血を血で洗う議論は遂に終結を迎えた。
とりあえず一刀は一旦魏に戻ることが決定した。
他の二国は誰一人として納得していなかったがとりあえず我慢することに。
とりあえず。
そして魏の重鎮たちは呉蜀の連中が変な気を起さないようにと次の日早々に蜀を旅立っていった。
道中、誰が一刀を馬に乗せるか血みどろの戦いが起こった。
そして、勝者が決まるはずもなくそのまま許昌に辿り着いた。
一刀は一人で馬に乗っていた。
街に入ると、民たちはボロボロになった華琳たちを見て、戦でもあったのかと想像した。
そしてちょこんと馬に乗る少年が天の御遣い北郷一刀だと報せが入ると人々は大いに驚いて、歓喜した。
大陸を平和に導いた天の御遣いの帰還に街中が沸いた。
そして、数々の女性が可愛らしいその姿に濡れた。
「今日から我々警備隊の隊長である北郷一刀くん様が復帰するので隊長代理だった私は李典、于禁と共に副隊長となるのでよろしく頼む」
魏に戻った次の日、一刀は警備隊に復帰した。
警邏などで街を回ることで、天の御遣いが帰って来たということを民が、自分たちの目で確かめることが出来るからだ。
「えっと、俺が隊長の北郷一刀だ。久しぶりの人も中にはいるだろうからまたよろしく頼む。この姿に違和感があるかもしれないけどあんまり気にしないでくれると嬉しい」
簡単に挨拶をする一刀。
「隊長おかえりなさい!」
「お久しぶりです!」
「可愛くなりましたね!」
「待ってました!」
「またよろしくお願いします!」
一刀のことを知っている者たちは様々な声を浴びせる。
それは全て喜びの声だった。
しかし、一刀の事を知らない者からは不満の声が漏れる。
「楽進様、そんなガキが天の御遣いなんですか?」
「そうですよ。そんなガキに従ってられませんよ」
「俺も楽進様が隊長でいいと思いまーす」
「ウィー」
確かに知らない者たちからすれば自分たちの上官がこんな子供というのは納得できない。
しかし、彼は言ってはいけないことを言ってしまった。
「隊長に不満がある者は前に出ろ」
凪の声に数名が前に出る。
「では死ぬか」
「螺旋槍でケツの穴掘られるか」
「一日中罵倒されるか選ぶといいのー」
『えっ!?』
いきなりマジギレしている副隊長たちに焦る隊員。
「いいから早く選べ」
「せやで~、螺旋槍が血を欲しがっとるわ」
「さっさと選ぶのー! このクソヤロー共!」
三人は武器を取り出し、殺る気マックスとなっていた。
「ちょっ、三人とも! 武器しまって!」
「しかしこいつらは隊長を侮辱しました。それは死をもって償うべきかと」
「こういう奴らは痛い目みなわからんからな~」
「こんなウジ虫どもは生きてる価値がないのー」
目がマジな三人を必死に止める一刀。
三人はしぶしぶ武器を収めた。
それを見た文句言っていた者たちは一刀に感謝し、忠誠を尽くすのだった。
「それじゃあ警邏に出ようか」
ここでも誰が一刀と行くか戦いが起こった。
このままでは詰所が破壊されてしまうので一刀が止めに入った。
ジャンケンで決めることにした。
「た、隊長!」
「どうしたの?」
一刀は凪と街を回っていた。
凪は嬉しさと恥ずかしさで顔を赤らめていた。
ちらちらと一刀を見て、目が合っては目を逸らす繰り返しだった。
「て、手を繋いでもよろしいですか?」
勇気を出した一言。
大人の一刀もいいが、小さな一刀はもっといい。
そんなことを考えていた凪は一刀くんともっと触れ合いたかった。
「ん? いいけど」
「…………で、では」
凪は一刀の小さな手を握ろうと手を伸ばす。
「どきやがれガキ!」
「うわぁー!」
「隊長!」
いきなり走って来た男に一刀はぶつかって弾き飛ばされた。
「その男は食い逃げだ!」
店主らしき人物が追いかけて来たのを見て男は逃げ出す。
「いてててて、くそ、捕まえなきゃ!」
幸い一刀に怪我はなく、食い逃げ犯を追いかけようとした。
「隊長に手を出す輩には、死あるのみ」
名ゼリフと共に凪の身体は気に満ち溢れる。
それは今まで凪が感じたことの無い気の量だった。
「裂蹴紫炎弾!」
それは別人の技だと一刀が叫んだときには時すでに遅し。
そこら中の店はボロボロになり、食い逃げ犯は瀕死の状態になっていた。
「家屋全壊……!」
幸い死者は出なかった。
「大丈夫ですか隊長!」
目標を消滅させた凪が一刀に寄って来る。
「ああ、俺は大丈夫だよ」
街はダメなようだ。
「よかったです!」
凪は嬉しさから一刀を抱きしめた。
「あは、あはははは」
復帰早々の大惨事に一刀は笑うしかなかった。
これにより一刀はしばらく警備隊に出禁となるのだった。
真桜と沙和は浮かばなかったw
ごめんね☆
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一刀を放置したまま白熱する議論。
徐々に壊れ始める各国の重鎮。
すでに暴走を始めた夏侯妙才。
呑気に璃々とデートを楽しむ一刀。
再び三国志の舞台に降り立った北郷一刀はどこへ行くのだろうか。
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