No.177199

真・恋姫無双 夜の王 第23話

yuukiさん

真恋姫無双夜の王第23話、
第22話の続きです

2010-10-09 03:16:11 投稿 / 全20ページ    総閲覧数:10286   閲覧ユーザー数:7615

 

この作品の一刀は、性格、武力ともに原作とは異なっています。

 

また、一部キャラを否定する場面もございます。

 

ご理解をお願いいたします。

 

まだまだ誤字、脱字や分かりにくい表現などもあると思いますが、

 

こんな自分の作品でも楽しんでいただけたら幸いです。

 

蛮支配後、涼州からの使者が来たとの報告を受け一刀に天に戻っていた

 

一刀「一足遅かったか?」

 

風「はい。少し前に使者の人は返ってしまったー」

 

一刀「そうか」

 

宝譿「おう、ざんねんだったな」

 

一刀「まあ仕方ない。で、何のようだったんだ?」

 

風「こんな手紙を渡されたのですがー」

 

 

-----天に順う者は存し、天に逆らう者は亡ぶ-----

 

 

一刀「孟子か、、」

 

風「そうなのです。そして、たぶん伝えたかったことは漢王朝に逆らうな。でしょうねー」

 

 

一刀「まだ漢王朝を天と呼ぶか、漢に忠誠を誓う馬騰らしいな」

 

一刀は少し笑みを浮かべながらそう言う

 

風「そうですねー。で、どうするのです?」

 

一刀「礼を持って使者が来たんだ。礼で返すのが礼儀だろ」

 

麗羽「それはそうでしょうけれど。聞きたいのはそのことじゃありませんわ」

 

斗詩「そうです。この忠告、どうするんですか?」

 

一刀「どうするもない。もはや漢王朝は不要な物だ」

 

一刀はそう断言する

 

 

猪々子「じゃあ馬騰とドンパチやんのか?」

 

一刀「馬騰が引けば、戦わずに済むんだがな」

 

麗羽「無理ですわね。何度か都で会ったことがありますけど、あの人は本当に漢に仕えていますから」

 

一刀「そうなると戦うしかないな」

 

風「ですが涼州と天の間には蜀がありますし、どちらも簡単に手を出すことはできないのです」

 

麗羽「どうするんですの?」

 

一刀「とりあえず礼には礼を、こちらも使者を出す。返事はしないとな」

 

 

 

一刀「風、誰を行かせれば良いと思う?」

 

風「そうですねー。凪ちゃん達は町の警備がありますし、斗詩ちゃん達も忙しいですし、、、

  急いで損なこともありませんし、ここは明命ちゃんにお願いするのが良いと思うのです」

 

明命「えっ、わっ私ですか?」

 

風「はい。それと獅堂さんも付いて行ってもらいます」

 

獅堂「なんで俺まで、お使いぐらい一人で出来るだろ?」

 

風「馬騰さんは英雄と呼ばれる人。ですが、もしもの時を考えて

  獅堂さんとその部隊にも付いて行って欲しいのです」

 

獅堂「もしも、か。そんな奴なのか?馬騰は」

 

風「いえ、騙し打ちなどしないと思いますが、用心して困ることはないのです」

 

獅堂「、、、わかった」

 

獅堂は渋々ながら納得した様子で頷く

 

 

風「どうでしょうか?お兄さん」

 

一刀「明命は南蛮から帰ってからすぐだが。疲れてるか?」

 

明命「いえ!わたしは元気です!」

 

一刀「そうか、なら頼む。獅堂も部隊の奴らと一緒に付いて行ってくれ」

 

獅堂「わかった。連れてくのはウチの精鋭で良いんだな?」

 

風「その方が良いと思うのです」

 

風は一刀にそうに呟く

 

一刀「ああ、頼む」

 

獅堂「わかった」

 

 

 

一刀「精鋭か、、あいつらにもよろしく言っといてくれ」

 

獅堂「けっ、自分で言えよ。こんど久しぶりに酒盛りでもするか?」

 

獅堂は笑みを浮かべながらそう言う

 

一刀「ふっ、楽しみにしてるよ」

 

 

凪「あの、一蝶様」

 

一蝶「なんでしょうか?」

 

凪「一刀様と獅堂様の部隊の方達って知り合いなんですか?」

 

一蝶「董卓軍に居た頃からの付き合いです。

   私や獅堂のように初めて一刀様が指揮した部隊にいた者達なんですよ」

 

沙和「その人達が今は精鋭になってるの?」

 

一蝶「ええ、」

 

真桜「はー、そうなんですか。そんな昔から、人に歴史ありやな」

 

凪「ああ、そうだな」

 

 

 

軍議が終わり執務室に戻る途中で一刀は空を見上げ考える

 

一刀「馬騰。前の世界では会うことの無かった英雄。おそらく劉備や美以のように退いてはくれない

   つまり、アイツの母を殺すことになるかもしれない。あまり、良い気分ではない、、な」

 

 

そして、心に響く言葉

 

     『天に順う者は存し、天に逆らう者は亡ぶ』

 

一刀「ふっ、順ずべき天が腐っていたら、逆らうしかないじゃないか。そうだろ、馬騰」

 

思いを馳せる、初めて相対する。英雄に

 

 

軍議より数日、明命と獅堂は馬騰の城に来ていた

 

獅堂「、、、、」

 

明命「うう、大丈夫、、できるのです!、、きっと」

 

獅堂「緊張しすぎだろ?たかが手紙渡すだけじゃねーか」

 

明命「そうですけど、、でも、、」

 

獅堂「(人選、まずったんじゃねえのか?)」

 

涼州兵「準備が整った、入れ」

 

明命「はい!」

 

獅堂「ふん、」

 

 

招かれた間には多くの兵、将と見られる者達が馬騰を中心に並んでいる

 

獅堂「(あいつ、、見たことあるな。反董卓連合の時、馬超か。

    なら、その隣が馬岱。、、で、あれが馬騰か)」

 

獅堂は王座に座る馬騰に眼を向ける

 

獅堂「(なるほど、、英雄か。めんどくさそうな奴だな)」

 

 

馬騰「私が出した文の返事を持ってきたとの事だが、鳳薦は何と言っていた?」

 

明命「はい、これを」

 

そう言って明命は一刀の手紙を懐からとりだす

 

馬騰「蒲公英、読んでくれ」

 

馬岱「あ、うん」

 

馬騰の言葉で馬岱がその手紙を受け取り、開く

 

馬岱「えっ、、これって」

 

馬岱は手紙を見て、驚いた様子で明命達を見る

 

馬騰「何と書いてある?」

 

馬岱「あっ、、はい」

 

そして、、読み始める。一刀の思惑、心の内を

 

 

-----蒼天既に死す、新天まさに立つべし-----

 

 

馬超「なっ、」

 

馬騰「、、、」

 

 

もはや漢など意味は無し、俺は新たな天を作る。つまりは、、天下簒奪

 

 

それがその言葉の意味、そして一刀の答え

 

それを知ったある者は驚き、そして怒りを込めて明命達を見る

 

 

馬騰「なるほど、それがお前達の主の答えなのだな」

 

馬騰は怒りを含んだ声で明命達に問う

 

明命「、、、、」

 

獅堂「(ちっ、なんて威圧感だよ。やっぱ、こいつじゃ荷が重かったか)」

 

そう思い、獅堂が口を開こうとした瞬間、明命の声が響く

 

明命「はい!そうです!」

 

何時もと変わらぬ、あの元気な声が

 

獅堂「(こいつ、、、任せて平気か)」

 

馬騰「なるほどな。ふふ、ならお前の主は随分と法螺吹きなことだ。

   天を消し新たな天を作るなど笑い話にもならぬことを」

 

馬騰は嘲りを込めた言葉を明命に返す。周りの涼州兵達も小さな笑い声をこぼす

 

獅堂「(こいつら、、)」

 

獅堂が怒りにまかせ怒鳴ろうとするのを止めたのは、、、

 

明命「笑わないでください!!」

 

獅堂以上の怒りを含んだ声だった

 

 

静まり返る。さっきとは違う、明確な怒りを含んだその声によって

 

 

馬騰「、、、、」

 

明命「笑わないでください。一刀様のことを」

 

見据える、怒りを込めて。馬騰を

 

 

馬騰「大言壮語、出来もしない法螺を吹く者。笑って何が悪い」

 

明命「出来ます。一刀様なら、天を壊すことも、天を作ることも」

 

馬騰「そんなことできるはずが「貴方が出来ないだけなのです」、、なに?」

 

明命「貴方には出来なくても、一刀様には出来ます。貴方より、一刀様の方が優秀なのですから」

 

意趣返し。一刀を馬鹿にした者へ、お前の方が劣っていると、明命はそう告げる

 

馬騰「、、、、、」

 

馬超「、、、、、」

 

馬岱「、、、、、」

 

それはここに居る全ての者を怒らせると知りながら

 

 

獅堂「くっくく、はっはは」

 

獅堂は笑い声を抑えられなかった。

 

それは明命の返しが見事だったからもあるが、それ以上にそれは歓喜の笑い

 

獅堂「(なるほど、狂ってやがる。敵しか居ないこの場所で敵の大将を馬鹿にするか。

    毒されてやがる、俺と同じだ。一刀という存在に毒されて、奴しか見えなくなってやがる。

    くっくっく、良いな。そういうぶっ飛んだ奴は嫌いじゃねえ)」

馬騰「く、、く、は、はっははは!」

 

馬騰は笑い声をあげる。だがそれはさっきとは違い、馬鹿にするモノではなく。本当に楽しそうな声

 

馬騰「この状況でその言葉。素晴らしい度胸だ。そんな者達が仕える鳳薦は相当な傑物のようだ」

 

明命「えっ、、」

 

明命は混乱する、当然だ。さっきまでの態度とは一転、馬騰は一刀を褒め始めたのだから

 

 

獅堂「馬騰、あんた。試したな?俺達を」

 

獅堂は顔を顰めながらそう言った

 

馬騰「そうだ悪かった。鳳薦に使える将、ひいては鳳薦がどれほどの人物か知りたかったんでな」

 

獅堂「くえねーヤローだ」

 

馬騰「だが、これですこし解った。鳳薦という男のことが」

 

獅堂「けっ、、」

 

 

馬騰は微笑みを浮かべた顔を真顔に戻しながら明命に問う

 

馬騰「周泰よ。なぜ、お主はそれほどまで鳳薦という男を慕う?」

 

明命はすこし考えた様子を見せたあと、喋り始める

 

明命「一刀様は、、、天になるお方だからです」

 

馬騰「天、、?」

 

明命「はい!そこに書いてあるとうりなのです。一刀様が新しい天になるお方なのです」

 

馬騰「天ならすでにある。新しい天など、いらぬと思わぬのか?」

 

 

明命「馬騰様。貴方は蒼天を、、青空を見てどう思いますか?」

 

馬騰「、、気持ちが良い。その空の下で馬に乗って駈ければ爽快だと思う」

 

明命「私も青空は好きなです。お猫様達が日向ぼっこをすることが出来ますから」

 

馬騰「ならなぜ、、蒼天を壊す者に仕えるのだ?」

 

明命「青空は優しさを与えてくれます。でも、、力の無い優しさに意味なんて無いです」

 

馬騰「、、、、(それは、そうなのかもしれぬ)」

 

明命「一刀様が作るのは青空じゃないのです。蒼天じゃないのです。一刀様が作るのは黒天、夜の空」

 

馬騰「夜の空、、そんな空で民に優しさを与えられるというのか?」

 

明命「いえ、、、優しさはないかもしれません。人に優しさを与えられないのかもしれないです」

 

明命は首を振りながらそう言う

 

 

馬騰「なら、その空は何を与える?」

 

明命「夜の空はみんなに安心を与えます。明日が来るという希望と、星の輝きを与えてくれます!」

 

 

馬騰は少し考える様子を見せながら喋り始める

 

馬騰「安心と、希望、、、確かに今の天では与えられぬものかもしれぬ」

 

馬超「母上、、」

 

馬騰「だが、青空でしか与えられぬモノがあると私は信じている」

 

明命「、、、そうですか。残念なのです」

 

獅堂「(己の道を信じる、どことなく、アイツに似てんな。馬騰)」

 

 

 

馬騰「鳳薦に伝えよ。私は最後まで、漢に仕える者であると」

 

明命「はい!」

 

獅堂「ああ、」

 

馬騰「行くと良い。次会う時は戦場だ」

 

 

こうして、天の国と涼州連合。天を作る者と天を守る者、その戦いが始まりを告げる

馬騰との会談を終え、明命達は天へと戻るため行軍を始めていた

 

明命「、、、、緊張したのです」

 

獅堂「どこがだよ?馬騰に啖呵切ってたじゃねーか」

 

明命「あれは一刀様が馬鹿にされたら、、」

 

獅堂「勢いで言っちまったのか?」

 

明命「はい」

 

獅堂「まあ良いんじゃねえの。俺はお前を見直したぞ」

 

明命「??どういうことですか?」

 

獅堂「てっきりお前は根暗の金魚のフンだと思ってたが、違うみたいだったしな」

 

明命「根暗って、思春様のことですか?」

 

獅堂「そうだ」

 

明命「うう、仕事で思春様と居ることも多かったですけど。金魚のフンは酷いです」

 

獅堂「だから見なおしたって言っただろ?少しだけどな」

 

明命「少しなんですか!」

 

 

獅堂の言葉に少し落ち込む明命。それを見ていた鳳薦隊の兵士の一人が明命に話しかける

 

兵士2「周泰様、気にしない方が良いですよ。こいつの口が悪いのは昔からですし」

 

明命「そうなんですか?」

 

兵士3「そうです。それにこれは獅堂の歪んだ愛情表現なんですよ」

 

明命「そうなんですか!」

 

獅堂「真顔で聞き返すな!」

 

 

そうやって賑やかに山道を行軍をしている途中、明命が突然立ち止まり

 

そして、険しい顔で獅堂に話しかける

 

明命「獅堂様」

 

獅堂「ああ、囲まれてやがるな」

 

獅堂は剣を抜きながらそう言う

 

獅堂の言葉に周りの兵士達も武器を構える

 

 

獅堂「馬騰か?」

 

明命「しかし、馬騰様が騙し打ちをするとは思えないのですが、、、」

 

獅堂「ここはまだ馬騰の領土だ。ヤロー以外に誰がこんなことすんだよ」

 

明命「そう、、ですが」

 

獅堂「まあ、とりあえず。敵意はあるみたいだな」

 

獅堂は林の先を見ながら呟く

 

明命「はい。そのようです」

 

獅堂「おい、お前は行け。俺の隊が足止めする。

   馬騰のこと早く一刀に知らせねーと手遅れになるかもしんねえ」

 

明命「ですが、、皆さんを置いて行くなんて」

 

獅堂「安心しろ。こいつらも俺も昔から一刀に仕えてきた天の国最精鋭だぞ。

   相手が2倍いても問題ねー。それにお前が一番速いんだ、すぐに伝えに行け」

 

明命「本当に大丈夫なのですか?」

 

心配そうな顔をしながら明命はそう言った

 

獅堂「大丈夫って言ってんだろ。俺達も足止めした後すぐに追いつく。早く行け」

 

笑いながらそう言った獅堂の言葉に、明命は頷く

 

明命「わかりました。皆さんどうかご無事で!」

 

獅堂「ああ、」

 

 

明命の姿が見えなくなった後、兵士達が獅堂に話しかける

 

兵士2「兵の心配をするとは、優しい方だな。周泰様は」

 

獅堂「はっ、ガキなだけだろ。少しは出来る奴かと思ったが、やっぱまだまだだな」

 

兵士3「まったく、お前はすぐそうやって悪口を」

 

獅堂「そういう性格なんだよ」

 

兵士5「知ってるよ。昔から、、で、敵はどれ位居るんだよ?」

 

獅堂「そうだな、、だいたい4、5倍ってとこか?」

 

獅堂は笑いながら言う

 

兵士2「そうか。くくっ、勝てると思うか?」

 

兵士3「さあ?やってみないと分からんな」

 

獅堂「相変わらず。馬鹿だな、お前ら」

 

兵士5「ははっ、お前もだよ」

 

 

獅堂「取りあえず、時間は稼ぐぞ。見せてやろうぜ、天軍最強部隊の実力を!」

 

兵士達「「「おう!!!」」」

 

その言葉と共に隠れていた敵兵達が獅堂達に襲いかかる

 

獅堂「(あの鎧、やっぱ涼州連合の奴らか。馬騰、テメーこんな真似しやがって。許さねーぞ)」

 

 

戦いは始まる、英雄達の思惑から離れて

 

 

 

その頃、馬騰の城では

 

馬超「母上、報告したいがあるんだ」

 

馬騰「どうした?」

 

馬超「ああ、なんか韓遂の部隊が武器を持って何処かに向かった見たいなんだけど」

 

馬騰「韓遂が、、、よもや、あやつ何かしでかす気か?」

 

馬超「さあ、それはわかんない、、」

 

馬騰「まさか、、、翆、部隊の準備を。すぐに追うぞ。

   もしかしたら取り返しのつかぬことになるかもしれん」

 

馬超「あっああ。分かった!」

 

 

獅堂「はああ!!」  ブンッ

 

敵兵「ぐっは、、」 バタンッ

 

獅堂は向かってくる敵兵を叩き斬る

 

敵兵「死ねー!」  

 

しかし、その背後から新たな敵兵が獅堂の元に向かってくる

 

獅堂「っっ、テメーが死ね!」

 

獅堂は剣を逆手に持ちかえ、背後から迫る敵を後ろを向いたまま突き殺す

 

敵兵「はっあ、、」 バタンッ

 

 

獅堂「はあ、はあ、敵が多すぎるか、、全員固まって戦え!個別撃破されっぞ!!」

 

その言葉で兵達は獅堂を中心に集まり、敵と対峙する形となる

 

獅堂「ちっ、4倍ってことか」

 

獅堂は剣を構えた先に居る敵兵を数えながらそんな事を呟く

 

獅堂「(無理そうだな。俺に一刀や赤毛の力の半分もあれば

    良かったんだが、、、無い物ねだりしてもしょうがねえか)」

 

 

いくつもの戦場を越えてきたこからこそ分かる。

 

この戦い、勝てはしない、おそらく生き残れるのはただ一人。

 

他の者全ての命と引き換えに、一人だけ逃げ出せるだろう。この戦場から

 

 

そして、それに気づくのは獅堂だけでは無かった

 

兵士2「獅堂、」

 

獅堂「なんだよ」

 

兵士2「俺達が足止めする。その間に逃げろ」

 

獅堂「ざけんな。お前達を捨てて、俺だけ助かれってのか」

 

兵士3「別にお前の為じゃないぞ。一刀様の為だ」

 

獅堂「、、、、」

 

兵士3「俺達より、お前が生きて帰った方が一刀様の役に立つ」

 

獅堂「ふざ、、けんな」

 

獅堂は怒りを噛み締め、声を出す

 

 

兵士5「頼む、獅堂、行ってくれ。

    あの世で自慢させてくれよ。俺達は将を王を、友を守って死んだんだって」

 

兵士2「行け、獅堂」

 

兵士3「早く行け!」

 

獅堂「、、、礼は言わねえぞ。待ってろよ、先にあの世で。俺もそのうち行ってやるから」

 

兵士5「ああ、待ってるよ」

 

獅堂「じゃあな、、、馬鹿ども」  ダダダッ

 

兵士2「最後まで口の悪い奴だ」

 

兵士3「アイツらしいな」

 

 

敵兵「将が逃げたぞ!逃がすな!」

 

兵士2「行かせるかよ!」

 

兵士3「ああ、行かせねえ。こっから先は一歩たりとも!」

 

敵兵「黙れ!天に唾する逆賊どもが!」

 

兵士5「はっ、俺達にとっての天は一刀様だ!腐った蒼天なんか知るかよ!」

 

兵士2「見せてやろう!俺達が徒花では無いってことを!最後に一花、咲かせるぞ!」

 

兵士達「「「おう!!」」」

 

 

 

 

獅堂「あいつらを無駄死にになんかさせねえ。絶対に」

 

獅堂はそう呟きながら森の中へと消えて行った

 

 

馬騰「これは、、」

 

馬騰が韓遂の部隊に追いつく頃には全てが終わっていた

 

目の前に広がるのは天兵の死体、そして涼州兵の死体

 

それを見れば、ここで何が行われたか、その真実がすぐにわかる

 

馬騰「これは、、」

 

 

馬超「お前達!自分が何をやったか分かっているのか!」

 

涼州兵「我々は、天に仇なす逆賊に天罰を加えたまでです!」

 

馬超「なにいってやが「もう良い、翆」、、、母上」

 

馬騰「翆、蒲公英、この者達を縛り上げろ。罰は受けてもらう」

 

馬騰は怒りの籠った眼で兵を見ながらそう言った

 

馬超「ああ、」

 

馬岱「う、うん」

 

 

兵達を縛り上げた後、馬超が死体を見ながら呟く

 

馬超「周泰と興煜の死体は無いな」

 

馬騰「兵達が命を賭けて逃がしたのだろう。、、、翆、天兵達を運ぶぞ、せめて手厚く葬ってやらねば」

 

馬超「うん。わかった」

 

 

馬騰「(戦場で無く、こんな所で死ぬなど。無念だったろうな、、、すまなかった)」

 

馬騰は眼を閉じ、頭の中で天兵達に謝る、、

 

それを、、影から見ている者が居た

 

冷静を保て、、冷静に

 

その言葉を獅堂は息を殺しながら頭の中で呟く

 

目の前に広がるは仲間の死体、死体、不意打ちで死んでいった友の亡骸

 

鳳薦隊、董卓に居た頃より共に歩んだ同胞の亡骸、、そして、友を殺した馬騰の姿

 

獅堂「っ、、くっ(耐えろ、まだだ、まだ)」

 

その姿を茂みより息を殺して眺め、ゆっくりと静かに矢を番える。

 

友の敵を取る為に

 

 

獅堂「(落ち着け、、静かに、、一瞬でも殺気を出せば気づかれる)」

 

気を抜けば怒りにまかせて斬りかかってしまう心を、強引にねじふせて、静かにその時を待つ

 

獅堂「無駄にするな、あいつらの死を、、無駄死ににするなど、」

 

蓋をする、心に、殺気に、怒りに、ただ静かに  冷静に

 

獅堂「、、、洛陽での闇打ちの経験が役に立つ時がくるとはな」

 

 

耐えた、友の死を。押さえこんだ、己の心を。ただ、友の敵を取る為に、、

 

そして、それが報われる時が来る

 

 

一瞬の刹那、馬騰が獅堂の隠れる茂みの方を向く、気づいただろうか、、その姿に

 

だが、もはや関係はない。獅堂は静かに矢に当てた手を離す

 

獅堂「じゃあな、馬騰。俺も青空は好きだった。もし、違う世界が有ったならお前に仕えるのも良かったかもな」

 

そんなこと、呟きながら。矢にあてた手を離す

 

 

          ヒュン

 

          グサッ

 

馬騰「っっっぐっ」

 

          ドサッ

 

馬超「えっ、」

 

まるで世界が止まったかのように、世界が英雄の死を認めぬかのように、静まり返り、ただ馬騰の倒れるおとのみが聞こえる

 

そこに居た、全ての者の動きが止まる、ただ一人の男を除いては

 

獅堂「敵は取ったぞ。友よ」

馬超「、、、は、は、母上!!母上ーー!!」

 

馬超は見る、矢を受け、地に伏す母の姿を

 

馬岱「えっ、な、なんで」

 

馬岱と兵達はその光景を見て凍りつき、馬超だけが矢の放たれた方向を見る、

 

そして、母を殺した憎むべき相手、その姿をその目に捕えた

 

馬超「テメーーー!!」

 

白銀の槍を持ち、振りかぶる。その手に己の正義を宿して

 

        ズバンッ

 

轟音と共に獅堂の隠れていた木を一撃で切り裂く

 

馬超「よくも、よくも!!」

 

        ブンッ

 

もの影より出てきた獅堂に一撃を放つ

 

獅堂「くっ、らああああ!」 

 

        ブンッ

 

獅堂もまた、一撃を放つ

 

        ガキンッ

 

獅堂「っっっつ、、」

 

武器が当たる衝撃で獅堂は吹き飛ばされた。無理もない、錦馬超とまで言われた者に敵うはずはないのだから

 

獅堂が前を見ると、次の一撃を放とうとする馬超が居る

 

獅堂「次は、、防げねえな」

 

 

姿勢を崩した獅堂は懐より煙玉を取りだす。

 

隠密行動などに行く際、天の軍で与えられる緊急逃走手段ようの煙玉、ここに来る前一蝶に無理やり持たされたそれを地面に叩きつける

 

          ボン

 

馬超「なっ、くっそ」

 

辺りは白い煙に包めまれる

 

 

獅堂「ちっ、アイツ借りが出来ちまった」

 

そんな事を呟きながら、隠しておいた馬の元に向かう

 

馬超「なめんなよ!こんなもんで!」   ヒュッ

 

獅堂「っくかっ、、」

 

だが、その背後から馬超の槍が体を突く

 

獅堂「っっ、この視界で、野生のカンか?出来すぎだな。だが、急所は外れてる!」

 

獅堂は槍の柄に手をかけ、無理やり引き抜く

 

馬超「くそっ、外した、だがまだ!!」

 

馬超は次の一撃を放とうとする、しかしその時

 

馬岱「お姉様!」

 

馬岱の声が響き、一瞬手を止める

 

獅堂はそのスキに馬に乗る

 

馬超「逃がすかよ!」

 

獅堂「っっ、」

 

 

馬岱「お姉様!そんな奴より、馬騰様を速く医者に連れて行かなきゃ!!」

 

馬超「っっ、母上、母上!!」

 

一瞬迷った馬超だったが槍を納め、母の元へと駆け寄った

 

 

獅堂「、、、まだ青いな。だが、助かった。天は俺を見捨てずか。そういや、天はアイツだったな」

 

獅堂はその姿を見ながらそんな事を呟く

 

獅堂「っっ、、はは、急所は外れてるが、血が止まんねえ。もつか?城まで」

 

そうして、獅堂は駆け抜ける。一刀の待つ、城までの道を

 

数日後。天領内の城

 

一刀「どう出る思う?馬騰は」

 

風「降ることは無いでしょうし。たぶん徹底抗戦でしょうねー」

 

一刀「そうか」

 

風「どちらにせよ、今は明命ちゃんと獅堂さんが戻ってくるのを待つしかないのです」

 

一刀「ああ、わかってるよ」

 

 

一刀「(翆と蒲公英、どうするかな。、、あまり、殺したくは無いんだが)」

 

そんな時、兵が一刀達の元に駆け込んできた

 

兵士「鳳薦様!周泰様がお戻りになられました!」

 

一刀「そうか。、、、どうしてそんなに慌てているんだ?」

 

兵士の様子を疑問に思った一刀がそう問う

 

 

兵士「そっそれが。戻ったのが、周泰様お一人なんです」

 

兵士は震えながらそう言った

 

一刀「っっ!明命にすぐに来るように伝えろ!風、王座の間に全員を集めろ」

 

風「はいなのです」

 

 

一刀「、、、どういうことだ、、これは」

 

 

 

王座の間で明命による報告がなされていた

 

明命は肩で息をしながら報告を始める

 

明命「それで、、馬騰様との話し合いの後、撤退の途中で何者かの奇襲を受けました。

   はあ、はあ、獅堂様達が足止めしている間に私はこのことを伝えに先に戻って来たのです」

 

一刀「そうか、ご苦労さま明命。下がって休んでいてくれ」

 

明命「はい、」

 

明命は頭を下げた後、下がって行った

 

 

一刀「どう思う?風、音々」

 

音々「音々は馬騰殿が騙し打ちをするとは思えませんが、、、」

 

風「風もそう思いますが。しかし、涼州連合は多くの者が集まって出来たモノ

  馬騰さんの意に反することがあったとしてもおかしくは無いと思うのです」

 

一刀「そうか。(いや、それより獅堂。お前は無事なのか、、)」

 

 

一刀「、、、、、、」

 

風「心配なのですか?獅堂さんのこと」

 

一刀「ああ、」

 

風「何の情報も無い状態で動くのは危険なのです。逆狗さんの情報収集が終わらないと動けないのです」

 

一刀「わかっている」

 

風「わかっているけど納得はできない。と、いった感じでしょうかー」

 

一刀「納得もしている。だが、」

 

風「だが?」

 

一刀「嫌な予感だするんだ。なにか、悪いことが起こっている感じが」

 

風「お兄さん、、無理は、だめですよ」

 

風は心配そうに一刀を見る

 

 

その時、外から騒がしい声が聞こえて来る

 

   『お待ちください。その傷では、、、報告は我々が』

 

   『うるせえ!良いから扉を開けろ!』

 

   『、、、、様、しかし。早く、、、行った方が』

 

   『伝えなきゃなんねえことがあんだ!、、、、、に、開けろ』

 

 

そうして、扉が開き始めた。そこに見えるのは、、血まみれの獅堂の姿

 

一刀「、、、獅堂」

 

獅堂「戻ったぞ。、、、、一刀」

 

 

凪「なっ、何をしているのですか!獅堂様」

 

獅堂「何を?決まってんだろ、っっ。、報告しに来たんだよ」

 

獅堂は全身を血で染めながら、いつもと同じように人を小馬鹿にするような笑みを浮かべる

 

凪「その傷で、、何を言っておられるのですか。すぐに医務室に「凪殿」、、一蝶様」

 

立ちあがろうとした凪を一蝶は手で制す

 

一蝶「行かせてあげてください。獅堂には伝えねばならぬことがあるようです」

 

凪「、、、一蝶様」

 

 

獅堂「わかってんじゃねえか。一蝶」

 

一蝶「当たり前です。それと、、体は大丈夫なんですね?」

 

獅堂「ああ、平気だよ。ほとんどは返り血だ」

 

一蝶「そうですか。なら。良いです」

 

 

獅堂は前へと歩み、一刀の前に膝をつく

 

獅堂「、、鳳薦隊一番隊隊長、興煜。報告に参りました」

 

一刀「、、、聞こう」

 

いつもとは違う、ただ静かに顔を伏せる獅堂に一刀はそう言う

 

 

獅堂「撤退の途中で、奇襲に会いました。そしてその首謀者は馬騰に間違えありません」

 

一刀「そうか、、、馬騰だったか」

 

獅堂「そして、、っっ」

 

    獅堂は静かに、、ただ静かに、、今まで抑えていたモノを外し

 

獅堂「そして、、、一番隊は全滅しました」

 

    静かに涙をこぼす

 

風「、、、、」

 

凪「、、、そんな」

 

一蝶「、、っ、、、」

 

一刀「っっ、、、、そうか」

 

 

沈黙の後、獅堂は一刀を見据え話し始める

 

涙をこぼしながら。その瞳に怒りを込めて、ただ悲しみを抱きながら

 

 

獅堂「一刀、、ぐっ、っ、、、敵を。あいつらの、敵を」

 

一刀「、、、、」

 

 

一刀は見る獅堂の姿を、そして悟るその心の中を

 

 

獅堂「足りねえだろ、、たったあれだけの命じゃ、、足りねえだろ償いが。」

 

一刀「だから殺せと?涼州全てを」

 

 

怒り、馬騰への怒り、

 

 

獅堂「涼州兵を皆殺しにした所で、、あいつらが戻るわけじゃねえって分かってるよ、、っっ」

 

一刀「なら、「でもよ」、、、」

 

 

獅堂「でも、、でも。必要だろ、、償いがよ。あんな真似した奴らに必要だろ、、裁きがよ」

 

一刀「、、、、、」

 

 

怒り、涼州兵への怒り、

 

 

獅堂「あいつらは戦場で死ぬ覚悟はしてた。っっ、俺も準備はしてたんだ、、

   戦場で死ぬ仲間が居たら、笑いながら墓に酒供える準備はよ」

 

一刀「、、、、、」

 

獅堂「けど、あいつらが死んだのは戦場じゃねえ。ぐっ、、ふざけんなよ、、ふざけんな!

   あいつらあんな所で死ぬべき者じゃなかった!っっ、、戦場で、、死ぬべき漢達だった!」

 

一刀「、、、、」

 

 

そしてなにより

 

 

獅堂「、、、それかよ。生きて、生きて。平和を掴むべき者だった」

 

 

兵を、友を、仲間を、救えなかった。自分への怒り

 

 

一刀「獅堂、、」

 

 

 

獅堂「一刀、、敵を。あいつらの敵、、取ってくれ」

 

     バタンッ

 

言葉を伝えた後、獅堂は床に伏した

 

風「!!」

 

一刀「獅堂!」

 

 

一蝶は獅堂の元へと駆け寄り、安心した様子で伝える

 

一蝶「大丈夫です、息はあります。気が抜けて気を失っただけでしょう」

 

一刀「そうか、、」

 

一蝶は兵士に命じ、獅堂を医務室に運ばせる

 

 

一蝶「一刀様、、、私も、この場は下がらせていただきます。

   、、この場に居れば、、貴方の考えを狂わせてしまいそうですから」

 

一蝶は握った拳から血を流しながらそう言い頭を下げる

 

一刀「そうか。分かった」

 

一蝶「ありがとうございます。、、、甘えついでにもう一つだけ聞いてもよろしいでしょうか?」

 

一刀「なんだ、、」

 

一蝶「彼らは、、こんなこと所で死ぬべき者たちだったのでしょうか?」

 

一刀「、、、、、もう、下がれ。一蝶」

 

その言葉に、一蝶はただ頷き、下がって行った

 

 

風「お兄さん、、、」

 

凪「どう、、なさるのですか?」

 

一刀「、、、考えたい。少し、一人にしてくれ」

 

そう言うと一刀もまた、その場を後にした

 

 

風「お兄さん、、一人で抱え混むのはよくないのですよ」

 

 

一刀は一人、執務室で考え込む。いや、戦っていた。己の心と

 

 

    死んだ、、あいつらが死んだ? 

 

 

何度も歩む道を変えようと付いて来た者たち

 

 

    何故、死んだ?  誰のせいで死んだ?  どうして死んだ?

 

 

共に歩んできた、名も無き者たち

 

 

    何故、あんな所で?  なぜ、不義によって?  何故、戦場で英雄として死ななかった?

 

 

どんな物語にも名を残さぬ、しかし、居なければ物語など存在しない。そんな大切な者たち

 

 

    馬騰、、『馬超』、、『馬岱』、、貴様らが殺したのか?  不義の極みで?

 

 

   

    心を覆い尽くすは、赤、紅、業火、炎、獄炎、怒りという名の『あか』色

 

一刀「っっ、、、」

 

一刀はそれを必死で抑え込む

 

一刀「怒り、それに飲まれれば破たんする。国が、理想が、、

   初めから分かっていたことだろうこういう事なのだと、、

   大切な何かを踏み台ににしてまでも、天座に至らねばならないのだと」

 

 

    抑え込め、怒りを、心を、そうしなければならない。

 

    怒りは持っていてはならない。そうでなければならない。

 

 

戦いは目的ではなく、目的に到達する手段。それを忘れれば、失う。大義を

 

 

一刀「俺は、俺は、、、」

 

その時、部屋に声が響いた

 

        『お兄さーん。入りますよー』

 

 

民を支えるのは兵、兵を支えるのは将、将を支えるのは王、

 

なら、王を支えるのは誰なのでしょうか?

 

昔、王を支えるのは国だと聞いたことがあるのですが、、それは間違えだと風は思うのです

 

だって、国は喋れませんし触れません。何も出来ないモノに王は、、人は支えられない

 

だから、きっと、王を支えるのは軍師。そう風は解釈して行きましょう、

 

お兄さんの元へ。きっと怒られてしまいますがそれでも、行かなければならない時なのです

 

 

風「お兄さーん。入りますよー」

 

一刀「風?」

 

風「はい。風ですよ」

 

一刀「少し、一人にしてくれって言わなかったか?」

 

風「(ここで返事をしてはいけないのです。

   お兄さんは口が上手いですから色々言われて追い返されてしまうのです)」

 

 

風は何も答えずに一刀の共に向かい、正面から抱きついた

 

風「えいっ、」

 

一刀「、、、、、」

 

 

風「(むむ。抱きついたのに無反応とは、なら)」

 

一刀に体をすり寄せ始める

 

風「にゅーーん、、んー、、すりすり」

 

一刀「風、少し一人にしてくれないか?」

 

風「(いつもと変わらない優しい声。でも、やっぱり、、違うのです)」

 

 

風は一刀の言葉を無視し、一刀の首すじを舐めはじめる

 

風「んー、 ぺろ ぺろ 」

 

一刀「風、離れてくれないか?」

 

風「(声に不快感が混じってきましたねー。好きな人に拒絶されると、、悲しいのです)」

 

 

風は舐める場所を徐々に上にあげていく

 

風「ぺろぺろっ、、ぺろ」

 

一刀「風、離れろ」

 

風「(うう、頭に手を置かれてしましました。何時もみたいに撫でる感じじゃないですし、、

   もしかして痛いことをされてしますのでしょうか。それは、、嫌ですねー)」

 

 

風は一刀の顔を舐めはじめる

 

一刀「風、離れろと言っているだろ」

 

風「あうっ、」

 

風「(お兄さん、、痛いですから。

   頭を握る手に力をくわえないで欲しいのです。ボンってなちゃうかもしれないのですよ)」

 

 

風はそれでも一刀にすり寄る

 

風「にゃあ、ごろごろ」

 

一刀「風、離れろ。そういうことは夜にしてくれ」

 

風「今じゃ無いと駄目なのです」

 

風は顔を上げそう言う

 

一刀「ちっ、やめろ、、今はイラ「お兄さんが」、、俺が?」

 

風「今じゃ無いと、お兄さんが壊れてしまうのですよ」

 

風は一刀の胸に顔を埋めながらそう呟く

 

 

一刀「何を言ってるんだ。風?」

 

風「風に分かるのです。お兄さんが」

 

一刀「、、、お前に、何がわかる」

 

風「わかるのです。お兄さんは今、怒りを無理やり抑え込んでいるのです」

 

顔を上げ、一刀を見つめながら風は言う

 

 

風「人は笑って、怒って、そして泣くモノ。

  そのうちの一つでも出来なくなってしまえば壊れてしまうのです」

 

一刀「要らぬ心配だ。俺は、、」

 

風「お兄さんは人なのです。風と変わらない、ただの人、なのですよ」

 

一刀「俺は、、天座に至る存在だ」

 

風「そんな大層な者じゃありませんね」

 

一刀「、、、」

 

 

風「お兄さんはただの人。楽しかったら笑って、虐められたら怒って、

  そして、友達が傷ついたら泣く普通の人間なのです。だから、泣いても良いのです、お兄さん」

 

一刀「何を、言って」

 

風「風が受け止めてあげます。笑いたかったら笑わせてあげるのです。

  怒ってきたら風に八つ当たりしてもいいのですよ。

  泣きたかったら、風の胸を貸してあげるのです。だから、お兄さん」

 

 

包みこまれる。優しいに匂いに、その小さな胸に

 

 

一刀「俺は、天王だ。、、天座に至る、存在だ」

 

風「はい。分かっているのですよ」

 

一刀「、、、、そんな俺をずっと支えててくれたんだ」

 

一刀は静かに、隠すことなく、話始めた

 

風「はい」

 

一刀「こんな俺と、一緒にいてくれたんだ。ずっと」

 

風「はい」  ナデナデ

 

一刀「あいつらは、、戦場で死ぬべき英雄だった。あんなところで死ぬべきじゃなかった」

 

風「はい」

 

一刀「なのに俺は、一蝶の問いに答えられなかった。仕方ない犠牲だと、割り切ろうとした」

 

風「はい」

 

一刀「俺は、俺はなんなんだ?結局割り切ることが出来ず、風に甘えている。俺はなんなんだ?」

 

風「お兄さんは、、お兄さんなのです」

 

一刀「俺は、、俺?」

 

風「はい。だからお兄さん、迷わなくても良いのですよ。

  悔むなとは言わないのです。でも、迷わなくてもいいと風は思うのです」

 

一刀「何故だ、失うんだぞ。命を」

 

風「死んでも誰もお兄さんを恨んだりしないのです。だって、全部お兄さんの物なのですよ」

 

一刀「俺の、、モノ?」

 

風「はい。風も恋ちゃんも麗羽ちゃんも獅堂さんも、兵も民も領土も全てはお兄さんの物

  お兄さん自身がそう言ってのですよ?全ての物は忠誠を誓って貰うって」

 

一刀「、、、、」

 

風「だから、お兄さんはお兄さんのままで良いのです。

  自分を偽る必要も、変な仮面をかぶる必要もないのです」

 

そう言って風は一刀を見据える

 

一刀「風、、お前は知ってたのか。」

 

風「さあ?なんのことか風は分かりませんねー。お兄さん、お兄さんは優しい、

  それは知っているのですが本当は、心の奥には何があるのですか?」

 

一刀「心の奥、」

一刀「良いのか?俺はお前を物として扱っても?」

 

風「はい。良いのですよ」

 

一刀「なら、俺を慰める道具になってもらうぞ?それでも、良いのか?」

 

風「あっ、、良いのですよ、、別に」  ボソッ

 

風は俯きながら答える

 

一刀「初めてなんだろ?それなのに良いのか?」

 

風「うう、お兄さんは意地悪ですね」

 

一刀「答えろ。風」

 

風「良いのです、、、風は初めてなのに道具として使われても、、良いのです」

 

顔を一刀の胸に埋めながら風はそう答えた

 

 

一刀「(なるほど、、、、、ふふっ、こんなことを言わせている、女の子に。

    それなのに俺は笑っている、そういうことか)」

 

一刀は風の頭をなでる

 

一刀「(ここまで言われて、諭されて、経験してようやく分かったよ。

    俺は悪人だ。夜王を、悪を演じる必要などなかった

    そうでなくては。かつて、敵だった者を愛することなど出来なかった。

    なぜ、気が付かなかったのだろうな?本当の善人なら許せぬはずなのに

    死んでいった者たちの事を考え、平和など、作れないという事実に)」

 

風「お兄さん?」

 

風は一刀の変化に不思議そうに顔を上げる

 

 

一刀「風、俺はどうやら兵が死んだことを悲しんでいたわけじゃ無いらしい。

   俺は兵が戦場で死ななかったことを。『無駄に兵が死んだ事を』悲しんでいたらしい」

 

風「お兄さん、、」

 

一刀「俺は人を物として見れる、そんな男だ。それでも良いのか?風」

 

風「はい、良いのです。それがお兄さんなら、、、」

 

一刀「お前も存外に変態なのかもな」

 

風「そんなことは、、、あっ待ってください」

 

一刀「なんだ?」

 

 

その場に押し倒そうとする一刀を風は止める

 

風「ここは執務室ですし。風も見られたりしたらさすがに恥ずかしいのですが」

 

一刀「、、、知らんな。そんなこと」

 

風「な、お兄さん。まって、、、ああ」

 

 

一刀「(この身に宿すのは怒気では無く、狂気で良い。狂ってるぐらいでなくては平和など成り立たない

    ありがとう。それを教えてくれて、お前達は無駄死にでは無かったぞ。友たちよ)」

 

 

風「っっ、ああ! んっ////」

 

一刀「まあ、今はこっちに集中するか。くくっ」

 

風「////」

 

 

風「、、お兄さん。良い顔になりましたね」

 

一刀「ああ、ふっきれたからな。色々」

 

風「そうですか、それは良かったのです。なら、一つ言いたい事があるのですが」

 

風が顔を上げながら呟く

 

一刀「なんだ?」

 

風「  ケダモノ」 ボソッ

 

一刀「、、、、」

 

風「ケダモノ、ケダモノ、ケダモノ、ケダモノー」

 

一刀「、、、悪いか?」

 

風「おお!開き直るとは、、、本当にもう大丈夫みたいですね」

 

一刀「ああ、」

 

 

風「で、どうするのですかー。涼州は?」

 

一刀「皆殺しだ、敵対するなら。俺に逆らう者に生きていてもらっては困る」

 

風「 ぐう 」

 

一刀「起きろ、風」

 

風「おお!あまりにも衝撃的な発言に驚いて寝てしまいました」

 

一刀「普通驚いたら寝れないだろ。で、反対なのか風は?」

 

風「いえ、お兄さんが決めたなら従うだけですよー。風は」 スリスリ

 

一刀「んっ。じゃあ、なるべくこちらに被害が出ない策を頼むな」

 

風「はいです。さっき獅堂さんからすごい情報も聞きましたし。任せてください」

 

一刀「ああ、頼む」

  後書き

 

来週は旅行に行くので投稿できないかもしれない、、、

 

だから今回は2話分の話を一話に纏めて投降しました

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
85
9

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択