焼け爛れた元野原だったはずの場所には命を失った人間の器が無残にも積み上げられている。所々から煙が立ち上りなんとも言えぬ匂いを発生させていた。
皇暦2010年8月10日……神聖ブリタニア帝国が日本に宣戦布告した日。
中立を謳う極東の島国と超大国ブリタニアの間には、日本の地下資源をめぐる根深い外交上の対立があった……
結果、敗北した日本は帝国の属領となり自由と権利と名前を奪われた…
AREA11
それが敗戦国日本の名前新たな名前となった。
黒髪に紫電の瞳を宿す少年は、足と目の不自由な少女を抱き締めながら、癖のあるブラウン系頭髪の同じ年くらいの少年に感情と決意を吐き出していた頃、今では落ちぶれてしまった元名家の令嬢…美しくきらめく金色のウェーブの掛かった髪を揺らしながら自分祖父であろうその人物の目を、鋭く輝く蒼眸瞳にその人物を映し出す。
「どうしても…引けぬのか?」
「はい…お爺様」
「そう……か、行くか?」
「はい…、殿下の所へ…」
自分の孫娘の強い瞳に「ふふ」と嬉しそうな笑みを浮かべ、彼は皺のある大きな掌で彼女の頭を優しく撫でた。その優しい感触に少女は目を瞑り口元には笑みを浮かべる。
「なら、お前と殿下の為の庭を…城をプレゼントしよう。殿下を任せたぞ…ミレイ」
元は超大国ブリタニア皇族第11皇子・第17皇位継承者であった少年は、戦前に妹と共に外交手段と言う名の人質として日本へと送られていた。その時唯一少年と少女が心を許した少年枢木スザク…、戦後はその彼の本家へと移り住み数ヶ月が経っていた。分家でも本家でもブリタニア人の少年と少女の扱いには差はなかった。
いつもの様に居心地も生きた心地もしない家を飛び出した少年は、足の不自由な妹を背負いながら舗装などされていない荒れた道をひたすら歩く。少しでもあの家にいる時間を失くしたい、そんな気持ちからいつも二人で時には唯一の友人とした少年と三人で日が暮れるまで家には帰らない…、それが日常になっていた。
ぼろぼろになった靴が土を踏み締める音を鳴らしながら、一歩一歩とゆっくりと歩みを進める。元々体力的に優れてるとは言えない少年は、成長する妹の重みを実感すると共に自身の体力のなさを痛感する。
「お、おにいさま」
背中から聞こえる妹の声…、だがいつもと違ったのはその声に怯えや恐怖といった感情の色がこもっていた。その妹の様子に少し驚いた少年は自分の正面へと視線を移した。この辺りでは見慣れない白い色をした外国製の車。運転席から降りてきた男はサングラスに黒いスーツ、いかにもな装いの大人の男。その男をキッと睨みつけつつ様子を伺っていると、その男は助手席側の後部座席の方へと回り、ガチャっと丁寧にゆっくりとドアを開け頭を下げる。
ふわりと車から地面に降りたその人物は、今まで少年が踏み締めていた音と同じ音を鳴らしながらゆっくりと二人の方へと近づいてくる。つばの広い白いハットをかぶり、そこから伸びる輝くほどまぶしい金色の髪、スカイブルーのワンピースを着た少女の姿がそこにあった。
「ミ……レイ?」
小さく呟いた少年は、疑問と驚きの表情を浮かべつつ脳内の自身の記憶を漁った。まだ二桁にも満たない人生の読み漁りは意外と早く、その中で目の前の少女と重なる少女の名前…それをとっさに呟いた。
その呟きが聞こえたのか、それとも別の何かなのかわからないが少女は令嬢らしくふわりと微笑む。帽子をとり自分の服や体が汚れるのもためらわず、少年と少女の前で肩膝をつく。
「ミレイ…なのか?」
「はい……、お迎えにあがりました殿下。あなたをお守りするために……」
少女の蒼眸がまっすぐに少年を瞳に映す。少年も同じように少女を瞳に映しこむ。無意識の内に少女へと差し出した片手に気づいた少女は、優しくゆっくりと両手でその手を包みこむ。
「お待たせして申し訳有りませんでした。ルルーシュで・・・ルルーシュ様、ナナリー様」
その蒼い瞳から落ちた雫が、ほほに一筋の後を残す。
そして来たる皇暦2017年…ブリタニアを憎む者達の反逆が始まる……。
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焼け爛れた元野原だったはずの場所には命を失った人間の器が無残にも積み上げられている。皇暦2010年8月10日……神聖ブリタニア帝国が日本に宣戦布告した日。結果、敗北した日本は帝国の属領となり自由と権利と名前を奪われた…。AREA11 それが敗戦国日本の名前新たな名前となった。日本へ人質として送られた少年少女を迎えの時…