百合「それじゃ…これで当分お別れね」
雛里「百合お姉さん……」
星「一成、短い間だったが、楽しかったぞ」
一成「……うん」
盧植先生のところに無事に着いて、百合お姉さんは私塾に、今まで護衛に買って出てくれた星お姉さんはまた放浪をしに行くことになりました。
星「うむ?一成は私たちと逸れることがあまり悲しくないようだな」
一成「そんなことはないよ!でも…でも大丈夫だよ。きっとまた会えるから。もう一生会えないようにそんなに悲しみながらわかれるのは嫌なだけ。一緒に居る間楽しかったから、わかれるときも笑いながらさようならするの」
星「そうか…確かにそうだな。一成とはまた会える気がする」
一成「うん」
雛里「百合お姉さん……」
百合「…はい、おいで」
雛里「百合お姉さん!」
一成「雛里お姉ちゃん、百合お姉ちゃんに抱きついて泣いてる…」
星「ふむ…やっぱこういうお別れの時はもっとああして雰囲気がないと…よし、一成、私の胸の中で泣いていいぞ?」
一成「ふえ?」
雛里「!!っ」
百合「雛里ちゃん?」
雛里「も、もう、大丈夫、です……」
百合「??」
百合お姉さんと星さんとそうやって離れて、私たちは二人で盧植先生の部屋で話をしていました。
「どうぞ」
「あ、ありがとございます」
私たちを連れてきてくれた玄徳さんが、お茶を淹れてくれました。
でも、何でこの人がずっとここに…
「大体の話は水鏡の手紙と子瑜の話で把握してはおるつもりじゃが…正直、儂は天の御使いというものには興味はおらん」
「「!!」」
盧植先生が玄徳さんが居る場で天の御使いっていうことがを話したことに、私たちは驚きました。
「え?先生、何の話ですか?」
玄徳さんは話が見えないようなぽかんとした顔で問い返しました。
「…まぁ、良い。玄徳は儂が大切にする弟子じゃ。そんなに悪うものではないから安心しても良い」
「でも……」
「あの、盧植先生」
一成ちゃんが口を開けました。
「私も、別に、自分が天の御使いとか本当にそんな胡散臭いものなのかは関係ないです。ただ、私は見ました。この世界の人たちが苦しんでいる姿を…私が見たのって、この大陸で行われていることのほんのちょっとですけど、それでも私は思いました。この人たちを助けてあげたいって。この人たちの幸せを取り戻してあげたいって」
「……」
「だから、私を預かってください。ここで、盧植先生に教えをもらえるようにしてください」
「一成ちゃん……」
一成ちゃんの口からそんな話が出るとは、正直思いませんでした。
一成ちゃんは、ここ一ヶ月の間、すごく成長したみたいです。
…私も負けないようにしないと。
「……その心掛けだけはよしとしよう。言ったとおり、儂は天の御使いとかそういうものはともかく、お前たち二人を歓迎する。何より最近の若者たちの中じゃ、あまり育ち甲斐がない奴らが多くてのぉ。水鏡の話がいなかったら、このまままた仕官でもしようかと思っていたところじゃからの」
「あはっ、先生またそんなこといって……」
玄徳さんが呑気に返しましたけど、私は盧植先生の話が本当だったと思います。
「じゃがまぁ、こんなに新しい子たちも来てくれたわけじゃ。もうちょっと楽しむことも悪くない……塾の詳しいことは、ここにいる桃香に聞くと良い」
「よろしくね、二人とも」
「は、はい…」
「はい」
盧植先生はともかく、この人は信じても大丈夫なのかな。
悪い人とは思えないけど、でも……
「あのね、鳳統ちゃんって言ったっけ」
「は、はい」
盧植先生の部屋から出てきた後、塾で私たちが居る部屋に案内してくれていた玄徳さんが私に話をかけました。
「あのね、はじめに会う人にこういうのは何か変かも知れないけど……
一度だけでいいからぎゅってしてみたらだめかな」
「は、はい?」
いきなりこの人は何を……
「あぁ……」
一成ちゃんも側で口をぽかんと開けて居ます。
「一度だけでいいから、んもう、鳳統ちゃんかわいいから抱きしめて見たいの」
かわっ!?
「あわわ……」
「あ~ん、やっぱかわいいよぉ」
「ひゃっ」
そしたら玄徳さんは私のことをいきなり抱きつきました
「あわっ!あわわ!あわわ!!」
一成side
「あぁ……」
「あわっ!あわわ!」
雛里お姉ちゃんがあんなに慌てるのって久しぶりに見たかも。
私もすごく驚いてるんだけど。
そりゃあ雛里お姉ちゃんはかわいいし、私もそう思うし、でも普通そんなはじめに会ったに人にまでする?
「や、やめてくださいぃぃ」
「ん~もうちょっとだけ」
しかも遠慮なし。
………
あのぉ、雛里お姉ちゃん、もう少し強く拒否したほうがいいよ?
「あわわ……」
「ふふ~ん」
………いつまでやってるんだよ。そろそろ部屋に行かないと…
「ふふ~ん」
いや、一応塾の先輩だし?劉備だし?お姉さんだし?無礼なことは言いたくないよ?
いい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろ
雛里side
「もういいでしょ?」
「うえっ?あぁっ」
「一成ちゃん」
一成ちゃんが、私に抱きついていた玄徳さんを無理矢理離せました。
「…そろそろ行きましょうよ」
「か、一成ちゃん、どうしちゃったの?」
助けてくれたのは嬉しいけど、口調がちょっと変わったんだけど…怖く
「何が?私はぜーんぜんいつも通りだよ?」
か、一成ちゃん。
「ご、ごめんね。一成ちゃん」
玄徳さんもさすがに空気読んだみたいです。
この重たい空気。もしかして一成ちゃんって私が玄徳さんに抱かれてやきもち…
「一成ちゃんも抱いてほしかったんだね?」
「はい?」
一成ちゃんがきょとんとしてる間、
ぎゅぅー
「んぅ!!」
「あわわ!」
「二人ともかわいいよぉ。一成ちゃんもぎゅっとしてみたかったの」
今度は玄徳さん、一成ちゃんを抱いてます。
「ちょっ!…胸で息苦しい!」
一成ちゃんが玄徳さんの胸に挟まれて何か叫んでます。
……ああ、そうなんだ。
私が抱かれてやきもちしたんだ。
………私に、
「ふふ~ん」
ぎゅぅー
しかし、この人、一体いつまでこうしてるつもりなんでしょうか。
そろそろやめないと一成ちゃんが呼吸できなくて死んでしまうかも知りませんが…
その何も使えそうにないほどでかい胸は実はそういう用度だったんですね?人殺しのためだったんですね?
っていうか一成ちゃんもそんなに苦しいならもうちょっと激しく拒否してもいいんだよ?
「………」
もう声すら聞こえない。
……
「はぁあん♡」
いい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろいい加減離れろ
「ひどい目にあった……」
やっと部屋に案内されて落ち着いた一成ちゃんの口から出た言葉でした。
部屋は二人一室で、私たち二人で使うことになりました。
知らない男の人と一成ちゃんを一緒に部屋に入れるよりはマシです。
でも、今はそれところじゃなくてですね。
「そうにも見えなかったけど」
「?どういう意味?」
「抱かれて嬉しそうにしてたし…」
「むっ、そんな雛里お姉ちゃんだって嬉しくて頬赤くなってたでしょ?」
「あわっ?わ、私は息ができなくて赤くなってただけだよ」
「私も同じだったんだもん。そこでいきなり抱きつかれるとは思わなかったんだから…」
「……」
「……」
何か、納得いか
一成side
なくイライラしてくる。
何だよ。先に抱きついたの雛里おねえちゃんでしょ?私は不意打ちだったし。
それに、それに……
「私がしたいと言ったらさせてあげないくせに」
「あわわ!」
「この前私が、雛里お姉ちゃんに抱きつこうとした時は、びっくりするほど早い反応で離れたのに」
「あ、あの時は、一成ちゃんがいきなり走ってくるからびっくりしちゃって…それに、別に一成ちゃんがしてほしいというんだったら、私は別に構わないよ?」
「え?」
それって本当?
聞いてないよ、そんなの?
「じゃあ、今からでもいい?」
「今!?ここで?」
「…嫌?」
「嫌とかじゃなくて………いいよ」
「ほんと?」
やったー!
雛里side
「あわっ!」
一成ちゃんはいいよって話が終わった瞬間、私の胸に飛び込んできました。
「ふふーん♪」
「だからそんなに急にしないでよー、…もう……」
ちょっと弱くしたら甘えるんだから。
「…ねぇ、雛里お姉ちゃんは私が抱きつくと嫌なの?」
「……嫌じゃないっていったでしょ?」
「よかった」
一成ちゃんが嬉しそうに、先よりさらに私にぎゅってしてきました。
気が済むまでこうしてあげたほうが良さそうです。
……嘘です。私ももうちょっとこうしていたいです。
がらり
「あわわっ!」
いきなり引き戸が開かれて、私はびっくりして一成ちゃんのことを押しました。
「うわっ!」
寝台の上だったので、一成ちゃんはそのまま床に落ちちゃいました。
「二人とも、おなかすいてない?そろそろお昼だから食べにいこっ?」
玄徳さんがご飯の誘いに来たみたいです。
「は、はい、行きます。ちょっと待ってください」
「うん、じゃあ外で待ってるね」
がらり
「いたたた……いきなり押し付けるなんてひどいよ、雛里お姉ちゃん」
「ご、ごめん、驚いちゃって…」
「うぅ……」
一成ちゃんは不満そうな顔をしながら立ちました。
「行こう?ご飯食べに行くんだよね」
一成ちゃんはそういいながら、寝台の上の私に手を出しました。
「うん、そうだね」
私もその手につかまって寝台から降りてきて引き戸に向かいました。
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盧植先生の塾に、双子のように同じ帽子をかぶった子たちが堂々と到着しました。
そして、桃香KY