No.173605

真・恋姫†無双 黄巾√ 第七話

アボリアさん

皆様お久しぶりで御座います 黄巾√第七話です
PCの件ですが、結局新しいものを買う事になり、以前の相棒は暇な時にでも自分で修理、セカンドPCとして使う事にしました
皆様、応援、励まし、アドバイスなど、さまざまな温かいお言葉本当に有難う御座いました!!
暫く書かなかったせいで書き方を完全に忘れてし待った為、暫くは更新が遅いかもしれませんがご容赦ください
……ちなみに今作も、PC自体は数日前にセットアップ及びデータ移行なども済んでいたのですがなかなか書けず、せめて日曜中には頑張ろうとしたら突然の仕事が入ってしまったため結局こんな時間になってしまうという体たらくですw

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2010-09-20 02:05:27 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:9630   閲覧ユーザー数:7604

「張梁ちゃん!!一刀殿!!賊の奴等、西の入り口からも攻めてきやがったぜ!!」

 

「何だって!?数は!?」

 

「そんなに数は多くねえから、陽動かもしれねえ。でも、少数だって村に入れる訳にゃいかねえだろ!!」

 

「くっ……!!どうするか……」

 

そういって呻きながら俺は眼前に広がる光景を睨むように見詰める。

そこには千を数えるのではないかと思うほどの人……いや、賊の群れがひしめいていた。

 

「こっちの防衛も考えると、西側に割くだけの人数がいないわ。どうしたら……」

 

そういって考えを巡らすように腕をくみ、頭を抑える人和……そんな時、俺達の後ろから声が上がった。

 

「兄ちゃん達!!そっちは僕達が行くよ!!」

 

その声の方へと振り向く……するとそこにはこの村に来た時に知り合った、二人の少女の姿があった。

 

「え、でも君達は昨日から働き詰めじゃないか。大丈夫なのかい?」

 

「うん!!ちょっと休んだからもう大丈夫!!」

 

「私もです。それに、兄様達が村を守る為に頑張ってくれてるのに、私達だけ休んでいる訳には行きません!!」

 

「う~ん、でも……」

 

二人の意見に俺が思い悩んでいると、前方から更に声がかかってくる。

 

「一刀~!!救護も裏方も手一杯で、もし行かないんならこっちも手伝って欲しいんだから決めるなら早く決めてよ~!!」

 

そういって泣きついてきたのは、非戦闘員の人達と一緒に怪我人の救護などをしてくれている天和だ。

確かに現状から考えて、迷っている暇なんて無いな、と俺は思い直す。

 

「じゃあ二人は西入口の対処を頼む!!周倉さんも何人か連れて、二人と協力して賊に当たってくれ!!」

 

「うん!!」「分かりました!!」「承知だ!!」

 

「その間の前線の指揮は地和、頼む!!」

 

「任せときなさい!!皆!!ちいの言うとおりにして、ここを守りきるわよ!!」

 

「「「「「うをおおおォォォォ!!!」」」」」

 

地和が前線で防衛戦を繰り広げる黄巾の皆に喝を入れる。

彼女の声は、公演の時のように妖術によって遠くまで響くので、指揮を出すにはもってこいだった。

その光景を眺めつつ、俺の隣に立つ人和が呟くようにいう。

 

「確かにこれで急場は凌げるかもしれない。でも、私達は人数で圧倒的に劣ってるし、昨日から戦い詰め。ここからどう動くかが問題ね……」

 

「そうだな……ともかく、今は俺達も防衛の為に全力を尽くそう」

 

そういって俺達は前線を見詰め、これからの動きを想定しつつ、防衛に尽力する。

 

 

 

……なぜ今、俺達がこんな事態に陥っているかといえば、事の発端は昨日へと遡る事になるのだった……

「大分来たかな~」

 

皆の方へと振り向きつつ、呟く。

俺達は現在、これから台頭してくるであろう曹操の人物を知る、という目的の為曹操領である許昌を目指して旅を続けていた。

 

「そうね。あと山一つ越えたら、曹操の領土に入るわ」

 

俺の呟きに答えるように話す人和だったが、あとの二人はその言葉を聞き、「えぇ~~~」と情けない声を上げる。

 

「まだ山一つ越えないといけないの~?」

 

「こんな時間から山越えなんて無茶よ~」

 

最早おなじみになってきている二人の愚痴に、「あ~、はいはい」と、半ば面倒くさそうに手をヒラヒラと振って人和が答える。

 

「そういうと思ってた。……山の手前に村があるし、今日はそこで休む予定よ。今周倉さん達に先行してもらって、寝床やなんかの準備をしてもらってる」

 

「本当!?人和ちゃん、偉~い!!」

 

「そうと決まったら急ぎましょう!!」

 

「……二人とも、さっきとはうって変わって元気だね」

 

一気に元気になった二人を見ながら皆と共に苦笑しつつ、歩を進めていると……前方から誰かが走ってくるのが見えた。

 

「あれは……周倉さんと一緒に先行した人達じゃないか?」

 

見慣れた顔ぶれが必死の形相でこちらに向かって走ってくる事に軽く違和感を感じていると、その人達は走りながらも大声でこちらに向かって叫んでくる。

 

「大変だ!!この先の村が賊に襲われてる!!」

 

「何だって!?」

 

息も絶え絶えといった呈の彼らだったが、俺達の元へたどり着くや否や、一気に説明を始めてくれた。

 

「俺達が村に着こうかって時、千人近くの大軍が村を襲ってるのが見えたんだ!!村のほうはちっちゃな嬢ちゃん二人が先頭になって応戦してたんだが……」

 

「ちょっと待って。……小さな女の子が?」

 

俺が訝しげに問いかけると、彼らは強く頷く。

 

「それが、その嬢ちゃん達めっぽう強えんだよ。でも、如何せん数が違いすぎるってんで、周倉の兄貴達が加勢、俺達は張角ちゃん達を呼ぶために戻ってきたんだ!!だから急いでくれ!!」

 

彼らの報告を受け、俺達は顔を向き合わせると一斉に頷く。

 

「皆~!!急いでその村に向かおう!!」

 

「「「「「応!!」」」」」

 

そうして俺達は全速力で村へと向かったのだった……

その後俺達は村に着くと、周倉さんたち及び、村の人たちと合流。

とはいえそれでも戦力差が十倍近くあるという事で、村に篭って一両日近くの篭城戦を繰り広げる事となったのだった。

 

 

「お~い、兄ちゃ~ん!!」

 

ふと、声のしたほうを見る……すると、西の防衛に向かった二人と周倉さん達が帰って来た所だった。

 

「皆、大丈夫だったか?」

 

「はい。あっちはあらかた片付けて来ました。それと防壁も築いておきましたから暫くは大丈夫かと」

 

「片付けて、って……」

 

こともなげに笑顔でいう黄緑髪の少女の言葉に内心冷や汗を感じていると、周倉さんが補足するように続ける。

 

「……いや、実際賊の大半は彼女等二人だけで倒していましたよ。少女相手にこう言っては失礼かもしれないが、まさに豪勇って呼ぶにふさわしい感じで……」

 

「マジで……?」

 

一体こんな小さな子達の何処にそんな力があるんだろうか?

そんな風に俺が驚愕していると、地和が二人に抱きつきながら言う。

 

「へぇ~!!そんなに凄いならさ、私達の義勇軍に正式に入らない!?」

 

「へ?」や「きゃあ!」と驚く二人を尻目に、地和は天和も巻き込んで二人を抱きしめる……一応戦の最中なんだけどな。

 

「はぁ……二人とも、今はそれどころじゃないでしょ、全く。それより今は、この苦境をどう乗り切るかの方が大事」

 

溜息交じりで言う人和だったが、いっていることは至極最もだ。

前方を見ると、賊の一団は陽動が簡単に破られた為か、一旦攻勢を緩め体勢を立て直しているようだった。

だからこそこんな暢気に話が出来ているのだが、もし賊が数に任せて一気呵成に向かってきたら……疲れきった俺達で防ぎきれるかどうかは分からない。

 

「駄目元できくけどさ、この辺りの領主の軍が来る可能性は?」

 

「……無いと思います。領主様は最近の賊の攻勢ですっかり及び腰になっているって話ですから、こんな小さな村に軍を送っては来ないかと……」

人和の問いに首を横に振りながら少女が答える……まあ、丸一日近く戦っている時点でその可能性はない事は分かっていたが、はっきりといわれてしまうと結構堪えるものがある。

どうしたものか、と俺たちが考えていると……

 

「張角ちゃん達!!賊の後方に砂塵が!!」

 

「「「「え!?」」」」

 

防衛に当たっていた黄巾兵の言葉に、俺たちが振り向く。

見ると、確かに賊の後方に行軍とおぼしき砂塵が見て取れた。

 

「まさか、賊の援軍……!?」

 

そうだとしたら、まさに絶体絶命だ。

そんな事を考えているうちに砂塵はどんどんと近づいて来ていて、とうとう旗印が見える距離まで……って、あの旗は……!!

 

「曹の牙門旗、更に脇には夏候の旗が二つ……!!まさか!!」

 

「アレは山向こうの刺史様の旗!!兄ちゃん、味方だよ!!」

 

桃髪の女の子が興奮気味に言うが、山向こうって事はやっぱり……曹操軍!?

俺達が驚いている間にも曹操軍は眼にも留まらぬ速さで賊へと接触すると、圧倒的とも言える力で次々に賊を蹴散らしていく。

 

「って、驚いてる場合じゃない!!俺達も加勢するぞ!!今までやられた分、やり返してやれ!!」

 

「「「「「うおおおおおォォォォォォ!!!」」」」」

 

俺達は曹操軍の出現に浮き足立った賊軍の後ろから挟撃するように突撃をする。

 

前後から攻撃を受け浮き足立った賊たちは一気に壊滅、こうして俺達は曹軍の助けもあり、何とか危機を脱したのだった。

「曹操様、我々の危機を救っていただき、真に有難う御座いました」

 

人和がそういって礼をとると、俺達も続いて頭を下げる。

あの戦の後、俺達義勇軍は曹操たっての希望という事で面会をしていたのだった。

 

「礼式は結構。面を上げなさい」

 

曹操の言葉をきき、俺達は頭を上げる。目の前に居るのは……金髪の、俺とそう歳も変わらないような少女だった。

 

(いや、張角が女の子だった時点で、俺の知っているような人物像とは違うだろうと思ってたけど……まさか、曹操まで女の子だとはね)

 

ただ、目の前の女の子からは俺でも分かるくらいに圧倒的な覇気……とでもいうのだろうか、そんなオーラのようなものを感じるし、本物の曹操なのだろう。

俺がそんな事を考えていると、曹操が話し始める。

 

「まず、我々の賊討伐に協力してくれた事を感謝するわ。そして、村を救わんとして賊へと立ち向かい勝てないまでも一両日村を守りきった事もね」

 

そういって曹操はこちらに頭を下げる。

 

「なっ!?華琳様!?華琳様が頭を下げる必要など……!!」

 

それを見て慌てたのは、曹操の隣に立つ女性だった……状況的に夏候惇か、夏候淵だろうけど、どちらかは判断がつかない。

 

「控えなさい春蘭。礼に対しては礼を持って応える、当然の事でしょう?」

 

「はっ、す、すみません!!」

 

春蘭と呼ばれた黒髪の女性は曹操の言葉に萎縮したように縮こまってしまう。

ただ、曹操は慣れているのか気にした様子も無く「それで、」と話を続けた。

 

「義勇軍、という話だけれど、なぜこの乱世において軍を結成したか、聞いてもいいかしら?」

 

「はっ、私達は、この乱世において罪も無い民草が傷つくことに義憤を覚え、その民草を救う為に義勇の軍を結成しました。私、張梁と二人の姉張角、張宝と彼……北郷一刀の四人で率いております」

 

そう、と答えながら曹操が俺達を値踏みするかのように視線を送ってくる。

 

「回りくどい言い方は好かないから、単刀直入に言わせて貰うわ。貴方達義勇軍丸ごと私の傘下に入る気は無いかしら?」

 

「……え?」

 

突然の提案にざわめく俺達だったが、曹操は更に続ける。

 

「貴女達の戦いぶりは村の長に聞かせてもらったわ。義勇軍としての規模は小さく、戦闘もまだまだ未熟。でも、賊を相手に引かない態度と長時間の戦いでも衰えなかった士気、それを率いる貴女達の求心力……それを、私の為に使わないか、と聞いているの」

どうかしら?と問いかけてくる曹操。

俺や天和、地和は驚きもあって答えに窮してしまうが、曹操の前に立つ人和だけが毅然とした態度で問い返した。

 

「……一つ、聞かせていただきたいです。過大な評価だと思いますが、もし私達にそんな力があるとして……曹操様はその力をどのように使うおつもりでしょうか?」

 

「貴女の言うとおり、国の腐敗は最早予断を許さない状況まで来ている。そう遠くない未来、この国は力が物を言う群雄割拠の時代となるわ。その乱世を制する為、私には多くの力が必要なの。武力、知力、政治力に求心力。ありとあらゆる力が、ね……どうかしら?」

 

そういって不敵に微笑む曹操。けれども、その誘いに対する答えは……決まっていた。

 

「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます」

 

「なっ!?貴様!!」

 

その言葉に先程春蘭と呼ばれていた女性が激昂するように叫ぶが、曹操はそれを手で制する。

 

「……理由を、聞かせてもらえるかしら?」

 

「我々と曹操様では、目指す先が違いますので」

 

「なぜかしら?天下万民の安寧を願うという志は同じものだと思ったのだけれど?」

 

「確かにそうです。しかし曹操様は乱世に乗ることで、乱世を制することを志しているとお見受けします。でも……」

 

そういいながら人和は曹操の目を真っ直ぐに見詰める。

 

「私達が志すは乱世を起こさぬ事なのです」

 

「……さっきも言ったけれど、世の乱れは抑えきれるものではない。そんな夢物語のような事が本気で出来ると思っているのかしら?一義勇軍でしかない貴女達が」

 

訝しげに聞いてくる曹操だったが、人和も負けじと返す。

 

「途方も無い話であるというのは百も承知です。でも……それでも私達はそれを追い求めたいんです。それを承知で私達に付いてきてくれる人、協力してくれる人達のためにも」

 

そい言いきった人和と曹操の間に暫しの緊張が流れる……そんな沈黙を先に破ったのは曹操だった。

 

「……はっきり行って、甘すぎる考えね。でも……」

 

そういって曹操はにやりとほくそ笑む。

 

「その理想はともかく、この私相手にそこまではっきりといえる胆力は気に入ったわ。……桂花!!」

曹操の声に、後ろに控えていた猫耳?フードの女の子が「はっ」と答える。

 

「現在残っている兵糧を計算し、許昌へ行軍するのに最低限の兵糧だけを残してあまりを彼女達へ渡しなさい。この度の賊退治に対する礼としてね」

 

「えぇ!?で、ですが曹操様、此度の兵糧に関しては私を登用して頂けるかどうかの試問も含まれているのでは!?」

 

ワタワタと慌てる猫耳っ娘だったが、その反応を楽しむかのように曹操は笑いながら続ける。

 

「あら、そうだったわね。でも、彼女達の協力もあって予想より遥かに早く終わったのだから余剰分が十分にあるでしょう?それと、行軍途中に聞かせてもらった作戦で貴女の有能さは解ったから、登用の件は合格で良いわ。これから私の事は真名で呼ぶことを許すわよ、桂花」

 

その言葉に猫耳っ娘はパァッ、と笑顔になり「こ、光栄で御座います華琳様!!直ちに作業に取り掛かります!!」と走っていってしまったのだが……

 

「あの、曹操様。俺達は当たり前のことをしただけなんで、褒賞なんて……」

 

俺達を置いてきぼりで勝手に話が進んでしまったことで、恐縮しつつ俺は訪ねてみるが、曹操は何をいっているんだとばかりに俺達に向かって言う。

 

「正しい行いには礼を持って応える。当然のことなのだから受け取っておきなさい。あと、話は変わるけれど……貴女達がこれから現実を見て、気が変わったとしたら私の元にいらっしゃい。その時も貴女達が平和を志していたならば、歓迎するわよ?」

 

そういって曹操はニヤッとほくそ笑む。

その笑みと曹操自身のオーラに圧されてか……俺はそのまま二の句を継ぐことができなかった。

「さて、それと……」

 

話は終わったとばかりに曹操は俺たちから視線を外すと、次に見たのは……あの、村の女の子二人組みだった。

 

「貴女達は村の者らしいわね。先程の戦いでは見事な戦いぶりだったわ。名前を聞かせてもらえるかしら?」

 

そういえば一日近く一緒にいたのに、俺達も二人の名前は聞いてなかったな。

二人はお互いを真名らしき名前で呼んでたし……などと考えていると、二人は「「はい!!」」と元気よく答えると自らの名前を……俺にとって、驚愕の名前を告げたのだった。

 

 

「僕は許緒っていいます!!」

 

 

「わ、私は典韋と申します!!」

 

 

あ~なるほど、許緒と典韋か~、それならあの戦いぶりも納得できるな~……は?

 

はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?

 

心の中で俺が驚きの絶叫を上げるが、その声は曹操達に届く事はもちろん無く、話を続ける。

 

「許緒に、典韋……良い名ね。貴女達は、私についてくる気は無いかしら?」

 

許緒と典韋(未だに信じられないが)はその言葉にえ?と面食らったようだったが、少し考えた後、許緒が曹操に言う。

 

「……僕達は、村の皆を守りたいです。曹操様についていったら村を守る人が……」

 

「それなら心配要らないわ。この曹操の名に懸けて、賊や侵略者から民達を守る事を誓う。だから、貴女達自身が判断なさい」

 

「ちょっと待ちなさいよ!!」

 

そういって三人の話に首を突っ込んで言ったのは……慇懃無礼な口調で分かるかもしれないが地和だ。

 

「二人には私達も誘いかけてるんだから横槍はやめてくれない!?」

 

「あら、私が誰に声をかけようと自由でしょ?それに、決めるのはこの子達の自由よ」

 

曹操はそういうと許緒達に向き直る。

 

「私の覇道の為、何より大陸の平和の為にその力を貸してくれないかしら。許緒、典韋」

 

対する二人は暫し考え込むと、こう答えたのだった。

 

「……僕達は、」

「あ~あ、残念だったわよね~」

 

あの後、自分達の領土へ帰るという曹操と別れ、俺達は戦いの疲れを取る為に村で休ませて貰ったのだが……残念、というのはあの二人の事だった。

 

「でもしょうがないよ~。季衣ちゃんと流琉ちゃんが決めた事だもん」

 

そういって愚痴る地和を慰める天和……話からも分かると思うが、二人は曹操と共に行く事を決め、先程曹操たちと共に許昌に向かっていったのだった。

 

「旅を続ける私達とは違って、曹操様の所なら万一村に何かあっても直ぐに向かう事ができる。まあ、当然といえば当然のことよね」

 

人和が言う事も最もだ。まだまだ各地を回らないといけない俺達の旅に、自分達の村を守りたいという二人を無理矢理つき合わせるわけにも行かない……のだが……

 

「それでもあの二人がいれば、頼りになったんだけどな」

 

「そうよそうよ!!それに、折角真名を交換するぐらいに仲良くなったのに~」

 

地和が言うように、あの後別れ際に俺達は季衣、流琉と真名の交換をしていた。それだけ仲良くなったのに別れないといけないというのも地和の不満の一つなのだろう。

そんな俺達の愚痴にはぁ、と人和は溜息を吐きつつ続ける。

 

「何も二度と会えなくなるわけじゃないんだからいつまでも引きずらないの」

 

たしかに人和の言うとおり、いつまでも過ぎたことを掘り返していても仕方ない、という事で俺達は話題を変えることにした。

 

「それでさ、成り行きとはいえ曹操さんと会うことは出来たけど、これからの行き先はどうしよっか?」

 

話の流れで行き先の話になり、そう聞いてくる天和。

 

「そうだな……曹操と会えたとはいえ、この辺りではまだ公演もあんまりしてないし、協力者を探す為にも曹操領には向かうとして、その後は……北か、南かだよな」

 

北にいる袁紹、董卓か、南にいる袁術か……そう考えながら人和のほうを窺うと、人和は少し考える仕草をしながら話し始める。

 

「……私は袁術のほうへ先に言った方が良いと思う」

 

「どうして?」

 

地和の問いかけに答えるように人和は続ける。

 

「北は今、黒山賊っていう賊の集団が多発しているって聞くわ。……今回の事で、私達の力がまだまだって事は分かったし、一度南に戻って仲間を増やすべきだと思う。それに荊州の方は学術の都っていうくらい知識人が多いらしいし」

 

どうかしら?っと聞いてくる人和だったが、俺達の意見はもちろん賛成だった。

 

「ん、じゃあそれでけって~い!!許昌とその周りを回ったら、南へ向かお~!!」

 

「応!!」「分かったわ!!」「了解」

 

天和の言葉に口々に了解の言葉で答える俺達。

まあ、それもこれもひとまず疲れを取ってからという事でこの日はそれで解散、頑張るのは後日として、俺達は戦いで疲れた体を癒す事にするのだった……

地和 おまけ

 

 

「あ~……小便」

 

ある夜の事、真夜中に尿意で目が覚めてしまった俺は、用を足す為に起き上がる。

そうして半分寝ぼけながらも用を済ませ、自室に帰ろうとする……すると、ある部屋から光が漏れているのが見えた。

 

「あれ?あの部屋は確か……地和が貸してもらってた部屋だよな」

 

旅を続けている以上、基本は野営が続くのだが今回のように村や町の人が善意で部屋を貸してくれる時というのはままある話で、今回もそうなのだが……

 

「こんな深夜に何をやってんだ?」

 

俺が寝ていたという話からも分かるとおり、現在は深夜といっても差し支えない時間である。

それが気になった俺は、真相を確かめるべく、地和の部屋へと向かうのだった。

 

 

 

「地和?なにやってるんだ?」

 

一応礼儀、という事で(まあ、こんな時間に人の部屋を訪れる時点で礼儀も糞もないのだが)ノックをして、地和の部屋へと入る。

 

「ん?一刀じゃない。こんな時間に何か用?」

 

「いや、用って訳じゃないんだけど、たまたま目が覚めたら地和がまだ起きてるみたいだったから何やってるのかと思ってさ」

 

そういって地和を見ると……なにやら本や竹簡を机に並べ、その本を読んでいる所だったようだ。

 

「それ何の本?」

 

「聞いて驚きなさいよ……なんと、孫子よ!!」

 

「孫子って……あの兵法書の孫子?」

 

詳しく話を聞くと、たまたまこの村に行商に来ていたという商人の荷物に孫子があったらしく、今回のお礼ということでそれを譲ってもらったのだという。

 

「でもなんで孫子なんか……」

 

「ふふん、これから先、私は今回みたいにみんなの指揮を取る事になるかもしれないでしょ?その為に勉強しようと思ったって訳。どう?私って努力家でしょ~?」

 

そういって自慢げに話す地和。対する俺は……本気で感心してしまった。

地和が得意げに、茶化すようにいうからなんだか凄いようには伝わってこないが、自分の役割を考えて、尚且つこんな時間になるまで勉強するというのは並大抵の事ではない。

 

「そっか、地和は偉いな」

 

「……え?いや、そこは真面目に返すところじゃないでしょ?もっとこう……張り合いがいのある言い方とかさ」

 

「いーや、地和は偉い。頑張り屋だ」

 

そういって彼女の頭を撫でる……こんな事しか出来ないが、感謝の気持ちを伝えたかったのだ。

 

「ちょ、何頭撫でてんのよ!!子ども扱いするなー!!」

 

「ん~?照れなくても良いんだぞ?」

 

「照れてない!!ってかいつまで撫でてるつもりよ!!いい加減離れろー!!」

 

「あっはっは、いいこいいこ~」

 

調子にのった俺と、むきになる地和のやりとりはそれから暫くの間続いた……

 

 

 

……ちなみに余談ではあるが、この後俺達は、騒ぎのせいで目が覚めてしまったという人和にマジ説教をうけたのだった。

 


 
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