第二十五話 ゴールデンウィーク ユーノ一行編 その二
第97管理外世界 地球-とある人物の別荘-
「で、フェイト達はお昼には到着する予定なのよね?なのは」
「うん、その予定だよアリサちゃん」
「エリオくんとキャロちゃんも一緒らしいし会うのが楽しみだよ」
「二人とも素直でええこやからなぁ、ちょ~っとだけ人見知りなとこあるみたいやけど、まぁアリサちゃんとすずかちゃんなら大丈夫やないかな」
中学校での仲良しグループ五人組(なのは、はやて、アリサ、すずか+フェイト)の会話である、フェイトはユーノに着いてミッドにいるため今日到着する予定である。
「でも残念よね~、リンディさんの所はフェイトとアルフ以外は参加できないみたいで」
今回のゴールデンウィークでの恒例の集まりにはハラオウン家は参加していない、まぁ理由としては
「まぁ、しょうがないんよ。最近あった事件の方の事後処理でリンディさんもクロノくん達もかなり忙しいらしいみたいやから」
実はその原因が自分達の留学にあるとはつゆとも思っていないはやてである。
まぁ気が付いていないのはリンディがほぼ完ぺきに情報を漏れないようにしているので当然と言えば当然である(ユーノは実は気付いているが手伝いを申し出たところ取り付く島もなく断られた)。
「でもなのはちゃん達からフェイトちゃんがユーノくんと付き合い始めたって聞いたときは驚いたよ」
言葉とは裏腹にあんまり驚いた感じもなくにこにこしながらいうすずかであるがこれでもけっこー驚いたらしい
「でも私たちの中でフェイトが一番だったのは予想外だったわよね~」
「うんうん、フェイトちゃんとユーノくんの性格から考えてこっちに方から何らかのきっかけを与えてやらんとくっつかんものやとわたしは思っとったんよ」
ほんとに驚きだと言わんばかりにアリサがいうとそれに賛同しながらなにかとひどいことを言っているはやてである。
「ま、フェイトが来たら根掘り葉掘り聞いてやらないといけないわよね?」
「「「うん!」」」
アリサの言葉に力強くうなづく三人、アリサはうなずいたうちの二人-なのはとはやて-に怪訝な瞳を向ける
「実はわたしもはやてちゃんも詳しいことは聞いてないんだ」
「そやそや、フェイトちゃん恥ずかしがってなかなか話してくれへんからなぁ」
「くすくす、じゃあ今回はユーノくんもいるし詳しく聞かないいけないね」
すずかは視線の先にあるこの別荘に向かってくる一台の車を見ながらそう言う。
彼女達のおもちゃ(ユーノとフェイト)の到着であった
「「つ、疲れた」」
「ははは、ユーノくんもフェイトちゃんもお疲れ様。一日中アリサちゃん達に質問攻めやったからなぁ」
ぐったりした様子でソファーにへたり込む二人に向けてはやてがそう声をかける
「うう…洗いざらいしゃべらされちゃったよ、というより一番容赦なかったのははやてじゃなかった?」
疲れた様子ながらも赤い顔のままそう言うのはフェイトである
「あれ、そうやったけ」
とぼけるはやてだが目線はあさってのほうこうを向いている。
ちなみに今はもう夕方、三人がいるのは別荘のリビングである。ほかの人たちは夕食のバーベキューの準備などでここにはいない
そのとき廊下の方で物音がしたような気がしてユーノが顔を上げるとそこには眠そうに目をこするキャロの姿があった
「おはようキャロよくねむれたかい?」
「ふわぁ、おとーさん、おかーさんおはようございましゅ」
そう言った後ユーノの姿をちゃんと視界に入れるとてくてくと近づいてきてユーノの膝の上に乗る。
普段のキャロであるならユーノが疲れてるのを何となく感じ取ってとらない行動だろうがいまのキャロは寝起きで甘えたい衝動の方が勝ってしまったらしかった
「えへへ~」
「どうしたのキャロ?今日はずいぶん甘えんぼさんだけど」
そのユーノの問いかけにキャロは膝に乗ったままユーノを見上げて答える
「だって今日はおとーさんもおかーさんもず~っとはやておねーさんたちとばっかり話してました」
昨日までの疲れもあるようで眠そうだったのでキャロとエリオは部屋を貸してもらって休ませてもらうことにしたのだがそれがお姫様(キャロ)的にはお気にめさなかったらしい、頬をプクーッと膨らませながらユーノとフェイトを交互にみて“不満です”というかんじにいう
「ごめんキャロ、でも疲れてたみたいだったから…」
「ごめんね、なんでも言うこと聞くからお母さん達としては機嫌を直していただけるとありがたいんだけどな」
そんなユーノ達の弁明もどこ吹く風でツーンとそっぽを向くキャロである、まぁもちろんユーノの膝の上から下りるようなことはしないのだが
「まぁ、キャロそういわんといてーな。今回はわたし達がユーノくんとフェイトちゃんを無理やり話しに引き込んだんや、このとーりやからお父さんとお母さんのこと許してやったって、な?」
「へ?はやておねーさん」
タイミングを見計らっていたはやてがそうキャロに声をかける、キャロの方ははやてのことには全く気が付いていなかったらしく本気で驚いていたが。
「うん、はやておねーさんや」
「は、はい。わかりましたおとーさんとおかーさんのことはゆるします。……でもわたしのいうことはいっこ聞いてもらいますからね?おとーさんおかーさん」
「「はい」」
はやてがいることに気がついて慌ててユーノとフェイトを許したキャロにほっしたが、その後のキャロの一言にどんなお願いが来るのかは分からないが頷くしかなかった
「ふわぁ、かあさん、とうさんおはようございましゅ」
その後すぐにおきてきたエリオとの間でも似たようなやり取りが行われたと明記しておこう。
ANOTHER VIEW
SIDE HAYATE
それにしても…とはやては思う。
今日のキャロは自分の見たことのないキャロばかりだ、普段は年齢不相応にしっかりしているから余計にそのギャップが激しい。
例えばこんなに素直に“甘えて”いるところは初めてみたし、基本的によく言うことを聞くいい子のキャロが微笑ましいレベルとはいえユーノとフェイトを困らせているという光景は普段のこの子からはとても想像できない。
(きっとこれがユーノくんとフェイトちゃんの娘としてのキャロなんやろうな……)
自分にはこんなふうに甘えてもらえないことを少しだけさびしく感じもするがどちらかというとユーノとフェイトがちゃんと“親”をやれていることを嬉しく思い安心している自分がいるのもはやては気がついていた。
はやては小さいころに両親を亡くしたため親の愛情というものをあまり受ける機会は無かった。
夜天の書の主となったあとは年長者としてシグナムやシャマルがいたが、あくまで彼女らははやてにとって家族であっても“親”にはなりえなかったし、はやてがそれを求めることもなかった。
よくて姉といったところだろうか?
それは彼女らがはやてのことを主として扱ったことも一因としてはあっただろうが、はやては根本的な原因は自分にあると思っている。
たぶん自分のなかできっと亡くした両親以外のことを“親”と思うことを絶対にしたくなかったのだろう。
今考えると笑えるようなことだがその時の自分はその行為が死んだ両親への裏切りのように感じていたのかもしれない……
まぁそんなことは正直はやてにとっては昔のことだ、両親がいないことをさびしく思ったことはシグナム達の主になってからは皆無であることだし。
ただはやて個人の意見だがやはり親の愛情っていうものは大事なものだと思う、だからユーノ達に素直に甘えているキャロをみてなんだか安心したのだ。
あまりに普段のキャロとエリオがしかっりしすぎていてちゃんと甘えているところを見たことが無かったから余計にだ。
そして自分の目線の先でエリオが拗ねているのを見ながらはやては思う。
(まぁ、まだ甘え慣れてない感じやね。それに私がいると積極的に甘えられへんみたいやし)
そうして家族の時間を邪魔するのも悪いと思いはやては部屋を出て行ったのだった
ANOTHER VIEW OUT
「ふぅ~食べた食べた」
「も~う、アリサちゃんはしたないよ」
バーベキュー後、幼馴染五人用(なのは、はやて、アリサ、すずか、フェイト)の部屋での会話だ。
「いいじゃないすずか、どうせ私達しかいないんだし」
「そうやね~、男の子の視線もないし気にしなくてもいいんは楽でええね」
すずかの声もどこ吹く風といった感じにベットに横になってだらーっとしているアリサにはやてである。
「にゃはは、すずかちゃんそうなった二人には何言っても無駄だと思うよ」
苦笑しながらなのははそういうと自分もベットに腰掛ける。
すずかもそれもそうかと呟くとなのはの隣に腰掛けた。
「あ、そういえばさっきな……」
はやてが先ほどのキャロやエリオの様子を話すと三者三様の反応が帰ってくる。
「そりゃあエリオとキャロには悪いことしちゃったわね」
と苦笑しながらアリサ
「ちゃんとお父さんお母さんなんだね~、ユーノくんにフェイトちゃん」
にこにこしながらすずか
「んーっと、いまいちその場面が想像できないかな…。だってエリオくんとキャロからだよね?」
と困惑気味にはやてに同意を求めるなのは
というようなかんじである。
「ん?別に変なことじゃないじゃない子供が親に我がまま言うなんて」
なのはの答えに違和感を感じたのかアリサがそういう、普通なら確かにそうなのだが……
「まぁ今回の件に関しては私もなのはちゃんと同意見やな~実際に見てなかったら想像つかへんやったろうし」
はやてはそう言うとキョトンとした顔をしているアリサとすずかに普段のエリオとキャロの様子を説明する。
すると不思議に甘えているエリオとキャロの図が頭も中に描けなくなっていくではないか
「そ、それは確かに……」
「うん、なのはちゃんとはやてちゃんのいうこともわかるかも」
そして部屋の空気が微妙になりかけたとき
「あれどうしたの?みんなしてなんとも言い難い顔して」
二人の子供たちのお母さんが現れたのだった。
で現れたものを逃がすはずもなく四人でエリオとキャロに着いて聞きだすのだった。
四人とも少なくともエリオとキャロが幸せな人生を歩んできたわけではないだろうと思いながらも少し甘く見ていたところがあったのかもしれない。
フェイトの口から語られる二人の過去に衝撃を隠せない。
基本的に両親の庇護のもとで幸せに生きてこれた者の誰が想像するだろうか?
その能力の高さゆえに物心ついた頃に一族を追放され一人で生きなければならなかったなどと…
ある子供の完璧なクローンとして誕生しその両親から捨てられ、ある違法な研究所でモルモットのような扱いを受けたなどと…
あの子たちの笑顔を見たことのある者たちの誰が想像するだろうか?
その能力の制御ができないことを理由に保護された後もたらいまわしのようにされ“いい子”でいなければそこにすらいられなかったことを…
その過去ゆえに管理局に保護されても誰も信じずに幼い心を閉ざし他人を傷つけ近ずけないことで自分を守ろうとしていたことを…
キャロが“いい子”なのはきっとそうしなければ生きてこれなかったから…
エリオが“いい子”なのはきっとそうじゃないと『また』捨てられるんじゃないかと心のどこかで思っているから…
そのことを四人は理解したのだ。
それを理解して四人は目の前の人物-フェイト-を見る。
そして思う『ああ、すごいな』と。
きっと本人に自覚は無いのだろうがエリオとキャロを救ったのはこの少女だ、きっとそれは簡単だけど特別なことだったのだろう。
“竜召喚の才能”だけを見て“キャロ”のことを見ようとしなかった管理局員と違って“竜召喚の才能”なんか気にもせずに“キャロ”だけをみた。
“エリオ”と向かい合うことをしなかった管理局員と違って“エリオ”と向かい合ってそのすべてを受け止めそして“エリオ”を受け入れた。
きっとフェイトがやったのはただそれだけのことで言葉に並べれば当たり前、できて当然のことなのかもしれない。
けれど、実際当たり前のことを当たり前にやるのは意外に難しい物だ。
だからこそ……
「え、えっとみんな何?なんか視線が生温かいんだけど」
みんなの視線にたえきれなかったのかフェイトが声を上げる
「ああ、ちょっとね」
「うん」
「そうやね」
「そうだよね」
アリサにすずか、はやてになのははそういって
『うんフェイト(ちゃん)と親友でよかったなって思っただけだよ』
そう続けたのだった
……彼女と友人であれたことを誇りに思う
その頃のユーノ
「ぐっすりねむってるな」
ユーノがソファにエリオとキャロと座っていると(とはいっても子供たち二人は眠っているが)そう後ろから声をかけられた
「あ、お疲れ様です士郎さん」
「ああ、気にしなくていいさ。それにハラオウンさんのほうから君達には働かせるなっていわれててね、手伝うって言われたらどうしようかハラハラしていたよ」
高町士郎、なのはの父である。
親というものを知らないユーノにとって士郎は父親を感じさせてくれる人物でなにかで会う機会があったら一度は話すようにしている。
「り、リンディさん何もそこまでしなくても……」
「君達が気兼ねなく遊べるように気を使ったんだろう。まぁ見た感じあんまり効果はなかったようだな」
士郎は苦笑しながら言うと
「さてその子たちを部屋の方に運ぼうか」
「はい」
子供たちを運んだ後二人は夜遅くまで話していたらしい、途中からはなのはの兄のキョウヤも加わって本当の親子のようだったとはすずかの姉の忍の証言である。
ゴールデンウィークの夜はそうして更けていくのだった。
余談だがゴールデンウィークの残りをずっとキャロとエリオとすごすというキャロのお願いにより残りは遊び倒したと明記しておく。
あとがき
皆さんお久しぶりです。なんか最近は一月に一つペースでの投稿になってきているグリムです。
というかアリサとすずかが難しいです。たぶんすごっい違和感あると思うのですがそこはご勘弁のほどをお願いします。
次回の投稿分はゴールデンウィーク明けの話になります。
では今回はこの辺で失礼いたします、この駄文を読んで下さった皆様に感謝を申し上げます。
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ティアナの元から今度はなのはたちの方へ赴くユーノ一行。
そこで待ち受けているものは…