No.171954

命がけの鬼ごっこ

ふぉんさん

この作品は、恋姫無双~萌将伝~のイベント
風の大逆転!検事ごっこ
の、もしあのまま捕まらないで逃げていたら?というifになります。

もし萌将伝をやったことの無い人でも、1P目に短い概要的なものを書いていますので、大丈夫だと思います。

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2010-09-12 06:04:12 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:8094   閲覧ユーザー数:6782

 

「キャーーーーーーーーーーーーッ!」

 

昼間の城に響く悲鳴。

事の発端はここから始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで部屋を覗いたら、こんな有様に……?」

 

「は、はい……。血溜まりの真ん中に……」

 

亞莎の悲鳴を聞き駆けつけた武将たちが見たものは、寝台の上で鼻から血溜まりをつくっている稟の姿だった。

色々と話し合っている最中、何やら騒がしいと部屋を覗いた一刀。

 

「犯人は……」

 

「ん?随分騒がしいけど……何かあったのか?」

 

「あなたなのです!」

 

そこには、一刀を指差している風と……。

 

「…………っ!」

「ご……ご主人様……!?」

「まさか、北郷……貴様……!」

 

「え?な、なになに!?」

 

「一刀様……まさか、そんな………!」

「……まぁ、可能性は否定出来んが」

「ですね……」

 

「だから何が!?」

 

「ああ。言われてみれば確かに……」

「っちゅーか、今までこんな事が起きへんかったんが逆に不思議やで……」

 

「ちょっと……って、稟!?どうしたのっ!?」

 

「それは……我々の記憶から到底ぬぐい去れないであろう、陰惨な……けれど、哀しい事件であった」

 

「って何まとめに入ろうとしてるの!それより風!この状況ってなにっ!?」

 

いきなりの展開に着いていけず慌てる一刀。

ただ、このままではよく分からずに自分が手に錠がかけられてしまうのは明白だった。

 

「隊長。大人しく縛について下さい」

 

「ああ。大人しくするなら、手荒なことはせん」

 

「……大人しくしなかったら?」

 

「折る」

 

「いや、ちょ…………風、風ってば!」

 

「ええっと……あなたにはべんごしをつけるけんりがほしょーされています。……いいわけはほうていできく!のです」

 

「なんか混じってる!混じってるし!っていうかさっきので締めたんじゃないの!?」

 

「いやー。お兄さん世界の話だけだと、何となく段取りが分からなかったものでー。おかしかったですか?」

 

「かなりな!」

 

「……で、べんごしって何でしょうか?」

 

「分かんないで言ってるのかよ……」

 

「まぁ、とりあえず、ちゃっちゃとお兄さんを捕まえちゃいましょう」

 

……………………

 

 

 

 

 

「一同、静粛に!」

 

「それではこれより、軍師郭嘉殺人事件の法廷を開始します」

 

冥琳の声が場に響き渡る。

王座の間に急ごしらえで設けられた法廷らしきもの……その中央、周囲の視線を一身に受ける位置に、一刀は呆然と立っていた。

 

稟の妄想力など、

一刀のいやらしい事が絡むと発揮する信じられない力など、

あれよあれよという間に結論が出されてしまった

 

結論:一刀は飽きた稟に故意に鼻血をださせ殺した

 

「あ、飽きたって……そんな理由で!?一刀ってサイテーっ!」

 

「ひどい……ひどいよご主人様!」

 

「一刀………見損のうたで!」

 

「え、ちょっとこらそこ信じるのかよ!俺女の子に飽きたとか一度もないぞ!」

 

「人の心は移ろいやすいもの………人に夢と書いて、儚いと読むのですよ………」

 

「ワケ分かんないこと言ってないで!」

 

「ふむ……。ならば、決定的な証拠をお見せしましょうかー」

 

そう言って風がごそごそと取り出したのは物は……!

 

「あーっ!それ、ウチが隊長にあげた、全自動絡繰お万ちゃんやないのっ!一品モノやから、隊長しか持っとらんはずやのに……っ!」

 

「そ、それはどこに……!」

 

「この絡繰が落ちていたのは、稟ちゃんが死んでいた床のすぐ近くだったのですよー」

「その慌てよう、語るに落ちましたね。お兄さん」

 

「ち、違う……!これは確かに真桜から受け取ったけど……」

「使うアテが無くて、ずっと部屋にしまっておいたんだ!それがいつの間にか無くなってて……!」

 

「ご主人様、そのようなことで臣下を……許すわけにはいきません!」

 

「愛紗、その仕事、このわたしも手伝おう!さすがに同僚を殺されて、黙っておくわけにはいかん!」

 

「無論、呉も協力するわよ。いいわね、蓮華」

 

「はい。一刀……信じていたのに……!」

 

「そこに、殺意はあったのかしら……」

 

「せめて、愛があるなら良かったのですが……」

 

「冤罪だ!誤解だ、せめて、まともな弁護人を呼んでくれーっ!」

 

「お兄ちゃん、許せないのだ!変態死すべしなのだー!」

 

「うむ!ち●こもぐのじゃ!」

 

その弁護人である鈴々と美羽は、すでにあちら側だった。

 

「ええい、仕方ないっ!」

 

「あ、逃げたっ!」

 

「あわわ!警備隊の皆さん出勤してください!」

 

…………………………

 

 

 

 

 

「ふぅ……良いお湯だったわ」

 

「だぁぁぁあぁっ!俺は逃げる、逃げて無実を証明してみせるぅぅぅっ!」

 

「………あら、一刀」

「…………何よ、忙しないわね」

「さて。稟の鼻血はそろそろ治まったかしら。風のくれたあれを見せただけであの様子では、今日はもう望み薄だけれど……」

 

「あ、華琳さま………ふがふが」

 

「稟、調子はどうかしら?貴女さえ良いなら、今度こそ閨を共に……」

 

「か、華琳さまと……お風呂上りの華琳さまと閨を……共に……………!」

 

「待てーっ!ご主人様ーっ!」

「捕まえてその細首をひと息に刎ねてやる!」

「屋根の上からの追跡は任せろ!行きますよ、小蓮さま、霞!」

「シャオにお任せよっ!」

「よっしゃ、任しとき!」

 

「…………」

「…………ぶはぁーっ!」

 

「……やはりダメか。いつになったら貴女は私を受け入れてくれるのかしらね……稟」

 

「ふがふが…………」

 

 

 

「俺は、無実だーーーーーーっ!」

「はぁ……はぁ……冗談じゃないぞ!」

 

あれから何とかみんなを撒いたものの、現状油断はできない。

建物に身を隠しながら息を整える。

少し顔をだして辺りを見渡してみる。

 

「ご主人様ーっ!逃げれば罪が重くなりますよー!」

 

「一刀ー!いい加減往生しいやー!」

 

大通りで武器を構えながら叫ぶ愛紗と霞。

武器はまずいだろうと思ったが、通り過ぎる民はみんな苦笑いを浮かべるだけで過剰な反応はしなかった。

またあの人か……という呟きが耳に入る。

とても情けない……。

 

「うーん。どうするかなぁ」

 

直にここも見つかるだろう。

あの数の武将達から逃げ続けるのは恐らく困難だ。城で撒けたこと自体、奇跡なのだから。

となると味方を増やす。

あの場にいなかった人を思い浮かべる……。

 

「……そうだ。紫苑達なら」

 

紫苑、桔梗、祭の三人。あの三人ならこちらの味方をしてくれるかもしれない。

息も整ってきた。あの三人のうち誰かがいそうな場所。

……酒屋だろう。紫苑はともかく、桔梗か祭は間違いなくいそうだ。

 

パーンッ!と頬を張る。絶対に捕まってはならない。捕まってしまったら想像もしえない刑罰というなのリンチが待っている

 

身震いを抑え。その場を離れようと走り出そうとしたその時……。

 

「見つけたぞ!こっちだ!」

 

「な……くそっ!」

 

声は頭上から、姿の無い思春の声が街道に響き渡る。

とりあえず撒かなければ!

全力で路地裏に走る。

幸い兵達と一緒に警邏に行ったりもしているので、道が複雑な路地裏での鬼ごっこは少し自身がある。

 

「待て北郷!」

 

「待たないよ!」

 

捕まったら……捕まったら……あぁ怖い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地裏の奥、荒れた息を落ち着かせるため、膝に手を置いて肩で呼吸する。

ここまでくれば……(ヒタリ

 

「……え?」

 

首元に冷たい感触。目だけ動かしてそこを見てみると、やはり太刀が見えた。

 

「動くな。下手の動きをすればその首を落とす」

 

「思春!ど、どうして……」

 

「私は屋根から貴様を追っていたからな」

 

だから上から声が聞こえたのか……そりゃないぜ思春さん。

こっちがどんなに複雑な道を進んでいようと見つかるわけだ。

このままじゃ捕まっちゃうな、どうしよう……

 

「他の者を呼んでくるのも面倒だな……。気絶させて持っていくか」

 

物騒な言を聞いて慌てて声を挟む。

 

「ま、まって思春。あれは冤罪なんだよ!」

 

「ふん。今更貴様の戯言など聞く耳もたん」

 

「思春!」

 

「ッ!!」

 

首の太刀にかまわず振り向き思春の両肩を掴む。

思春が咄嗟に太刀を引いてくれたお陰で怪我は無かった。

しっかりと、思春の眼を見る。

 

「思春、俺が一度愛した女の子を捨てるような男だと思うのか?」

 

「それは……」

 

眼をそらされる。本当にそう思われてたならとても悲しい。悲しいけれど、それは俺のせいでもある。彼女との付き合いの中でそう思われていたって事なのだから

 

「そう思うなら、俺をこのまま捕まえればいい。悲しいけど仕方ない。でも俺は「思わん」……え?」

 

俺の声を、思春が遮る。

 

「冷静に考えれば、貴様はそんな愚行を行うような奴では無かったな」

 

頬を赤く染め、場都合が悪そうに太刀を収める。

 

「その……すまなかった」

 

「思春っ!」

 

「わぷっ!ほ、北郷、止めないか!」

 

感極まって思春を抱きしめる。

女の子のいい香りがする。頭がくらくらしてしまった。

 

「ありがとう!信じてくれて!」

 

離れて、笑みを浮かべる。

すると思春は耳まで真っ赤になって、後ろを向いてしまった。

 

「本よりこちらの勘違いだろう……貴様にお礼を言われる筋合いはない!」

 

「あ、思春!」

 

言い終わると同時に姿を消した思春。

多分照れ隠しなんだろうなぁ。

そう思うと顔のニヤニヤが止まらなかった。

思春がいないのなら、少しぐらいならここに留まっても大丈夫だろう。

近くにあった木箱に座り、考える。

 

法廷で出された真桜製全自動絡繰お万ちゃん。

あれは真桜に半分無理やり渡されて、しょうがないから部屋の戸棚の下から二番目の引き出しを二重底にして、隠して置いた物だ。何故あの場所がばれたのだろうか……。

まぁともかく、それからは一度も手をつけていない。なのにあそこにあるということは、誰かが俺の部屋に入り、お万ちゃんを盗り、事件の犯行使った(風の推測が正しければ)のだろう。

何でだ?普段から誰かに恨まれる様な事はしてな………して…な……

くそ、何でだ!まったく分からない!!

 

よし、一回よーく考えてみよう。

稟の亡骸はちらりと見えたが下着姿だった。

ということは、誰かとの行為前に鼻血を噴いてしまったのだろう。

……もしかしてこれってものすごい簡単な話じゃないのか?

華琳が稟の部屋にかわいがりに訪問、何時も通り寸前で噴射。

恐らくこれで正解だろう。だがこれだとお万ちゃんの出所が不明だ。

華琳がわざわざ俺の部屋にはいってお万ちゃんを盗むとか考えにくい。

真桜は一品モノと言っていたので、二号機は無いはずだ。

 

……まてよ?俺が少し頭を働かしただけでこの結論まで出せた。

あの場で俺を犯人と名指しした風。風がこの考えに至らないわけがない。

法廷でも、推定犯行時間に季衣と一緒に昼ご飯を食べたというアリバイ(これは本編参照)を、いやらしい事が絡むと発揮する信じられない力という不明瞭な理由で無理やりに言付けている。

 

ピコーン!!

 

これは……風の仕業かッ!!

 

お万ちゃんの謎は未だに解けないが、そこに眼を瞑れば全て合致する。

しかし何故……?まぁ理由は本人に聞いてみないと分からないか。

 

やる事はきまった。

とりあえず華琳を探すべきだ。

華琳なら俺の無実を証明してくれるはず。

そういえば、城から逃げ出すときすれ違った気がする。急いでいて反応できなかったけど。

 

「城か。今戻るのは……難しいよなぁ」

 

思春を退いたとしても、まだまだ俺を探しに動き回っている人達が山ほどいる。

でも、紫苑達を見つけるよりは頑張って城に戻ったほうがいいだろう。

よく考えてみれば、酔ってる祭や桔梗では面白がって肴扱いにされかねない。そうなれば……。

 

(あぁ怖い……思春に見つかってよかったかもな……)

 

 

 

途中、城門で兵士達に見つかりながらも、なんとか城内に入ることができた。

苦笑いしながら見逃してくれた彼らには感謝しないといけない。

 

が、どこにいるかも分からない華琳を探すのは正直厳しいだろう。

城庭には武器を構えながら歩いている人が3人もいる。

翠、秋蘭、蓮華である。

翠は憮然と、秋蘭は笑みを浮かべながら、蓮華は悲しげに。

恐らく、翠は怒りから、秋蘭は彼女のことだから全て悟った上で楽しみながら、蓮華は信じていた俺の裏切りから。

 

(「はい。一刀……信じていたのに……!」)

 

なんとしても彼女の誤解だけは解きたいと思う。

柱の影から茂みに、隠れながら蓮華に近づく。

彼女が2人から死角になる場所へ向かうのを確認し、茂みを揺らした。

 

「ッ!だ、誰!?」

 

黙して待つ。

 

「か、一刀……なの?」

 

ゆっくりと気配が近づいてくる。

蓮華が茂みを覗き込んだ瞬間、彼女を掻き抱いた。

暴れる彼女の口を塞ぎ、もう片手で武器を持つ手を抑える。

 

「蓮華、俺だよ」

 

「!……やっぱり一刀だったのね」

 

暴れるのをやめて身をゆだねてくる。

が、すぐにはっとし離れて武器を構えた。

 

「あなた……自分のした事が分かってるの!?」

 

「違うよ蓮華。誤解なんだ」

 

「口では何とでも言えるわ」

 

「蓮華……」

 

彼女に近づき、武器を持つ手に自分の手を重ねる。

 

「蓮華、俺は君だけを愛すことはできないと言った。俺は俺の事を愛してくれる彼女達をみんな愛しているから」

 

武器を持つ手に力が入る。それを宥めるように彼女の手を擦った。

 

「だからこそ、俺を信じてほしい。みんなを愛してると言った事を。俺は君と同じくらい彼女を……稟を愛してるんだ。そんな彼女を俺が……殺すなんて事する訳ないじゃないか!」

 

「……一刀」

 

武器を収め、蓮華は俺の胸に手を置き身を寄せた。

 

「分かったわ一刀。あなたを信じる。でも……私の前でそんな事言わないでほしい。少し……いえ、すごく嫉妬してしまうわ」

 

「ごめん蓮華。ありがとう」

 

少し離れる。蓮華の顔は赤く、眼が合うとすぐにそらされてしまった。

 

「ところで、華琳はどこにいるか分かる?」

 

「華琳?彼女なら魏の屋敷にいるんじゃないかしら」

 

魏の屋敷、ということは城門を出なければならない。

また兵士達に笑われてしまうなと溜め息をついた。

「待てええええええええ!!!」

 

「待つかぁあああああああ!!」

 

俺は今七星牙狼を片手に青筋を浮かべてる春蘭に追いかけられている。

城門を通る際きれいに鉢合わせてしまったのだ、迂闊だった。

春蘭を背に全力で魏の屋敷へ向かう。なんとか撒けないものか……。

 

「貴様どこへ逃げる気だ!!……この先は我ら魏の屋敷だぞ!!はっ!もしや次の標的は華琳様か!?」

 

「違う!確かに華琳に用はあるが……」

 

そもそも俺が華琳を殺そうとしても逆に易々と首が飛ぶだろう。

 

「やはり華琳様が目当てか!死ねぇええええ!!」

 

「どわっ!」

 

頭を掠める七星牙狼。このままだと捕まるのは時間の問題だろう。

こうなったら……

 

俺は護身用に腰に挿してた剣を抜き、立ち止まり向き合う。

春蘭はその様子を見て笑みを浮かべた。

 

「ほほぅ。貴様が私と刃を交えるのか。私も見くびられたものだな」

 

別に勝てると思ったわけじゃない。ただこのまま逃げていると、騒ぎを聞きつけて相手がどんどん増えてしまうと思ったからだ。

 

「いや。このままの俺じゃ春蘭には勝てないよ」

 

「このまま、だと?」

 

「一分時間を貰えないか?俺には隠された力がある。それを発揮するには一分間目を瞑って集中しないといけないんだ」

 

俺の言葉に春蘭は驚愕する。

 

「何だと!?貴様、そんな力があることを何故今まで黙っていた!!」

 

「これを使うと一週間は意識を失ってしまうんだ……。できれば使いたくなかったんだけど、どうしても春蘭と戦いたくなった」

 

「なっ!」

 

眉間に皺を寄せ考える春蘭。乗れ!このまま話に乗ってくれ!

 

「……いいだろう。そこまで言われて断れば、魏武の大剣の名が廃るというものだ!」

 

よっしゃぁあああ!!!

 

「ありがとう春蘭……じゃあ後ろを向いて眼を閉じていてほしい。ものすごく集中しないといけないから、見られてると気が散るんだ」

 

「分かった」

 

言葉通り春蘭は後ろを向いた。

 

「じゃあ、始めるぞ!」

 

…………………………

 

 

 

 

 

「……おい北郷、いつまでこうしてればいい。まだお前の隠された力とやらは発揮されんのか」

 

「……北郷?」

 

「おい!ほんご……う……?」

 

「お、おのれぇええええええ!!図ったなぁあああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

見つかったのが組し易い春蘭でよかった。お陰で簡単に撒けた。……後が怖いけど。

さて、色々あったけどようやく華琳の部屋の前についた。ノックをする。

 

「入りなさい」

 

中に華琳が居ることに安堵し、中に入る。そこには寝台の上で寝ている稟と、その横に座っている華琳が居た。

 

「……邪魔だったか?」

 

「それ以前の問題よ。さっきも風からもらった絡繰を使って楽しもうと思ったのに、見せるだけでこれですもの」

 

風からもらった。だって?

何で風がお万ちゃんの場所を……まぁでもこれで謎は全て解けた。

 

俺は現状を華琳に説明し、何とかみんなに誤解を解いてもらうよう頼んだ。

 

「いいわよ。元は私の軍師が招いた種ですもの」

 

「助かるよ。でもなんで風が……」

 

少し考えていると、華琳が呆れた顔で溜め息をついた。

 

「少しは自分の行いを改めて見なさいよ。自ずと答えは出ると思うのだけれど?」

 

「そんなこと言われてもなぁ……」

 

「私には風の気持ちが痛いほどわかるわよ?」

 

風の機嫌を損ねる様な事をした覚えはない。

 

「はぁ、もういいわよ。鈍いあなたに理解できるとは思ってないわ」

 

ひどい言われようだ。だが本当にわからないので反論できない。

華琳は立ち上がり、みんなの誤解を解いてくると部屋を出て行った。

残されたのは俺と寝台で寝ている稟。

俺は徐に稟の横に座り、頭を撫でる。稟は少し呻いた後、すぐに穏やかな寝顔に戻った。

 

「稟も難儀だよなぁ……」

 

華琳の寵愛を受けたいのに、鼻血のせいで受けられない。

体質改善の努力は続けているが、いまひとつはっきりとした効果は見受けられない。

 

稟の鼻血について考えながら、華琳がみんなの誤解を解くまで待つことにした。

「うう、い、いててて……」

 

腰やら足やら背中やら腕やら……カラフルに体を彩ってくれる青タンたちが、歩くたびにジンジンと存在を主張する。

 

「春蘭の奴……容赦無いよなぁ」

 

あの後、華琳が誤解を解いてくれたお陰でようやく外を歩けるようになった。

みんながすれ違いに頭を下げて謝ってくる。

特に愛紗がものすごく自己嫌悪していた。

 

少しの間でも隠れて過ごすことになった俺にとって、日の目を見て歩くことに少々浮かれてしまったのだろう。

先の事を忘れて、憮然としている春蘭を見かけたので声をかけたのだ。

すると振り向いた瞬間。

 

「見つけたぞおおおおおお!!!」

 

「ぶべっ!!!」

 

七星牙狼の腹が脇腹にめり込む。

激痛と共に吹き飛ばされ、地面を数回バウンドした。

なんとか意識を繋ぎながら、頭だけ起こし春蘭を見上げる。

 

「しゅ、春蘭……何を……」

 

「ふっふっふ……。貴様の隠された力というのは、そんな物なのか?」

 

「……………………あ」

 

そこからはもう、思い出したくもないリンチの始まりだった。

 

 

 

「まぁ、命があってめっけもの……というか良く生きてたな俺……」

 

春蘭、確実に容赦なかったからなぁ。本当に良く生きてたよ。

 

さて今日のお仕事は城壁の点検である。

 

 

 

 

「くー……くー……ヒュルル……くー……」

 

「……暢気に寝てるよ、元凶の人が」

 

こっくりこっくり……。

城壁の上でそれはまぁ暢気に寝ている風さん。さて、あの事件の訳を聞かせてもらいましょうか。

俺は笑みを浮かべながら風へ近づいていった。

あとがき

 

 

どうもふぉんです。

恐縮ながら初投稿させていただきました。

本作品は萌将伝をやっていて、上記のイベント中あっさり捕まりすぎだろ?と思い考えてみました。あの後風と一刀さんがしっぽりねっとりやるイベントがあるので、うまく繋げたかったのですがどうだったでしょうか?

 

ちなみにお万ちゃんの隠しどころは、萌将伝イベントの「切磋琢磨」の蒲公英のセリフを風が聞いていた。という設定です。そうすれば話がつながるかと思います。

 

私は一刀さんが好きです。ヒロイン達と同じくらい好きです。

あ、別にそっちの気はないです。ただ何故か好きなんです。

なので一刀さんの種馬MAX的な話を書けていけたらなぁと思ってます。

 

ではまた機会があれば。

 

 
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