「お兄様!!」
この世で愛すべきたった一人の肉親で最愛の妹、ナナリーの悲痛の声がクラブハウスの生徒会室へ入ってきたルルーシュの耳に届く。先ほどまで、クラブハウスの生徒会室への廊下を同じクラスのカレン・シュタットフェルトと、他愛のない今まで生徒会会長のミレイが考えたイベントの話をしながら、カレンは疑問と表情に表しルルーシュは呆れも含めた乾いた笑いを浮かべていた。
そんな呑気な雰囲気から一変し、生徒会室の空気は重かった。それにナナリーの声にルルーシュは反応する。
「なんだい?」
そのルルーシュの問いに答えたのは、ナナリーではなくミレイ。
「クロヴィス殿下が無くなったのよ…」
「殺されたんだってさ」
続けてリヴァルがルルーシュとカレンの方へ視線を移し答えた。
「「え?」」
ルルーシュとカレンは同時に声を上げた。視線を設置されているテレビに向けると、グレーの軍服を着た軍人が整列し報道関係のカメラのフラッシュで間髪入れずに画面が白く光る。青緑色の髪をした男性の軍人は、整列している軍人よりも身分が上である事を意味する外装を纏い、紺色の制服に白の手袋を着用している。
「クロヴィス殿下は、イレヴンとの戦いの中で…平和と正義の為に……、殉死されたのだ」
カメラに向かいそして報道陣へ向かい熱く声を上げる。
エリア11でのクロヴィスの死。それはエリア11のみならず、ブリタニア国内や他国でも衝撃と波紋をよんだ。皇族の死。それは占領地としてエリアと呼ばれるナンバー地域の反ブリタニア勢力の中で、このイレブンと呼ばれる地域に対する注目度が急激に上昇していた。
「たった今新しい情報が入りました」
アナウンサーの声と共に、会見の中継から映像が切り替えられる。双方を軍人に挟まれ白い拘束服を着させられた男、まだ若く見え少年といえる童顔な男。茶髪で髪が癖づいている。
「実行犯と思われる男が拘束されました」
そのアナウンサーの言葉に、生徒会室全員が息を飲んだ。
「発表によりますと、逮捕されたのは名誉ブリタニア人です」
「まさか?」
ルルーシュはその少年の姿を見て、小さく声を漏らした。「まさか」ともらしたが見間違うはずは無かった。なぜなら彼は唯一の……。
「枢木スザク一等兵。容疑者は元イレブン…名誉ブリタニア人の、枢木スザクです」
しばらく言葉を発せずただ呆然とテレビを見ているメンバーだったが、誰からともなく徐々にその部屋を出ていった。最後まで残っていたのは、ミレイとナナリーの二人。ルルーシュはミレイにナナリーの事を頼み、みんなと一緒にクラブハウスの外へと出て行った。
二人きりになった生徒会室。ミレイはナナリーの様子を横目で確認すると、表には出さないように抑えて入るが微妙に体が震えている。みんながいる時は閉じていた双眸を、今は完全に開いてテレビの映像をしっかりと焼き付けていた。
ミレイがそっとナナリーの肩に触れると、ナナリーは一瞬ビクっと体を反応させた後、ゆっくりとミレイの方へ顔を向けた。その表情はミレイが見る限り、少し青ざめていつもと違い弱弱しく怯えたような表情に見えた。
「ナナリー…、知ってる人なのね?」
少し目を細めてナナリーに微笑む。ナナリーは、ミレイのこの微笑を知っていた。全てを見透して、それでもすべて受け止めてくれるその表情を。ナナリーはただ頷いた。そしてゆっくりと口を開き言葉を紡いだ。
「そっかぁ、彼の…枢木スザクの家に、ナナリーとルルーシュは送られたのね」
外交と言う名の人質として、日本へ送り込まれた二人。その送り込まれた家が日本国首相であった枢木ゲンブの子、枢木スザクの居る枢木の分家だった。そこで紆余曲折を経て、ルルーシュは当時唯一の友人として三人でいろいろ過ごしたと、ナナリーは少し当時を思い出し笑みを浮かべてすべてを話した。まだ盲目で足が不自由だった当時の事を……。
「友達…彼がルルーシュの認めた友達だったのね。だからあんなに動揺してたんだ」
恋人として傍に居て、いろんなルルーシュを見て触れて交わって…そんなミレイだからこそ気づけた彼の動揺。恐らくナナリーは、自分が動揺していたためルルーシュの動揺にまで気が回らなかった。
だからこそミレイは、ナナリーを後ろからそっと抱きしめる。一瞬驚いたナナリーも、ミレイへ身を委ねた。
「大丈夫。ルルーシュが本当にブリタニアを倒す…、っていうのならきっと彼を助けると思うわ。ルルーシュは友達を大切にする優しい人。ナナリーが愛する素敵なお兄さんで、私の愛しい人」
少しだけ抱きしめる力を強めたミレイは、そっとナナリーの耳に囁く。ミレイの囁きと吐息に、少しだけ顔を赤らめ体を震わせるナナリー。
「きっと彼が無事に助かったとしたら……、その助けた人がルルーシュよ。王の力を使ってね…」
そこまで言ってミレイはナナリーから離れると扉の方を向く。
「でしょ?シーツー」
ミレイに呼ばれると同時にドアを開き、緑色の髪をたなびかせ室内へと入ってくる少女に見える女性。
「さあな?私にはわからん」
「またまたぁ」
無表情なシーツーに対して、ミレイは含みを持たせた笑顔を返す。シーツーはナナリーの所まで来ると、その手をそっと握り、「大丈夫だ」とだけ告げた。ナナリーはそのシーツーの言葉に「はい」と答え、優しい微笑を返した。
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アニメを元にしたIF話です。
STAGE3と4の間くらいの話です。
短いです。