「なぁ、一刀」
それは進行を始めて6回ほど陽が昇った時だった。
「ん?どうしたの?」
一刀達は街を訪れていた。
目的は一刀・攅刀・龍盟・蘭花の武器の調整。
一刀達の武器は一般兵とは違い特殊なものを使っている。
そのため、定期的に街に寄って調整を行う必要があるのだ。
今回は一刀が他の者の武器も調整することになっていた。
「あれ、どう思う?」
攅刀が指さす先には歌っている三人の少女が居た。
旅芸人のようだ。
「どうって?」
三人に別段、変わった様子はない。
だから、一刀には攅刀の質問の意味が分からなかった。
「可愛くねぇか?」
一刀はずっこけた。
「息子に訊くようなことじゃないだろ!」
「そんなに怒んなよ。ちょっとでいいから見に行こうぜ」
言うが早いか攅刀は少女達のいるトコに行ってしまう。
「はぁ、全く。あのバカ親父は」
どこか嬉しそうに呟いた一刀の言葉は誰にも聞かれることはなかった。
攅刀の後を追って一刀は少女達の近くに来た。
彼女達の歌を聴いている者はいない。
どうやら街の者達はせっせと働いているようだった。
「~~~~~~~~♪」
彼女達の歌はきれいだった。
一刀は暖かさと心地よさを感じていた。
そして、彼女達の歌が終わる。
パチパチパチパツ
一刀と攅刀は拍手をしていた。
「いや~、上手いもんだなぁ」
「俺たちには逆立ちしても無理だね」
「そらそうだ」
攅刀は笑う。
「私たちの歌、聴いてくれたの!ありがとう!」
一番最初に反応したのは桃色の髪をした娘。
「ふふん、さすがはちぃの魅力」
次に反応したのは碧色の髪をした娘。
「はぁ」
最後のは紫色の髪をして眼鏡をかけている娘だ。
「れんほーちゃん、なんでため息?」
桃色の髪の娘は不思議そうに眼鏡の娘を見る。
「姉さん、私たちが歌って集まったのがこの二人だけなのよ?」
「うん、二人が集まってくれたよ?」
「・・・はぁ、なんでもない」
眼鏡の娘は額に手を当て頭が痛そうにした。
「おもしろい人だね」
一刀が笑いを堪えながら眼鏡の娘に言った。
「それが取り柄ですから」
「ひどいことをさらりと言うなぁ」
そんな少女に一刀はさらに笑う。
「私は張角でこっちが張宝ちゃんで眼鏡の娘が張梁ちゃん。姉妹で歌って大陸一の歌い手になるのが目標なの。ここで会ったのも何かの縁だからもうちょっと歌を聴いていってね」
桃色の髪の娘――張角は笑顔で言う。
「名乗られたのに名乗らなかったら礼儀に反するな。俺は絽較ってんだ」
「俺は絽望だよ」
「それで嬢ちゃん達の歌。もっと聴かしてくれ」
攅刀は笑顔で張角に言う。
張角もそれに笑顔で応える。
「うん、私たちの歌聴いてね」
そして、張角たちは再び歌い始めた。
気づけば陽が落ちていた。
「やば、調整忘れてた・・・」
張角達の歌が終わったところで一刀が思い出す。
「でも、良い歌が聴けたからいいか」
張角達と話している攅刀に目を向ける。
何やらかなり盛り上がっているようだ。
すると、攅刀が近づいてきた。
「父さん、帰るの?」
「いいや、張角ちゃん達と飯を食うことになった」
「いつの間に・・・」
「ん?さっきだよ、さっき」
そんな攅刀に呆れる。
だが、そんな攅刀が嫌いではない。
「分かったよ」
一刀は諦めて承諾する。
5人は近くの飯屋に入った。
飯屋に着くと張角と張宝はもの凄い勢いで注文をした。
張梁は上品に食べているのだがそれでももの凄い量を食べていた。
余程、お腹が空いていたのだろう。
その姿に攅刀は気分が良くなり酒も注文する。
一刀はただ、ため息をつくしかなかった。
「ご馳走様!」
張角は笑顔だった。
一刀は引き攣った笑みだった。
理由は張角達と攅刀が大量に注文したせいで本来は武器の調整に使おうと思っていた金がほとんど消えてしまったのだ。
「本当にすみません」
張梁はさっきから頭を下げている。
「いや、いいって。言い出したのは父さんなんだし」
「そうそう、若いもんが気にすんじゃねぇよ」
「お前は気にしろよ」
一刀は攅刀の頭を叩く。
「いてっ」
「自業自得だ」
それを見て張梁も笑った。
「さて、俺たちは帰りますか」
「待って下さい」
張梁が呼び止める。
「どうした?」
「あの、ご飯のお礼と言ったらなんですけど私の真名を受け取って下さい」
「いいよ。あの飯は俺たちのお礼だったんだし」
「そうそう、気にする必要なんかないぞ」
攅刀も一刀の意見に賛成する。
「いえ、それでは私の気持ちが済みませんので」
真っ直ぐな瞳で一刀達を見る。
「そんなこと言われたら受け取らない訳にはいかないな」
「私の真名は人和(れんほう)と言います」
一刀がこちらも真名を言おうとしたら張角と張宝が反応をした。
「ちょっと、れんほーちゃん。絽望さんは私が先に狙ってたんだから」
「何言ってるの!ちぃが先だったでしょ!」
「絽望さん、私の真名は天和(てんほう)っていうの」
張角――天和が張宝の前に出て言う。
「ちぃは地和(ちーほー)よ」
張宝――地和は天和を押しのけて一刀の前に来る。
一刀はその様子に苦笑してしまう。
「俺の真名は一刀。楽しかったよ、天和、地和、人和」
「俺は攅刀だ。また縁があったら会おうぜ、嬢ちゃん達」
そのまま、二人は歩いて行った。
二人の背中を見ながら天和は呟くように言う。
「お姉ちゃん、一刀さんにもう一回、会いたいなぁ」
「それじゃあ、早く大陸で一番の歌い手にならないとね」
「ちぃ達に係ればそんなものすぐだよ、す・ぐ」
そして、彼女達は彼らと再会する。
それはもう少し先のお話。
その後、武器の調整を行えなかったことで龍盟と蘭花が怒り酒を多量に飲んでいた話は割愛させていただく。
「益州に到着だな」
攅刀は疲れたように呟く。
無理もない、昨日はあと少しで益州といことでみんなで騒いでいたのだ。
その後、全員が一刀に説教をされたのだ。
「気を抜いちゃダメだよ。早く拠点を見つけて物資の確保しないといけないし。誰かさん達のせいでね」
一刀は最後の方を低い声で言う。
「よ、よーし、お前達。とっとと、拠点見つけるぞ!!」
「「「「「「お、おうっ!!」」」」」」
攅刀達はすぐに動き始めた。
今後の行動について考えていたら古城が見つかったとの報告が入りそこへと向かう。
それはかなり年季の入った城であった。
「でも、この地形は有り難いね。後ろからは攻めにくそうだし」
「そうと決まりゃ、早く入っちまおう」
「待って、父さん」
一刀が手で制止する。
「城内に他の人がいるかもしれない。確認して居たら避難勧告をしないと」
「あー、そうだな。んじゃ、一刀に任せた」
「はいはい、任されたよ」
一刀は苦笑しながら返事をする。
兵に指示を出し一刀を含め30人程で城に潜入した。
しばらくすると一刀達は城から出る。
「誰も居なかったみたい。最近、使われたような形跡もないよ」
「よし、それじゃ、この城を新たな拠点とするか」
「みんな、しばらくは休憩しておいていいよ。この辺りの村を調べて手頃なトコから襲うから」
彼らは一刀の言葉に嬉しそうにしながら城に入っていく。
こうして、彼らは新たな拠点を手に入れた。
その頃、天和達はある本を手に入れていた。
そして、その本が乱世の開幕を意味していた。
『懺悔室』
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
近頃は温暖化の影響もあるのか急に冷えてきました。
お身体には充分ご注意ください。
すみません、テスト期間が終わったので少しテンションが低いのです。
テスト期間中なら昼には自宅に戻って来れたので書く時間が確保できたのですが…
更新のペースが落ちることになると思うのでご容赦ください。
さて、天和・地和・人和が登場しました。
正直に言って口調とかが難しいです。
「もっと、こんな感じ」や「もう少しこうしたらいい」などのコメントは大歓迎です。
それではご覧くださった皆様に多大なる感謝を!!
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残念なことにテスト期間が終わってしまいました・・・
それに伴って更新のペースが下がることになると思います。
ご了承ください。
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