No.172419

真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第47話

第47話です

展開が遅いうえに更新も遅くてさらには内容が短いときたもんだ…すみません

2010-09-14 13:43:26 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:5717   閲覧ユーザー数:5248

この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です

原作重視、歴史改変反対な方

ご注意ください

 

「いません!」

「既に部屋は蛻の殻です!」

 

静かな夜を男達の喧噪と足音が踏み鳴らしていく

宿を取り囲んでいた兵達からの報告に審配~聖は眉を顰め、ちろりと舌を出し唇を噛んだ

 

「ふうん…どうやら手引をした者がいるわけね」

 

二人が取った部屋を見渡す、寝台に手を触れればまだ温かい

つい今しがたまで二人がこの場にいたことは疑うまでもなく間違いない

 

「『坊主』の仕業じゃろうて」

 

顎鬚を撫でながら片目を瞑りふうむと頷く郭図~翁

 

「田豊がこのことを予期していたと?」

 

ボフンと音をたてて寝台に腰を落とす聖、露出の高い彼女の服も相まってその光景は艶やかだが

どこか危険な香りを匂わす

 

「…とすると二人の行き先は?」

「おそらく官渡じゃろう…この街に留まる理由もなかろうて」

 

窓の外に視線をやると二人を探し出さんと憲兵達がそこらかしこに走り回っているのが見える

 

「巷で噂の袁家の懐刀…見てみたかったんだだけどね」

 

(あとあの小娘もね)

 

あーあと手足を投げ出す聖に翁が振り返る

 

「わしも噂の娘子を拝みたかったのう」

 

ふぉっふぉと喉を鳴らす翁に寝台に寝転がる聖がひらひらと手を振った

 

「たいした面じゃないわ…いつも相手の顔色を伺うような田舎者の芋臭い面よ」

「なんじゃい…顔見知りじゃったか」

「さあね」

 

目を見開く翁に聖はフンと鼻を鳴らす

 

(忘れもしない)

 

自身の宰相の後ろからフルフルと震えながら見上げてきたあの面を

自分と英心を都から追い放ったあの面を

 

「まだそう遠くにには行っていないはずよ…街の出口をすべて封鎖、検問にかけなさい」

 

入口に立っていた一人の兵へそう告げごろりと寝返りをうったその時

 

「?」

 

コツンと硬いものが手に当たる

 

「徳利じゃな」

 

翁の声に頷きそれを手に取る

 

「何も残さず出て行ったと思ってたけど…以外と慌てん坊さんね」

 

そして徳利の栓を抜き中身を一口含むと聖は顔を顰めた

 

(安物…か)

 

自身の口には合わなかった酒に既に興味は失せ

栓も閉めずに床に転がす

 

「もったいないのう」

 

肩を竦める翁

ころころと転がる徳利から酒が流れ出る様子に目を細めるが拾い上げることはしなかった

 

「反乱だと?」

 

街の広場、そして宮中から離れるように道をゆく中、走りながら比呂は眉を釣り上げた

辺りはまだ暗闇と静けさに包まれてはいるが東の空を見れば既に太陽が昇り出る兆しも見えつつある

辺りの静けさも街中を怒声を上げて走り回る憲兵の様相に家の中から息を殺して伺っているのだろう

事実、三人も裏路地を走って進むものの時折立ち止まっては物陰に身を隠し、憲兵達から避けるように進んでいた

 

(これだけの数の兵を配置するとは)

 

自身がかつてこの街、ひいては袁家においては戦の実質的な権限を握っていたとはいえ

この捜索の規模に果たしてその狙いには別の思惑があるのではと考えを更けていた

 

「曹操出陣の報を受け、本隊が出てすぐに逢紀の残した兵達が宮中を制圧…既に此処は彼奴の手中にあります」

 

そんな比呂の前を走る男

先ほどに二人に知らせに来た男が振り返りながら頷く

男の言葉に親友の顔が脳裏に浮かぶ

 

「何故奴を放って置いた?」

 

ここまであからさまなクーデターの様相に比呂は顔をしかめた

袁家を利用するにしても乗っ取るにしても悠がその工程を見逃す筈もない

まして新参者の反乱などと

二人の前を走る男の足が止まり此方を振り返った

比呂を向く男の神妙な顔付きには幾分かに呆れの色が伺えた

 

「袁紹様が芳紀にべったりなのですよ…寡の者の真意にも気づかず」

 

遠くで鳴く梟の声に鴉の鳴き声が混じった気がした

 

「…そうか」

 

続いて出たのは比呂のため息

まあ、そういうことか

つまるところ問題の人物は彼女がスカウトしてきたわけだ

 

(ああ見えて…というかそのままに)

 

彼女は乗せられやすく

そして騙され易い

 

(そういえば)

 

旅の行商が来るたびに訳のわからん化粧品や宝石など買っていたことを思い出す

そして

決まってそういった時に彼女の歯止め役を買っていたのは自分だったということも

場合によっては払い戻しに走ったこともあった

沸々と蘇る記憶に渋面になる

比呂の顔を見て男も肩を落とし

 

「まあそういうことです」

 

同じくしてため息を吐いた

もちろん悠はこのことを読んでいたのだろう

自分と彼女が戻ってくる事を見込んで僅かばかりの手勢を残した

となれば

 

この街に留まるは愚作、早々に官渡へと向かうべきだ

 

(俺の言なら麗羽様にも届くか)

 

自惚れにもとれる彼の思いも確かな確信がある

悠が残した現状に己が成すべきことを自身の中で反芻する

その時

 

「いたぞ!あそこだ!!!」

 

背後から聞こえた声に男が舌打をした

憲兵の声に引き寄せられるように多くの足音が自分達の下へと駆け寄るのを感じた

 

「全員分の馬を用意できるか?」

 

比呂の声に男が頷き

 

「半刻程あれば」

「上出来だ」

 

その返事に今度は比呂が頷く

 

「そういえば…まだ名を聞いていなかったな」

 

ふと、此処まで来て目の前の男の名を知らないことに気づく

 

「許攸子遠…以後お見知りを」

 

そう名乗り口の端を挙げる許攸

嫌味の無い笑いだ、悠が彼を残したのも頷ける

 

「総員武装の上、馬を用意しろ…半刻後に北門で落ち合おう」

「はっ!」

「月、彼に付いていくんだ」

 

そういって月の背中を押す

それまで全力で走ってきたせいもあるのだろう、肩で息をしていた彼女は驚いて振り返った

 

「でも」

「俺が時間を稼ぐ…彼と共に馬を引いて迎えに来てくれないか?」

 

彼女の頭を撫でながら優しく問いかける比呂に月は「ずるいです」と唇を尖らせながらも頷いた

やがて路地へと入り込み闇にその姿が溶けていくのを見届けた後、彼はゆっくりと振り返る

彼を取り囲む兵達の方へと

暗闇の中松明に照らされた兵達の顔を見渡せばどうやら知った顔もいるようだ

 

(成る程…それなりに人心掌握の術はあるようだな)

 

嘗て自分が指揮をとり、戦場で肩を並べた部下達が目の前にいてしかも此方へ武器を向け身構えている

 

「俺はお前達を生かす為にお前達を鍛えたのだがな」

 

ふうっと息を吐き、皮肉を込めて兵達を睨む

 

「その事には唯感謝を申し上げる他ありません」

 

比呂を取り囲んでいる兵達の中から一人、前に出て頭を下げた

見覚えがある

確か自身が将の職に就いた時からの古参の一人だ

 

「俺はこの国にはもう不要か?」

 

前へと出た男を睨み付け、比呂も一歩前へと出る

 

「…ご自身の首にどれだけの褒賞が出ているかご存知ですか?」

「知らんな…興味もない」

 

男の言葉に唾を吐き、さらに前へと出る

 

「変革の時が来たのです将軍…事は貴方達では既に負えないところまで」

 

(この期に及んで俺を将軍と呼ぶか…)

 

比呂を将軍と認めた上での現状に彼等の覚悟が垣間見える

 

「変革…か、俺に言わせれば衰退に他ならないがな」

 

(今更王朝復古などと、自身が行き先が闇であることも気づかないか)

 

男が身構える剣先が見えているにも関わらずさらに一歩前へと踏み出す比呂

腰に挿した剣の柄ににも触れず取り囲む兵達に引き寄せられるように一歩、また一歩踏み出す

 

「袁紹に心酔する貴方を生かしておいては芳紀殿の妨げになる」

 

瞬間、男の首が宙に舞い、その首から血飛沫が上がった

 

「…『様』を付けろ下郎」

 

彼を囲んでいた兵達がその目を見開き一歩下がった

 

「貴様らの背後のガキの事などどうでもいい…が、先の事に興味が沸いた」

 

対して殺気を込めた視線を細め

 

「この俺の首に掛かる褒賞…果たして貴様等の命に見合う物なのか?」

 

あとがき

 

ここまでお読み頂き有難う御座います

 

ねこじゃらしです

 

御無沙汰です

 

うーん、二つの局面を同時に書くのはやはりめんどいですな

 

できればとっとと合流させたいのですが、はてさて

 

それでは次回の講釈で


 
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