第三章~赤薔薇 猫耳軍師に出会うのこと~
Side in 荀彧
私の名は荀彧 文若。つい先日、実家に賊が押し寄せ私の両親、家財一式等、全てを奪われた。
全てを無くし路頭に迷っていた所、同じような子供と出会い、その後盗人行為をして生活してきた。
ある時は人のサイフを盗み、ある時は食堂で畑荒らし等をして日々送った。私達は皆その時を生きるので必死だった。生きる為には何でもやった。
しかし、今日私は出会ってしまった。
一目みた瞬間に私にはわかってしまった。彼は王なのだと。
彼こそ私が仕えるべき方なのだと・・・
あの人に見てもらいたい!あの人の治める天下を見てみたい!あの人と共に歩みたい!
心の底から私はそう思った・・・
Side out
私達は今、冀州 南皮の街で宿を取っている。現在の太守は袁成というらしい。堅実は政治を行っているようで、街中は賑わっていた。
現在、私達がこの世界にきて5日程が過ぎている。その間の事に少し思考を巡らせて見る。
3人で旅を始めてまず感じたのが、治安の悪さである。旅人はいい鴨に見えるのか、毎日賊が襲って来る。大体少ない時で3人組、多い時で20人程度の集団となってくる。なのでこの世界にきて私が殺めた人の数は既に257人に昇っている。名を名乗ったものに関しては全て記憶しているし、終わった後は丁重に葬った。彼らもやはり政治の犠牲者なのだから・・・
次にあげるとすれば、愛紗であろうか。旅立ったその日から愛紗は私に教えを請うて来た。理由を聞いてみた所「私も兄様のお手伝いがしたい!私の力も、平和の為に役立てたい!」とのことだったので、ステラに少し困った顔をしてみた所、微笑みと共に頷いていたきたので、愛紗を鍛えることにした。
まず、最初に私は愛紗に殺気をぶつけて見たところ、多少怯んだが臆することなく向かって来る気迫を感じたので、その日は腕前を見る為、1時間程稽古を付けた。そして、驚く事に彼女はおそらく無意識であろうが、霊力をその身に纏、攻撃をしてきた。動きは荒く、力も、早さも足りないが、将来 関羽雲長の名に恥じぬ将になるであろうことが感じ取れた。
それから毎日、愛紗に武の稽古(武器は私が木の枝を削り魔力で加工した偃月刀)の他、軍学、野戦技術、将としての心構えを説いていった。ブリジットにもいった事だが、特に人の上に立つ者としての心構えとして、「いかな最良の戦、政をしようとようと、必ず犠牲は出る。私達は将来人の上に立ち、責任ある者となろう。だから犠牲を常に覚悟し、せめて犠牲を最小に留め、その者達を忘れないようにしない」と、それを聞いて愛紗は今まで私の行って来た相手の名前を聞く事、終わった後に弔うことの意味を悟ったようで、瞳には強い決意の色を宿していた。
思考を終わらせ、愛紗に座学を申し渡し、ステラは旅で疲れていたようなので、宿に留守番をさせ、街の散策に出てみることにした。
街に出てしばらくすると、3人位の女の子達が走っているのが見えた。少し注意して見てみると、あちらこちらの人にぶつかりながら、巾着をスリ盗っているのが見えたので、私は気配を消しながら彼女らを追いかけていくと、彼女らは路地に向かってそのまま走っていき、一軒の小さい建物にもぐりこんだ。
私は気配を消したまま、その建物に入り込み、彼女らに笑顔で声をかける。
「やあ。」
そうすると3人は驚き眼を見開いていたので、思わず私も苦笑を浮かべてしまった。
「だだだ、だ、誰だ!おまえは!」
「私は通りすがりの旅人だよ。」
「そ、その旅人が何でここにいるのよ!いっとくけどここは私達の家なんですからね!出てってよ!」
「いやね。君達が街中で人の巾着を盗んでいるのが見えたからね。気になってついてきてしまったんだよ。」
私のその言葉に3人は絶句し、逃げようとしたが、猫耳フードの少女が私を見て逃げられないのを悟ったのか、残り二人を引きとめ、裁きを待つように私の前に座った。
「・・・逃げないのかい?」
「くっ・・・逃がしてくれるの?とてもそうは見えないけど・・・」
「ふふふ、瞬時に逃げられないと判断したのか。君は勘もいいし頭の回転も速いね。さて、逃げないのならどうしてあのようなことをしたのか、私に話してごらん。」
「え?私達を捕まえて役人に差し出したりしないの?」
「それは君達の話の内容によって考える事にしたよ。」
私がそういうと彼女らはポツリ ポツリと語りはじめた。
「・・・私は名士の家に産まれたので、これまで食べるのに困ったことはなかったの・・・けど・・・半月程前に家が賊に襲われ隠れていた私以外、全員殺されてしまったの・・・食べるのにすら困った私は同じ境遇の2人と出会い、盗みをすることによって何とか生きてきました・・・でも・・・正直・・・つらいです。」
と最後には泣き出してしまった。残りの二人も同じように泣いている・・・そこで私は一つの提案をする。
「君達・・・もしよかったら私と共にこないか?今、私は旅の身だが、君達がこの生活から抜け出したいというのであれば、私は君達を歓迎しよう。どうだろうか?」
と問いかけた所、彼女らは案の定戸惑っていた。
「その代わり、盗んだ者は返してからになるけどね。今日私が見た範囲の人は私は顔を全部覚えているが、それ以前の者の顔は覚えているかい?」
と聞くと猫耳フードの少女が
「はい・・・覚えております。それだけが私が彼らに対して出来ることでしたから・・・」
「そうか、えらいね。」といって私は彼女の頭を撫でると最初戸惑い、その後嬉しそうな顔をこちらに向けてきた。
「それで、ついてきてくれるかな?」
「はい!私は姓は荀、名を彧 字は文若、真名を桂花といいます!よろしくお願いします!」
「桂花がいくなら私も一緒にいきます!姓を張、名は?、字を儁乂、真名は蘭です!よろしく!」
「二人がいくなら私がいかないわけには行きませんね。姓は徐、名を晃、字は公明、真名は灯と申します」
内心3人の名を聞いて驚きつつ、私も名乗り返す。
「桂花、蘭、灯 ありがとう。私の名はローズレッド・ストラウス。真名は持ち合わせていないので、ストラウスと呼んでほしい。」
「はい。すとらうす様。変わったお名前ですね。」
「ああ、私はこの世界の者ではないからね。まだ5日程前に来たばかりなんだよ。」
「え・・・!こ、この世界の者ではないと・・・まさか・・・天の御遣い様・・・ですか?!」
「ああ、そうとも呼ばれているね。」
「も、申し訳ございません!散々無礼な態度を取ってしまいました!」
「桂花、あまり気にしないでほしい。今日から3人共私の家族になったのだから。」
「か、家族・・・あ、ありがとうございます・・・」
といって3人共また泣き出してしまったので、私は少し慌てつつ、話を変える。
「さて、宿にまだ2人私の家族が待っているので、先に宿に一緒にいこうか」
「はい!」「は~い!」「わかりました!」
その後、宿に戻り、ステラと愛紗に状況を説明し、名乗りあった後、今後の予定を立てる。
まず、3人には盗んだ物の返却作業を行ってもらう。その間に私とステラ愛紗の3人は路銀を稼ぐ為に物を作って販売した。私は装飾品(ダイヤの原石を魔力でカットしたのが一番稼げた)を作り、ステラが編み物し、それを愛紗に売ってきてもらった。
また、愛紗に稽古をつけている所を見られ、3人にも教えることとなってしまったのは別のお話・・・。
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猫耳軍師登場~
猫耳万歳!