No.173461

真・恋姫無双アナザーストーリー 雪蓮√ 今傍に行きます 第16話

葉月さん

お待たせしました16話になります。
今回のお話は総集編ぽくなっております。

話も佳境に入ってきました。
雪蓮√も残りわずか!

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2010-09-19 14:01:53 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:5738   閲覧ユーザー数:4256

真・恋姫無双アナザーストーリー 

雪蓮√ 今傍に行きます 第16話

 

 

 

 

とある山脈……

 

「やっと見つけたわよぉ。こんなところにあるなんてぇ」

 

貂蝉は洞窟の中にある一枚の古びた鏡の前に立っていた。

 

「これで雪蓮ちゃんに優未ちゃんを会わせてあげる事が出来るわ」

 

貂蝉は鏡を手に取り持ち上げた。

 

「ぬふ……ぬふふ、ぬはははははははははははっ!」

 

洞窟は貂蝉の笑い声に共鳴するかのように洞窟内を揺らした。

 

(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!)

 

しかし、その揺れも洞窟が耐えられなくなりあちらこちらで落盤が起き始めていた。

 

「ぬはははははははっ!……さて、これを持って早く帰らないとねん……あらん?」

 

笑いをやめた貂蝉はいざ戻ろうと来た道を戻ろうとしたが落盤によって道が塞がれてしまっていた。

 

「おかしいわね?なんで道が無いのかしら?それにさっきより狭くなっているような気がするわね」

 

どうやら、貂蝉は自分が原因でこの状況になったことをわかっていないようだった。

 

「とりあえず連絡だけはしておかないとねん」

 

貂蝉も空間移動が出来るはずなのだがなぜかそれを使わず念により管輅に連絡を取った。

 

(はぁ~い、管輅ちゃん。みんなのアイドル貂蝉よん♪)

 

(……そんな人知りませんわ。人違いでは?)

 

(もう、冷たいわね)

 

(はぁ、一ヶ月近く連絡をしなかったのですよ?よく言いますね貂蝉)

 

(それだけ一生懸命に探していたのよ)

 

(それで?連絡をくれたという事は見つけたのですね)

 

(ええ、見つけたわよ)

 

(そうですか。では、直ぐに戻ってくるのですね)

 

(それがね、道が塞がっちゃってすぐには戻れそうに無いのよん)

 

(……空間移動出来るはずでは?)

 

(出来るけど、あれ嫌いだから余り使いたくないのよ)

 

(はぁ~……どれくらいで戻って来れそうなのですか?)

 

(そうねぇ~……終業式前にはちゃんと戻ってくれると思うわ)

 

(約三週間くらいですか……わかりました。卑弥呼と雪蓮さんには私からお伝えしておきます)

 

(よろしくね。管輅ちゃん。私も出来るだけ早く帰るようにするわ)

 

(お願いしますね貂蝉)

 

「さてそれじゃ雪蓮ちゃんの為に頑張って戻るわよ~」

 

貂蝉は崩れ塞がった土砂の前に立った。

 

「ふむぅ~これ程の量だとあれじゃ無理よね……」

 

貂蝉は腰を低くして構えた。

 

「か~~~<<自主規制>>め~~~……波ーーーーーーーっ!!!」

 

合わさった両の手から白い閃光が一直線に土砂に向って放たれた。

 

(ズガーーーーーーンッ!!)

 

「ふぅ、これで帰れるわね。待っててね雪蓮ちゃん」

 

貂蝉はさっきまで土砂で塞がれていた道をクネクネと尻を振りながら歩き外に出て行った。

 

所変わり、聖フランチェスカ学園……

 

「あ~あ、学園祭も終わってすることが無くなっちゃったわね~」

 

私は最近お気に入りの場所で空を見上げる。

 

私は学園祭が終わってここ最近、良く空を見上げるようになっていた。

 

理由は私にもわからなかった。そのせいでただただ空を見上げているだけに止まっていた。

 

一刀に教えられた特別な場所も好きだったが、空に近い場所、となると学園内では限られてくる。

 

ここなら学園を見渡せ、空も近くに感じられる。仰向けに倒れればそらに浮かんでいるようにも感じれた。

 

「やっぱりここに居たのか」

 

「はぁい、一刀。何か用かしら?あ、もしかして私を襲いに来たとか?」

 

「なんでそうなるんだ?」

 

苦笑いを浮かべる一刀に私はさらにとんでもない事を一刀に言った。

 

「だって、あんな公衆の面前で桃香とあんなキスをしてるのよ?そう思われても仕方ないと思わない?」

 

「そ、それを言われると否定できないな」

 

「ふふふ、正直なのね一刀は」

 

私は笑った後、また空に目を向けて流れる雲を見つめた。

 

「何かあったのか?」

 

一刀は寝転んでいる私の横に座り同じように空を見上げながら語りかけてきた。

 

「ちょっとね。ここに転校してきてからの事を色々思い出してたのよ。

 

「そういやぁ、色々あったよな」

 

「覚えてる?転校初日に遅刻しそうになって」

 

「ああ、そのまま雪蓮を連れて俺の秘密の抜け道を使って学園内に入ったんだよな」

 

「そうそう。あとは、あの場所で一刀の事を襲うとしたりとかね」

 

「実際に襲われたけどな、あの後暫く肩の歯形が取れなかったよ」

 

「あは、あはは……あの時はごめんね。痛かったでしょ?」

 

「別にもう気にして無いさ。それに歯型も無くなって来たしさ」

 

一刀は制服のボタンを外し肩を私に見せてくれた。そこには薄っすらとだが歯型らしき後が残っていた。

 

「まだ残ってたのね……」

 

私は自分が噛んだ痕をなぞると一瞬胸の奥が痛んだ。

 

「気にするなって言っても気にするよな雪蓮のことだから」

 

「ええ、だって私、一刀の事を傷つけちゃったんだもの、気にしないわけ無いじゃない」

 

「雪蓮は優しいな」

 

「そんなんじゃないわよ。ただ……」

 

「ただ?」

 

ただ、二度も一刀を傷つけたなんて言っても一刀には判らないわよね。

 

「……ううん。なんでもないわよ」

 

「なんだよ。気になるじゃないか」

 

「あら、乙女の悩みを聞こうだなんて一刀のエッチ♪」

 

「なっ!」

 

「ふふふ♪」

 

「もう、からかうなよな」

 

「一刀が騙されやすいからいけないのよ」

 

「俺のせいかよ」

 

「そっ♪」

 

そしてまた、視線を空に戻す。

 

毎日が充実している。でも、満足はしていない。

 

「ねえ一刀……今、幸せ?」

 

「なんだ藪から棒に」

 

「いいから、どうなの?」

 

「そうだな……」

 

一刀は空を見上げながら考え、じゃべり始めた。

 

「毎日楽しいよ。うん、楽しいんだけどさ物足りないんだよ」

 

「物足りない?」

 

「ああ、良くわからないんだけどさ、雪蓮や桃香、愛紗に琳、みんなと居ると凄く楽しいんだけど、なんていうのかな抜け落ちた?違うな。欠けてる……うん。欠けてる感じがするんだ何かが」

 

一刀が何を言おうとしているかは私にはわかった。『抜け落ちてる』も『欠けてる』もあながち間違った表現じゃないわ。

 

きっとあの時、ブレスレットに触れた時から感じてる感覚なんだろうという事も理解出来たけど、一刀にはそれは判らない。

 

いや、判らないじゃないわね。『忘れている』が正しい表現かしらね。

 

「はは、何言ってるんだろうな。俺って贅沢なのかな」

 

「ふふふ、そうかもね。私たち四人に囲まれて不満を言う人なんて一刀くらいなものよ?」

 

「うぅ……そうだよなぁ。こんなに可愛い人が近くに居るのにな」

 

「~~~~っ!よ、よく真顔でそんなこといえるわね一刀は」

 

「え?だって本当の事じゃないか。雪蓮は可愛いし美人だよ?」

 

はぁ、ホントに一刀ったら……これだからライバルが増えちゃうのよ。この朴念仁!

 

「一刀はもう少し、言葉に気をつけたほうが良いわよ?いつか背中からブスリッ!って刺されちゃうんだから」

 

「え、縁起でも無いこと言うなよな。俺ってそんなに失礼なこと言ってるのかな?」

 

一刀は見当違いな考えで頭を悩ませる。ホントに乙女心ってものをわかって無いわよね一刀は……

 

「な、なに笑ってるんだ?」

 

「別に?やっぱり一刀は一刀なんだなって思っただけよ」

 

「なんだよそれ」

 

「いいの。私だけわかってれば♪」

 

不満そうにしていた一刀は肩を竦めて空を見上げた。

 

私は起き上がり一刀の肩に頭を乗せる。

 

「ん?」

 

「ううん。暫くこのままで居させて」

 

「ああ……」

 

一刀は黙って私の肩に手を乗せ抱き寄せてきた。

 

ビックリしたけど一刀の方は耳まで赤くして恥ずかしそうにしてたから思わず微笑み目を閉じた。

 

「温かい……」

 

冷え始めていた私の体は一刀に抱かれ少しずつ温かくなる。

 

秋空の下、しかも屋上に居れば体が冷えるのは当然、か。

 

「ねえ、一刀。もしだけど」

 

「ん?」

 

「もし、私たち四人の他に、元気で場の空気を明るくしてくれるような娘が居たらどう思う?」

 

「?そうだな~……きっと楽しいだろうな。毎日が」

 

一刀は笑顔で答えてくれた。

 

「そうね。私もそう思うわ」

 

私と優未で一刀を取り合い、琳は頭を押えて呆れ、桃香苦笑いに怒り顔の愛紗って光景が目に浮かぶわ。

 

「でもなんで急にそんなこと?」

 

「なんとなくよ、なんとなく。……さぁ、帰りましょ一刀」

 

立ち上がり座っている一刀に笑顔で手を差し伸べる。

 

「ああ」

 

一刀は私の手を取り立ち上がり私を見つめる。

 

「?なに?」

 

「いや、今更だけど綺麗だなって思ってさ」

 

「~~~っ!ば、ばか。急に変なこと言わないでよ。ほら、行くわよ!」

 

「あっ!ま、待ってくれよ雪蓮!」

 

私は赤くなった顔を隠すように先に歩き出した。

 

これだから一刀は……ふふふ♪

 

「……はぁ」

 

一人、頬に手を当てて夕日を見つめる一人の女の子が居た。

 

「馬鹿馬鹿しい、なんで私がアイツのことなんか……」

 

彼女の名前は華澄 琳、現生徒会長である。

 

「それにしても凄い量ね。流石は一大イベントだこと」

 

私は目線を机に戻し積まれた書類を恨めしそうに見つめながらその一つを手に取り目を通す。

 

「……これはダメね。不備がありすぎるわ」

 

積まれている書類全てが昨日まで行っていた学園祭の報告書のなのだ。

 

他の役員にも手伝わせれば良いのではと思う人も居るだろうが、これは全てその役員から提出されたものだからそう言う訳にも行かない。

 

「はぁ、少し休憩しましょう」

 

半分近く無くなった所で、集中力が切れてきた為、気分転換を兼ねて休憩することにした。

 

「日も大分短くなってきたわね……」

 

立ち上がり窓に近づく。

 

夕日に彩られた景色はあたり一面を赤く染め上げる。ふと、校門前を見ると二人組みの生徒が帰るところだった。

 

「……一刀に雪蓮、か……あの二人、仲いいわよね。付き合ってるのかしら?……っ!な、何を言っているの私は!べ、別にさ、寂しくなんか無いわよ!」

 

誰に言い訳をするのでもなくただ一人慌てふためく。

 

「……ただ、もう少し会ってくれてもいいとは思うけど……はぁ、何言ってるのかしら私。これじゃまるで……」

 

まるで、恋焦がれる乙女じゃない。

 

「あるわけ無いわ。なんで私が一刀のことなんか……」

 

窓辺から離れて元居た席に座り腕を枕にしながら外を見る。

 

「あれからもう五ヶ月か……早いものね」

 

初めて一刀に会ったときの事を思い出す。

 

初めて会ったのは6月の時、最初はなんて軟弱な男なんだろうと思った。

 

最初はおまけとしか見ていなかった雪蓮もなんでこんな奴が好きなのか不思議で仕方なかった。

 

ある日私は雪蓮に聞いてみた『北郷の何処が良いのか?』と……

 

そうしたら彼女、なんて言ったと思う?

 

『教えたら一刀の事、好きになるから教えないわ♪』だって言うのよ?馬鹿にしてるとしか思えないでしょ?

 

そんな事を言われた日には気になって調べたくなるのが心情というもの。

 

一度一刀の行動を影から観察したことがあった。

 

結果は、これまた普通。友達とじゃれ合い、購買のパンを食べ、普通に部活動に励む何処にでも居る男の子だった。

 

唯一違ったのは、誰にでも優しく、笑顔がとてもまぶしかった事くらいだ。

 

だが、私はいつの間にか一刀の言動を追う様になっていた。

 

さっきもそうだ、一刀の姿を見えなくなるまで追っていたのだから。

 

「いつからかしらね。こんなに思うようになったのは……」

 

多分、切っ掛けはあの交通事故だろう。

 

あの時の光景は忘れたくても忘れられるものでは無いわ。

 

雪蓮を助ける為に自分を犠牲にする一刀の姿は今でも思い浮かべられる。

 

だが、それを思い出すたびに胸が締め付けられるように痛くなる。

 

理由は自分でもわからない。けど、あの時とっさに思ったことは、

 

『また一刀が私の前から消えてしまう』

 

だった。

 

「おかしなものね。『また』って、前に一度同じようなことがあったってことよね」

 

そんな事はありえない。一刀とはこの学園に来て初めて出会ったのだから。でも、それを否定出来ないもう一人の私が居る。

 

「……いけない。こんな所でね、た……ら…………」

 

学園祭での疲れが出たのか私は急激な睡魔に襲われ意識を手放した。

 

(んっ……ここは?私は確か生徒会室にいたはず……)

 

だけど、ここはどう見ても屋外だ。

 

(寝ている間に移動させられた?いや、いくら疲れていたとはいえ持ち上げられるなり運び出されるなりで起きるはず……)

 

(それにこんな景色、学園周辺……いいえ、日本国内で見たことが無いわ。)

 

私の目映ったのは、切り立った山々に、地平線が見えるほどの大地、そして何より、眩しいまでの月の輝きと私が立っている、石造りの道だった。

 

(一体ここは……っ!)

 

石造りの道の端から仄かに明かりが見えたので近づいてみるとある事に気がついた。

 

(これは城壁?!本当にここはどこなの?)

 

『~~~っ!!~~~♪』

 

覗き込むと下では賑やかに騒いでいるようだった。

 

(随分大勢居るみたいだけど、なんの騒ぎかしら?)

 

辺りを見回して降りられる場所を探して見る。幸い、月の明かりで真っ暗闇ではないので容易に階段を見つけることが出来た。

 

(それにしても一体何がどうなっていると言うの?これは夢なの?)

 

夢にしては現実味が有り過ぎる事に途惑いつつも慎重に階段を下りていく。

 

(……っ!誰か来た)

 

進行方向から話し声が近づいて来たので私は近くの茂みに身を隠した。

 

『やっとこれで争いが無くなるんだな』

 

『ああ。でも、まだ賊は出るだろうし暫くは休めないかもしれないよな』

 

『そうだな。でも、今まで以上に大きな戦は減るだろうし、それを思うとよかったって思うよ』

 

『まったくその通りだな』

 

二人組みの男は私に気づかず通り過ぎていった。

 

(なにあの恰好は?それにさっき見た山といい……ここは中国?いや、今の中国でもあんな恰好をした人達は居ないはず……)

 

何かの撮影かとも思ったけど、回りには撮影用の機材もないことからその線でもないでしょう。

 

(考えが纏まらないわね)

 

いや、実際はそうなんじゃないかと薄々感じてはいるのだが非現実的すぎる。

 

(……タイムスリップなんて非現実的すぎるわ)

 

暫く歩いているとさっき上から除いた時に見えた賑やかな所が見えてきた。

 

(……なによこれは!)

 

驚いたのはそこに居るのは全員、女の人だけと言う事だった、いや、正確には一人男が居たのだが遠くて良くわからなかった。

 

(なっ?!)

 

そして、さらに驚いたのはその中に見たことのある人物が居たことだった。

 

(桃香!それに雪蓮、愛紗まで!なぜここに?!いえ、それよりあの恰好は一体何なの?コスプレでもしているの?)

 

三人とも普段とは思えないほど奇抜な服を来ていた。それよりなにより……

 

(なんで雪蓮の胸があんなにでかいのよ!もっと小さかったはずでしょ!……っ!)

 

大きな声を出してしまい。しまった!と思ったが誰にも気がついていないようだった。

 

(おかしい……ホントにここはどこなの?……)

 

――ジャリッ

 

(誰っ!)

 

不意に後ろに気配を感じ振り向いた私の目に驚きの光景が映し出された。

 

(私っ?!)

 

そう、目の前には私にそっくりな女の子が堂々と歩いてきていた。

 

(一体どうなっていると?なぜ私が……えっ!)

 

驚きの余り自分が立ち上がっている事に気づき『見つかった』っと思ったが私に似た女の子はそのまま私に向って歩いてきた。

 

(ちょ!ぶ、ぶつかる!……っ!)

 

しかし、ぶつかる所か私の体をすり抜けて行った。

 

(なっ!どういうこと、これは……っ!)

 

私は自分の手を見て初めて気がついた。そう、私の体は透けていたのだ。

 

(……とにかく、さっきの女の子を追いかけてみましょう)

 

私はそっくりなもう一人の女の子を追いかけ、宴の中に入っていった。

 

(……一体、なんの宴なのかしら?みんな楽しそうにしてわいるのだけど)

 

そんな時だった。聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

『ちょっと、華琳ももっと飲みなさいよ~。折角の宴なんだからぁ~』

 

『そうですよ。華琳さん!ほらほらぁ~、お酒はぁ、まだありますよぉ~』

 

『くっ!少しは自重しなさい。飲みすぎよあなた達!』

 

雪蓮と桃香が華琳と呼ばれる私にそっくりな女の子に絡んでいた。

 

『あら?私は全然よって無いわよ?桃香は……お猪口ニ杯だけしか飲んで無いわよね』

 

『ねぇ~♪あはは』

 

『それがたちが悪いと言うのよ。それに桃香も王としての自覚を持ちなさい!』

 

『えぇ~、折角、戦が無くなってぇ、平和になるんですから、今は無礼講ですよぉ~、あはははは♪』

 

『……はぁ』

 

華琳は頭を押えて呆れているようだった。

 

(それにしても凄い酒癖ね。私でもきっとああなるでしょうね)

 

私は華琳の事が自分の事の様に思い気の毒になった。

 

『……っ!ちょっと席をはずすわ。雪蓮、桃香を見てて頂戴。くれぐれも、これ以上飲ませないようにね』

 

『努力するわ~』

 

(あれは絶対面倒だから放置するって感じよね。性格は雪蓮のまんまね)

 

どっちがどっちの雪蓮か判らなくなりそうだが今は宴から離れていく華琳を追いかけることにした。

 

『私はぁ、桃香さまをお守りする為にぃ、一体どれ程鍛えてきたかぁ、ひっく』

 

『判るぞ、私だって華琳しゃまの為に、きたえあげてきたにょら!』

 

『夏候惇殿っ!』

 

『関羽!』

 

――ガシッ!

 

通り過ぎざまに愛紗と黒髪で眼帯をした女の子が固く手を握っていた。

 

(ここの愛紗も酒癖が悪いのかしら?)

 

そんな事を思いながらも、足は止めずに華琳を追いかけた。

 

(一体何処に行ったのかしら?)

 

直ぐに追いかけてきたつもりだったがいつの間にか見失ってしまったようだ。

 

(……ん?あれは……)

 

その時、城壁の上でキラキラと光っている物が見えた。それは、さっきの宴の席に居た時人物の様に見えた。

 

(……居た)

 

私はその人物の後方に華琳を見つけ城壁の上と向った。

 

城壁を登ると、華琳と男の人らしき人物は何かを話しているようだった。

 

(気が引けるけどもう少し近づいてみましょう)

 

秘め事に一瞬躊躇ったがなぜか気になり近づいていった。

 

(……え?あの服って……)

 

まず最初に気がついたのは男の方の服装だった。白く輝く服に紺だろうか?ズボンをはいていた。

 

(まさか?聖フランチェスカの制服?)

 

『――さ』

 

(っ!)

 

さらに近づくと胸の鼓動が早くなり歩く速度も早くなっていた。

 

(そんな!なんで彼が、彼がここに居るのよ!)

 

『もう時間が無いみたいなんだ』

 

(一刀っ!)

 

一刀の名前を叫んだが一刀にその声は届いていないようだった。

 

『そう、逝ってしまうの?』

 

『ああ、もっと華琳の傍に居たかったんだけどな』

 

(私の声が聞こえないの?!ねえ、一刀!)

 

目の前に来ても声は届かず、一刀は話し続けていた。

 

『……行かないで』

 

華琳は一刀に背中を向けて喋っていた。堂々とした喋りだったが、

 

(……寂しいのね。華琳)

 

私にはそう感じた。行ってほしく無い。ずっと傍に居てほしいと華琳の言葉からは感じ取れた。

 

『俺も出来るなら行きたくないよ。でも、もう迎えが来たみたいだ』

 

(っ?!そんな……)

 

私は一刀を見て驚いた。

 

一刀の体は見る見ると透けだしていたのだ。

 

それでも華琳と一刀は喋り続けていた。やがて……

 

『……一刀?』

 

(いや、消えないで一刀!)

 

私はいつの間にか歩き出し一刀の前に居た。

 

『愛していたよ。華琳』

 

『一刀!』

 

(一刀、一刀……)

 

『さようなら、寂しがり屋の女の子……っ!』

 

私は一刀が消える寸前に一刀の手を取った。

 

その時、一刀は驚いた顔をしたが、私の姿が見えたのか微笑みながら消えていった。

 

『一刀っ!!』

 

華琳が振り向いた時には一刀の姿は無く一筋の光が天に昇り消えていくところだった。

 

『なによ。ばか……ばかぁ、くっ……うぅ……』

 

(華琳……)

 

華琳は声を殺して泣いていたがやがて声を出して泣き出した。

 

(……っ!)

 

私はそれを見ていることが出来なくなりその場から離れようとした。

 

(なっ!)

 

行き成り地面にぽっかりと穴が開き私はその穴に吸い込まれるように落ちていってしまった。

 

(きゃああああああああっ!)

 

(ここは?)

 

辺りは真っ暗闇で数メートルもわからない状態だった。

 

『好きだったのに……』

 

(え?)

 

何処からとも無く声が聞こえてきた。

 

『好きだったのになんで行ってしまうの?』

 

(誰?)

 

辺りを見回し声の人物を探す。

 

『あなたはどうなの?』

 

(え?)

 

振り向くとさっきまで誰も居なかった場所に私が立っていた。

 

(あなたは誰?)

 

『私は曹孟徳、魏の王にして覇王』

 

(曹、孟徳、ですって?)

 

曹孟徳またの名は曹操。彼女はそう言った。

 

『あなたはどうなの?一刀と離れる事になったら』

 

(別に、なんとも思わないわ。離れたいのなら離れればいいのよ)

 

『嘘』

 

(嘘では無いわ!)

 

『私はあなた。あなたは私。あなたの考えている事は私にもわかる。逆に私が考えている事もあなたはわかっているはずよ。琳』

 

(……)

 

確かに、今、曹操と名乗った人物の気持ちはなぜかわからないが判る。

 

『あなたも一刀とは離れたくないと心のどこかで思っている』

 

(そんなことは……)

 

『否定は無意味よ。さっきも言ったでしょ?』

 

(……)

 

『素直になりなさい琳。別にあなたは何にも縛られるものが無いのだから、私と違ってね』

 

(あなたはあるというの?)

 

『……私は覇王。国を守り、民を安心して暮らせるようにする為、私情を捨てざるを得ない……』

 

(……)

 

『そんな私の心をあの男は意図も簡単に打ち崩した。王である前に一人の女として見てくれた。だけど、私はそれでも覇王であり続けた。なぜか判るでしょ』

 

(……民と慕ってくる家臣の為?)

 

『そう、私が覇王であることを止めてしまえば国は衰えやがて他の軍勢に飲み込まれてしまう。だから私は王であり続けた。その結果がこれよ、でも私は後悔はしていない。こうして平和を手に入れたのだから』

 

(でも、それは王としてのあなた。女としてのあなたは後悔ばかりしている)

 

『……ええ』

 

(一つ判った事があるわ。やっぱりあなたは私じゃない)

 

『そういうと思ったわ。それでいいのよ。貴女は貴女、心の赴くままに行動しなさい。そうすれば後悔しないと思うわよ』

 

(ええ、当たり前よ。私は自分で考えて行動するの)

 

『そう、さあそろそろ戻りなさい。大事な人が待っているわよ』

 

(大事な人?)

 

不意に光が私の上に現れ、風が私の体を包み込んだ。

 

『――――』

 

(え?なに?)

 

華琳が何かを言ったように見えたが風に阻まれて聞こえなかった。

 

そのまま風に運ばれ光射す方へと吸い込まれていった。

 

「んっ……ここは?」

 

目を開けるとそこは見慣れた生徒会室だった。

 

さっきのは夢?私は確か、生徒会室で学園祭の報告書を……あら?

 

「これは?」

 

私の肩に制服が掛けられている事に気がついた。

 

「あっ、起きたんだね琳」

 

「一刀?なんでここに」

 

一刀は雪蓮と帰ったはずじゃ。

 

「一度は帰ったんだけどさ、忘れ物したから雪蓮に先に帰っていいって言って取りに戻ってきたんだよ。そうしたらまだ生徒会室に明かりがついてたからさ」

 

「別に起こしてもよかったのよ?」

 

「いや、日ごろの疲れが出たのかなって思ってさ。起こすに起こせなかったんだよね」

 

一刀は頭をかきながら苦笑いをした。

 

「まったく、まあいいわ。今日はもう帰ることにするわ。こんなに遅くなったんじゃ、仕事も終わりそうにないから」

 

「そっか、それじゃ一緒に帰ろうか」

 

「仕方ないわね。途中までなら良いわよ」

 

相変わらず素直になれない私だったけど。それでも一刀は笑顔で居てくれた。

 

「っ!」

 

不意にその笑顔が夢で見た一刀の笑顔と重なった。

 

「一刀っ!」

 

「え、なに?」

 

廊下に行こうとした一刀を私は呼び止めた。

 

「あっ、な、なんでもないわ。そこで待ってなさい」

 

「?判った」

 

とりあえず手短に帰り支度をして一緒に廊下に出た。

 

「……」

 

あの時によぎった光景は一体何を意味しているの?

 

通学路を歩きながらそればかりを考えていたが、まったく答えが出てくることは無かった。

 

そもそも答えがあるのかどうかも怪しいところだ。

 

「なにか悩み事でもあるのか?俺でよければ話に乗るぞ?」

 

そんなに深刻な顔をしていたのかしら?一刀が心配そうに尋ねてきた。

 

「いいえ、大丈夫よ。気にしなっ」

 

なぜか判らないがその時、夢の中で最後に華琳が言った言葉が過ぎった。

 

『手を離してはダメよ。しっかりと握ってなさい』

 

「琳?」

 

「え?な、なんでもないわ。それより一刀」

 

「なに?」

 

「そ、その……や、やっぱりなんでもないわ」

 

{?」

 

握れるわけ無いじゃない!まったく……

 

「……はぁ」

 

私は自分の手と横を歩く一刀の手を交互に見て溜め息をつきながら帰路に着いた。

 

「ふぁ~、眠いよぉ。ちょっと夜更かししすぎちゃったかな?」

 

欠伸を手で隠しながら登校する。昨日、面白そうな番組がやってたから最後まで見入っちゃって寝るのが遅くなったんだよね。

 

「でも、面白かったな~。特に、関羽さんってすっごくカッコよかったな~♪」

 

テレビで見ていたのは三国志で蜀を中心に作られた話だった。

 

「おはようございます。桃香さま」

 

「あ、愛紗ちゃん!おはようっ!ねえねえ!昨日の番組見た?」

 

「は?なにをですか?」

 

「三国志だよ。三国志!」

 

「ああ、深夜にやっている番組ですね。私はもう寝ていました」

 

「そっかぁ、残念だなぁ。一度見てみなよ!カッコいいよ。特に関羽さんがすっごくカッコいいの!」

 

「そ、そんな褒めないでください桃香さま」

 

「え?」

 

なんか、愛紗ちゃんが照れてるように見えたんだけど気のせいかな?

 

「あ、いえ。ごほんっ!か、関羽は軍神と呼ばれているお方でしたからね。きっと凄かったのでしょうな」

 

「うんうん!すごいよね~。私も関羽さんみたいになってみたいな!」

 

「そ、そうですね……♪」

 

愛紗ちゃんはなんだか機嫌が良いみたい。いつも以上に笑顔だよ。

 

「それでね。三国志見た後だからなのかな?変な夢を見たんだよね~」

 

「変な夢ですか?」

 

「うん、なんかね。私が居て、愛紗ちゃんも居てそれでこれくらい小さくて赤毛の女の子も居るの」

 

私は胸より下辺り手で横に振り愛紗ちゃんに高さを教えた。

 

「で、その三人で旅をしてるみたいなんだけど……?愛紗ちゃん?どうかした?」

 

愛紗ちゃんは何か考え込む様に手を顎に当てていた。

 

「え?な、なんでもありません。そ、それでどうしたのですか?」

 

「う、うん。それですっごく広い荒野を旅してると昼間なのに流れ星が流れてたんだ」

 

「そ、それで?!」

 

「あ、愛紗ちゃん近い、近いよ」

 

「ああ、す、すみません……」

 

「えっとね……あ、そうそう。で、三人で流れ星が落ちたところに行くとなんと!」

 

「……なんと?」

 

「一刀さんが倒れてたんだよ!しかも一刀さんだけが学園の制服なの。ね?変な夢だと思わない?」

 

「そ、そうですね……」

 

「だよね~。何でこんな夢見たんだろう?テレビ見てた影響かな?」

 

「……」

 

「愛紗ちゃん?」

 

愛紗ちゃんは深刻な顔をしてまた黙ってました。何か変な事言ったかな?

 

「あ、いえ。私も似たような事、……夢を見たので」

 

「そうなんだー。どんな夢だったの?」

 

「そ、そうですね。桃香さまと殆ど一緒ですが私の場合は、私と鈴、その赤毛の小さな子だけでした」

 

「え~。私居ないんだぁ。でも、それ以外は一緒なんだね」

 

「ええ」

 

「不思議だね~」

 

「そ、そうですね」

 

私はその後もテレビで見た三国志の話を愛紗ちゃんに話しながら登校した。

 

「それじゃね。愛紗ちゃん!」

 

愛紗ちゃんと下駄箱で別れた私は一人廊下を歩いて教室に向っていた。

 

「ん~、もう直ぐで期末試験かぁ~。憂鬱だな~」

 

「あっ!でも、それが終わったら終業式だっけ!でもでも、そうなると一刀さんとは来年まで会えなくなっちゃうのか。それもやだな~」

 

一人廊下を歩きながら独り言を言っているとあることを思い出した。

 

「あっ!そう言えば夏休みの時は、琳さんの別荘に行ったんだよね。琳さんに聞いてみようかな。なんか琳さんなら北国の別荘とかも持ってそうだよね。そうしたらみんなでスキー出来るかな?」

 

私は確定していない事にウキウキしながら構想膨らませていく。

 

「うん!あとで琳さんに聞いてみよっと♪それにしても、夏休みは面白かったな~」

 

琳さんの別荘はとても広くて海も直ぐ近くにあって別荘の周辺は琳さんの土地らしくて観光客は誰一人居ないプライベートビーチみたいだったよね。

 

「そう言えば、一刀さんと一緒に料理もしたっけ?なんだか夫婦になったみたいで嬉しかったなぁ……えへへ♪」

 

その光景を思い出して思わず照れ笑いをしちゃいました。

 

「海では一刀さんとも泳いだし、すっごく楽しかったんだよね……そう言えば誰か溺れた人が居たような……誰だったっけ?」

 

う~ん、思い出せないな。誰だったけなぁ~。

 

思い出せないや、もしかしたら誰も溺れて無かったのかもしれないし。

 

「うん、気のせい、かな?あ~、それにしても、またみんなで旅行行きたいな~。今度、琳さんにあったら絶対聞いてみよ!うん!」

 

強く頷く私。

 

「……あれ?ここどこだろう?」

 

思いのほか自分の世界に入っていたのか、私は自分の教室を通り過ぎて学園の端まで歩いてきていました。

 

「やぁ~ん!早く戻らなきゃ!わわわっ!予鈴まで一分も無いよぉ~!」

 

私は急いで来た道を戻る。

 

「……わわっ!」

 

走り出すと首に掛かっていたペンダントが踊るようにして胸元から出てきちゃいました。

 

「危ない危ない。折角、一刀さんから貰ったプレゼントなんだから大事にしないとね……はぅ~♪」

 

貰った時の光景を思い出し頬を赤らめて惚けちゃいました。

 

(キーンコーンカーンコーンッ!)

 

「ひゃあっ!予鈴なっちゃったよ!急がないと!」

 

現実に引き戻された私は、ペンダントを胸元にしまい、教室へと走り出した。

 

「どういうことだ?」

 

桃香さまと別れた私は一人悩んでいた。

 

「確かに、私と鈴々は管輅の占いで天の御遣いが降り立つと知り旅をしていたが」

 

そこには勿論の事、桃香さまはいらっしゃらない。いや、居るはずが無いのだ、私は実際に体験をしているのだから。

 

「だが、状況が酷似し過ぎている……荒野、彗星、それに一刀さま……これは何かを示しているのか?」

 

今の情報だけでは手がかりが無さ過ぎるな……ん?待てよ。

 

「そうだ、一人だけわかるやつがいるでは無いか」

 

そう、この外史に詳しい男、なのか判らないが人物が。

 

「善は急げと言いたいところだが、ホームルームが始まってしまうな。昼休みにでも理事長室に行ってみるか」

 

「お!愛紗じゃないか。おはよう」

 

「一刀さま!おはようございます!」

 

後ろから私が愛してやまない一刀さまの声が聞こえ、笑顔で振り返った。

 

「珍しいね。こんな所で会うなんて」

 

「そうですね。大体が通学路ですからね」

 

一刀さまと廊下を歩きながら教室へと向う。

 

「あ、それ付けてくれてるんだね」

 

一刀さまが私の髪留め目を留めて嬉しそうに仰ってくださいました。

 

「は、はい。折角頂いたのですから身に着けなくては一刀さまに申し訳が無いと」

 

「ははは、そう言ってもらえるとプレゼントしたかいがあるよ。前にも言ったかも知れないけどとっても似合ってるよ愛紗」

 

「~~っ!あ、ありがとうございます。一刀さま……」

 

一刀さまの嬉しそうな笑顔に私までも嬉しくなってしまう。

 

「さ、ホームルームが始まってしまいます。早く行きましょう一刀さま」

 

「ああ、そうだな」

 

「っ!か、一刀さま」

 

一刀さまは無意識なのか私の手を取り歩き出した。

 

「え?……ああっ!ご、ごめん!嫌だったよね!」

 

一刀さまは慌てて手を離して謝ってきた。

 

「い、いえ。そのような事は……ただ驚いただけで」

 

「でも、ごめん。とりあえず行こうか」

 

もう一度謝り、一刀さまは教室へと歩き出した。

 

「……はぁ」

 

私はというと一刀さまに握られた手を見て軽く溜め息を吐く。

 

あそこで声を出さなければ一刀さまと手を繋いだままだったと思うと恨めしい!

 

軽く自己嫌悪に陥りながらも一刀さまの後を追って教室へと向った。

 

昼休み、一刀さまに一緒にお昼を食べようと嬉しいお誘いを受けたのだが、今朝の桃香さまの話が気になったので用事がある事を伝えると、一刀さまは用事が済み次第一緒に食べようと仰ってくださった。

 

もちろん、私は快く頷き、教室を後にした。

 

(コンコン)

 

「貂蝉。私だ、愛紗だ」

 

しかし、部屋から帰ってきた声は貂蝉のものではなかった。

 

「貂蝉は居ませんが、どうぞ、お入りなさい」

 

誰だ?今の声は……女性の声だったが。

 

「失礼する……」

 

私は警戒しながらも理事長室の扉を開けた。

 

「いらっしゃい。貂蝉になにか御用かしら?貂蝉は今所用で出かけているのよ」

 

「そうか。では、後日出直すとしよう」

 

「いえいえ、私がお伺いしておきますよ?」

 

「いや、あなたに話しても判らぬ事ゆえ」

 

「あらあら、お友達の事について聞きたいのではなくて?」

 

「っ!貴様、何者だ」

 

「ふふふ、管輅と名乗れば判るかしら?関羽さん」

 

「なっ!管輅だと!」

 

管輅と言えば、私が居た世界で天の御遣いが降り立つと予言したあの管輅か?!

 

「はい。それにあなたが来る事もわかっていましたよ。劉備さん……ここでは桜崎桃香さんでしたね。その桃香さんの夢についてお聞きしたいのでしょ?」

 

「……」

 

「あらあら、随分と警戒されてしまっているわね。とりあえず入り口に居ないでお座りなさい」

 

管輅と名乗った女性は自らソファーに座り私を待つようにニコニコと微笑んでいたのでとりあえず反対側のソファーに座ることにした。

 

「さて、なにから話せばいいのかしら」

 

「……お分かりなのでしょ?占い師なのだから」

 

「ええ。でも、あなたの口から聞きたいわ」

 

相変わらず笑顔を見せる管輅に仕方なく口を開いた。

 

「なるほど、やはり……」

 

「なにか心当たりがあるのですか?」

 

「ええ。まず、関羽さ「愛紗でいい」よろしいのですか?真名は神聖なもののはずですよね?」

 

「構わん。この世界での名は関 愛紗だ。流儀に従えば問題ない」

 

「わかりました。愛紗さんに知っておいて頂きたいのですが、桜崎さんは間違いなくこの世界の住人です」

 

「ああ」

 

「そして、桜崎さんが見た夢はきっと別の外史での桜崎さんの記憶です」

 

「別の外史……と言う事は、私は桃香さまと鈴々と三人で旅をしていたということか?」

 

「はい、姉妹の契りを交わし桜崎さんの姉として旅をしていました。もちろん、その世界でも私は北郷さん、天の御遣いの降臨を唱えました」

 

「だが、私にはその記憶は無い。なぜ、桃香さまだけに?」

 

「いいえ。きっと華澄さんにも同じ事が起きている可能性があります」

 

「琳……曹操か?」

 

「ええ」

 

「まさか、魏にも一刀さまは降り立ったと言うのか?!」

 

「はい、魏・呉・蜀。三国にそれぞれの外史で降り立っています。これは正史が望んだことであり、私たちが意図的に企てたことではありません」

 

「……」

 

驚いた。まさか魏に呉もだったとは……ん?と言う事は。

 

「管輅よ。一つ聞きたいのだが曹操は、その……一刀さまと……」

 

「ええ、結ばれましたよ。勿論、呉の孫権、孫策とも。あと、劉備も」

 

「なっ?!」

 

「ふふふ、驚く事では無いではありませんか。あなたのいた世界でも北郷さんは全員と結ばれたのでしょ?」

 

「うっ……そうだが、そうなのだが!」

 

判っていても納得できない事はあるのだ。

 

「ちなみに。あなたが居た外史より。魏も呉も蜀も将の数は増えていますよ」

 

「なあっ?!」

 

増えているだと!そんなことはあってはならん!あってはならんのだぁ~~~!

 

「ふふふ、本当に愛紗さんは北郷さんのことがお好きなのね。」

 

「当たり前だ!誰よりも私は一刀さまを愛しておられる!」

 

「淀みの無い気ですね。きっとあの娘もそうなのでしょうね……」

 

「あの娘?」

 

「いいえ。こちらの事です。さて、話を戻しましょう」

 

「あ、ああ。なぜ、桃香さまに違う外史の記憶が流れ込んできているかと言う事だな」

 

「ええ。要因はいくつか考えられます。一つは共鳴」

 

「共鳴?」

 

「ええ、共鳴とは同じ波長のものが互いに引き合い干渉しあう事」

 

「その原因は?」

 

「勿論、北郷さんでしょうね。どちらも一刀さまをお慕いしているようですからそこで波長が合ったのかも知れません」

 

「ふむ。他には?」

 

「そうですね。あとは……」

 

管輅の話は私の理解しがたい事ばかりだったが嘘を言っているようにも感じられなかった。

 

「最後に、これはあまり無いことかもしれませんが、干渉」

 

「干渉?」

 

「ええ、違う者がその人物の記憶を見せていると言う可能性です。ですが、これは余り事例が無いことなのでどうして起こるのかは不明なのです」

 

「そうか。では、一番有力なのは共鳴と言う事か?」

 

「はい。そうなりますね」

 

「桃香さまには何か影響があるのか?」

 

「特には無いでしょう。夢を見ているだけならば、もしそれがおきている時に起こると、記憶の混濁が起きる可能性がありますが」

 

「起きるとどうなるのだ!」

 

「簡単に言えば、あちらの世界の記憶が桃香さんの記憶に追加されます」

 

「追加?と言う事は、あちらでの経験が全て起きていても覚えていると言う事か?」

 

「はい。まあ、悪いことではないのでしょうが。最初は途惑うかもしれませんね」

 

「ふむ……と言う事は、琳にも同じ事が起きる可能性があると言う事か……これは不味いな」

 

不味い、不味すぎる。ただでさえ。雪蓮と言うライバルが居るのに二人の記憶が追加されてしまっては!

 

「そうか、色々と助かった」

 

「いいえ、私も貴女とお話できてよかったですわ」

 

相変わらず笑顔を絶やさない管輅。

 

「うむ、私も貴女と話が出来てよかった。では、私は昼食を摂りに戻らさせていただく」

 

「ええ、ごきげんよう。愛紗さん」

 

私は理事長室の扉を引き廊下へと出た。

 

「まだ、時間はあるな。早く一刀さまの下へと行かなくては!」

 

廊下を早歩きで歩き教室へと向った。

 

……

 

…………

 

………………

 

「……干渉、今回はこれが起きているかもしれないわね」

 

管輅は微笑んでいた顔を真顔にして一点を見つめていた。

 

「優未さんは何をしようとしているのかしらね?北郷さんの為?それともみんなの為なのかしら?」

 

優未は今だ、あの空間に閉ざされたまま、連れ出そうにも連れ出せないで居た。

 

だが、ありえない事が優未の周り、この世界でも起きていた。

 

「卑弥呼からは優未さんがこれを持っていたと渡された時には驚いたわ」

 

管輅は懐から切符より二周りほど大きな紙を取り出した。

 

そこに書かれていたのは学園祭の時、一刀のクラスがやっていた模擬店のチケットだった。

 

「そんなに北郷さんと居たいのね。優未さん……」

 

ソファーから立ち上がり窓辺に立つ管輅。そこからはさっきまでここに居た愛紗と桃香、琳、雪蓮が一刀の隣を取り合うように場所取りをしていた。

 

「ふふふ。確かに、楽しそうではありますね……」

 

微笑みながら眼下で繰り広げられる場所取り合戦を見つめる。

 

「……三週間……その時に何が起こるのか。私の占いでも結果は導き出せなかった。これは起きて見ない事にはわからないわね」

 

そういいながら管輅は理事長室から姿を消すのだった。

おわり。

葉月「ども~、葉月です」

 

雪蓮「はぁ~い。久々の登場の雪蓮で~す」

 

葉月「今回は、少し総集編ぽくしてみましたが如何だったでしょうか?作者本人は結構忘れてました(汗」

 

雪蓮「まあ、そうよね。もう30話突破してるのよね。良く続いてるわよね」

 

葉月「自分でもビックリです。結構三日坊主な所が多い私ですが、こんなに続くとは思いもしませんでした」

 

雪蓮「その勢いでちゃっちゃと優未も復活させちゃいなさいよ」

 

葉月「そうですねぇ。まあ、ここだけの話、物語的には残り数話で終わりなんですよ」

 

雪蓮「あら、随分と唐突なのね」

 

葉月「まあ、色々とその切っ掛けを散りばめていましたけどね」

 

雪蓮「ふ~ん。じゃあこれで優未も復活するのね」

 

葉月「ええ。皆さんのご期待通り復活しますよ」

 

雪蓮「ふふふ、楽しみね」

 

葉月「ええ、期待して待っていてください」

 

雪蓮「所で、優未が復活したら話は終わりなの?」

 

葉月「そのつもりですが?」

 

雪蓮「アフターストーリーとかは?」

 

葉月「え、それも書けと?」

 

雪蓮「当たり前じゃない。優未が復活しました。めでたしめでたしじゃ読者は納得しないわよ」

 

葉月「う~む……それじゃ、久々に投票でもやりましょうか」

 

雪蓮「いいわよ?結果は判りきっているけどね」

 

葉月「う゛……それじゃ投票項目をこうしましょう!」

 

1. 五人分のアフターストーリーを書く。

 

2. 三人分だけアフターストーリーを書く。

 

3. しゃらくせぇ!誰も書かない。

 

4. むしろここで一刀のアフターストーリーだろ!

 

5. いやいや、管輅が一刀に惚れたアフターストーリーなんてどうだ?

 

葉月「こんな感じですかね?あ、もちろん一人一票ですからね?」

 

雪蓮「上の三つ以外物凄く混沌としてるわね。それより葉月、あんた自分で自分の首絞めてるわよ」

 

葉月「そ、そんなこと無いやい!あ、ちなみに、2番を選んだ人は、キャラクターも書いてくださいね」

 

雪蓮「殆どが1番だと思うけどね」

 

葉月「いやいや、ここは大穴の3番とか!」

 

雪蓮「まずありえないわね」

 

葉月「ま、まあ結果は最終話でお伝えすると言う事で」

 

雪蓮「葉月がのた打ち回っているのが目に浮かぶわ♪」

 

葉月「縁起でも無いこと言わないでください」

 

雪蓮「いいから、いいから♪ほら、終わりの挨拶」

 

葉月「まったく……えっと、では、皆さん次回をお楽しみに!」

 

雪蓮「まったね~♪」


 
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