第一章 赤薔薇、降り立つのこと
「んっ・・・・・・・」
私は意識を取り戻すとまず、隣にはステラが寝ていることを確かめ、愛しさが込み上げくるのを我慢し現状を確認する。
魔力は管輅に言われた通り1割程度まで落ち込み、空を飛ぶことはできるが余り長くは飛べそうにない。
魔力による武器の作成は可能。軽く剣を振ってみるが身体能力はそのままのようだ。
次に時間だが、空は既に暗くなっており、月の優しい光が周りを照らしている。私は星を見て年代と場所を予想してみた所、場所は中国大陸北部、年代は1800年程過去の時代だと予想した。
また、魔力を用いて念話を試みてみたが、反応が無いところを見るとこの世界には『夜の国』は存在しないだろうことも予想がついた。
さて、管輅曰く、この世界は外史と呼ばれる別の世界であり、戦乱が発生するとの事だが、まずはこの世界を知り、人を知り、拠点を築くことからはじめるとしようか。
こんな事を考えつつ、私の中では抑えようのない歓喜の想いが膨れあがってきているのを感じている。この世界ではステラが生きている。私は彼女と共に今度こそ一緒に生きていける。今度こそ守ってみせると。その為にも管輅のいう戦乱を終息に導き平穏を手に入れよう。
思考が纏り、隣を見てみるとステラが既に起き、私の服の裾をつかんでいた。
「ストラウス~おはよ~♪」
私は抱きしめたい衝動を我慢してステラに答えた。
「おはよう ステラ」
「ステラ、今後の事だが私はまず世界を回り、見極め、国を立てようと思う。そんな私についてきてくれるか?」
私がそうたずねるとステラは笑顔で答えた。
「私には難しいことはわからないけど、私に出来るのは貴方について行き、貴方の幸せを願うことだけだよ♪どこまでも貴方についていきます♪」
その瞬間私は我慢が出来なくなり、ステラを抱きしめ涙を流しながら抱きしめ感謝した。
「ありがとうステラ、そしておかえり」
「ただいま ストラウス♪」
どれくらいそうしていたのだろう。しばらくして、私達のいるところからそう遠くない場所で火の手が上がった。耳を凝らすと悲鳴まで聞こえてくる。ステラの気がついたようで、目で私に訴えかけてきている。
「ストラウス・・・・」
その声に私は頷くとステラを抱えその場所まで飛ぶことにする。
「いくぞ、ステラ!」
「はい!」
火の手の上がった場所についてみると、そこには人が村人を襲い殺し犯し奪っている姿が見えた。その様はまるであの日に私が見た世界が終わりに向かう火時計のように・・・・
腕の中のステラを見るとそのあり様に怯え震えていた。
その中で私は地上に降り、ステラを下ろし、無言で魔力弓を作り賊と思しき者に向かって放った。
矢は賊の頭を寸分の狂いなしに貫きその命を奪った。
先程、空から見たところ、賊の数はおよそ百。私はステラを連れて賊を時に弓で時に剣で退けつつ村の中を進んでいった。村の中央ではその賊の頭目らしき男が回りの部下に指示を出していた。
「野郎共!男は殺せ!女はここに連れてこい!金目の物も全部ここに集めろ!」
「「「おーーーーーーー!!!!」」」
その中に私は無言で進み、頭らしき男に話しかけた。
「なぜこんなことをするんだ?」
「はぁ?おめぇ誰だ?何いってるんだ?楽しいからに決まってんだろ!」
男は心底楽しそうにそう私に答え、
「おっ、いい女連れてるじゃねぇ~か!俺様に寄越しな!」
とその手をステラに伸ばそうとしていたので反射的に私はその手を斬り落とした。
「痛てーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!手前!何しやがる!!!俺達に刃向かうつもりか!野郎共!こいつを殺せ!」
「「「へい!!!!」」」
その言葉を合図に私に向かって殺到してくる彼らを私は表情一つ変えずに切り捨てていく。
「なんだ!こいつは、強いぞ!」
「皆 囲んで一気に潰してしまえ!」
「「「うぉおおおおおおおお!!!!」」」
一斉にかかってくるが私は冷静に彼らを斬り、頭だけが残った。
「てんめぇ!俺の部下達をよくも!」
といい斧で切りかかってくるのを私は避けそのまま首に向かって剣を振り下ろした。
こうしてこの世界で、私にとって初めての戦いは幕を閉じた。
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山賊狩じゃ~