No.171767

Phantasy Star Universe-L・O・V・E EP03

萌神さん

EP03【ガーディアンズとして…… ②】
SEGAのネトゲ、ファンタシースター・ユニバースの二次創作小説です(゚∀゚)

【前回の粗筋】

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2010-09-11 12:59:15 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:551   閲覧ユーザー数:534

ヘイゼルは再び、ガーディアンズパルム支部 キャスト専門医 モリガン・ホプキンスの元を訪れていた。

ブックスタンドからクリアファイルを取り出し、中に入ったカードを抜き取りながらモリガンは言った。

「ほら、頼まれてたユエルのガーディアンズ・ライセンスカードだ。再発行手数料は、お前の報酬から天引きしておくからな」

「ああ……って、俺が払うのかよっ!?」

「当たり前だ。あの娘は金を持ってないんだろ? 大して高いものでもないんだ。男の癖にケチケチするな」

ヘイゼルは「散財だ」とぼやきながら、モリガンからユエルのライセンスカードを受け取った。

ガーディアンズに所属する隊員達は、各自に身分証明証となるライセンスカードが発行される。だが、ユエルはこのカードを所持していなかった。カードの紛失が彼女の失われた記憶と関わりがあるのかは解らない。

全ては失われた、ユエルの記憶だけが鍵を握っている筈なのだ―――。

「念の為だが悪用防止の為に、以前ユエルが所持していたカードは使えないようにしてある。お前の事だから、その辺の手続きは苦手だろ?」

「……すまん、正直助かる」

「ほ! 殊勝な所も出て来たじゃないか。一応、お前も成長してるんだな。関心関心」

言わなきゃ良かったと、苦虫を噛み潰したような顔を見せるヘイゼルに、モリガンはニヤリと笑って見せた。

「しかし、お前達にとって大事なライセンスカード……何処で失くした物か……」

「そうだな……」

ぶつぶつと呟くモリガンに生返事を返し、ヘイゼルは受け取ったカードに目を落とす。

「ユエルの記憶喪失の件なんだがな、お前も何か気付いた事があったら教えてくれ……ちょっと引っかかる事があるんだ……」

ライセンスカードにプリントされた、証明写真を改めて見ていると、やはり何処かで見た記憶がある。

―――だが、一体何処で? それが思い出せない―――。

「それでだ……ユエルの調子はどうなんだ?」

モリガンの問いに、ヘイゼルはハッと我に返った。

「あ? ああ……記憶の事か? だったらまだ戻ってない」

「違うよ。リハビリの件だよ。ガーディアンズとして再出発する為に、おまえと訓練しているんだろ?」

「ああ、その話しか……」

一週間前の朝、ユエルはガーディアンズへの職務復帰をヘイゼルに宣言した。

確かに以前のユエルはガーディアンとして働いていた。ライセンスに記された情報に間違いが無ければ、WTという上級職である。それなりの実績はあったのだろう。

しかし彼女は今記憶を失っている。それまで経験していたガーディアンズの知識、スキルは生かせない。平たく言えば足手まといにすらなりかねない、そんなあやふやな状態だ。ヘイゼルはユエルの願いを却下したが、人々の為に働きたいと言う、ユエルの強い希望……自分とは真逆の強い意志に、やがて反論の言を失い、最後には折れざるをえなかった。

それでもユエルを行き成り、ガーディアンズの作戦に同行させる訳にはいかない。記憶を失っている限り、彼女の戦力は訓練生レベルの実力も期待できないからだ。そこでユエルは、リハビリと称し訓練を開始した。初めは一人でパルム支部の訓練場に通っていたユエルだが、見かねたビリーが半ば無理矢理ヘイゼルを伴って彼女の訓練に協力している。

「どんな感じなんだ。機動警護班隊員としてのユエルは?」

「何と言うか……変わった奴だよ。あいつがWTだってのは知ってるよな?」

モリガンは「ああ」と頷いた。

「習得技能(フォトンアーツ)を見たら、習得してるテクニックが凍結攻撃系のテクばかりなんだ」

「凍結攻撃特化か……だが、それはキャストとしては正解かもしれんぞ?」

『テクニック』とはフォトンを介し生み出す超常の力の事である。

古くは『ESP』や『魔術』や『心霊力』等と呼ばれていたこの力は、人の精神とフォトンが触媒となって生じる反応だと科学的に証明され、現在は利用されている。

機械生命体であるキャストは、精神力が威力に比例する法撃(テクニックを利用した攻撃)の制御を苦手としている。故に攻撃力としての法撃には頼らず、目標を凍結させ動きを封じ、状態異常を狙う事が目的の戦術ならば、判断としては間違っていないと言えるだろう。

記憶を失う前の彼女は、戦略的な物の考え方もできるガーディアンだったと言う事か……。

訓練中、ワンド(片手杖)をぶんぶん振り回し、テクニックが発動しない事に困惑するユエルの姿が浮かぶ。

『テクニックが撃てないッスよ!?』

『何度目だ! ワンドとテクニックをリンクさせろよッ!』

ヘイゼルは訓練中に幾度か行われたやり取りを思い出して言った。

「いや、あれは素で天然だと思うぞ……」

「近接戦闘の方はどうだ? WTなら前衛にも出なければならんのだろう?」

「通常の攻撃は怪しいが、後は習得している打撃系の『フォトンアーツ』で誤魔化せるだろう」

フォトンアーツはディスクを介して、脳に情報をダウンロードする事で習得する。打撃系のフォトンアーツ・スキルを武器とリンクさせる事で、常人でも達人並の戦闘技術を実現可能としているのだ。

「どのみち、俺達のPT構成だとメインアタッカーは俺で、背中にはビリーも居る。フォローはできるさ……」

「存外、面倒見が良い奴だよな、お前も」

「誰のせいでこんな事になったと思ってやがる!」

しみじみと呟くモリガンにヘイゼルは憤慨した。元はと言えばモリガンがユエルの面倒を押し付けたから、こうなったのではないか!

ヘイゼルは話しを切り上げ、部屋を出て行こうとする。

「まあ怒るな。キャスト嫌いだったお前も、変われば変わる物だと関心してるのさ」

部屋の扉が開く。通路に出る瞬間、ヘイゼルはボソリと吐き捨てた。

「今でも嫌いだよ……」

「―――え?」

言葉を聞き咎め、モリガンがその意味を確かめようとした時には、ヘイゼルは既に部屋を出てしまっていた。

「おい、ヘイゼル!」

慌てて彼を追い、部屋を出たモリガンだが、ヘイゼルは呼びかけを無視しエレベーターに乗ってしまっていた。

「……まったく……」

諦めて部屋に戻ろうとすると、通路の角に半身を隠している人影に気付いた。白い外装パーツに印象的な薄紫色の髪……。

「ユエル!?」

モリガンが思わず上げた声に驚き、ユエルが姿を現す。

「あ、そ、その……そろそろ皆の所へ戻らないとッス!」

ユエルは誰にともなく説明すると、モリガンが止める間もなく、反対側のエレベーターに向かって走り去ってしまった。

「あ、おい! 待……本当に人の言う事を聞かない奴らだね……」

モリガンは溜息をつきながら頭を掻いた。

「聞かれたかな? あれは……」

「待たせたな」

ヘイゼルは支部一階の職員用カウンターに戻って来た。

そこでは、ビリーがカウンターに片肘を付いて、受付嬢のキャストに何やら話し掛けていた。受付の彼女は明らかに迷惑な苦笑いを浮かべている。

「いや、こっちもお前が居ない間に楽し……じゃなくて、ミッションを選んでおいたぜ」

ビリーは名残惜しそうに受付のキャスト嬢にウィンクし、片肘を付いたまま此方に向き直る。

何をしていたのかを、深く追求するのも面倒なので流しておこう。

「そうか……で、ユエルはどうした?」

ヘイゼルが周囲を見渡すが、一緒に来ていた筈のユエルの姿が見えない。

「あれ? ついさっき、お前を迎えに行くって上に行ったんだけどな……会わなかったか?」

「いや、見掛けなかったな……手間を掛けさせてくれる」

首を振るヘイゼルにビリーは意味あり気な笑みを浮かべて言った。

「心配性だな、らしくないんだぜ?」

「誰が心配などッ!」

「怒んなってば……居たんだぜ」

ビリーは宥めるようにヘイゼルを制すると、エレベーターホールの方を指差す。扉の開いたエレベーターの中にユエルの姿が確認できた。

「ただいまッスよ~」

エレベーターから降りたユエルが、パタパタと走りながら二人の所へ戻って来る。

「勝手にうろつくな!」

「す、すみませんッス~」

「まあまあ、落ち着けよヘイゼル……ユエルちゃんも気にスンナって! こいつも心配してただけだから」

開口一番ヘイゼルに怒鳴られ、しょんぼりするユエルをビリーは気遣う。

「だから、誰が心配を……ッ!」と言い返し掛けたヘイゼルの口を片手で塞ぎ、ビリーは話しを進めた。

「それでだな……レリクス調査の任務を受けておいたぜ。数年前に一度調査が行われた遺跡なんだが、今回再調査が行われる事になったんで、調査隊が内部調査に入る、その前の露払いをする……ってのがミッションの内容なんだぜ」

口を塞いでいたビリーの片手を払い、ヘイゼルが割り込んだ。

「いきなり『レリクス』か……大丈夫なのか?」

ヘイゼルは傍らのユエルにちらりと視線を向けた。能天気な顔でビリーが告げた作戦内容を彼女は聞いている……が多分、解っていない。

「以前に調査されてる遺跡だって言ったんだぜ? 『遺跡の守護者』は大方片付いてるだろうし、危険視するのはせいぜい、一度駆逐され、ここ数年でレリクス内部に戻った原生生物位の筈なんだぜ」

ヘイゼルはビリーの判断に満足した。

「上等……流石だなビリー」

「ロックだろ、俺?」

両手の人差し指を立て、奇妙な仕草で此方に向ける。決めポーズのつもりだろうが、突っ込むのも疲れるので無視だ。

「それで出発は?」

「早いが、今日の午後の便で『ラフォン草原』の『野営基地』まで飛ぶ。さっき通信で話したんだが、アリアも『フライヤーベース』で合流するぜ」

「アリアも来るのか? 珍しく今回は乗り気だな」

遺跡等の狭い場所での作戦を好まない筈のアリアが、珍しい物だとヘイゼルが考えていると、ビリーは呆れたように両手を広げ、やれやれと溜息をついて見せた。

「朴念仁に理解を求めるのが酷なのかねぇ……」

「……何の話しだ」

ヘイゼルの眉根が不機嫌そうに寄せられる。

「乙女の心を理解できないとモテないぜ。妬いてるのさ、OK?」

ビリーが付きたてた両手の人差し指を、それぞれヘイゼルとユエルに向ける

『?』

クエスチョンマークを浮かべる二人に、ビリーは大袈裟に天を仰ぐ仕草を見せた。

「だめだコリャ……なんだぜ」

 


 
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