No.170546

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 拠点・公孫姉妹普通を嘆き、孫乾普通を称えんとするのこと

狭乃 狼さん

拠点、ハム姉妹編です。

説得力のあるような、無いような、

そんな感じです^^。

続きを表示

2010-09-05 10:28:35 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:13084   閲覧ユーザー数:11232

 「なあ、柊」

 

 「何ですか、白蓮さん」

 

 江夏城の太守執務室。政務を行っていた公孫瓚が、補佐を務める孫乾に何気なしに声をかける。

 

 「……私ってさ。そんなに普通だろうか?」

 

 「……どうしたんですか、急に」

 

 筆を動かす手を止め、公孫瓚を見やる孫乾。

 

 

 「いやな。幽州時代、いや、もっと遡れば私塾のころから言われ続けていたんだけどさ。……私はさ、路傍の花なんだそうだ」

 

 「……そのこころは?」

 

 「……確かにそこにいる。けど、大して見向きもされない。だとさ」

 

 「あ~……」

 

 「……思い切り納得って、顔だな」

 

 じろ、と。孫乾をにらむ公孫瓚。

 

 「あ、いえ、その」

 

 「いいさ。私だってわかりきってることだ。愛紗たちのように武に秀でているわけでもなく、朱里たちのように、知に優れているわけでもない。麗羽や美羽みたいな名家の出でもないし、一刀のように人を惹きつける魅力も無い」

 

 自分のことをそう評価しながら、どんどん落ち込んでいく公孫瓚。

 

 「自分で言ってて落ち込まないでください」

 

 「そーは言ってもな。あ~あ。私にも何か、目立てる能力か才能があればいいのにな~」

 

 机に突っ伏しながら、そんな願望を口にする公孫瓚。

 

 「……目立つことが良いことばかりとは、思いませんけどね。私は」

 

 「?」

 

 何故か寂しそうな口調の孫乾に、疑問を覚える公孫瓚。

 

 だが、この日はこれ以上、その話が進むことも無く、公孫瓚もこの事は記憶の彼方に、遠ざけてしまった。

 

 それから数日ほどしたある日。

 

 

 

 「姉貴にあたいの何がわかるって言うんだ!」

 

 バンッ!と、机を思い切り叩き、怒鳴る公孫越。

 

 「少し落ち着け、水蓮。私が言ってるのは分相応というものをだな」

 

 「私も無茶だったと思いますよ?恋さんを相手に、馬術の勝負だなんて」

 

 憤る公孫越を宥めようとする、公孫瓚と孫乾。

 

 話の発端はこの日の前日。

 

 一刀からの用事を言い付かって、この地を訪れた呂布に対し、公孫越が馬術での勝負を挑んだ。

 

 その理由が、

 

 「純粋な武力じゃどう背伸びしたって、恋には勝つことなんてできやしない。けど、生まれてからずっと、馬とともに育ってきたあたいなら、馬の扱いにおいては誰にも負けやしない!飛将軍と世に謳われし、呂奉先といえどもだ!」

 

 という、良くも悪くも、自信家の公孫越らしいものだった。呂布も勝負を承知し(実際に公孫越との口論の末、勝負を受けたのは陳宮だが)、その結果たるや、惨々たるものだった。

 

 早駆け、遠駆け、馬上での射撃、その他諸々、すべてにおいて完敗だった。

 

 「恋だって、元は西域の出だと聞いてる。馬とともに育ったというなら、彼女だって同じだ。天性の才に恵まれている分、向こうの力量のほうが上に決まってるさ。……私たちと違ってな」

 

 敗北して落ち込む妹を、公孫瓚はそう慰めた。だが、公孫越は逆に、その姉に対して食って掛かった。

 

 「そんな心持でいるから、姉貴はいつまで経っても、”普通”って言われるんだよ!誰にも気にしてもらえない、路傍の花ってな!」

 

 「……なんだと?もう一度言ってみろ!水蓮!」

 

 妹の罵倒に、いきり立つ公孫瓚。

 

 「……越さん」

 

 「何だよ?!」

 

 パシィッ!

 

 『な?!』

 

 突然、孫乾が公孫越の頬をひっぱたいた。

 

 「な、何をしやがる!公裕!」

 

 孫乾を睨み付ける公孫越。

 

 「……昔々、ある邑に一人の少女がいました」

 

 「は?」

 

 

 

 頬を押さえながら迫る公孫越に背を向け、いきなり語り始める孫乾。

 

 「その少女は、幼いころから秀才と呼ばれ、事実、ほかの子達よりも、抜きん出て勉学を修めていました」

 

 「公裕!一体何のはな」

 

 キッ!

 

 「う」

 

 孫乾の話を遮ろうとして肩をつかむも、その眼光に気圧される公孫越。

 

 「……そして、周りの期待の目はさらに大きくなり、少女の名は、村では知らないものがいなくなっていました」

 

 『……』

 

 孫乾が話し続けるのを、黙って聞く公孫姉妹。

 

 「しかしある時、少女はその有名ゆえに、大きく後悔をすることになりました。推薦を受けて受験した有名私塾の入試に落ちたのです」

 

 「……なんと」

 

 「それ以降、周りの者たちはその少女を、様々な眼で見るようになりました。哀れみ、蔑み、そして、失望の眼で」

 

 「なんて身勝手なやつらだ」

 

 「ふふ」

 

 公孫越の言葉に苦笑する孫乾。

 

 「……少女はそれからというもの、目立つ存在になることをやめました。邑からも家族とともに出て行きました。少女は自分で結論付けました。目立つことは一握りの天才の役目だと。そうでない者は、その支えとして、縁の下の力持ちに徹すればいい、と」

 

 孫乾の話はそこで終わった。

 

 『……………』

 

 しばし流れる沈黙の時間。

 

 

 

 「……私の言いたいこと、判って頂けましたでしょうか?」

 

 「……つまり、無理をして目立とうとするな、ってことか?」

 

 孫乾に答える公孫越。

 

 「……そうじゃない」

 

 「え?」

 

 姉のほうを振り向く公孫越。

 

 「人にはそれぞれ、分相応の役目があるということだ。天才には天才の。凡人には凡人なりの、な。……例え多くの人に気にされない、路傍の花であっても、誰かの、何がしかの役に立つ事だってある。……そういうことだろ?柊」

 

 こく、と。無言のまま頷く孫乾。

 

 「……相応の役割、か。……姉貴、昨日はすまなかった。勝手に暴走しといて迷惑かけたうえに、さっきはあんなこと言っちまって。このとおりだ、済まない!」

 

 姉に頭を下げる公孫越。

 

 「……いいさ。これからは無茶も無理もせず、自分は自分なりに、やっていけばいいさ」

 

 「そうだな。姉貴みたいに、”普通に”、な」

 

 「うるさい」

 

 「ふふふ」

 

 あはははははは。

 

 部屋の中に、明るい笑い声がこだまするのであった。

 

 

 

 

 

 

  「……とは言ったものの、やっぱり、もうちょっと位は、目立ちたいよな……。はぁ~あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ………………まあ、頑張れって事で(笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       終わり。

 

 

 

 あっとがきこーなー~~~!

 

 「いえ~い!どんどんどんどん!」

 

 「・・・・・・付き合いきれませんね。あ、進行の由です」

 

 「輝里ちゃんだよ~!」

 

 作者で~す!

 

 「・・・えー加減にせんと、どたまかちわるで?」

 

 「・・・すいません」

 

 ごめんなさい。

 

 

 「で、今回はハムさんたちの拠点ですね」

 

 「文中で柊さんが話していたのって、本人の体験談?」

 

 そういうことです。説得力があったかどうか、不安っちゃ不安ですが。

 

 「柊さん、苦労してんだね」

 

 「で、カズくんと出会って、また才を発揮する気になった、と?」

 

 実際には、家を継いだ時点で発揮し始めてますけどね。一刀に出会って、さらに頑張るようになった、と。そういうことです。

 

 「健気ね~。・・・・・うかうかしてらん無いかもよ?輝里?」

 

 「ぎく。・・・・・・そーだよねー。あたし、ここじゃあくまでその他大勢だもんねー」

 

 

 さて、次回が荊州編最後の拠点となります。

 

 「次のメインは誰?」

 

 ひみつ。

 

 「あたし!あたしの話は?!」

 

 だから、きみらの出番は次の本編まで無いっての。

 

 「ぶーぶー」

 

 「さくしゃ、おーぼー!」

 

 うっさい。では、また次回、お会いしましょう。

 

 「コメント等、お待ちしておりますね~」

 

 それではみなさん、

 

 『再見~!』

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
73
5

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択