No.180201

PSU-L・O・V・E 【L・O・V・E -裏切り-】

萌神さん

EP12【L・O・V・E -裏切り-】
SEGAのネトゲ、ファンタシースター・ユニバースの二次創作小説です(゚∀゚)

【前回の粗筋】

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2010-10-24 22:15:30 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:722   閲覧ユーザー数:721

発射されたフォトン光弾は、ヘイゼルが握っていたジートシーンのフォトン・エッジ(フォトン粒子で構築されたブレード部分)を撃ち抜き、衝撃で手からすっぽ抜けた剣の柄が空しく地面に落ち、使い手を失った剣からフォトン・エッジが消失した。

「ビリー……貴様は……」

ヘイゼルは痺れの残る右手を押さえ、自分の額を狙って突き付けられたビリーの銃口を見詰め言葉を詰まらせた。

「ああ、裏切った……だが、お前が悪いんだぞ? お前にユエルちゃんは幸せに出来ん」

何時もと変わらぬ表情と口調でビリーはヘイゼルを糾弾する。

「何時だったか、お前は"自分の絶望に付き合う必要は無い"と言っていたよな?」

思い出す。

ディ・ラガン討伐ミッションへ向かう道すがら、ヘイゼルは確かにそんな事を言ってビリーを怒らせた記憶がある。

「その言葉に従わせて貰うぞ……ユエルちゃんも、そしてアリアもお前には任せておけない」

ヘイゼルがビリーの真意を図ろうとして、無言で彼の顔を睨んでいると、ビリーはふと溜息を吐いた。

「解るか、俺の気持ちが……? お前はいつも、そんな調子で世間を渡って敵を作って……なのに何時だって俺が望む者達は、お前を求めた……甲斐の無い話しだろう? お前の尻拭いをして良い顔をする俺は、滑稽な只の道化(ピエロ)だった!」

ヘイゼルの額に銃を向けたまま、ビリーは顔を歪めて吐き捨てた。

「此処に来る途中でアリアに会った……詳しくは解らないが、彼女泣いてたぜ。嫉妬に任せてユエルちゃんに酷い事を言ってしまったと後悔していたよ……。だが、その原因を作ったのは、他人の気持ちを顧みない、お前自身だ」

ビリーが顎でヴィエラを示す。

「可哀相にアリアは、あの女(ヴィエラ)に良い様に利用されちまったのさ。だからこの際言っておくぜ、お前はそう言う所を直せよ……でないと周りの人間が傷つく事になるんだぜ……」

ビリーの言葉に返す言葉を失くし、ヘイゼルは俯いていた。

全てがヴィエラの策略によって仕組まれ、俺達は彼女の思うままに踊らされていたのか……。

他人の心の隙に付け込む魔性の女……ヴィエラはビリーをも陥れたと言うのか!

「なあ、約束は守ってくれるんだよな?」

ビリーが顔をヴィエラに移し問い掛けると、彼女は微笑んで頷いた。

「ええ、彼を始末したら約束通り、姉さ……ユエルは貴方にあげるわ」

微笑みは偽りの笑み。

ユエルの破滅を望むこの女が、彼女を解放する筈が無い。

「ビリー止せ! この女がそんな条件を飲む訳が……!」

「黙れよッ! お前の言う事に振り回されるのは、いい加減ウンザリなんだよ!」

だが聞く耳を持たないビリーは、激しい剣幕でヘイゼルの言葉を途中で遮った。

返す言葉も無いヘイゼルに、憐憫の余裕さえ見せてヴィエラは問う。

「残念だったわね……希望を断たれた感想はどうかしら?」

「一つ……聞かせろ……」

万策は尽き、虚ろな表情をしたヘイゼルの言葉にヴィエラは一瞬吹き出していた。

「あら、『冥途の土産』ってやつかしら? 良いわよ、知っている事なら教えてあげる。でも変なフラグは期待はしない方が良いわよ。答え終わったらちゃんと始末させて貰うから」

獲物を嬲る猫の様に余裕を浮かべるヴィエラにヘイゼルは訊ねた。

「お前達の正体は結局なんなんだ……何の為にこんな事をする……?」

ハリス・ラブワード邸を訪れ、ユエルと彼女を取り巻く謎は断片的に知る事は出来た。だが、まだ解らない事がある。

ユエルを姉と呼ぶヴィエラと彼女達の正体、ヴィエラが言う『復讐』の理由が……。

「……私達はエンドラム機関の手により、SEED殲滅戦用次世代SUVの管制機として創られたの―――」

勝利者の余裕からか、謳う様にヴィエラが説明を始める。

「そのコンセプトはSEED汚染生物の群れを強襲し、敵陣の中央にてSUVを召還、SEEDを殲滅する事が目的の言わば特攻機……。当初は、その管制役をキャストが果たす予定だったのだけど、キャストを特攻機として運用する事には機関内でも倫理上、人権上で問題があった……。そこで考えられたのが、キャストではなく、マシナリーでもない、他に隷属しない人格(パーソナル)を持った機人(人型マシナリー)つまり私達の存在よ。先行試作体(プロトタイプ)として創られた姉さんの素体と、私達の心臓部である『ハイブリッド・A・フォトンリアクター』(HAFリアクター)の開発は二分化され、同時に進行されたのだけどHAFリアクターの開発は難航したわ。

そのお陰で、先に完成していた素体の姉さんは研究所で生活し、人格(パーソナル)の初期教育を受ける事になったの。でも、それが間違いの始まり……研究者達は姉さんの人格教育を誤った。甘やかし情を掛け過ぎたのよ」

無知故に純粋で無垢な少女に、閉塞的な環境下に置かれていた研究者達は安らぎを感じたのか、優しさと慈愛を持って接し、ユエルの頭脳体は、その愛情を受け人格を形成した。

「……その結果、完成したユエル・シリーズのプロトタイプたる姉さんの人格は、戦機としては不向きになっていた……。傷つく事を恐れ、傷つける事を恐れる欠陥の戦闘人形……。性能を活かしきれない機械なんて失敗作よ。そんな物を機関の上層部に報告できる訳が無い。こんな状態では姉さんは廃棄を言い渡されるのは目に見えていたわ。そこで研究員達は大慌てで姉さんの頭脳体に、隷属(スレイブ)となる戦闘用の副人格を組み込んだの。それが『デュアルブート・システム』。状況により、戦闘用のプログラムを起動する事で、姉さんの戦闘スペックを完全に引き出そう考えた。それでも、姉さんは単なるマシナリーと変わらない戦闘効果しか出せなかったわ。エンドラムの上層部がそんな物で満足する筈が無かった……でしょう? 彼等の求めていた物は、従来のマシナリーやキャストを凌ぐ戦闘力を持つ存在(モノ)だったのだから……。上層部からユエル・シリーズの更なる改良を迫られた研究員達は、今度は別な開発コードを用いて上層部の希望に叶う戦機を創り出そうと考えた……。優しさや愛らしさ等の余計な物は必要ない。求めたのは完全無欠の戦闘人格を持つモノ……開発コード『Vieira・Proto-type』(ヴィエラ・プロトタイプ)……それが私よ!」

ヴィエラはその事実を嫌悪するように吐き捨てた。

「私の完成後間も無くして、エンドラム機関は一連のSEED騒動の責任を追及され解体された。残党と化した私達は郊外にある製薬会社にカモフラージュされた研究施設に身を隠す事になったの……。そして運命の日……研究所がSEEDに襲撃された、あの夜……! 姉さんはSEEDの群れを一掃する為にL・O・V・Eを召喚し、結果、SEEDの群れと共に研究所は壊滅したわ。多くの研究員達を巻き添えにしてね!」

ヘイゼルは彼女の言葉に息を飲んだ。ビリーも眉を顰めている。

ヴィエラがユエルを人殺しと罵った意味がやっと解った。

それが彼女の失われた記憶……背負った罪なのか―――。

頬を撫でる熱い風、崩壊したコンクリートの残骸、夜空を照らす緋色の炎、黒煙に煙る闇色の空……。

それはユエルの悪夢でもあり、ヴィエラの悪夢でもある。

 

「姉さんの設計者である研究員は、自らが招いた結果に放心する彼女を連れ、壊滅した研究所から脱出すると、姉さんのメモリーを操作し、その罪の記憶を封じ開放した……戦機(マシナリー)としてではなく、人(キャスト)として生きて行けるようにと……」

ヴィエラの顔が歪む。その表情は泣き顔なのか笑っているのか解らない。

「なのに……なのに私は只一人、研究所に残された……。エンドラム機関が解体された今となっては、残党となった私達に帰る場所等無い……。私は理解した! そう……私は不甲斐無い姉さんの代わりに創られた完全なる戦機……。只、闘う為だけの機械(マシナリー)! 愛される事も……愛する事も知らない殺戮人形(キリングドール)! 私が……私だけが―――!」

感情が爆発したようにヴィエラは高らかに笑い声を上げた。

絶望と怒りと憎悪と妬み、それらが入り混じった複雑で哀れな狂気の哄笑。

歯車は全て揃った。

不協和音を上げて軋んでいた真実が動き出す。

解き明かされた真実を紡ぎ合わせ、ヘイゼルは全てを理解した。

エンドラム機関で博士が作った存在(モノ)。

L・O・V・Eと呼ばれる次世代SUVと、ユエルとヴィエラが生まれた理由。

愛されて育ったユエルと、愛されず……いや、愛される事を生まれた時から奪われていたヴィエラの嫉妬と憎悪。

「同じ戦機として生まれたのに、このままでは公平じゃないでしょう? だから私は正すの、この理不尽を全てを壊す事でね!」

エンドラム機関も、SEEDも全く関係が無いのだ。

本人には自覚が無いのかもしれない。だが、この戦いは一人の女の嫉妬が生み出した八つ当たり的な復讐劇だったのだ。

蓋を開けてみれば何とも志の低い戦いだ。

(俺も、ユエルも、アリアも、ビリーも……こんな……こんな事の為に……利用されたのか……)

「ハハハ……クハハハハハッ……!」

ヘイゼルは堪えきれずに思わず笑い出していた。

「ショックで壊れたのかしら? 本当に人間の心は解り易くて脆い事……」

ヴィエラはヘイゼルの笑いを狂人の哄笑と受け取った。

「何が可笑しい?」

ビリーも怪訝そうに眉根を寄せながら、銃口をヘイゼルに突き付ける。

「何って……解らないか? お前の芝居がだよ」

「完璧だと思うが?」

額を片手で押さえ、笑いを噛み殺すヘイゼルに対しビリーが顎に手を当て首を捻る。

何かがおかしい……そんな雰囲気を感じ取り、ヴィエラが僅かに眉を顰めた。

「そんな余所余所しい喋り方をしておいてか? この"ham actor(大根役者)"」

「言ってくれるんだぜ、相棒!」

不意にヘイゼルが身を翻し、身体を反転させビリーの背後に回り込む。ヘイゼルの陰から姿を見せたビリーの銃口はヴィエラに向けられていた。

「なッ!?」

一瞬の出来事にヴィエラは、そう声を上げるのがやっとだった。

ビリーのハンドガンから放たれた三発の光弾。ヘイゼルは落としたジートシーンを掬い取ると剣を構えてビリーの横に並び立った。

ヴィエラは大きく仰け反りよろけていたが、何とか踏ん張り持ち直す。

三つの弾痕が空けられたヴィエラが羽織る緋色のケープが大きく翻っている。

「全弾かわした!? やるんだぜ!」

至近距離からの銃撃をかわされたのを知り、ビリーは賞賛の口笛を吹いた。

ヴィエラが目を見開き歯噛みする。

「お前達は何故―――!?」

こんな逆転は有り得ない、想定すらしていない。ヴィエラは予想外の出来事に混乱していた。

彼等の行動はユエル・G・トライアにも監視させ把握していた。二人が口裏を合わせていた形跡は無かった筈だ。

「付き合いも長いとな……こいつが何か企んでる事くらい解っちまうのさ」

それが嫌だとでも言いた気にヘイゼルは苦笑する。

(だからアドリブで仕組んだと言うの!? 馬鹿な……有り得ないわ!)

ヴィエラはビリーに顔を向けて問う。

「お前も……ユエルを手に入れたくは無かったの!?」

観察からビリーがユエルに好意を抱いている事を理解したヴィエラは、ビリーに接触すると言葉巧みに彼を唆(そそのか)したつもりだった。

「男には愛より勝るものがあるんだぜ……他人の心理を利用するように学んだのかい? 大した心理作戦だが、全ての駒が自分の言うとおりに動いてくれると思ったんだぜ?」

鼻先で右手の人差し指を振り、舌を鳴らしてビリーは笑う。

「甘かったな、俺達はロッカーだ! 常識に逆らい続ける魂だッ! 人様の書いた筋書きで踊るのなんかクソ喰らえなんだぜ!」

「こいつと違いロッカーを名乗る気は無いがな!」

ヘイゼルとビリーは、それぞれ剣と銃を構えた。

 

さあ、反撃といこうじゃないか―――!


 
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