No.170356 Phantasy Star Universe-L・O・V・E 序章/EP01萌神さん 2010-09-04 18:37:08 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:595 閲覧ユーザー数:585 |
【序章】
車中にワイパーの振動音が響いている。
その音に雑じりフロントガラスを打つ雨音と荒い呼吸が私の耳に今は遠く微かに聞こえている。
重い目蓋を開きバックミラーを覗く。
雨に歪んだ視界、それでも私の目は雨の中に佇む少女の姿だけはしっかりと捉えていた。
灰色の街並みの中に純白の身体と目立つ薄紫色の髪が動きを止めた写真の様に静かに写っている。
「……私は間違っていたのだろうか……」
自らの半生を振り返り自問する。
何が間違っていたのか……。
何を間違えたのか……。
何処から間違っていたのか……。
あるのは絶望と後悔、だが最後の選択に間違いは無かったと、私はそう信じている。
「さようなら我が娘よ……願わくば次に君が目覚めた時には……幸福な未来が待っている事を……そうだ我が子の幸せを望まない親等いるものか……私は間違っては……いない……君は……私の娘なのだから……」
霞んでゆく少女に一人の若者が近づいて行く。
願わくばその出会いが君にとって幸福な出会いである様に、ただそれだけを願って―――。
EP01【Boy Meets Girl ①】
ド派手な金髪リーゼントに鋭角に突き出たもみ上げ、ロカビリーな服装の青年と、サラリとした黒髪を肩口まで伸ばした少女が二人連れ立って歩いている。一見恋人同士に見えなくも無いが、少女の顔は何処か不機嫌そうだ。
「ヘイ、ガール! 俺とのデートじゃ不満だってのかぁい? アリィィィァア?」
「不満以外の何があるってのよ! てか、私の名前を変な風に延ばすのは止めてって言ってるでしょ! ビリー!」
ビリーと呼ばれた青年の軽薄そうな言葉と、オーバーアクションにうんざりしながら、アリアと呼ばれた少女は応えた。
グラール太陽系第一惑星パルム ホルテスシティ東地区、リニアトレイン駅の外側に隣接するショッピングモールのアーケード。通りを行く人種は様々だが、圧倒的にヒューマンが多い。
二人は惑星間警護組織、通称『ガーディアンズ』 機動警護班に所属する、アリア・イサリビとビリー・G・フォームである。
彼等は惑星パルム出身ではない。ビリーはガーディアンズが所有、自治をするスペースコロニー、『ガーディアンズ・コロニー』出身。アリアはニューデイズ出身のヒューマンである。
彼等はガーディアンズの任務で此処、惑星パルムでの短期駐留任務に派遣されて来ているのだ。
ぶつぶつと不満を漏らすアリアの顔に不意に水滴が落ちた。
「何よー、コレー! 雨降ってきちゃったじゃないっ! 折角の任務明けの休暇をどうしてくれんのよっ!」
「……それは俺のせいじゃないと思うんだぜ~」
アリアの筋違いな半切れにビリーは肩を竦める。
「まったく、雨には降られるし、ヘイゼルにデートは断られるし、あんたが一緒だし……ろくな事が無いわよ。もう最っ低!」
愚痴の間に飛び出した、この場に居ないもう一人の名前に、ふと思いつく事があった。
「そう言えばヘイゼルって、パルムでの任務に乗り気じゃなかったわよね?」
「……ああ、あいつは昔、此処でイロイロとあったらしいんだぜ……」
「あれ? ヘイゼルってパルム出身なんだっけ? 初耳だわ……。で、いろいろあったって具体的に何が?」
「まあ……イロイロはイロイロ……なんだぜ……」
ビリーは声を少し落とし独り言の様に呟き空を仰ぎ見る。空は一面の濃い灰色、雨は暫く止みそうになかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ホルテス・シティ東地区、ガーディアンズ支部に程近い所に公園がある。高い台に位置し、市街を一望できる公園のベンチに、その青年は腰掛けていた。
赤いシールドラインの入った、オールドデニム・レプリカのブルージーンズとレザージャンパー姿の青年は、降り始めた雨を避ける為、早足で公園を駆けて行く人々の姿には気にも留めず、睨むような険しい視線で街を見下ろしていた。そこには人々が暮らす社会がある。
「公平と言う鋼の冷たさで『鋳造(cast)』された偽りの社会がな……」
惑星パルムはキャストと呼ばれる人造人間が統治する惑星だが、その数は惑星総人口の5%に過ぎず、人口の大半は彼等に支配されるヒューマンが占めている。だがキャストが統治する支配体制は、意外にも上手く機能していた。
キャストは合理主義者で、管理する事に長けている。
合理的、機械的故に、誰にでも公平で理想的な社会。
しかし、その反面、キャストの中には他種族を劣等種と見なし見下す、キャスト至上主義が広がっている。
そんな理由からか、青年はキャストを嫌っていた……いや、憎んでいるといっても過言ではない。
降り出した雨は徐々に雨足を増していた。不意に襲ってきた寒気に青年は大きくクシャミをする。
調子に乗りすぎたか……口元に苦笑いを浮かべ青年はベンチから立ち上がった。
「まあ……たまには……そんな気分の時もあるさ」
自嘲気味に呟くと、身を縮め公園を出る為に歩き出す。
ガーディアンズ機動警護班所属 『ヘイゼル・ディーン』
それが彼の名前だ。
赴任中のガーディアンズが滞在する宿舎へ向かう為、リニアトレインの駅に向かってヘイゼルは歩いていた。
雨足は更に強くなり、濡れて貼り付いた服と髪が不快なのだが、足取りは重く、何故か急ぐ気にはなれなかった。歩道に既に人の姿は無い。
当たり前か、好き好んで雨に打たれたい人間などそうは居ない。
駅が間近に迫り、ふと顔を上げたヘイゼルの瞳に白い人影が映る。
灰色の街並みの中に、純白の身体と目立つ薄紫色の髪が、動きを止めた写真の様に静かに映っていた。
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SEGAのネトゲ、ファンタシースター・ユニバースの二次創作小説です(゚∀゚)
オリジナル完成までの間はこちらを投稿してお茶を濁そ…ゲフンゲフン!
惑星パルムでガーディアンズの青年が、一人の少女型キャストと出会った事から運命の歯車が回り始めます。
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