※注意※熱狂的な一刀ファンの方の閲覧はご遠慮ください※注意※
※この作品は魏endで一刀が"完全"に消滅した事を前提としているため、
記憶が戻るとかは無いので御容赦下さい。
後、オリジナル設定もあり、登場人物の行動や言動が原作と一致しない場合も
多々ございますので、その点も御容赦下さい。
桂花、風、流琉の三人は城内を走る。
目指すのは華琳の部屋。
すでに城内のあちこちで人形との戦いが始まっていた。
「もぅっ・・・なん・・・なの・・・よっ・・・!」
桂花は普段の運動不足が祟り、息が上がって苦しそうだ。
流琉の伝磁葉々が次々と人形を破壊するが、キリが無い。
風も走っている筈なのだが、スーッと移動しているように見える上に、まったく息が上がっていなかった。
頭にいた宝譿は風の少し上を足元からゴーッと炎を吐きながら空を飛んでいる。
ツッコミたいが今は少しでも疲労を抑えたい桂花は、ひたすら前を見て走る。
やがて華琳の部屋の前まで来ると、親衛隊の者と侍女達が力を合わせて華琳と秋蘭を守っている姿があった。
侍女達は鍋やお玉、包丁などで武装して、迫る人形を殴りつけている。
華琳と秋蘭の二人はタンカに乗せられていた。
「荀彧様!程昱様!典韋様!裏門からの脱出の準備が整っております!裏門は楽進様と李典様がお守りしていますが
敵の数が多すぎます!すぐにお逃げください!」
三人の姿を確認した親衛隊の隊長が叫ぶ。
「爆符!」
そこへ神事服の男が札を投げつける。
流琉が慌てて伝磁葉々を盾に掲げた瞬間、
ドガアアアアアン!!
という爆発が巻き起こり、流琉の小さな体が壁に叩きつけられた。
ズルッと崩れ落ちる。
「流琉!!」
桂花が流琉に駆け寄ろうとしたが、男がいち早く新たな札を取り出し桂花を牽制する。
「荀彧、程昱・・・二人には一緒に来てもらいます」
「何で私達がアンタ何かについて行かなきゃなんないのよ!」
「時間がないんだよ!!」
突然の男の激高に、桂花も思わず怯む。
「何も知らず、のうのうと暮らしていた小娘共に我が苦しみなど理解できまい・・・」
男の目には狂気にも似た光が宿っていた。
「でっっっえりゃああああ!!!」
ガバッと起き上がった流琉の二つの伝磁葉々が男を目掛けて放たれ、男は小さく舌打ちをしながらそれを札でかわす。
ドゴオオオオン!!
と二つの伝磁葉々がそれぞれ天井と壁を抉り、建物が崩れて土煙が起こる。
それを見た男の目がちらりと風を見て口元を動かすが、その姿は土煙で隠された。
「今のうちに逃げてください!」
男とみんなの間に立った流琉が叫ぶ。
ダメだと言いたかった。一緒に逃げてと言いたかった。
だがそれでは流琉の思いを無駄にすると判断して桂花は脱出を指示した。
「洛陽で待っているわ!絶対に来るのよ!」
後ろを向いたまま、流琉が頷く。
みんなが遠ざかる音を聞きながら、流琉はしっかりと前を見据えていた。
ふと、一刀の事が頭をよぎる。
楽しかった日々、この城には兄様との思い出が詰まっていた。
一緒に料理を食べたり、でぇとしたり・・・。
一刀が消えた日、季衣と二人抱き合って泣いた。
(その城を壊すヤツは許さない!)
やがて土煙の中から男が姿を現す。
「これから死ぬ貴方に名前など名乗っても無駄でしょうが、知らずに死ぬというのも可愛そうでしょう。
我が名は于吉・・・」
于吉の周囲に数え切れない程の札が空中に展開する。全ての札に『爆』の字が見えた。
「愛する者を無様に奪われた愚か者の名です────」
裏門から馬車が走り出した瞬間────
凄まじい爆音が全員の耳をつんざく。
離れているはずの馬車ですら揺らされる程の爆発・・・。
許昌の城の一部が吹き飛び、火柱が上がった。
いつの間にか日が暮れ、暗くなった空を赤々と照らす。
「流琉・・・」
桂花が俯き、歯を食いしばる。
敵にいいようにやられた。ここ数日のどこか焦ったようなイラつきが相手の術だと今ようやく理解できた。
華琳が目を覚まさないのも恐らく敵の術。
思考がまともに働いていなかった。
凪も真っ青な顔をして目を閉じ、横たえている。
この中でまともに戦えるのは真桜だけ。
春蘭と季衣には民の避難と殿を頼むと伝令を出した。
悔しさから桂花の瞳には涙が溢れたが誰も声を掛けれない。
その中で風は馬車の一番後ろで燃え盛る許昌の城を見つめながら、さっきの于吉の行動を考えていた。
いつも飄々としている風からは考えられない程、思いつめたような表情だ。
(どういうことでしょうねー・・・口の動きだけであの男が伝えてきた事・・・)
(裏切り者がいるとは────)
「はああああああ!!!」
春蘭の剣の一振りで人形の数十体が紙切れのように吹き飛ぶ。
黄巾党を退治した直後に知らせを受け、馬を飛ばして戻れば許昌の街が燃えていた。
次々と現れる人形を片っ端から倒す中で、避難する民の誘導をこなす。
「季衣!街の民の避難はどうなっている!?」
「逃げ遅れた人達がまだ少しいます!」
「では、そっちを頼む!私はここで敵を食い止める!」
「はい!」
季衣の指示で数人の親衛隊が季衣に付き従い、戦火に燃える街の中を駆け抜けた。
「お前達も避難する者達を助けろ!」
「はっ!」
春蘭に付き従っていた兵にも指示を与え、春蘭は一人となった。
「さて・・・出てきてもらおうか・・・」
春蘭が油断なく七星餓狼を構えると、家の影から一人の女が姿を現す。
黒い神事服のようなものを着た女は黒いベールのようなもので顔を覆い、黒い口紅をつけた唇だけが笑みを作る。
クスクスクスクスと、まるで幼女のような声で嗤う女に春蘭の背筋が冷える。
不気味な気配を持つ女は緩やかに頭を下げた。
「夏侯惇元譲様でいらっしゃいますね」
笑いを含む女の声がひどく耳障りに聞こえた。
「何者だ」
「五胡の妖術士でございますよ」
「妖術士だと・・・?」
「はぁい。貴方様をここで討てとの我が主の命に従い、貴方様をここで討たせていただきます」
突然────女の姿が掻き消えたと思った瞬間、春蘭の真横に現れる。
「はぁっ!」
それを感じた春蘭の剣が女を薙ぎ払おうとしたが、その剣が受け止められた。
「何だと!?」
女の剣を見た春蘭の顔色が変わる。即座に距離を取り、もう一度確認したが間違いない。
受け止めた女が手にしていた剣は『靖王伝家』
桃香が持っている筈の剣────
「貴様!その剣をどうした!?」
「さぁ、どうしたんでしょうね」
女がクスクスと笑いながら尋常ではない速度で迫る。
ギィン!と激しく金属がぶつかり合う音。
それが数度繰り返される。
「ぐぅっ!」
女の攻撃は重い。まるで恋の方天画戟を受けた時のような重さだ。
思わず舌打ちするが、女の唇の笑みの形が変わることは無い。
「余裕か!」
それにイラつき叫ぶ。
「いえいえ。これでも冷や汗で溺れてしまいそうですよ」
また、クスクスという笑い。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
額に血管の浮き出た春蘭が怒りのままに突撃する。
ゴアッ!
横薙ぎの激しい烈風が女を襲い、
「馬鹿な!?」
女が始めて焦りの声を出した。
剣ごと弾き飛ばされた女は空中で一回転して着地するが、そこに春蘭の追撃が入る。
「がああああああああ!!!」
両腕の筋肉が膨れ上がる程の力を持って七星餓狼を振り下ろす。
ドオオオオン!
地面に七星餓狼がめり込み、地面にクレーターを作る。
「なんという力・・・」
辛うじて追撃をかわしたが、女の両手は痺れていた。
「さすが我が主が警戒する方ですね・・・」
「貴様の主など興味ないが、話してもらうぞ。何故貴様がその剣を持っている!」
春蘭が立ち上がり、七星餓狼を女に突きつける。
「それよりも・・・貴方には知りたい事があるのではないですか?」
「何だと?」
「北郷一刀様の事を・・・」
「なっ!?」
春蘭が激しく動揺する姿を見て、女はニヤリと笑う。
「何故貴様が北郷の事を・・・!!」
構えた七星餓狼の先が震えていた。
「3年前・・・北郷様は消えました・・・ですが・・・"どこへ消えた"と思いますか?」
「て・・・天の国へ帰ったのではないか!」
「大局の示すまま流れに従い、逆らわぬべし。さもなくば待ち受けるは身の破滅・・・そう忠告
されていながら、北郷様は貴方方を助ける為に大局に逆らいました」
一刀が消えた日、秋蘭の子供の様に縋り付いて泣く姿を見て、自分は泣けなかった。
自分は姉だから────
「その"大罪"が天の国へ帰るという事で許されると思いますか?」
頭を殴られたような衝撃が春蘭を襲った。
「時の狭間に閉じ込められ、3年もの間苦しみ続けました」
足が振るえ、立っている事すらままならない。
胸が締め付けられるように苦しい。息をするのもやっとだ。
「時の奔流にその身をズタズタに切り裂かれても・・・貴方方の為に帰ろうとすらした」
春蘭の残された右目から一筋の光が零れた。
カツン、という音は春蘭が七星餓狼を下げ、地面に剣先をぶつけた音。
「そんな事がただの人間に出来る筈はないのに」
「やめて・・・くれ・・・」
小さな悲鳴が漏れた。
「その欠片を我が主が捕らえ、私に貸していただきました」
懐から取り出した黒い札が淡い光を放ったかと思った瞬間、女の手に一抱え程の筒状の物が現れた。
それを見た春蘭が膝から崩れ落ちる。
右目は見開かれ、口の中が一瞬にして乾く。
そこにあったのは、青い液体の中に浮かぶそれは・・・。
目を閉じた一刀の首だった────
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
春蘭の悲痛な絶叫が、燃え上がる許昌の街に響き渡った。
────許昌の街、陥落────
ガラガラと走る馬車の中で凪はスッと目を開けた。
周りを見れば、みんな一様に眠っているようだ。
苦しみは大分治まった。
そして思う。
隊長もこの苦しみを味わっていたのか・・・と。
お送りしました第6話。
5話を投稿した時点ではほとんど書き終わっていたんですが、
投稿しようかどうか悩んでいました。
ご覧のように問題作です。
1話の後書きにも書きましたが、以前書き溜めたものの100kb程が
ここまでだったと思います。
もっと細かい描写を入れればそのくらい行ってたと思いますが、
更新速度重視で来た為細かい描写は一切省きました。
まぁ、恋姫なんで簡単に脳内補完できる気がするので
話のテンポが上がって逆にこっちの方がいいんじゃね?とも思いましたが。
連続投稿して来ましたが、休みが終わるのでちょっと更新速度が落ちますが、
続きをお楽しみに。「とにかく完結させる」気持ちで頑張ります。
ではちょっと予告。
北郷一刀、外史に降り立つ
では、また。
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