No.168804

真・恋姫無双アナザーストーリー 雪蓮√ 今傍に行きます 第15.1話

葉月さん

拠点二回目は琳さんです~

一刀の執事姿に琳の暴走が爆発か?
そこには思いもよらぬ結末が?!

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2010-08-28 21:44:46 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:5749   閲覧ユーザー数:4324

真・恋姫無双アナザーストーリー 

雪蓮√ 今傍に行きます 第15.1話

 

 

 

 

【学園祭一日目・後編(奇妙な主従関係?)】

 

「ふぅ、中々の反響ね」

 

鍋を振るいながら店の様子を伺う。

 

「昼過ぎですからね。それに噂が噂を呼んで色んな生徒が来てくれてますから」

 

「ふふふ、私に掛かればこんなものよ」

 

額に滲む汗をタオルで拭い再び鍋を振るう。

 

「材料はまだ足りているのかしら?」

 

「はい、このペースならお昼は持ちこたえられると思います」

 

「結構。なら、調理教室に行って昼過ぎの仕込をしてきて頂戴。メモは持っているわね?」

 

「はい!持ってます。では行って来ます!」

 

「ええ、頼んだわよ。……はい、小籠包出来たわよ」

 

指示を出しながらも手の動きは止めず次々に注文された品を作っていく。

 

あくまで手作りにこだわった私は材料などは経費を抑える為に街の農家に顔を出して安値で買い取らせてもらった。

 

とわ言っても、実際は市場に出回る値段より少し高い程度で農家人達からしてみれば儲けは断然に良い筈だけれど。

 

まあ、肉に関しては市で直接手に入れてきたけれど、それでもスーパーなんかで買うよりは質も値段も断然にいい。

 

「はい、水餃子出来たわよ!」

 

「は、はい~~!」

 

「ぐずぐずしないで早くもって行きなさい。まだ次があるのだから」

 

「す、すいません!……お、お待たせしました~水餃子ですぅ!」

 

「ふぅ、それにしても凄い行列ね。ざっと2、30人くらいかしら?」

 

店舗の位置は火を使う事から野外に設けられている。

 

周りには焼きそばやお好み焼きなど定番の屋台が軒を連ねているが何処も数人の行列程度で私たちほどではなかった。

 

「それにしても……」

 

なんであいつは来ないわけ?

 

昼前に確かに一刀を見かけたがその時も私は小籠包や水餃子などを作っていた為に近づく事は出来なかった。

 

(イラッ!)

 

「それもこれもあの雪蓮のせいよ」

 

雪蓮は私の存在に気づきながらも一刀に気づかせないようにして過ぎ去って行ったのよ。

 

しかも、通り過ぎざまに……

 

『くすっ』

 

「ああ!なんなのよ!」

 

「ひゃ!す、すいません!」

 

「あ、気にしないでいいわ。独り言よ」

 

「は、はい……あ、あの小籠包2個追加でお願いします」

 

「判ったわ。はい、肉まん4個、蒸しあがったわよ」

 

「はい、持って行きます!」

 

「はぁ、ダメね。今はこっちに集中しないと……」

 

後の事は終わってから考えればいいことよ……

 

今の状況を改善する為、調理に集中する事にした。

 

「ふぅ~、何とかはけたわね」

 

「そうだね。あ、華澄さん休憩に入っても良いわよ?暫くは大丈夫だと思うから」

 

「そうね……いえ、あと1時間入るわ。まだ、人の流れは途切れていないからね」

 

周りの状況を見てもう少し居た方が良いだろうと判断を下して暫く居る事にした。

 

「それにしても今日がこの調子だと明日はもっと多そうね。これはもう少し追加したほうがいいかしらね」

 

帳簿を見ながら今現在の状況を見て思案する。

 

今は学園内だけだけれど、明日は学園開放の為、他校の生徒やご父兄も来る事から多いに越したことは無いわね。

 

「終わった後、農家に追加を頼みに行って見るか……」

 

そんな事を考えていると俄かに騒がしくなってきた。

 

「何かしら?騒々しいわね……」

 

簡易厨房から顔を出そうとした時だった。

 

「ちょっとあっ」

 

「す、すいません。注文です!ほ、北郷様に肉まんを4個、私のおごりで!」

 

「……は?」

 

「で、ですから肉まんを4個です!お金は私が払います!」

 

「ちょ!落ち着きなさい!そこを退きなさい」

 

「は、はい……」

 

少し怒気を含ませてクラスメイトを落ち着かせて厨房から出るとそこには困った顔をした一刀が立っていた。

 

「や、やあ、琳」

 

「一刀……何をしているの?」

 

「いや、それがさ。休憩に入ったからお昼がてらに飲茶を食べに来たんだけど……」

 

「はぁ、いつの間にか奢ってくれると言う話になったのね」

 

そうだと言わんばかりに一刀は苦笑いを浮かべて頷いていた……まったく。

 

「ちゃんとお金は取りなさい。それが飲食業をやる者の仕事よ」

 

「さっきの子の好意はありがたいけど、最初からそのつもりさ。それに琳が作ってくれるんだ、お金を払わないと罰が当たるよ」

 

「~~っ!」

 

一刀の屈託無い笑顔に赤面してしまう。

 

「と、とにかくちょっと待ってなさい」

 

「ああ」

 

厨房に戻り肉まんを蒸し始める。

 

「なによ……私が作ってるって……」

 

一刀の言った言葉を蒸篭を見つめながら考える。

 

私が作ってくれるんだ、つまりは私が作ったのを一刀が食べたいってこと、

 

「そ、そんなのいつもで言ってくれれば作ってあげるわよ……バカ」

 

ここには居ないアイツに愚痴を言いながらも胸の置くが温かくなり自然と微笑んでしまう。

 

「ふふふ♪不味いなんて言ったら承知しないんだから♪」

 

蒸篭の火加減を調節しながら肉まんが出来上がるのを待った。

 

「ほら、出来たわよ」

 

ぶっきら棒に肉まんを渡すも一刀はうれしそうにそれを受け取った。

 

「ありがとう琳。お代は400円だよね」

 

「ええ、確かに……さて、私は休憩に入るわ。後の事は頼んだわよ」

 

「「ええええええっ?!」」

 

一斉にクラスメイトからブーイングが飛んで来た。

 

「な、なんで今なんですか~、さっきはもう少し様子見るって」

 

「お昼も大分過ぎているし、肉まんも餡饅も蒸せるだけ蒸してあるわ、あとは水が無くならない様に補充すれば大丈夫よ」

 

「で、でも小籠包とかは!」

 

「もちろん小籠包も蒸してあるわよ。足りなくなっても作り置きがあるのだからまた蒸せばいいだけでしょ?」

 

「で、でも、でも!」

 

どれだけ私を引き止めたいのかしら?

 

「俺お邪魔だったかな?なんだったら直ぐに居なくなるけど」

 

「あら、一刀は私と一緒に居たく無いって言うのね?」

 

「いや、そう言う訳じゃないけど……」

 

「なら、ここで待っていなさい」

 

「……はい」

 

大人しく肉まんを頬張りながら待つ一刀にくすっと笑いながら目線を戻す。すると……

 

「や、やっぱり華澄さんって北郷様の事……」

 

「だよねだよね。普通、あんなこと言わないよね」

 

「それじゃ、北郷様の彼女って華澄さんなの?!」

 

「え?でも、北郷様の同じクラスに居る関さんって私は聞いたよ?」

 

「嘘!私は桜崎さんだって思ってたけど」

 

「でもでも、三年生の天音様も狙ってるとか」

 

「……はぁ~」

 

クラスメイトが集まりヒソヒソと話し合っているのを見て思わず溜め息が出てしまったわ。

 

「あなた達、憶測で物を言うものでは無いわよ」

 

「す、すいません……それで、実際のところはどうなんですか?」

 

「……え?」

 

「あ、私もそれ聞きたいです!」

 

「ちょっ!」

 

「どうなんですか?彼氏なんですか?!」

 

「だ、だから!」

 

「もうキスとかしたんですか!」

 

「キ、キスッ?!」

 

だ、ダメだわ。押さえ込みきれないわ。こうなったら……

 

「一刀っ!」

 

「へ?あ、なに?」

 

「行くわよ!」

 

「行くってどこっ?!ちょわ!な、なんだよ?!」

 

「良いから早くしなさい!」

 

「「きゃ~~~~~っ!」」

 

後ろからの黄色い悲鳴を無視して一刀の手を取り走り出した。

 

くっ!私としたことが言い返せないなんて不覚だわ!

 

「ここまで来れば平気でしょう」

 

「きゅ、急に走るなよな、肉まんが落ちるところだったぞ琳」

 

「仕方ないじゃない、あのままあそこに居るわけには行かなかったのだから」

 

「まあ良いけどさ。所で琳は昼食べたのか?」

 

「心配は無用よ。さっきたべ(ク~ッ)た……」

 

「……あ、あの」

 

「~~~っ!」

 

「た、食べる?」

 

「っ!わ、忘れなさい!いい!今の音は聞いていなかった判ったわね一刀!」

 

「は、はいっ!」

 

「よろし(ク~ッ)……」

 

「「……」」

 

「……一刀?」

 

「き、聞いていませんです!」

 

「『何を』聞いていないのかしら?」

 

「はっ!琳さんのお腹の……あ」

 

「生まれてから記憶全部忘れてしまいなさい!」

 

「ちょ!どこから中華鍋を取り出したんだよ!」

 

「うるさい!大人しく叩かれなさい!」

 

「無茶なこと言うな!(ブオンッ!)うぉ?!」

 

「ちっ!避けるんじゃないわよ一刀!」

 

「避けるに決まってるだろ!と、とにかく落ち着けって!」

 

あんな恥ずかしい音聞かれて落ち着けるわけ無いじゃない!

 

「あなたが大人しく叩かれるのなら落ち着いてあげるわよ!」

 

「無茶苦茶な!」

 

「無茶苦茶でもなんでいいわよ!さあ、覚悟なさい!」

 

「ひぃ~~~~~~~っ!」

 

(コツッ)

 

「……え?」

 

何かに躓き前のめりに倒れ始めた。

 

しまった、両手で中華鍋を振り回していたせいで受身を取る事が出来ない!

 

ぶつかるっ!

 

「~~~~っ!……?」

 

衝撃に備えていたが一向に体を打ち付ける痛みは来なかった。代わりに温かい何かに抱き抱えられているように感じた。

 

「……っ?!」

 

「いつつ~……大丈夫か琳?」

 

「あ、ありがとう、一刀」

 

「いいってこと。起きれるか?」

 

「ええ……」

 

立ち上がろうとしたがそこでぴたっと動きを止めた。

 

「琳?」

 

ここで立ち上がってもいいの?周りは誰も居ないわ……なら、いっそのこと……

 

「一刀……」

 

「ええ?!ど、どうしたんだ……り、琳?」

 

また一刀にもたれ掛かり上目使いで一刀を見る。

 

今は邪魔者は誰も居ない!ここで一刀を!

 

「琳……」

 

一刀も何かを察したのか優しく頭を撫でて微笑んでくれた。

 

「……」

 

「……」

 

もう少しでキスが出来ると思った瞬間だった。

 

(く~っ)

 

「……」

 

「……」

 

なんでこんな大事なときになるのよ私のお腹!

 

プルプルと自然に体が震えてくる。

 

まずい、ここで一刀に喋られると……

 

「あ、その……ごめん」

 

「っ?!」

 

この空気が読めないKY野郎が~~~!

 

「一刀……一刀……バカ~~~~っ!」

 

「~~~~っ?!かっ……はっ!」

 

「ふん!」

 

渾身の力を右手に籠めて一刀の鳩尾に一撃をお見舞いしてその場から立ち去った。

 

「……バカ」

 

「はぁ~……最低だわ」

 

あの後、生徒会の見回りもあり模擬店はクラスに任せてきた。

 

戻って来た時、ある事無いこと聞かれて精神的にも疲れた。

 

「どうかしましたか?会長」

 

「いいえ、なんでもないわ。なにか問題が起きている模擬店はあるのかしら?」

 

「それが……」

 

「あるのね、何処のクラスの模擬店なのかしら?」

 

「それが、その……」

 

「?構わないはそれが仕事なのだから自信を満ちなさい瞳」

 

「は、はひ!えっと――さんのクラスです」

 

「?ごめんなさい。聞き取れなかったのだけれど」

 

「うぅ~……か、かひゅひょひゃんのく、くひゃふでふ!……ふしゅ~」

 

「……」

 

正直何と言ったかわからないけどこの娘の慌てようからして……

 

「一刀のクラスね。確か執事喫茶だったわね」

 

「は、はひ!そうでふ!」

 

「……少し落ち着きなさい瞳」

 

「す、すいません……」

 

はぁ、さっき一刀を思いっきり殴ったせいで落ち込んでいたって言うのに、あなたは私の気も知らずに直ぐに問題を起こすのね一刀。

 

「それで?何が問題なの?」

 

「実際に見て頂ければ判ると思います」

 

「そう、なら行きましょうか」

 

「はい!あ、そっちじゃなくてこっちです会長」

 

「?一刀のクラスは上のはずよ?」

 

「そうなんですけど……」

 

「まあ良いわ。行きましょう」

 

階段は登らずに廊下を歩いていくと前から由香と悠が歩いてきた。

 

「おお!これはこれは会長さんに瞳ちゃんじゃありませんか。どうかしましたかー?」

 

「一刀のクラスに問題があるらしく今から見に行くのよ」

 

「「あー……」」

 

思い当たる節があるのか由香も悠も二人して声を出した。

 

「二人とも心当たりがあるようね?」

 

「ぐー」

 

「起きなさい、悠」

 

「おお!答えたくなく思わず寝てしまいましたー」

 

「まったく、悠、あなたという人は……とりあえず私たちもそのことで会長に意見を伺おうとしていたところです」

 

「そう、なら丁度良いわ。一緒に行きましょう」

 

「はい」

 

「はいー」

 

三人を連れて歩き出すと直ぐに異変に気がついた。

 

「あの行列はなに?」

 

それは教室とは反対側の窓際に出来ていた行列だった。

 

「あれが問題の一刀さんのクラスの行列です」

 

「……はい?」

 

今、瞳はなんと言ったの?一刀のクラスの行列?

 

ありえないわ……だって、一刀のクラスは二階よ?ここは一階でしかも4クラス分も手前よ。

 

「冗談、では無いのよね」

 

「はい、残念ながら」

 

執事喫茶……そんなにいいものなのかしら?

 

「とりあえず教室に行きましょう」

 

「そうですね。問題解決する為にも教室に行ったほうがいいでしょう」

 

由香も同じ意見らしく頷くが……

 

「あ、あの由香さんは止めておいた方が……」

 

「なぜかしら?」

 

「そ、その耐えられなくなるかも、しれませんから……」

 

「何を言っているのですか瞳は、私が早々に鼻血を出すわけがないではありませんか」

 

「は、はあ……」

 

自信満々に言う由香だったんだけど、結果は……

 

「お帰りなさいませ。お嬢様方」

 

「ぶはっ!」

 

「ぐー」

 

「「……」」

 

あえなく、一撃でノックアウトだった。悠は寝ているし。

 

「由香お嬢様、大丈夫ですか?」

 

「ふがふが……か、かひゅとさ、ぶはっ!(バタッ)」

 

「相変わらずの種馬っぷりですね、先輩はー」

 

「お、俺は!、ご、ごほん!わたくしは何もしておりませんが?」

 

「先輩の存在だけで罪なのですよー。さあ、由香ちゃん、とんとんしますよ。とんとーん」

 

「ふがふが、ず、ずびまぜん、悠」

 

「いつものことですからー」

 

由香の事は悠に任せておけば大丈夫ね。問題は……

 

「一刀、私が来た理由はわかっているわね?」

 

生徒会長の腕章を見せ付けるようにして一刀に言うと一刀は微笑みながら、

 

「承知いたしました。担当の者をお連れしますので少々お待ちください」

 

「え、ええ。わかったわ」

 

しまった、一刀の笑顔に思わず見惚れてしまったわ。

 

確かにこれならこれだけの行列が出来ても仕方が無い、か。

 

「お待たせいたしました。こちらへどうぞ」

 

「ええ、瞳は着いて来なさい。悠と由香はここで待っていなさい」

 

「は、はい!」

 

「わかりましたー」

 

「無念です」

 

一刀に案内されて中に入った時だった、

 

「ぶはっ!」

 

後ろでまた由香が耐えられなくなり倒れたみたいね。どうぜ、一刀が笑顔を振りまいたのだろうけど、面白くないわね。

 

「へー、中も意外としっかり飾り付けしているのね」

 

「恐縮でございます」

 

「その喋り方は何とかなら無いのかしら?」

 

「規則でございますゆえ。御陵謝を」

 

「なら仕方ないわね」

 

苦笑いを浮かべる一刀に肩をすかせて見せる。

 

「す、すいません!やっぱりあの行列は不味いですよね!」

 

多分、発起人なのだろう、責任者の女子が勢い良く頭を下げてきた。

 

「ええ、もう少し回転数を上げられないのかしら?それは席を増やすとか」

 

「そうしたいんですけど、男子に数が少なくてこれ以上席を増やすと対応が出来なくなっちゃうんですよ」

 

「確か、このクラスは5人居たわよね?」

 

「そうなんですけど……」

 

「何か問題でも?」

 

「それが、一人だけ休憩に行ったっきり戻ってきて無いんですよ。それで現状4人で回していて」

 

「あー……っ!んん!失礼しました」

 

一刀は思い当たる節があるのか納得したかの様に声を出した後、お客の前だと気づき慌てて仕事モードに切り替えた。

 

ふふふ♪やっぱり一刀は一刀ね。似合わないわよ。

 

「?……(ニコ)」

 

「っ?!」

 

一刀を見ていると私が見て居る事に気がついて微笑みかけてきた。

 

不意を突かれたこともあり一気に顔が熱くなってきてしまった。

 

お、落ち着きなさい。いつも見ている笑顔じゃない。なんてこと無いわよ、なんて、こと……

 

(ニコ)

 

無理!反則よ!何あの笑顔!執事服を着るだけで数倍も良くなるなんてありえないわ!

 

「あ、あの、会長さん?」

 

「はっ!ご、ごめんなさい。なんだったかしら?」

 

「えっと、私たちのクラスは出展禁止ですか?」

 

「「えええええっ?!」」

 

教室から割れんばかりのブーイングが響き渡った。

 

しかも、殺気付きと来た。

 

「あうあう!」

 

瞳は怖くなったのか一刀の袖を掴み後ろに隠れてしまったわね。

 

一刀も一刀よそうやって瞳の頭を撫でて慰めようとするから余計睨みつけられているのがわからないのかしら?

 

「出展禁止にしたら全学園の女子を敵に回しそうだからやめておくわ」

 

流石に8割以上の女子生徒を敵に回すほど私はバカでは無いわ。

 

「そうね……ん?ねえ、あの仕切りは何かしら?」

 

「えっとですね。あれは、特別接客ルームです」

 

「特別接客ルーム?」

 

「はい、男子生徒にって言っても5人しか居ないんですけど5枚、計25枚の券を渡しています」

 

「なるほど、その券を男子から貰えればあそこに招待されるってことね?」

 

「はい、誰に渡すかは男子生徒の自由にしていますし。接客してくれる執事も5人から選んでもらっています。あ、もちろん、券の販売、転売は禁止してますよ!」

 

「それじゃ、その券が全部回収できればもう少し広く使えるのね?」

 

「はい。今のところ12枚は回収出来てますから残り13枚ですね」

 

なるほど、今朝、別れ際に貰った券はこういうことだったのね。

 

「実際は20人ほど来たんですけど」

 

「あら、それじゃなんで?残りの8人は回収出来ていないの?」

 

「部屋が一つしかなくて、指名する人が……」

 

そこで一刀に目線を向ける彼女に私は納得した。

 

「なるほど、一刀が不在の時に来たってことね」

 

「はい」

 

「失礼します。北郷、指名だ」

 

クラスの男子が一刀に耳打ちをして入り口に目線をおくらせていた。

 

「ああ、ありがとう。では、お嬢様方、わたくしはこれにて失礼させていただきます」

 

「これであと12枚かなんとか今日中には20枚くらいは回収出来るかな?」

 

「そうみたいね。それにしても男子は不運ね。全部一刀に指名行っているのではなくて?」

 

「え?ああ、そうだね。殆どがそうだけど、まあ、本命には、ね?」

 

「ああ、なるほど」

 

「あ、あの会長、そ、そろそろ出ませんか?」

 

「ええ、そうね。今日はそのまま続けて構わないわ。また明日様子を見に来るわ。状況によっては営業中止にするからそのつもりで居なさい」

 

「は~い」

 

「ほら、瞳もビクビクしてないで行くわよ」

 

「は、はひ!」

 

まあ、一刀の後ろに隠れてあまつさえ頭を撫でられていたのだから見らまれても仕方ないとは思うけれどね。

 

瞳を連れて教室を出た後、それ以外問題は起きていないとのことだったので一旦解散することにした。

 

「はぁ、随分と暇になったわね」

 

模擬店の備え付けの椅子に座って店内を見つめる。

 

「まあ、15時も過ぎましたからね。あ、華澄さん休憩に行ってもいいですよ?」

 

「あら、いいの?」

 

「はい、こことか生徒会で走り回りだったじゃ無いですか。少しくらい休んだって罰はあたりませんよ」

 

「でも、昼過ぎに休憩したのだけれど」

 

「ああ。でも、直ぐに戻ってきちゃったじゃないですか。構いませんよ」

 

「そう、ありがとう。それじゃ店番をお願いしようかしら」

 

「はい!任せてください!その代わり北郷さんとの話帰って来たら教えてくださいね!」

 

「……」

 

ニコニコと笑うこの娘は私が一刀に会いに行くと思っているようね。

 

「行っておくけど、一刀に会いに行かないわよ?」

 

「えええー!なんでですか?!」

 

「なんでって……」

 

「あんなに見詰め合ってキスまでしそうになっていたのにですか?!」

 

「……え?」

 

「あ……やっば~」

 

「まさか……」

 

「っ?!ほ、ほらほら、早く行ったいった!ちゃんと片付ける前には戻ってきてくださいね!」

 

「ちょ!あなたねえ!!」

 

「はいはいはい!ほらほら、行った行った!」

 

どんっと背中を押され振り返ると、

 

「行ってらっしゃ~い!では!」

 

手を振り、走って模擬店へと戻っていってしまった。

 

「まったく、怒るに怒れなくなってしまったじゃない」

 

呆れながらも送り出してくれたクラスメイトに感謝をして校内へと向う。

 

「確か、ポケットに……」

 

スカートのポケットを探り紙切れを探す。

 

(カサッ)

 

あった……

 

ポケットから手を抜き手に握られた紙切れを広げる。

 

『執事喫茶 優先入場券』

 

本当は行くつもりは無かった。だが、

 

『お帰りなさいませ。琳お嬢様』

 

『琳お嬢様。お飲み物は何にいたしましょうか?』

 

「……はっ!ち、違うわよ。そ、そうよ。執事喫茶の回転効率を上げるためにこのチケットを使うのよ。べ、別に一刀の執事姿を見たいわけでは!」

 

「「?」」

 

「っ?!ご、ごほん!さて、行きましょうか……」

 

周りでは私を不思議そうに立ち止まり見ていたことに気がついていそいそとその場から離れた。

 

一人で妄想して、一人で赤面して、一人で言い訳をする私は周りから見たらさぞ滑稽に見えたでしょうね。

 

「それもこれも全て一刀が悪いのよ……」

 

そうよ、こうなったら苛めて憂さ晴らしを……ふふふ。

 

不適に笑いながら歩いていると、また周りの生徒が距離を置き始めていた。

 

しまった、顔に出ていたわね。

 

(ぱしぱしっ!)

 

軽く頬を叩き気持ちを切り替える。

 

「いらっしゃいませ!ってか、会長?!なんでここに!ま、まさか営業……」

 

「あら、そんなに営業停止にして欲しいのかしら?なら……」

 

「っ!そ、そんなことはないですよ!」

 

ブンブンと勢い良く首を振る姿にクスリと微笑む。

 

「安心なさい。今は客として来ているのよ」

 

「は、はぁ、そうなんですか……でも、並んでもらわないと流石に……」

 

「これでも?」

 

「こ、これは!」

 

一刀から貰ったチケットを渡すと驚きの声が上がった。そんなに驚く事かしら?

 

「ち、ちなみに貰ったのって、北郷君、ですか?」

 

「え、ええそうだけど」

 

「ち、ちなみに聞きますが指名は……」

 

「か、一刀で……」

 

「で、ですよね~。少々お待ちください~」

 

俄かに教室が騒がしくなったけど直ぐに静かになった。

 

「お待たせいたしました。琳お嬢様こちらへどうぞ」

 

「ええ」

 

教室から一刀が出てきていつものあの優しい笑顔を向けてくれた。

 

「こちらでございます。どうぞお座りください」

 

座り易い様に軽く椅子を引いてくれた一刀。

 

「本日は何にいたしましょうか」

 

「そうね。お勧めは何かしら?」

 

「そうでございますね。ダージリンとフィナンシェなどは如何でございましょうか?」

 

「ええ、それでいいわ」

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

「ふぅ~、な、なんで私が緊張しているのよ」

 

一刀が部屋から出て行くと同時に大きな溜め息を吐いた。

 

あ、あんな一刀見たこと無いわよ。

 

一度、学園内で噂を聞いたことはあったけど。まさか、これほどまでとは思わなかったわ。

 

別段、普段の一刀に慣れていたわけではない。一刀の笑顔を見るたびに胸多くが温かくなり体温も上昇していた。

 

それが今、普段着ていない執事服を着ているギャップからなのかいつも以上に意識してしまっている。

 

「今、あの笑顔は私にだけ向けられている。私だけの執事、か……ふふ」

 

それがなんだかおかしくて思わず声を漏らして笑ってしまった。

 

「お待たせいたしました」

 

(びくっ!)

 

「え、ええ。ありがとう」

 

きゅ、急に現れるんじゃないわよ。驚くじゃない。

 

「では、注がせていただきます」

 

一刀は手際よくティーカップに紅茶を注いでいく。

 

「へー」

 

その作法も何処で覚えたのか知らないけどちゃんと出来ているわね。

 

「どうぞ」

 

「ええ、ありがとう」

 

紅茶を受け取り色と匂いを楽しみ一口飲む。

 

「美味しい、随分といい茶葉を使っているのね」

 

「恐れ入ります」

 

そうだわ。ふふふ……

 

礼をとる一刀に悪戯を思いつき笑みを浮かべると一刀は何かを察したのか苦笑いを浮かべた。

 

「一刀あなたは誰の執事なのかしら?」

 

「はっ、琳お嬢様の執事でございます」

 

「主の命令は絶対。そうよね?」

 

「は、はい……」

 

「ふふふ……」

 

そこですっと手を差し出す。

 

「キスを許すわ。して見なさい」

 

「……」

 

「あら、どうしたの?主の命が聞けないのかしら?」

 

「かしこまりました。琳お嬢様……では、失礼します……ちゅ」

 

「んっ!」

 

ああ、ぞくぞくするわ。何かしら、この高揚感、もっと一刀を苛めたくなってくるわ……

 

「ふふふ、いいわ。なら次は……」

 

一刀の顔を見ると『流石にこれ以上は勘弁してくれ』と言わんばかりに苦笑いを浮かべていたけど私はそれを無視する。

 

「跪いて足をお舐め」

 

内心、胸が破裂しそうにドキドキとしていたがそれを表に出さないようにする。

 

「え、ええ?!ちょ!り、琳?!」

 

「あら、主に対して呼び捨て?いい度胸ね」

 

「うっ……も、申し訳ございません。琳お嬢様」

 

「さ、するの?しないの?」

 

右足を一刀の前に出しどうするのかをたずねる。

 

ふふふ、いいわよ。この征服感、堪らないわ。

 

一刀の戸惑っているところを見て一人胸を躍らせていた。

 

でも、少し残念な気もするけど流石に道徳的に不味いわよね。

 

「ふふふ、冗談よ……そのかわりにフィナンシェ食べさせなさい」

 

「かしこまりました」

 

それくらいならっと安堵の溜め息を吐きながらフィナンシェを一口サイズにフォークで切り分けて差し出してきた。

 

ふふふ、それで済む訳は無いわよ。一刀……

 

「あむ……あら、これも甘さ控えめで美味しいわね」

 

「ありがとうございます」

 

「ん、喉が渇いたわ紅茶を飲ませて頂戴」

 

「はっ」

 

そこで一刀がカップを手に取り、カップの底に左手を乗せて口元に持ってきたので左手を出し止めさせた。

 

「如何なさいましたか?」

 

「私は飲ませて頂戴と言ったのよ?そのままカップをつけたら火傷をしてしまうわ」

 

「え……??」

 

答えが判らず首を捻っている一刀を見て微笑む。

 

「ふふふ……判らないようね。なら、教えてあげる」

 

また、一刀を苛めたくなる衝動に駆られとんでもない要求を出してみた。

 

「あなたが口に含ませて私に飲ませないっと言う意味よ」

 

「さ、流石にそれは……」

 

「また、言葉が元に戻っているわよ?」

 

「うっ……じょ、冗談もほど程にお願いいたします。琳お嬢様」

 

そう来たか、ならば……

 

「あら、執事である分際で主に刃向かうのね?いい度胸だわ」

 

「……か、かしこまりました。琳お嬢様……では」

 

観念したのかテーブルの上にあるカップを手に取り口に含み私の横に立つ一刀。

 

そろそろね。ふふふ、一刀をからかうのも楽しいわね。

 

また、さっきの様に冗談と言おうとした。が……

 

「冗談よ。かずっんん?!」

 

え?なに?なにがどうなって……

 

「んっ、ぴちゃっ……ひょ!かひゅ、んん!……ゴクッ……ん!」

 

え?ええ?!い、今キスされてる?!で、でも冗談って言ったわよね。私!

 

「……ひゃ!こ、こひゃ、ぴちゅ……ひゃめ、なひゃい……か、かひゅひょ!……んんっ!!」

 

(ゴクンッ)

 

「ぷはっ!……はぁ、はぁ」

 

やっと一刀が離れてくれたが私はというと放心した状態だった。

 

「ご満足頂けましたでしょうか。琳お嬢様」

 

「……え?え、ええ。そうね……」

 

自分でも動揺しているのがまる判りだ。

 

だけど、さらに場を混乱に貶める状態が待っていた。

 

「……」

 

(びくっ!)

 

やっと冷静を取り戻せたと思っていたのも束の間。入り口で固まっている人影を見つけ私の動きも止まった。

 

「えっと……そろそろ、お時間ですといいに来たんですけど……お、お邪魔だったですか、ね?」

 

(ダンッ!ツカツカツカ!ガシッ!)

 

「ひっ!」

 

勢い良く立ち上がり肩を掴むと女子生徒は顔を引き攣らせた。

 

「どこから……」

 

「は、はい?」

 

「……何処から見ていたの……」

 

「え、あ、あの……その……」

 

「どこから!」

 

「は、はい!『私の足にキスしなさい』って言ったところからです!」

 

(ガクッ!)

 

なんてこと……そんなところから見ていたなんて……

 

膝を突きうな垂れる私だったがスクッと立ち上がりもう一度、女子生徒の前に立った。

 

「いい、忘れなさい」

 

「え?」

 

「忘れなさい」

 

「うっ、あ……」

 

「わ・す・れ・な・さ・い!」

 

「は、はい!わ、私は何も見ていませんでした!」

 

「よろしい」

 

「あ、あのり、琳?」

 

振り返ると一刀が汗を流しながら立っていた。

 

「一刀。放課後、生徒会室まで来なさい。いいわね?」

 

「は、はい……」

 

「なんですって?」

 

「か、かしこまりました。琳お嬢様!」

 

「なら、私は戻るわ。美味しいお茶とお菓子をありがとうね」

 

「は、はい!ありがとうございました!」

 

「行ってらっしゃいませ。琳お嬢様!」

 

二人して直立不動で挨拶する中、私は教室から出て行った。

 

ああ、恥ずかしい!

 

一刀もなに本気にしているのよ!

 

自分のことを棚にあげて一刀の愚痴を言う。

 

そ、それに、し、舌まで入れてくるなんて!

 

一刀がした行為に思わず顔を赤らめてしまうが首を振って頭から追い出す。

 

とにかく、放課後キッチリとお仕置きしないと気がすまないわ!

 

「ふふふ、覚悟して置きなさい一刀……ふふ、ふふふふふ」

 

不敵な笑みに廊下を歩く生徒たちは皆、私から遠ざかっていた。

 

放課後になり、模擬店の片付けを終わらせ生徒会室で一党を待つ。

 

(ガラガラッ!)

 

「来たわね」

 

扉を開けて一刀が入ってきた。

 

「さて、私の言いたい事、わかっているわよね?」

 

「わ、わかってるけど。でも、あれはやれって言ったのは琳だろ?」

 

「うっ、で、でも。冗談と言ったはずよ」

 

「あんな顔の前で言われたって無理に決まってるじゃないか」

 

「何が無理なのよ」

 

「そ、それは……あんないい匂いを漂わせてたら我慢できなくなるだろ。それに琳は可愛いんだから」

 

「っ!」

 

一気に顔が赤くなったが窓から入ってくる日差しのおかげで一刀には気づかれずにすんだ。

 

「な、なら一刀は可愛ければ誰でもいいのね?」

 

「そんなわけ無いだろ?それじゃ無節操になるじゃないか」

 

「あら、だれかれ構わず笑顔を振りまいて女子を虜にしている癖によくいうわね」

 

「?別に女の子から好かれたことなんてないけどな?」

 

「……はぁ」

 

「な、なんで溜め息つくんだよ」

 

こいつは……一体どんだけ鈍感なのよ。

 

まあ、態々気づかせてあげる義理もなし、か。

 

「なんでもないわよ。それより、あの後何にも起きなかったでしょうね?」

 

「あ、ああ。見られたクラスメイトの女子には顔を隠して逃げられてるけどそれくらいかな?」

 

まあ、あの現場を見てしまってはそうなるのも仕方が無いわよね。

 

「はぁ、まあこの件はもういいわ。それで、風紀委員の仕事はどうだったの?」

 

「ああ、今日一日を終わって対した事件は起きてないよ。ブレーカーが落ちたくらいで目立った混乱は無かった」

 

一刀は鞄の中から報告書を取り出し手渡してきた。

 

「……ちょっと、また誤字があるじゃない」

 

「え?!ど、どこだ?」

 

「まったく、少しは進歩「それどれ……」っ?!」

 

報告書に目を通していると横から一刀の顔が覗きこんで来たから思わず固まってしまった。

 

「あ、本当だ。すまん。今から直すよ」

 

「あっ……」

 

一刀が報告書を私の手から引き抜き修正する為に机に座った。

 

何よ。人のこと可愛いって言っておきながらこういう時は何もしないんだから……

 

少しふて腐りながら報告書を直している一刀を見つめる。

 

(カタッ)

 

席から立ち上がり一刀の横に立つ。

 

「よし、これでいいだろ!ん?琳?どうかしたのか?」

 

「……」

 

「り、琳?ど「いいから、黙っていなさい」あ、ああ……」

 

(スッ)

 

手を伸ばし一刀の頬に添える。

 

「……お返しよ」

 

「え?んん?!」

 

執事喫茶でしたキスっとまでは行かないが一刀の口にキスをした。

 

「……り、琳」

 

「やられたらやり返す。それが私よ」

 

放心している一刀にニヤリと笑うが内心ではドキドキだった。

 

「……ぶはっ!」(バタッ!)

 

「「え?」」

 

何処からとも無く声と倒れる音が聞こえ後ろを振り向くと、

 

「おやおや、由香ちゃん、どうかしましたかー?」

 

「ふ、ふがふが……」

 

「ゆ、由香!それに悠も」

 

「おお?これはこれは、お邪魔だったですかねー?」

 

「そんな事無いわ。それで、悠たちも報告しに来てくれたのかしら?」

 

「はいー。その前に、由香ちゃんトントンしますよ。トントーン」

 

「あ、ありがとうございます。悠」

 

「いえー。それでは報告なのですよー」

 

「ええ、聞きましょう」

 

「空いた時間で巡回していましたが大きな問題もなく平和そのものでした」

 

「そう、ありがとう」

 

鼻血から復活した由香が報告してくる。あれだけ鼻血を出しておいて貧血にはならないのかしら?

 

「それとこれは噂なのですがー」

 

「何かしら、悠?」

 

「はいー。なんでも女子生徒が男子生徒を無理やり足にキスをさせたとか」

 

「「ぶーっ!」」

 

「おやおや?如何なさいましたか会長、それに先輩も」

 

「い、いいえ、なんでもないわ。続けて頂戴」

 

「あ、ああ。続けてくれ悠」

 

「はいー。そのあと飲み物を飲ませると証し、キスをする行為に及んだとか」

 

「……」

 

まさか、見ていたんじゃないわよね?内容が的確すぎるわよ!

 

「そして、そのまま行為に及んだとか」

 

「及んで無いわよ!」

 

「おおっ?!」

 

「な、なんでもないわ。それで、その噂は何処から流れたのかしら?」

 

「さあー、悠にもわからないのですよー」

 

「そ、そう。所詮噂。直ぐになくなるでしょう。他には?」

 

「特にはないです。こちらが報告書になります」

 

「ありがとう……?瞳はどうしたのかしら?」

 

「まだ、クラスの片付けが終わらないらしく報告書だけ受け取ってきました」

 

「わかったわ。それじゃ、今日はもう帰って良いわよ。明日はご父兄や他校の生徒も来るわ、気を引き締めて頂戴」

 

「はい」

 

「はいー」

 

「はぁ~」

 

生徒会室から出て行くのを見届けて軽く溜め息をつく。

 

「見られてたのかな?」

 

「さあ?でも、あの場には居なかったのだから。それに本人も噂と言っていたのだから信じるしか無いのではなくて?」

 

「まあ、そうだけど……」

 

「ほら、戸締りするのだから早く出て頂戴」

 

「あ、すまん!」

 

生徒会室の戸締りをして並んで廊下を歩く。

 

「今日は楽しかったわ」

 

「ああ、俺も楽しかったよ」

 

「でも、明日が一番大変なんだからしっかり風紀委員の仕事も全うしなさいよ?」

 

「ああ、わかってるさ」

 

笑顔で答える一刀に私も笑顔で答える。

 

色々とあったが、とても充実した一日だったわ。これも一刀のおかげなのかしらね?

 

横を歩く一刀を見上げる。夕日に染まった顔はとても優しい顔をしていた。

 

「……」

 

無性に手を繋ぎたくなりそっと一刀の手を取った。

 

「琳?」

 

「……暫くいいでしょ」

 

「ああ」

 

一刀は笑顔で頷いてくれた。

 

この幸せな時間がいつまでも続けばいいのにと空を見上げながら思っていた。

 

つづく……

琳「学園祭一日目後編如何だったかしら?今回は華澄琳が担当するわ」

 

葉月「ども、葉月です……あ、あの琳さん?そろそろ許して頂けないでしょうか?」

 

琳「あら、結構お似合いじゃない」

 

葉月「……あ、頭に血が上ってのぼせそうです。どうか降ろしてください琳様!」

 

琳「仕方ないわね。あと数話このまま放置しようかと思ったのだけれど」

 

葉月「死んじゃいますよ!」

 

琳「わかったわよ。面白く無いわね」

 

葉月「た、助かった……って、なぜ。絶を持ってるんですか?」

 

琳「?ああ、これ?もちろん縄を切るためよ?」

 

葉月「い、いや。なんで持ってるんですか?」

 

琳「?以前、夏休みに別荘にあったのを持ってきただけだけど?」

 

葉月「ふ、普通縄って解きませんか?」

 

琳「面倒だし。いいじゃない、えい♪」

 

葉月「どわっ!……いつつ、『えい♪』じゃないですよ『えい』じゃ!ご丁寧に語尾に『♪』までつけて!」

 

琳「うるさいわね。いいから話を進めなさいな」

 

葉月「うぅ~、理不尽だ……さて、今回のお話は如何だったでしょうか?」

 

琳「なんだか私が私じゃな無いみたいだったわね」

 

葉月「確かにとりあえず琳に苛められる一刀を書きたかったんですが事の外過激になっちゃいましたかね?」

 

琳「まあ、あれくらい許容範囲ではないかしら?ダメなら管理者が掲載中止しろとか言ってくるんでしょうから」

 

葉月「そうならない事を祈ります。さて、次回はMy Favoriteキャラで居る愛紗です!」

 

琳「可愛そうに愛紗も一刀の毒牙に掛かってしまうのね!その前に私が美味しく……ジュル」

 

葉月「……すでに無印で一刀に頂かれちゃってますけどね」

 

琳「ちっ」

 

葉月「今舌打ちしましたね?!」

 

琳「気のせいよ」(チャキッ)

 

葉月「はい、気のせいです!」

 

琳「それで?愛紗の話はどうなるのかしら?」

 

葉月「まだ決めてません!」

 

琳「でも必ず一刀の執事喫茶には行かせるのよね?」

 

葉月「それは勿論!それが今回の目的の一つですから!」

 

琳「もう一つは?」

 

葉月「一刀からキスをさせる!」

 

琳「な、なるほど。それでこ、紅茶を飲ませながらキスさせたのね」

 

葉月「はい!甘いひと時は如何だったですか?」

 

琳「~~~っ!い、一々聞いて来るんじゃないわよ!」(ブオンッ!)

 

葉月「ぬおぉぉ!あ、危ないじゃないですか!危うく首が飛ぶところでしたよ!」

 

琳「う、うるさい!あ、あああんたが恥ずかしい事を言うからでしょうが!」

 

葉月「横暴な!と、とにかく落ち着いてください!次回予告が出来ないじゃないですか!」

 

琳「次回予告なら葉月の首が飛んだ後に私がしておいてあげるわ。だから安心して逝きなさい!」

 

葉月「いやだ~~~~っ!と、とにかく次回は学園祭二日目前編です!次回のゲストは愛紗です!」

 

琳「待ちなさい!」

 

葉月「待てと言われて待つバカは居ませんよ!では、皆さん次回までごきげんよう~~~!」

 

雪蓮「私の出番が無かったじゃないの!葉月っ!待ちなさい!」

 

葉月「ちょっ!雪蓮は暫く休みって連絡入れたじゃないですか!」

 

雪蓮「そんなの知らないわよ!この話は私が主役なんだからーーーーっ!」

 

葉月「追っ手が二人とかマジありえな~~~い!」


 
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