No.180476

真・恋姫†無双 記憶の旅 9

たくろうさん

真・恋姫†無双 記憶の旅 9

もう少しで10ですね~。
当初の予定では10ピッタリで終わらす筈だったのだが・・・。

2010-10-26 03:23:51 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:11004   閲覧ユーザー数:8077

俺はついに魏の都に到達した。

 

今回は蜀や呉のように軽い気持ちではいけない。外套を常に被っての行動が必要だろう。

 

孫権の言っていたとおり魏は祭りの準備で賑わっている。

 

これはラッキーと捉えるべきだな。

みんな祭りの準備で心が浮ついていて他人のことなんか気に掛けないし、見たところ結構な数の余所者が沢山来ていて、旅人の格好をした人も沢山いる。外套を頭からまるかぶりしても大して目立つこともない。

 

そして貂蝉が言ってたことも旅の途中で実感した。

 

まずは魏に向かう度に起きた頭痛。

次は曹操と近付いてるせいだろうか・・・・。世界が自分を排除しようとしてるという感覚に襲われた。形容するなら突然空中に放り出されたような不安定な感覚。

 

だが立ち止まってはいられない。 

これが最後の山場なんだ。

 

俺は外套を更に目深にかぶり直して魏の都を歩き始めた。

・・・・・・困った。

今回は宿のお金もちゃんとある。だが肝心の宿が祭りが近いせいで何処もいっぱいだった。

 

まあただ考えても無駄だし歩こう。

コソコソ隠れるのは性に合わないし祭り前の活気のせいか、俺も心が若干浮き足立っている。

 

そうだ、どうせ宿に泊まることが出来ないなら屋台でも巡って美味しいものでも食べよう。

 

そう思い立ち歩き始めようとした時人気のない路地裏から声がした。

 

「ちょっといいかしらぁ? ご主人様♪」

 

このやたら野太いイイ声の主は・・・・・・・・。

 

「貂蝉、か?」

 

「そうよん。ちょっとこっち来て貰えるかしら?」

 

「・・・・・ああ」

 

俺は周りを確認して貂蝉の声がする路地裏に入っていった。

 

「で、今まで顔を出さなかったのに突然どうしたんだ?」

 

「ちょっとしたバッドニュースがあってね・・・・・」

 

貂蝉が顔を苦虫を噛み潰した時のようにしながら言った。

 

「何か俺マズイことでもしたかな?」

 

「いいえ、ご主人様はとても良くやってくれているわ。ちょっと目立ち過ぎてる気もするけど。まあご主人様の性格だからしょうがないわね」

 

「それじゃあ他に何があるんだ?」

 

「今回の旅の最後の障害とでも言うべきかしら・・・・・・外史とご主人様の事を快く思っていない者達にこの外史が見つかってしまったのよ」

 

「・・・・・・?」

 

また訳の分からないこと並べてきたな。

 

「まあ満月の夜まで関係のない話だから今は聞き流しても構わないわ。じゃあご主人様、私はもう行くわ」

 

「もう行くのか?」

 

「ええ、これから色々と準備しなければならないからね。外史を渡り歩いてる時、思わぬ出会いがあったのよ。満月の夜には迎えに来るわ。それまでは達者でやって頂戴」

 

そう言うと貂蝉は路地の闇の中に消えていった。

 

「・・・・・相変わらず肝心の部分ははぐらかす奴だな」

 

しかし今はいくら考えても分からない。今は出来ることをやろう。

 

「まあ出来ることって言っても屋台巡りなんだけどね」

 

俺は路地から出て人の流れの中に入っていった。

探せばすぐに見つかると思ったが中々屋台がある通りが見つからないな。

それだけ魏の都は広いってことか。

 

「おっ、あそこの警邏をやっている娘にでも道を聞くか」

 

俺は警邏をやってる最中の銀髪で真面目そうな娘に近づいた。

 

「あの、すいません」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「屋台が並んでる通りの場所を聞きたいんだけど」

 

「ああ、それでしたら・・・・・・」

 

「あちらの通りで事件が発生しました!至急応援をお願いします!!」

 

やって来た警備の兵によって言葉が遮られてしまった。

 

「ああ、俺のことはいいから行っておいで」

 

暇人の案内より事件のほうが大切に決まっている。

 

・・・・・・どうしたんだろう?

目の前の娘はなかなか動こうとしないな。

 

「早く応援に行かなくてもいいのかい?」

 

「・・・・・っ、すいません、私はこれで!」

 

その娘はこちらのことを何度も気にしながら応援に向かった。

もしかして以前会ったことがあるのかもしれないな。桑原桑原・・・・・・。

 

「そこの人、屋台に行きたいの?」

 

突然後ろから声がした。

今はピンク色の春巻き頭の娘と一緒に屋台を巡っている。

 

どうやらさっきのやり取りを見ていたらしくて屋台案内を買って出てくれたのだ。

この娘が言うにはここらの屋台で自分より詳しく案内出来る奴はいないとかなんとか。

そしてこの娘は食う、ひたすら食う。見ていて楽しくなるほどよく食う娘だ。

 

「何処か行きたい屋台はある?」

 

ピンク色の春巻き頭の娘が質問してきた。

しかしさっきから食べ歩きのものばかり食べてるからそろそろ座って食べる物が欲しくなってきたな。

 

「そうだな、次はラーメンを食べたいかな」

 

「任せてよ!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「うん、旨いな」

 

俺達は屋台のラーメン屋の席に座ってラーメンを食べている。

確かにこの娘が太鼓判を押すのも納得がいく美味しさだ。

 

「そういえば何処から来た人なの?」

 

「太陽の昇る国、ジパングという所からだよ」

 

「じぱんぐ?」

 

「まあ、ここらじゃ馴染みの無いだろうね」

 

この時代では当たり前だろうけど。

 

「魏にはどうして来たの? やっぱり祭りを見に?」

 

「祭りはたまたま時期が重なっただけだよ。俺はただ自分を探しに三国を回ってるだけさ」

 

まあそれももうすぐ終わりを迎えるだろうけど。

 

「・・・・・聞いてるかい?」

 

いつまでも返事が来ないので顔を見るとその娘は目を瞑っていた。

 

「なんで目を瞑っているんだい?」

 

「なんかね、おっちゃんの声を聞いてるととても落ち着くんだ・・・・・・」

 

「お、おっちゃん!?」

 

し、失礼な! これでもつい最近まで大学に通っててまだおっちゃんと呼ばれるような年齢では断じてない!!

 

「いや、俺はまだおっちゃんと呼ばれるような年齢ではないよ?」

 

「んー、そんなに顔を隠してちゃ分かんないよ」

 

まあそれもそうか。言うだけ無駄だな。

 

「おや? そこにいるのはもしや信長殿ではないか?」

 

後ろから声を掛けられた。振り返るとそこには関羽がいた。

 

「おや、奇遇だね。関羽も祭りに参加するのかい?」

 

「ええ、蜀も総出で参加ですので」

 

「やっぱりそうなのか」

 

・・・・・・・なんだろう、関羽の視線が物凄いんだが。

 

「あの関羽、どうかしたのかな?」

 

「すいません、顔を一度じっくり見せて貰えませんか?」

 

「何で?」

 

顔なら既に蜀で見たであろう。今更なにを言ってるんだろうか?

 

「まあ、関羽さんなら別に構わないけど・・・・・・ぐっ!?」

 

「どうされたのですか?」

 

頭痛がする・・・・・・・・。そしてこれはただの頭痛じゃない。それにこの地に足付かない感覚は・・・・・・・。

 

「そう、あなたが織田信長なのね。 会いたかったわ」

 

声のする方向を見ると金髪の小柄な、しかし見た目に不釣合いな覇気を持つ娘が立っていた。

 

「曹操殿ですか」

 

関羽がそう口にする。

曹操・・・・・。 そうか、この娘が。急に強くなった頭痛の理由も納得がいく。

 

しかしマズイな、魏に到着してこんなすぐに対面することになるなんて。

運が悪いにも程がある。 いや、自分の行動が招いた当然の結果なのかな?

 

「私に付いて来なさい。私が言いたいことはわかるでしょう?」

 

話に聞いてた通り一度誘いを断った程度じゃ諦めない、か。

仕方ない、行こう。

 

そしてもう一度心に叩き込まねば。

 

 

決して心を開くな。

 

そうすれば身の破滅だと。

もはや言うまでもあるまい。

呉、蜀と同様に玉座の間に連れてかれた俺。最悪の状況だがここまですべて一緒だとなんだか笑えてくるな。

 

前回、前々回同様みんなが俺のことを好奇の目で見ている。

とりあえず俺は外套で顔が一切見えないようにしている。

 

「誘いの件なら一度お断りしたはずだが?」

無駄だが一応は言っておこう。

 

「あら、私がその程度で引き下がると思ってるの?」

 

「そうしてくれると助かるかな?」

 

「却下よ」

 

まあ予想通りの返答だな。

 

「あなたの学校の改善案は見事なものだったわ。恐らくあれほどのものを作ることが出来るのはこの三国にはあなた以外にはいないでしょう」

 

「それは言い過ぎだよ」

 

「もう一度言うわ、魏の下であなたのその才覚を奮いなさい」

 

「それは無理な相談だ。 俺は数日したら此処を離れるからね」

 

「自分探しの為に?」

 

「そう。 三国を旅してるのもその為だし」

 

「ならそれが終わればいいのかしら?」

 

「さあ、どうだろうな。 その時待ってる答えによるよ」

 

以前の俺は曹操の下に居たらしい。だがそれは自分が進んで仕えていたのか否か、それは今の俺には分からない。

 

「ふう、すべて私を納得させるに値しないわね。それとそろそろ顔を拝見したいのだけれど?」

 

「華琳様、それは皆には秘密なのでは?」

 

「構わないわ」

 

まあそうくるだろうな。

恐らく曹操の性格からして拒んでも無駄だろう。それに下手に隠そうすれば自分が北郷一刀です、と自分で言ってるようなものだ。ここはどこまでも他人の空似を押し通すべきだろうな。

 

俺は一度深呼吸をしてから外套に手を掛けた。

シュルッ・・・・・・・パサッ。

 

外套を脱ぎ俺の顔があらわになる。

 

途端に全員の目の色が変化した。

 

「「「隊・・・・長?」」」「兄ちゃん・・・・?」「兄・・様?」「お兄さん・・・?」

「一刀殿・・・?」「北郷・・・・なのか?」

 

「・・・・・かず・・・と?」

 

玉座の間の中の時間が静止したように感じる程みんな俺の顔を見て固まっていた。

やっぱりいくら年月が経ち、さらに髪型が変わっていても魏の人の目は欺けない、か。

 

「北郷ぉぉぉぉ!! 貴様ぁぁ、華琳様を放ったらかして今まで何をしていたんだぁぁぁ!!」

 

隻眼の大剣使い、恐らく夏侯惇であろう人物がいきなり大剣を振るい襲いかかってきた。

 

だが俺は簡単に夏侯惇の攻撃を受け流してそのまま地面に組み伏せた。

 

普通なら武器すら使わずこんないとも簡単に夏侯惇のような猛将に技を掛けることなんて不可能だろう。

それが可能だったのは夏侯惇が反撃をまったく予想してなかったからだ。完全にこっちが逃げることを前程に攻撃していた。だからこんな簡単に技が決まった。

 

「・・・・何処の国であろうが初対面の相手に刃を向けるのは無作法だと思うのだが?」

 

「な・・・にを言っておるのだ北郷?」

 

「何処の誰と勘違いしてるか存じ上げないが俺はあなた達の知ってる者ではない」

 

「そんな。 どう見てもあれは隊長や」「私達が一刀殿を見間違うわけが・・・・」

「だってあの声に優しい目、兄ちゃん以外なわけない!!」

 

 

「くどいよ。俺は織田信長だ」

 

・・・・・・心が痛い。

頭痛なんかどうでもよくなるくらい否定することが、ここにいる人達の希望を削ぐという行為が、すべてが心を痛ませる。

 

「やめなさい、みんな。悪かったわね、それとそろそろ春蘭を離してあげてくれないかしら?」

 

いつまでも拘束してても意味が無いので俺は夏侯惇を解放する。

 

「華琳様、ですが!!」

 

「みんなも分かるでしょう? あの一刀が春蘭を倒せるわけないじゃない。それにあの種馬が私達のことを忘れるわけない。こいつは別人よ」

 

「理解が早くて助かるよ」

 

だが周りはまったく納得してない顔だ。

 

「曹操の言ってた話、とりあえず受けるよ。ここにいる滞在期間の間で旅の後ここに仕えるか決めさせて貰う。それでいいか?」

 

このままだと埒が明かない。とりあえずは妥協案を出してこの場を離れたい。これ以上周りの視線を浴び続けるのは耐えられない。

 

「ええ、構わないわ」

 

こうして魏での生活は始まった。

ダイナマイトを抱えたままも同然な生活だがやってやる。

 

俺に迷っている暇なんてない。

 

~続く~

私は今自室で秋蘭と共にいる。

 

「よかったのですか、華琳様」

 

「何のこと、秋蘭?」

 

「本人は否定してますが織田信長という男、他人の空似では済ませれないほど北郷に瓜二つです。皆の仕事に支障が出るのでは・・・・」

 

「そんなことで貴重な人材を手放すことは出来ないわ。それにその程度で支障をきたすような者がいればお仕置きが必要ね」

 

「華琳様・・・・・」

 

「秋蘭、悪いけど一人にしてくれないかしら・・・・」

 

「・・・・・・・・・御意」

 

察してくれたのか秋蘭は素直に部屋から出て行ってくれた。

 

秋蘭にはみっともない所を見られてしまったわね・・・・。

この曹孟徳がたった一人の男の登場でこんなにも動揺してるなんて。

 

「織田信長・・・・・ね」

 

いずれにせよ謎の多すぎる男だ。

その男の正体、この目で確かめよう。


 
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