

 

「わ…わたしが…まち…がって…ました」

 

「金輪際…私の物に手を出さないと約束なさい」

 

「………」←失神

 

ドサリと音を立てて転がる天の御遣い様に侮蔑を向けていた面々が部屋を後にしたのち

 

一人残った華琳は意識を失ったままの一刀の耳元にその瑞々しい口を近づけ

 

「勿論…貴方も『私』の物なんだから…ね」

 

ぺろりと舌を這わせた後、優雅に身を翻し部屋の扉に手をかけた

 

…知ってるさ

 

彼の呟きが耳に届くことはなかった

 

 

あとがき

 

ここまでお読みいただき有難う御座います。

 

ねこじゃらしです

 

風邪をひきました

 

皆さんも季節の変わり目にはお気を付けください

 

さてさて

 

いよいよクライマックスに向けた何か

 

このあと魏の三人娘の策略を看破した悠君がポン刀片手に迫りくる敵兵を斬っては捨て、千切っては捨て、投げては捨てまさしく悠無双!!!

 

…なんてことはないのであしからず

 

それともうひとつ懸案事項が

 

まじで月がヒロイン化してきたけどどうすんのさ?

 

…どうすんのさ?

 

…麗羽様出番ですよ~

 

返事がない

 

ただのしかb…

 

それでは次回の講釈で


 
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