この小説は、呉の主要キャラほぼ全てに
いろいろな設定を作っていますので、キャラ崩壊必死です。
その点を踏まえて、お読みください。
~SIDE廿楽&夕陽~
夕陽と廿楽は、凱が出て行った後自分達宛ての手紙の封を開けた。
「早く! お姉ちゃん!」
「もう手紙は逃げないよ、廿楽ちゃん」
『我が愛する夕陽 廿楽へ
廿楽、夕陽、すまん。 呉に居ない俺を許してくれ。
黄泉の淵に行こうとも絶対に還るから、その間夕陽は雪蓮の、廿楽は冥琳の面倒を見てやってくれ。
雪蓮は俺以上に我が儘でズボラ、冥琳は俺以上に完璧主義で厳しい。
大変だと思うが、俺の代わりに彼女達の傍に居てやってくれ。
又会ったら、嫌だと言っても一杯抱きしめてやるからな。
孫江 王虎 一刀より』
「……あ、愛するだって、廿楽ちゃん」
「あ、当たり前じゃない! 一刀様が私達を愛してないわけ無いもの!」
手紙の内容に、夕陽も廿楽も真っ赤になっている。
そして、何処から来るのか分からない自信で、さも当前のようにそう言う廿楽。
顔が紅くて、ニヤケまくっていたのは割愛する。
手紙を読み終わると、他の人の分もあるのでとりあえず半分ずつ持っていくことにし、二人は部屋を出た。
~SIDE冥琳~
冥琳は、祭を呼びに行こうと二人の寝ている部屋に向かう為廊下を歩いていると、
手紙と書を抱えた夕陽と廿楽に会った。
「冥琳様! 一刀様からのお手紙「なに!?」……で、ですぅ」
冥琳は出された手紙を、(半ば奪い取るかのように)反射的に受け取り、差出人を見る。
確かに一刀の、癖のある字だった。
二人にお礼を言おうと、顔を上げるともう其処には廿楽は居なかった。
真相は、渡した時の冥琳の形相に、怖がって逃げたのだが――。
他にも、沢山あったから届けに行ったのだろうと結論付け、彼女は封を切る。
『我が愛する冥琳へ
冥琳、別れの言葉も言えずにごめん。
まだ、俺も一緒に居たかったが、天がそれを許しくれ無かった。
俺は居ないが、雪蓮と廿楽を頼む。
廿楽の手紙にも書いた事だが、彼女等の面倒を見てやってくれ。
勝手な頼みばかりですまないな。
孫江 王虎一刀』
「ふふ……そんなに嬉しい事を書かれては、聞かん訳にはいかんな」
読み終えると、そう言って目をつぶる。
と、冥琳の鼻を何かの香りが擽った。
「スンスン……是は、柚子?」
そう、柚子の香りが冥琳の鼻を擽ったのだ。
それは、自分の持っている手紙の、空白の部分から香ってくる。
冥琳は、持っていた蝋燭で、その部分を下から炙った。
すると其処に文字が、浮き出て来た。
それは冥琳が子供の時分に、一刀に教えてもらった炙り出しと言う方法だった。
浮き出て来た文字には、こう書かれていた。
『流石、天才周公瑾お見通しだったか。
是が分かったんだ、俺の詩の違和感ぐらい気付くだろう。
それをみんなに教えてやってくれ』
冥琳は読み終わった後、頭の中でもう一度あの詩を振り返ってみる。
「……特に不審な点は……ん?」
詩のある場所で、引っ掛かりを覚えた。
「……っ! そうか! そう言う事か一刀っ!」
そして何か結論が出ると、急いで祭たちの居る部屋に向かった。
その足取りは先程より、軽い物だった。
~SIDE蓮華 思春~
蓮華は先ほど我を見失い、思春が止めなければ凱を殴ってしまう所だった自分を戒めていた。
「思春が止めてくれなかったら、私はとても自分勝手な女になっていたわ。 ありがとう、思春」
「勿体無いお言葉です。
お恥ずかしながら、蓮華様が取り乱されなかったら私が、華陀殿を殴っていたかもしれません」
蓮華の言葉に、思春は顔を伏せながら応えた。
蓮華はそんな思春の手を取って、顔を上げさせる。
「良いのだ。 それに、それだけお兄様は好かれていたと確認できて私は嬉しい」
「蓮華様……」
蓮華の心中を察した思春は、それ以上何も言う事は出来なかった。
「あ……あのう……少し宜しいでしょうか?」
その中、申し訳なさそうに夕陽が二人に声を掛けてきた。
夕陽は、二人に例の手紙を渡すと、二人の邪魔をしないように、その場を立ち去った。
「お兄様の手紙……」
しばし食い入るように見た後、封を切って中身を取り出す。
『我が愛する蓮華へ
蓮華先ず、すまん。
この手紙を蓮華が読んでいると言う事は、俺は其処には居ないだろう。
約束していた海水浴にも行けないな。
でも、蓮華君は何れ呉の王となる時が来る。
そんな時でも、俺以外で頼れる人物、思春を頼れ。
偶然にも、思春と蓮華の年の差は俺と凱と同じで、二人は気が合うみたいだしな。
俺達と同等か、それ以上の友として頼れるだろう。
ずぼらな姉とやんちゃな妹を頼んだぞ。
孫江 王虎一刀』
そして、思春も蓮華が手紙を取り出すのを見ると、自分も取り出した。
『我が愛する思春へ
思春、其処に居ない俺をどうか許してくれ。
初めて会ったのが、あの愚図の屋敷の中だったな。
中々刺激的な出会いだったが、今と成っては良い思い出だろ。
今まで、俺の部下として俺達孫呉の将として働いてくれてありがとう。
俺の居ぬ孫呉でもよろしく頼むぞ。
それと、蓮華は思春を気が合う友のようなものだと思っているはずだ。
ただの主従だなどと思わず、思春も友のように接してやってくれ。
妹を頼んだぞ。
孫江 王虎一刀』
「……」
手紙を読み終わった二人は、伏せていた顔を同時に上げて、相手の顔を見て、
「くすっ」
同時に微笑を浮かべる。
「お兄様も困ったものだわ」
「はい。 ですが、それが一刀様が一刀様たる証でしょう」
そう言った後、お互い居住まいを正し
「至らぬ所も多々あると思うが、我が佳き友としてよろしく頼む」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
今宵、二人の友情はより強固な物と成った。
それを確かめ合った後、二人は広間に行く為部屋を出た。
~SIDE雪蓮・小蓮~
「良し良し」
「ぐすっ……うぇぇ……」
雪蓮は一刀の死を知ってぐずる小蓮をあやしていた。
最も一刀に甘えていた彼女だけに、そして甘えたい時期であるためにその衝撃は大きかった。
だから、雪蓮はせめて今だけでも寂しくないように、一刀の代わりにはなれなくても。
其処に、手紙を抱えた夕陽が近づいてきた。
彼女は雪蓮とシャオの名の書いてある手紙を渡し、ぺこりと頭を下げて其処を離れた。
「シャオ、一刀から手紙が来てるわよ」
「え? お兄様から?」
そう言って、雪蓮は小蓮に手紙を渡す。
小蓮は半信半疑にそれを受け取り、封を空け中身を読む。
『我が愛する小蓮へ
小蓮、自分勝手な兄ちゃんを許してくれ。
決して小蓮を嫌いになったんじゃない。
兄ちゃんは、小蓮も雪蓮も蓮華も呉の国の皆が大好きだ。
皆をを守るために、傍に居てやれない。
兄ちゃんが帰ってきたら、可愛くなった小蓮を見せてくれ。
孫江 王虎一刀』
シャオにはまだ難しい内容だが、それでも一刀の思いは伝わったようで嬉しそうな顔をする。
そんな妹の顔を見て、雪蓮はやはり一刀は凄いと思った。
手紙一つで、小蓮の涙を止めたのだから。
小蓮が泣き止むと、今度は自分の手紙が気になり自分への手紙の封を切る。
『我が愛する雪蓮
雪蓮、何も言わず居なくなってすまん。
本当はそこに居てやるべきなんだが、どうも天は俺のことが嫌いらしい。
雪蓮、俺はこんな事しかしてやれなかった。
だから、蓮華と小蓮、それと俺の侍女の夕陽を頼む。
夕陽は、廿楽と俺以外に余り甘えないから、せめて寂しい思いはさせてやらないでくれ。
そして、約束する、俺は必ず還ると。
俺が、護る理由を覆さぬ為に。
俺がお前に教えた、護る覚悟を汚さぬために。
孫江 王虎一刀』
手紙を読み終わった雪蓮は、少し困った感じの笑顔を浮かべた後、
昔、一刀に教えてもらった護る覚悟を思い出し、不適な感じに笑う。
「一刀、私も貴方の護る理由を、辿る事にするわ。 貴方の愛したこの呉の民が笑顔になれる様に」
そう言った雪蓮の"眼"は、強い決意の光を燈していた。
雪蓮は、シャオと共に大広間に足を向けた。
~SIDE瑞穂・蒼里~
「此処に居たんですか、蒼里ちゃん。」
「瑞穂ちゃん……うん、ここは私にとって始まりの場所だから。」
二人が居るのは、あの一刀が二人の試験をした部屋。
今も、試験室として使われている場所だ。
「それを言うなら、僕達でしょ? 僕達はあの日、一刀様に認められ、て……いっ、しょにぃ、ぐすっ……。」
「瑞穂ちゃん……ぐすっ。」
喋りながらぽろぽろと涙を流す瑞穂につられて蒼里も涙を流す。
「……。」
廿楽は二人を見つけるも、声を掛けることが出来ず、
二人への一通の手紙を机の上において、静かにその場から出た。
そして、二人が泣き止み手紙の存在に気付く。
差出人の一刀の名前を見て、瑞穂は震える手で封を開き手紙を取り出し、
蒼里は少し涙声で、それを読む。
「『我が愛する蒼里・瑞穂へ
急に居なくなってすまない。
思えば始まりは、あの試験会場。
俺の心に二人の言葉は確りと響いたよ。
俺は居なくなっちまったが、二人にはこれからも孫呉を支えて欲しい。
俺だけで無く、もっと多くの人を支えて欲しい。
それが今、俺が二人に出来る最後のお願いだ。
そして約束する、必ず戻ると。
孫江 王虎一刀』
は、い……待ってましゅ、一刀しゃま……。」
「……僕の事まで、愛するって……待ってます一刀様。」
手紙の内容に、少し二人は勇気付けられる。
たとえ手紙でも、一刀が自分達に残してくれたものが有るのが嬉しいのだ。
そして二人は、手紙の中身を心に刻み広前と足を向けた。
~紗那~
紗那は一人だけ、広間の椅子に腰掛けていた。
そして彼女の前には、『軍義』と言う遊びの盤が置いてあった。
よく暇なときは、一刀としたものだった。
その時は、殆ど決まって雪蓮が途中から茶々を入れてきて結局、雪蓮と喧嘩になるのだが――。
そんな感傷に浸っていると、とが開く音がしたのでそちらを見る。
そこには一刀の侍女、夕陽が居り、紗那の所まで来て一通の手紙を差し出した。
「一刀様から紗那さんへの手紙です。」
「え……一刀様から。」
そういう夕陽の言葉に手紙に視線を移す。
確かに、封には一刀の癖のある筆跡があった。
すぐさま手紙を受け取り、紗那は中身を取り出す。
夕陽は、邪魔に成らぬように部屋から出た。
『我が愛する紗那へ
この手紙を読んでるって事は、俺は君の向かい側には居ないだろう。
出会いから中々刺激的だったが、君との日々退屈した事は無い。
それに、軍義では何時も奇抜な戦術で悩まされたからな。
武でも、雪蓮と競い合っているのを見るのは楽しかった。
紗那、俺の居ぬ呉でも頼む。
帰り着く家が無いのは、俺は嫌だからな。
頼んだぞ、紗那。
孫江 王虎一刀』
「一刀様……」
一刀の手紙読み終わった紗那の表情は、先程より柔らかくなっていた。
「何時までもお待ちしております。 私は、貴方様に全てを奉げたいのですから」
そう言った彼女の心は、やはり一刀へ向いていたのだろう。
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ちわっす!
タンデムです!
このお話は、第19節の裏側であったお話です。
一刀は手紙に何を残したのか?
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