No.180197

無真・恋姫無双 四話上編~立ち向かいたいこと~

TAPEtさん

思ったより長くなってしまったのでここで一度切ってしまいました。
展開的には短いですね。すみません。

2010-10-24 21:52:54 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2966   閲覧ユーザー数:2565

その後、白蓮の城のところで居候しながら盗賊討伐で名をあげている日々が続いた。

 

愛紗は「こんなことばかりしていいのでしょうか」と焦っていたが、早まることはない。

 

大義を持つには必要なものがある。

 

天の時、地の利、人の和。

 

今はその一つ、「人の和」を重ねていく作業のうちだ。

 

そして、もう一つ、天の時を待っている時期でもある。

 

そして、やがて時は来た。

 

以前になかった大きな凶作、その中では管理たちの悪政は酷くなりつつある。

 

匪賊の出没が頻繁となり、暴力が天下に漫然するようになり、大陸全土がやがては混沌の渦になり始めている。

 

皮肉にも、弱き人たちが苦しめば苦しむほど、私たちが立ち上がる日が近づいてきた。

 

そして、

 

 

影子「今こそが好機だ」

 

私は三人にそう宣言した。

 

愛紗「やっとですか」

 

愛紗がため息をしながらいった。

 

無理もない。今街に出ても、世を心配する声、己の命の心配をするため息は気安く聞こえる。

それほど厳しい世の中になったのだ。

 

影子「遅かったと思っているだろうが、仕方がないことだ。悪政と凶作に虫息をしていた民たちは、やがて自分たちが生きるために立ち上がった。その形がどうであって、この行動がまた違う民たちを苦しめることになることは確実。そんな行動が、大陸全般に広まっている」

 

愛紗「民たちが生きるために暴力を晒し、また他の民たちを苦しめる。考えたくもない話です」

 

影子「だけど、これが事実だ。そして、私たちはこの時を利用して、これからの乱世のために準備をしなければならない」

 

鈴々「準備って何なのだ?」

 

鈴々がベットに座って問う。

 

影子「今は多数の民たちを率いて、河北地方の半分近くを占めている輩、言わば黄巾党だ。奴らを討伐するために、漢王朝はこの地の諸侯たちを煽る。もちろん公孫賛も同じだ」

 

桃香「そうだね。そういえば先、朝廷からの人が来たって白蓮ちゃんが言ってたっけ」

 

影子「そうだ。そこで私たちも独立して参加し功をあげれば、朝廷からの何かの賞があるだろう。先ずはどこか小さいところでも私たちだけの場を持てば、そこから少しずつものを進めることができる」

 

愛紗「しかし、そうするには私たちの軍が必要ですね」

 

問題はそこだ。

 

居候の私たちに、はてさて公孫賛が私たちに義勇軍を集めるように許可をくれるかどうか。

 

影子「さすがに桃香の頼みでも、ただではうまくいかないだろう」

 

桃香「じゃあ、どうすればいいの?」

 

影子「うーむ、実はそこが問題だ」

 

鈴々「考えてないのだ?」

 

影子「というより、こっちから言うのはどうしても厚かましく見えてしまうからな……」

 

公孫賛とて義勇軍を集めなければなるまい。

 

そこで、私たちが独立するために自分のところで義勇兵を集めるとしたら、ずうずうしいのもほどがある。

 

何か、あちらから機会を作ってくれたらいいのだが、そんな好都合が……

 

 

あった……

 

星「伯珪殿、今こそ器量の見せ所ですぞ」

 

まさか、趙雲が助け舟をしてくれるとは。

 

白蓮「うぅ…仕方ない、できればそれほど多くないほう頼むぞ。私も義勇兵を集めなければならないから」

 

影子「ありがとう。感謝する。桃香、愛紗、そういうわけだ。義勇軍募集は頼むよ」

 

桃香「まっかせーなさーい♪」

 

愛紗「御意、では、早速行動しましょう」

 

白蓮「星。影子たちに兵の武器と兵糧を提供してくれ」

 

星「了解した。では影子殿、一緒に参ろうか」

 

鈴々「鈴々も行く!」

 

影子「ああ」

 

 

・・・

 

・・

 

 

兵站部に向かう途中、

 

影子「先ずは感謝せねばなるまい」

 

私は趙雲に礼をいわざるをえなかった。

 

星「別段、礼を言われることはしておりませぬよ」

 

影子「ふー、お主はいつもそうやって奥に手を隠しているな。私たちの意図を知って、白蓮殿を乗せてくれたのだろう」

 

星「さて、何のことやら」

 

趙雲、中々怖い才の持ち主だ。敵に回したら手強い相手となるだろうな。

 

星「ところで影子殿、今後の討伐のための策とかはあるのか?」

 

影子「特に決まったことはない。何せ、まだ集める兵の数も解ってないからな。今のところは、数に合わせて相手を選ぶような戦いの形になるだろう」

 

しかし、それだけだと朝廷が目を見張るほどの功はあげれないことも事実。どうすればいいのやら…」

 

星「ふむ、今のところはそれが妥当だろうな」

 

影子「何せ、今になってはこうしているが、正直私は統率には向いていなかったりする。誰かいい策士でも手に入れられたら良いのだがな」

 

こんなところで諸葛亮や鳳統に会えるわけでもないしな。

 

影子「趙雲殿は…」

 

星「星でよろしい」

 

うむ?

 

星「そう驚いたような顔をしても困るのだがな」

 

影子「あ、ああ、すまん」

 

少し驚いた。

 

真名というのは、随分と大事なものではなかったのか?

 

星「それほど大事な真名でこそ、同じ道を歩むと信じる相手に託すのは当然のことだ」

 

影子「同じ道?」

 

星「苦しむ民たちのために武を振るう。そう決めているのだろ?」

 

私は……どうなのだろう。すくなくとも桃香はそれを望んでいるはずだ。

 

私は彼女から昔の私の意志を見た。だから、私は彼女の意志を、私の意志をもう一度信じることにしたのだ。

 

皆が幸せにできる世の中にする。

 

趙雲、星が言っていることがそれと同じ道だとあれば、

 

影子「ああ、そうだな」

 

星「なら、同じ道を歩む同士、今は別れようとも、またどこかで会えるだろう。その道を両方ともずっと歩いているのならな」

 

影子「星は、道を外すつもりはないのだろ?」

 

星「無論。影子殿も、どうかこの道から外れることがないように祈る」

 

影子「…ああ」

 

星は意味ありげな微笑みをして、先へと進んだ。

 

鈴々「お兄ちゃん、何の話してたのだ?」

 

聞いていたなかった鈴々が遅くに問う。

 

影子「大したことではない。…鈴々は黄巾党たちをあったらどうするか?」

 

鈴々「弱い者をいじめるやつらはぶっ飛ばすのだ」

 

影子「……くふっ、それでいい」

 

鈴々「(ぐしゃぐしゃ)にゃああっああ」

 

思わず、鈴々の頭をぐしゃぐしゃにしてしまった。

 

 

 

 

一週間ぐらい経って、私たちの義勇軍が集まった。

 

影子「って多いなおい」

 

愛紗「何を言っているのですか。今後のことを考えれば、少ないぐらいですよ」

 

影子「いやいや、十二分多いから。六千って一体どこから集めたんだよ」

 

白蓮には本当に悪いことをした。

 

いや、逆に考えよう。これ以上ここに残っていたら、後には街の若者たちは全部、私たちについてくるといってきたかもしれない。

 

それほど、愛紗と鈴々の知名度が高かったということだ。

 

桃香「私!私は?」

 

影子「桃香は………優しさで勝負だろ?戦争する兵士たちを惹くにはちょっと…」

 

桃香「はうぅぅ……」

 

この子はへこむのは早すぎる。

 

愛紗「桃香さまの優しさは、戦うためではなく平和のためにあるものです」

 

鈴々「街の人たちからはお姉ちゃんが一番人気だったのだ」

 

二人のフォローに

 

桃香「……うん!そうだよね♪」

 

開き直るのもはええなおい。

 

まぁ、集まったのは仕方ないな。

 

桃香「でもこれからどうするの?ご主人さま、何かあるの?」

 

影子「いや、実は特にはない。鈴々は何かあるか?」

 

鈴々「黄巾党を片っ端からやつけるのだ」

 

影子「お前は簡単でいいよな~」

 

愛紗「何をのんきなことを言っているのです」

 

影子「ほ~、そういう愛紗には何かあると」

 

愛紗「えっ?あっ、いや~その…私たちは、戦うのが専門でありまして、些細な策とかは…」

 

愛紗はもう少し先の手を読んで発言したらもっときっちりとした子になっただろうにな…

 

でもあまり完璧だとこっちが困るね。

 

 

 

それがそうとして、本当にどうしようか……

 

桃香「ご主人さま」

 

影子「うん?」

 

桃香「鈴々ちゃんと愛紗ちゃんには聞いて、私には聞かないの?」

 

影子「……」

 

鈴々「……」

 

愛紗「……」

 

桃香「誰か何かいって~(涙)」

 

桃香は本当にいじめ甲斐があるよね。

 

まぁ、それはそうとして、本当にどうしようか………

 

 

 

 

??「しゅ、しゅみましぇん!あぅ…噛んじゃった」

 

 

誰が声をかけたような……といっても誰もいないし。

 

??「はわわ…こっちです、こっちですよ」

 

桃香「えっと……声は聞こえど、姿は見えず……」

 

愛紗「ふむ?一体誰が……」

 

影子「…二人ともひどいな……」

 

鈴々「そうなのだ、チビを馬鹿にするのはよくないのだ」

 

と、私たちの目下(鈴々の目線)にいたのは

 

少女A「こ、こんにちゅわ!」

 

少女B「ち、ちは、です……」

 

子供?

 

帽子と腰可愛いリボンを付けている可愛らしいお譲ちゃん二人がいた。

 

影子「どうしたんだ?迷子にでもなったのだ?なら街の警備に……」

 

少女A「ち、違います!あの、私は、諸葛孔明を申しましゅ!」

 

少女B「わ、私はえと、その、あの、うんと、ほと、ほーうとうでしゅ!」

 

……え?

 

桃香「えっと…諸葛孔明ちゃんと…?」

 

少女B「は、はい、鳳統れしゅ!」

 

鈴々「二人ともカミカミなのだ」

 

鳳統「はうぅ……」

 

おいおい、待てよ。私は確かに策士欲しいとは言った。諸葛亮と鳳統ほしいなぁとかも言った。

 

でも、

 

影子「ご都合主義すぎる……」

 

孔明「しゅ、しゅみません!」

 

影子「あいや、別に君たちに言ったわけではない」

 

天だ。全て天が悪いんだ。

 

愛紗「諸葛孔明に鳳統か…あなたたちのような少女がどうしてこんなところに?」

 

彼女らが諸葛孔明と鳳統だからだよ。愛紗……といっても説明にならないか。

 

孔明「あ、あのですね、私たち、荊州にある水鏡塾という、水鏡先生が開いている私塾で学んでいたんですけど、でも今この大陸を包みこんでいる危機的な状況を見るに見かねてそれでええと」

 

鳳統「力のない人たちが悲しむのが許せなくて、その人たちを守るために私たちが学んだこと活かすべきだと考えて、でも自分たちだけの力じゃ何もできないから、誰かに協力してもらわなくちゃいけなくて」

 

孔明「それでそれで、誰に協力してもらったらいいかと考えていたとき、天の御使いが義勇兵を募集しているって聞いたんです」

 

鳳統「それで色々と話を聞くうちで、天の御使いさまが考えていらっしゃることが、私たちの考えと同じだって分かって、協力してもらうならこの人だと思って」

 

孔明「だからあの……私たちを戦列の端のおくわえください!」

 

鳳統「お願いします!」

 

ちょ、私そんなに早く言うと何言ってるのか分からないから……

 

でも、一つだけ分かったことがある。

 

影子「……桃香」

 

桃香「何、ご主人さまぅえっ!?」

 

影子「私は私のことを天の御使いといわないで募集しなさいって言ったはずなんだけどなぁ」

 

桃香「うへぇうぇえーー」

 

私は桃香のほへを摘まんで四方に伸ばしながら言った。

 

鈴々「にゃは、お兄ちゃんが照れてるのだ」

 

影子「照れてるんじゃなーい!」

 

桃香「うべべへー、やめへー!」

 

鈴々の言葉にムッとなって、つい桃香の顔が偉いことにさせてしまった。

 

愛紗「やめてください、ご主人さま。そのことを言ったのは私です」

 

影子「え、愛紗が?」

 

天の御使いということは確かにいい名だし、人を集めるにもいいものだ。

 

でも、私はあまりそんな名前をもらうほど偉いものでもなければ、そんな人徳もない。

 

後のことを考えれば、そういう二つ名はないほうがいい。

 

そう思って桃香たちには、天の御使い名乗りはやめてもらいたいと言ったのだが……

 

愛紗「ご主人さまが我らのご主人さまになったのは、あなたが天の御使いになってもらってこそです。それに、前にご主人さまが、自分はそんな器ではないと仰いましたが、あなたは私たちが認めたお方。あなたには天の御使いにふさわしいお方だと思ったから、こうして私たちが付いているのですよ」

 

影子「…愛紗……」

 

愛紗「だから、どうか胸を張って名乗ってください。私たちの恥にならないためにも」

 

……やっぱり、この中では愛紗が一番考えているな。

 

影子「仕方ないな……そこまで言われると、ない器でも作らなければならないな」

 

愛紗「はい」

 

そう言って愛紗は微笑んだ。

 

孔明「あ、あの……」

 

あ、しまった。待たせてしまったな。

 

影子「すまない。えっと、諸葛亮と鳳統だな」

 

孔明「は、はひ」

 

影子「今みたように、こんな駄洒落する集団だが、それでもいいか?」

 

孔明「は、はいっ!戦列に入れてくださったら、私たちの力、隠さずお見せいたします!」

 

影子「そうか……それじゃあ、二人とも歓迎する」

 

孔明「あ、ありがとうございます!」

 

鳳統「ございましゅ!」

 

どうやら、魔女っこ帽子の方はもうちょっと照れ屋さんみたいだ。

 

帽子を深く被って顔をちゃんと見せてくれない。

 

 

 

もしかすると、私の姿がちょっと怖いのかな。真っ黒いし。

 

影子「私は影子だ。真名の兼ているので…影子と呼べばいい」

 

孔明「私は、姓は諸葛、名は亮、字は孔明、真名は朱里っていいます!」

 

鳳統「えっと、ええと…んと」

 

何だが、こっちの方は話がしにくいようで……私は一歩下がったほうがいいだろうか。

 

影子「大丈夫か?」

 

鳳統「は、はい……」

 

あぁ…よく見たら顔が泣きそうだし…

 

影子「桃香、後は任せた」

 

桃香「え?あの、ご主人さま?」

 

影子「私は部隊を整備しているから、二人のことは愛紗と四人で相談してくれ。その二人の意見は積極的に引き受けるように」

 

諸葛亮と鳳士元だ。子供といえどその智謀は名通りだろう。

 

鳳統「あ」

 

どうやら男の人がいると怖いらしいな。

 

この世界は英傑が皆女性になっているし…

 

私塾から来たといえばあんな年にちゃんと人に触れたこともなさそうだしな。

 

軍人みたいな怖そうな人は退場したほうがいいだろう。

 

そして、私はその場を去って軍の整備をしに向かった。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
6
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択