No.175558

春の思いに誘われてー出会い編

TAPEtさん

恋姫二次創作小説。

一刀のハーレムいちゃいちゃの後ろにこんなことがあったかもしれない、という気持ちで書いてみました。

以前にラウンジで話してみたものを実際話しで立てあげてみ見ました。

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2010-09-30 16:45:11 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:4422   閲覧ユーザー数:3778

「河賊だ!!」

 

「毒蛾だぁ!!」

 

 

 

 

「お頭!」

 

「よっし、お前ら!金になりそうなものは持って来い!人には手ぇ出すんじゃねぇぞ!解ったか!」

 

「「おおおっ!!」」

 

 

 

俺は江賊、長江の毒蛾のお頭だ。

 

村を襲って、寶になりそうなものたちを奪いとって生きるのが俺たちの仕事だ。

 

養う妻も、子も得ず、耕す畑も持たずに、ただただ江の上で生きる。

 

俺たちはそういう人間たちだ。

 

 

 

ただ今の快楽が全て。後のことは考えずに今の楽しむ。

 

それが俺たちの生き方。

 

このまま何も考えずに楽しんでいたらよかったものを……

 

俺は何故あの人に出会ってしまった…

 

いや、あれは運命だった。

 

避けることのできない長江の流れのように訪れた出会い。

 

江で生まれた俺にとって、この運命は最初から決まっていたのだ。

 

 

「お頭!!大変です!」

 

「何の騒ぎだ!!」

 

久しぶりにいい酒が手に入ったというのに台無しではないか!

 

「鈴の音の奴らです!今こっちに向かって進んでいます!」

 

「あぁー?」

 

鈴の音…前には長江で中々有名だったが、荊州の劉表の爺のところに仕官したと聞いたがな。まさか戻ってきたのか。

 

「いい機会だ!この長江の上に立つ江賊は一つで十分だ!」

 

 

・・・

 

 

外に出てみたら、奴の船が近くに見える。

 

「鈴の音!この長江に何をしに戻ってきたぁ!!」

 

鈴の音。奴がいなくなって噂だけが広まっていて俺もまだその顔を見たことがない。

 

帰ってきてこのあたりの江賊団を次々と吸収していると聞いたが、一体どんな面をした奴か見てやろうじゃあねえか。

 

 

 

「……」

 

「っふん!!」

 

甲板に姿を現した奴は……女子?

 

「…貴様が長江の毒蛾か何かか?」

 

「そうだ!貴様が鈴の音か。まさか女子だとはな……荊州には仕えにではなく、お嫁入りでもしにいってたのかぁ?」

 

「…私がいない間長江の水も腐ってしまったようだ。…お前のような者共が長江に船を浮かべるようになるとはな」

 

「なんだとぉ?!」

 

随分と生意気な奴じゃねぇか。

 

面白い。

 

村を襲撃する時には味わえない良い気分だ。

 

「その口!そしてその腕!この目で確かめてもらおうか!どうせそのつもりで来たのだろう」

 

「………」

 

「ふん!野郎共!かかれ!」

 

「おおおっ!!」

 

 

 

 

鈴の音、

 

それを聞いた瞬間、その音がお前を黄泉路に導く。

 

なるほど…噂が伊達ではないってことか。

 

「たはぁっ!」

 

「ぐぁっ」

 

どさっ

 

「くふぅ……」

 

切りがねぇな。こちらの方が圧倒的に不利だ。

 

これ以上この船の上で血を流すことは気に食わん!

 

「鈴の音!俺と一対一でやれぃ!!」

 

……

 

チリン!

 

ガチン!!

 

「くふっ!」

 

いきなり攻撃しやがって…!

 

「…私の攻撃を塞いだか。中々腕はあるようだが」

 

一度攻撃が失敗したことで、鈴の音は姿を現した。

 

「ふん!俺を舐めたら困る!どうだ?俺とやる気が出たか?」

 

「…面白い」

 

「お頭!俺たちの優勢ですぞ!奴の挑発に乗る必要は……!」

 

あの野郎が!

 

「こらぁ!余計な口を挟むんじゃ、雑魚!」

 

「な、何だとー!」

 

「寄せ、奴のいうとおりだ」

 

「お、お頭!」

 

部下がやめさせることを聞かずに、鈴の音は構えた。良い。良いぞ。久しぶりに本気で沸いてくるじゃねぇか!

 

「……さあ、来い!鈴の音!その力、俺に見せてくれよ!」

 

「参る!」

 

ガチン!!

 

 

 

 

それからどれだけ経っただろうか。

 

ガチン!!

 

「たはあああっ!!」

 

「ふっ!」

 

チリン

 

ガチン!!

 

「す、すげぇぞ、おい。お頭とあそこまで戦える奴なんて、初めて見た」

 

「おい、感心している場合か!」

 

「いや、しかし見ろよ。あの二人!二人とも全力を出しているのに、互いまったく隙をみせねぇ。まるで最初から合わせておいて戦っているようだ」

 

ほざいてるな。

 

だがまぁ、奴の動きには素直に関心する。

 

ここまで俺と剣を合わせる奴がこの長江にいたか?否、なかった。

 

しかも見ろ、あの動きを。

 

「はあああっ!!」

 

何と美しいものだ。

 

江賊の俺が言うのもなんだが、俺たちにとって戦いとはただの命取り合いだ。

 

汚くても、卑怯でも、相手を殺して勝つのが全てだ。

 

だけど、こやつは違う。

 

まるで空を舞う一匹の蝶。芸術だ。こいつとの剣の交わりを終わらせることがもったいなく感じる。

 

それに比べ俺は何だ。

 

蛾だ。

 

蝶の真似をしながら醜く羽ばたく毒蛾だ。

 

「はああぁぁっ!!」

 

ガチン!

 

「っ!!」

 

ちっ、こんなところで腕が痺れては……

 

チリン

 

「はあああっ!!」

 

しまっ、

 

スッ!

 

ブスッ

 

「っ!!」

 

「お頭!!」

 

「てめぇ!!卑怯だぞ!」

 

「くぅ……」

 

……何だ?

 

何をしたのだ、俺は。

 

つい、いつもの習慣で、暗器を使ってしまった。

 

この馬鹿めが!

 

貴様が何をしたのかわかっているのか。

 

この美しい勝負を……

 

俺の最後を、奴との最後の交わりを汚してしまった。

 

江賊として、貴様のやったことは間違ってない。

 

だが、一人の武を鍛える者として……

 

俺の命はここでお仕舞いだ。

 

「!!」

 

「あああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

グサッ!

 

自分の剣で腹を刺して、私は暗黒の中へと落ちた。

 

 

 

……ここはどこだ?

 

真っ暗だ。

 

ああ、そうか。俺は……

 

馬鹿者めが……これが貴様の最後か。

 

お前のような卑怯な者に、こんな死に方が許されると思うか?

 

こんな、安らかな死に方が許されるというのか?

 

一生を江賊ことに使ってきた。

 

卑怯で、汚い江賊。

 

そして、最後の記念すべき戦いも、その汚い手で汚してしまった。

 

俺は……俺は……

 

もう一度奴と戦いたい!

 

「はっ!!」

 

いつつっ!

 

「俺は……生きたのか?」

 

「目が覚めたようだな」

 

 

「てめぇ、鈴の音!これは何の真似だ。説明しろ!」

 

歯応えがあった。

 

確かに腹を刺さったはずだ。

 

なのに、何故生きている。

 

それも、目の前には鈴の音が、俺の暗器にやられた横腹に手を当てて立っていた。

 

「勘違いするな。貴様の残った部下たちが頭を下げて貴様の命を乞った。偶然近くに通り過ぎていた医者に手当てをしてもらった」

 

「なん……だと?」

 

「感謝なら貴様の部下たちにしたらいい」

 

あやつら………

 

「いい部下を持っていたな。腕はイマイチだったが、頭への忠誠心だけは一品だった」

 

「俺の野郎どもをどうした!」

 

まさか…

 

「安心しろ。殺してはいない。あくまでその時まで生きていた奴らに限っての話だがな」

 

「そうか……」

 

と、ほっとしている場合ではないぞ、俺。

 

「これから俺をどうするつもりだ?」

 

「………」

 

「俺の部下たちに頼まれて俺を助けることに、貴様にとって何の得となる」

 

俺を見ている紫色の瞳は、何の汚れもないその輝きで非道で外道な俺を貫ぬくかのように鋭かった。

 

「貴様を私の右腕にしたい」

 

 

 

 

「…は?」

 

「これから長江の江賊らを全部片付けようと思ってな。今まではうまくいったが、数が増えるとどうも私だけでは指揮が取れない。貴様の腕前と部下たちの忠誠、貴様なら頼めそうだ」

 

おいおい、待てよ

 

「冗談はほどほどにしろ。俺に貴様の江賊の副頭をやれと言っているのか?」

 

「そうだ」

 

「くはっ!笑わせる」

 

「何が可笑しい」

 

「貴様、俺を舐めているのか?それともただの馬鹿なのか?」

 

先まで命を賭けて戦っていた俺を、自分の江賊団の幹部にさせるだと?

 

俺が自分を殺して、ここを乗っ取るとは思わないのか?

 

「貴様ならな」

 

「何?」

 

「貴様は先私との戦いで暗器を使ったことに、自ら屈辱を感じ、命を落とそうとした。そんな貴様が、私を急に襲うとも思えん」

 

「……」

 

「何なら試してみるか?」

 

「何?」

 

そう言った鈴の音はいきなり両手を上に上げた。

 

「今の私は無防備だ。私を殺してそのうち逃げるだの、この船を乗っ取るだの好きにすればいい」

 

この女子……正気か?

 

いや、ありえん。

 

馬鹿げた話だ。

 

こいつが俺を試している。

 

どこかに隠した武器や、それともどこかに潜んでいる部下が………

 

「船上には誰もいない。全員船から出るように言っておいた」

 

「!!」

 

…馬鹿な…本当に外から何の気配も感じられん。

 

まさか、本当に無防備姿で、今俺の前に立っているんだと言うのか?

 

「どうした?やらないのか?」

 

「…何故だ。何故そこまでできる」

 

「言ったはずだ。私は貴様を私の右腕に使う。その腕、自分の武への歪みなく真っ直ぐな心構え。貴様なら頼める」

 

「もし、俺がここで貴様を斬ればどうする」

 

「その時は私の目が節穴だったということだろ」

 

「………」

 

何と言う奴だ。

 

自分の決定にまったく戸惑いがない。

 

これが…鈴の音だという人物だと言うのか?

 

「…ふっ、なるほど。江賊たちが貴様を伝説のようにしていることも無理はないということだ」

 

「………」

 

「いや、素直に関心した。まさかこれほどの人物が江賊などをやっているとはな……」

 

「それはお互い様だ」

 

「くっ!それほど評価してくれとはな『思春だ』……何?」

 

「これから私のことは思春と呼べ。貴様にはその資格がある」

 

「おい、おい待て!それは真名か?今貴様、俺に真名を預けたのか?」

 

「そうだ」

 

マジかよ、おい。

 

「貴様、むちゃくちゃ奴だな」

 

「貴様ほどではないがな」

 

こいつは、

 

こいつは面白い。

 

当分は美味しく酒が呑めそうだな。

 

その腕、その度胸、その美しき戦い方。

 

まるで俺、いや、江賊なら誰でも目指すような境地に、こいつは至っているということか。

 

「ておっと、真名を許してもらって、こっちの真名を言わなければ不公平だな。俺の真名は……」

 

 

 

 

 

 


 
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