No.172189

對姫†無双「後編」華雄選挙応援作

こひさん

なかつきほづみさんの華雄選挙の応援作品です。
華雄が季衣と白蓮と掛け合うのを応援しています。

『對姫†無双「前編」恋姫総選挙応援作』の続きです。
無印恋姫の真エンド(全員エンド)アフターで

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2010-09-13 01:50:43 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2098   閲覧ユーザー数:1906

 その朝、普段よりも異常に元気よく挨拶する者がいた。

「おっはよ~♪」

「どうしたんだ伯珪? えらく上機嫌じゃないか」

「ふふふふふふふふふふふふ」

 不敵に笑う伯珪こと公孫賛。

「ど、どうしたんだ?」

「北郷、これから私のことは白蓮と呼んでくれ!」

 

 

 珍しく公孫賛、いや、白蓮は目立ちまくっていた。なにしろ有頂天も有頂天だったのだから。

「私のことは白蓮と呼んでくれ!!」

 会う知り合い全てにそう名乗る。その浮かれっぷりに驚くなという方が無理であろう。

 

「白蓮よ~~♪」

「そんな! 声まで変わって!?」

 昔のエステCMネタを披露するほどテンションが高かった。

 

 

 

「どうしたんだ? 急に真名を名乗るとは?」

 聞いたのは華雄。

「いやそれがさ~、実は今まで自分の真名忘れてたんだけどさ」

「お前もそうだったのか」

「華雄もだったのか……」

 しばらく無言で頷き合う二人。

 

 

「……で、思い出しのか?」

「ああ、季衣が私のこと真名で呼んでくれたんだ」

「許緒が?」

「うん。夢で見たんだってさ。それでああ、私の真名は白蓮だったなって思い出したんだ」

「夢? そんなのを信じたのか?」

「でも確かに私の真名は白蓮だ。間違いない」

 きっぱり言い切る白蓮。

 

「……以前に許緒に会ったことは?」

「こっちに来てからだよ」

「ふむ。……許緒か……」

 

 

「おはよう、季衣」

 白蓮は教室を覗いていている季衣に声をかける。

「あっ、白蓮ちゃん、おはよう」

 振り向いて挨拶する季衣。その季衣に今度は華雄が挨拶。

「許緒、おはよう」

「おはよう華雄ちゃん!」

 

「華雄ちゃん、か……」

 がっくり落ち込む華雄。

「にゃ?」

「季衣、私みたいにこいつの真名知らないか?」

「う~ん……わかんないよ。華雄ちゃんも自分の真名忘れてるの?」

「……そうだ」

「夢で見たりはしなかったか?」

 白蓮の問いに考えこむ季衣。

 

「ごめんね。ボクはわかんないよ」

「そうか、手間を取らせたな。……はあ」

「げ、元気出せよ華雄。……そうだ季衣、今なにしてたんだ? ここお前の教室じゃないだろ?」

 落ち込んだ華雄にたまらず、話題を変える白蓮。

 

「あのね、友達を探してたんだよ」

「友達?」

「うん」

「張飛か?」

「あんなチビじゃないもん! ボクの親友……だと思う」

 華雄の台詞に季衣が怒る。

 

「だと思う?」

 聞きなおす華雄。季衣は思いつめた表情で口を開く。

「……白蓮ちゃん、華雄ちゃん、親友っている?」

「……戦友ではだめか?」

「親友? ……え~と……ほ、ほら、北郷とか?」

 白蓮の答えには季衣が首を横にふった。

「ボク……兄ちゃんとは親友じゃイヤだな。もちろん友達でも」

 

「……なっ、なんだこの、女として負けた気分は?」

「そういえば季衣も北郷と……ううっ、眩しいぜ……」

 二人の敗北感に季衣は気づかない。

「にゃ? どうしたの?」

「き、気にしないでくれ。それでその親友がどうかしたのか?」

 

「ボクね、夢で見るんだ、その子のこと。会ったことないんだけど、夢で見てる時は大事な友達だって思ってるんだよ。だからもしかしたら本当にボク、その子と友達で忘れてるだけなんじゃないかなって……」

「また夢か」

「うん。だって夢ではその子と二人でオトナのオンナになったんだもん!」

 力強く言った季衣の前にがっくりと膝をつく程の衝撃を受ける華雄と白蓮。

 

「大人の……」

「女……だと」

「さ、さらに一歩……いや、二歩も三歩も先を行かれた気がしてくる……」

「ま、待て華雄。ゆ、夢の話じゃないか。現実の季衣はまだ……」

「相手はあの北郷だぞ」

「む、むぅ……」

 力ない声で話す二人。

 

「だからね、ボクはその子を見つけていっしょに兄ちゃんにオトナのオンナにしてもらうんだ」

「ほ、ほら見ろ。まだだった」

「う、うむ」

 なんとか息を吹き返した二人はやっと立ち上がる。

 

「それで全部の教室を見て回ってるのか?」

「うん。……でも、見つからないんだ」

「そうか。けどさ、名前はわかってるのか?」

「うん」

「じゃあさ、生徒名簿見せてもらえばいいんじゃないか?」

 そう白蓮が提案する。

 

「生徒名簿?」

「ああ、たしかそんなのがあった気が」

 白蓮の言葉の途中でチャイムが鳴る。

「おっと、もう時間がないな。詳しい話は放課後で」

「うん! ありがとう、白蓮ちゃん、華雄ちゃん!」

 

 

「……駄目か」

 落ち込んだ表情で名簿を閉じた季衣に華雄が聞く。

「うん……名前、なかった……」

「真名の方じゃないのか?」

 白蓮の問いにも首を横にふる季衣。

 

「元気だせよ。全く別の名前になってるかもしれないし」

「……そうだね、ありがとう兄ちゃん」

 季衣を慰める一刀。彼は名簿の場所を聞かれ、案内ついでにいっしょにいた。

 

「なんか疲れちゃった。……兄ちゃん、ちょっと借りるね~」

 季衣は隣に座っていた一刀の膝の上に移動する。

「お疲れ」

 優しく季衣の頭を撫でていると鋭い二つの視線に気づく。

「なっ、なに?」

 

「……いやべつに」

「ああ、羨ましくなんてないぞ!」

「? ……あ、季衣も寝ちゃったか」

 一刀の胸に頭を預け、すやすやと寝息を立てる季衣。

 

「夢が気になるとかで、ここんとこ熟睡できてないみたいだったからなあ」

「季衣が見る謎の夢……なにか意味があるんだろうか?」

「……あの夢はね、ボクの思いで」

 寝ていた筈の季衣が口を開く。

 

「季衣?」

「やっと兄ちゃんと喋れた♪」

 季衣がすりすりと一刀の胸に顔を擦り付ける。

「ちょ、ちょっと」

「でも、ボクの兄ちゃんじゃないんだよね……」

「え?」

 

「ボクは季衣だけど、兄ちゃんたちの知ってるボクゃないよ。そっちのボクは今寝てるもん」

「え、ええと?」

「ややこしいからきょっちーでいいよ」

「きょっちー?」

「うん」

 季衣の言葉に華雄、白蓮は顔を見合わせる。一刀も面食らっていた。

 

「ボクね、別の外史からきたんだよ。……魂だけだからこっちのボクに乗り移ってるけど」

「別の外史ってまさか、左慈や干吉の手下?」

「にゃ? 誰それ?」

「いや、知らないならいい」

「魂だけとは……幽霊なのか?」

 華雄に聞かれ、首を傾げる季衣。

「どうなんだろ? あっちのボクはたぶんまだ生きてると思うんだけど」

 

 

「いったいどういうこと?」

「ボクね、ボクたちはね。兄ちゃんを探して色んな外史を旅してるんだよ」

「北郷を探して?」

「うん。ボクたちの兄ちゃん」

「この北郷ではない北郷?」

 一刀を指差して聞く白蓮。季衣も頷きながら答える。

 

「うん。ボクたちの兄ちゃんは魏の兄ちゃん。華琳さまのものの兄ちゃんだもん!」

「俺が……華琳のもの?」

「えっとね、兄ちゃんをつかまえたのが愛紗ちゃんたちじゃなくて、華琳さまだった外史の兄ちゃん」

「へえ。外史は無数にあるっていうけど、そんな外史もあるんだ」

「でも……ボクたちの兄ちゃんは消えちゃった……」

 辛そうに季衣は俯く。

 

「消えた?」

「……歴史を変えすぎたせいだって華琳さまは言ってた。師匠の話は難しくてよくわかんなかったけど、たぶん同じこと言ってたと思う」

「師匠?」

「ボクに外史のこととか教えてくれた人。とっても強いんだよ。ちょっと……ううん、かなり? キモくて怖いけど……」

「キモくて怖い……」

 ある人物の姿が思い浮かび、ぶんぶんと一刀は頭を振った。

 

「それで外史をまわって北郷を探しているわけか」

「うん」

「大変だったな」

 再び一刀は季衣の頭を撫でる。

「へへへ~♪」

 

「おい、今の話の意味わかるのか?」

 目を細めて頭を撫でられる季衣を眺めながら華雄は問う。

「まあ……だいたいは」

「そっ、そうか」

 華雄の様子に白蓮は簡潔にまとめようとする。

 

「つまり、季衣には別の世界からきたきょっちーがとり憑いている」

「それはだいたいわかった」

「きょっちーは自分の世界の北郷を探して旅をしててこの世界に来た」

「ふむ」

「けど、北郷はきょっちーの探している北郷じゃなかった、というワケさ」

「なるほど」

 やっと合点がいった華雄。

 

「だが、その話本当なのか?」

 季衣を見据える華雄。

「うん」

「俺も、本当だと思う」

「北郷?」

「季衣はこんなこと覚えきれ……いや、デッチあげる娘じゃないよ」

「それもそうか」

 

「にゃ? なんか今、バカにしなかった兄ちゃん?」

「そんなことないぞ」

「む~。……まいいや。それでね兄ちゃん、ボク聞きたいことあるんだ」

「聞きたいこと?」

「うん。典韋って子と会ったことある?」

 一刀の目を見ながら季衣は聞く。

 

「典韋? いや会ったことないなあ」

「やっぱりこっちにはいないのかなぁ……」

「探している友とはその典韋か?」

 今度はわかったとばかりに聞く華雄。

 

「うん。ボクといっしょに兄ちゃんを探してるんだ。今まではどの外史に行ってもいっしょだったのに……」

「わかった。俺もいっしょに典韋を探そう」

「ありがとう兄ちゃん!」

 

 

 

 数日後。

「……けっきょく、典韋は見つからなかったな……」

 疲れたように白蓮は言う。

「ああ、曹操も知らないと言っていたし」

「フランチェスカの生徒、全部確認したけどいなかった……」

 華雄、一刀も疲労の色を見せる。

 

「ごめんね、みんな……」

 一番落ち込んだ表情を見せているのはきょっちー。だがすぐさま季衣が表に出てくる。

「ほらもう元気だしなよ~」

 

 あの後、目覚めた季衣は状況を一刀たちから聞き、きょっちーを受け入れた。

 今では季衣が起きている時も、きょっちーが表に出てくるようにまでなっている。

「兄ちゃん、どうしたらいいかな?」

「なんとかしてやる。……気は進まないけどあいつに聞くしかない……」

 

 

 

「そう。卑弥呼の弟子なの?」

 一刀が紹介したのは貂蝉。

 フランチェスカに来てから衣装がややまともな物になったのが救いの変態である。

「にゃ? 師匠のこと知ってるの?」

「ええ。彼女はわたしのお師匠様でもあるのよん」

「じゃあ兄弟子?」

 その言葉にポージングしながら講義する貂蝉。

「姉弟子と呼んでぇえん」

 

「わ、師匠とおんなじ芸風……」

 驚く季衣とさらに驚く一刀たち。

「こんなのが他にもいるの?」

 

「それで、季衣ちゃんを元の外史に送ればいいのねん」

「ううん。ボクはまだボクたちの兄ちゃんを見つけてないから帰らない! 絶対に兄ちゃんを連れて帰るんだもん! でもその前に典韋に会いたい!」

「わかったわ。でもたぶん典韋ちゃんはこの外史にはいないわねん」

「やっぱりそうなの?」

 落ち込んだ顔を見せる季衣。

 

「ええ。わかるもの。ホント言うと、季衣ちゃんがちょっと違うのも気づいていたのよおん。でも、悪いことするワケじゃなさそうだからほっておいたの」

「そうなんだ。じゃあボク、早く流琉のいる外史にいきたい」

「そうねぇ。……季衣ちゃんは典韋ちゃんのこと、好き?」

「うん!」

 

 季衣の答に満足そうな貂蝉。

「いいわよ~ん。ならコツを教えてあげるわねぇ」

「コツ?」

「ええ。どの外史にいるかわからない相手を追って移動するのは、とても難しいことよ。でも、想いが引合えばきっと上手くいくわん」

 

「え、どういうコト?」

「季衣ちゃんが強く典韋ちゃんのことを想って、典韋ちゃんも季衣ちゃんのことを強く想っていれば、きっと二人は会えるのよ。ああっ、愛の奇跡~?」

 解説しながら身をくねらせる貂蝉。

 

「ちょっと待て。それってきょっちーだけじゃどうしようもないんじゃないか?」

 その意味に気づいた白蓮が聞く。

「だいじょうぶだよ白蓮ちゃん。ボク流琉信じてるもん!」

 

 

「兄ちゃんありがとう。ボク、流琉のとこに行くね」

「そうか。がんばれよ」

 

「お前の北郷に会えるといいな。気をつけていけよ」

「ありがとう白蓮ちゃん」

 

「たいして役に立てなくて悪かったな」

「ううん。華雄ちゃんありがとう。……お礼ついでにもうイッコお願いしていいかな?」

「ん?」

「二人とも、こっちのボクといっしょにオトナにしてもらってね♪」

 

「な!?」

「なんだそれは!?」

 きょっちーのお願いに華雄と白蓮は慌てる。

 

「そ、そういうのは夏侯惇や夏侯淵とすればいいではないか」

「だって春蘭さまも秋蘭さまも初めてじゃないもん。痛いのがこっちのボク一人じゃかわいそうだよ」

「……痛いのか?」

「すっごく!」

 華雄がつい聞いてしまった問いに季衣は頷いた。

 

「あ、あのなきょっちー、オトナとか、誰といっしょとかはこっちの季衣が決めることだから……」

 この場に愛紗たちがいないのをせめてもの幸運と思いながら一刀は誤魔化そうとする。

「え? いいよボクは。流琉がいないのは悲しいけど、兄ちゃんにオトナのオンナにしてほしいもん」

「……季衣?」

「うん。いいよね? 二人とも」

「……ふん。ここで断ったら痛みが怖くて逃げたようではないか。私はかまわん」

 あっさり承諾したようだか顔は真っ赤な華雄。

「ええっ!? ……そ、それなら私も……」

 引きづられて白蓮も賛成する。

 

「ありがとう白蓮ちゃん! ありがとうゆっちー!」

「ゆっちー?」

 季衣の呼んだ名を確認する。

「うん。結局、華雄ちゃんの真名わからなかったから、ゆっちー。ボクのことは季衣か、きょっちーって呼んでね♪」

 

 

「あの……俺の意思は?」

「もしかして兄ちゃん、嫌なの?」

 うるうると瞳を潤ませて季衣は一刀を見る。

「そ、そんなことはないぞ」

「よかった」

 

「あらん。うらやましいわねぇん」

「お前には関係ない」

 貂蝉の視線を感じてすぐさまキッパリと一刀。

 

「もしかしてご主人様、嫌なのぉ?」

「季衣の真似しても駄目!」

 一刀は両手で大きくバッテンをつくる。

 

 

「イ・ケ・ズ。……じゃそろそろいくわよぉぉん、季衣ちゃん準備はいい?」

「うん。いつでもいよ!」

「なら……ぬっふぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」

 叫びとともに貂蝉は地面を蹴り、高く、高く跳ぶ。

 ……そして、消えていった。

 

「……見えなくなったな」

「それより、季衣は無事か?」

「うん。ちゃんと、きょっちーはいなくなってるみたい」

「そうか……なんか寂しいな」

「そうだな……」

 季衣の無事を確認して、再び貂蝉が消えた空の彼方を見る。

 

「流琉や兄ちゃんに会えるといいね~」

「まあ、あれで貂蝉はしっかりしてるからな。大丈夫だろ」

「うん。じゃ行こうよみんな」

「え? 行くってどこへ」

 

「ま、まさかもうさっきの約束を果たすというのか?」

「わ、私はかまわんぞ!」

 やはり顔が赤い華雄。

「こ、心の準備が……せめて風呂に入ってからとか……」

 今にも逃げ出しそうな白蓮。

 

 季衣はかまわず一刀を引きずっていく。

「早くご飯食べに行こうよ!」

 

 

 

<あとがき>

 

 前編からかなり間があいてごめんなさい。後編です。

 

 前編と同じく、なかつきほづみさんの企画、華雄選挙への応援です。

 なぜ華雄の掛け合いの相手が季衣、白蓮なのかといえば無印恋姫で一刀との関係がなかった繋がりです。まあ、こひですので季衣はデフォですけれどね。

 

 華雄が「ゆっちー」なのは猪々子が季衣を「いっちー」と呼ぼうとしたからで、華雄なら「ゆっちー」かな? とそれだけの理由です。

 

 

 対姫と矛盾があるかもしれませんが、そこは笑って見逃して下さい。

 


 
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