No.167397

真・恋姫†無双 黄巾√ 第一話

アボリアさん

黄巾党IF√ 第一話です
予想以上に、黄巾√を楽しみにしてくれるという方が多くて驚きました
その方達の期待に少しでも添えられるよう頑張りたいと思います

尚、アイ〇スを期待して下さった方には申し訳ありませんが、自分は音楽に詳しくない為、一刀Pの活躍は少ないと思います

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2010-08-22 09:13:30 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:11550   閲覧ユーザー数:9492

 

 

体が、物凄くだるい。

 

 

俺、こと北郷一刀は、まどろむ意識の中そんな事を考えていた。

しかし何故だろう? 昨晩はちゃんと学園の寮に帰って寝ていたはずだ。こんなにも体がだるくなる理由なんか、見当たらないのだが……

 

「……ちょ……さいよ……」

 

理由を考えていると、何か、女の子の声が聞こえたような気がした。

……男子寮で、女の子の声?

 

「まったく……どうし……さん?」

 

聞き間違えとも思ったのだが、先ほどと違う別の女の子の声が聞こえてきたので、恐らく聞き間違いでは無いだろう。

すると、なんなのだろうか……と、考えた所で、恐らく自称心の友な悪友、及川が勝手に部屋に入ってきて、テレビでも見てるんだろうという結論に至った。

 

「もう……なったら!!」

 

だったら、別に起きてやることも無いか。勝手に入ってきて、勝手にごそごそやっているあいつに付き合ってやる義理も無い。

そんな事を思いつつ、俺は未だにだるい体を休める為に、眠りに落ちようと……

 

 

 

「いい加減、起きろーーー!!」

 

「ひでぶっ!?」

 

 

 

ガツンッ!!という物凄い衝撃が突然俺の頭を襲い、眠りに落ちようとしていた意識が一気に覚醒した。

 

「痛ぇ!?なんだ一体!?及川か?及川なのか!?てめえ……って、え?」

 

 

 

あまりの痛みに飛び起きた俺の視界に、入ってきた光景は、慣れ親しんだ寮の部屋でも、悪戯が成功したとばかりに笑う、悪友の及川の姿でもなく

 

 

 

見渡すばかりの荒野と、俺の方を見て驚く、三人の女の子の姿だった

「な、なによ、やっと起きたかと思えば、いきなり大声上げて!?」

 

三人の中の一人、青髪の強気そうな女の子がおっかなびっくりといった風に話しかけてくる。

 

「もう、ちいちゃん。いくらなかなか起きないからって言っても、蹴ったりしちゃ駄目だよ~」

 

「……ちい姉さんが蹴る前は、天和姉さんも囃し立ててたでしょう?全く……」

 

残る二人、桃髪の子と眼鏡の子がそんな事を言っていたが、俺としてはイマイチ現状が掴めない。……ただ、先ほどの衝撃が青髪の子の犯行だというだけは分かったが。

俺は混乱と痛みでぐちゃぐちゃになっている頭で考えたが、まあ、わからない事を考えていても仕方ない、という結論に達した為、三人に話しかけてみることにした。

 

「え、っと、すいません。ここ……何処?」

 

初対面と言う事で、できる限りにこやかに話しかけてみた。……のだが

 

 

「……え?まさか、ちいの蹴りで記憶喪失になっちゃったとか?」

 

「あ~、ちいちゃん、いけないんだ~」

 

「……どうしようか。いっその事、何も知らない振りして立ち去るとか……」

 

 

……対する三人は、集まってこそこそとそんな事を言いつつ、哀れみの眼差しを向けてきたのだった。……ってか、最後のは、最低でも相手に聞きかれたら駄目だろ。

 

「いや、記憶喪失とかじゃ無いぞ?確かに、何でこんな所で寝てたのかは覚えが無いけど、それ以前の記憶ははっきりしてるし」

 

そう、寝る前までの記憶ははっきりしているのだ。

朝起きて、フランチェスカに登校、退屈な授業を眠気と戦いながら聞いて、学校が終わるとあの馬鹿と遊びに行って、疲れて帰ってくるとそのままベットに横になって……つまり、ありふれた一日を過ごしたはずだった。

 

「……悪いけれど、私達も流星が落ちたのを見て、ここを通りかかっただけなの。だから、貴方が何でこんな所で寝てたかは分からないわ。寧ろ、こっちが聞きたいくらいよ」

 

「そうだよね~。よく野盗に襲われなかったね」

 

「ホントよね。見つけたのがちい達で、幸運だったわね」

 

そういう三人達だったが……野盗?そんなのが日本に居るわけ……

「まあ、現在地だったら教えられるけれど。ここは荊州、新野よ。もっとも、その中でも片田舎ではあるけれど」

 

「けいしゅう?」

 

けいしゅう……荊州か?確か、中国にはそんな地名があった気がする。

 

「ってことは……もしかしてここ、日本じゃない?」

 

俺の言葉を聞いて、「日本?」っと首をかしげる三人。

 

「聞いたこと無い地名ですね……私たちは冀州の出身なんで、ここよりも南、交州や揚州、益州の方はあまりくわしくないんだけど」

 

「あ、もしかして、長安や洛陽みたいな都の方だったりする?キラキラした服着てるし、もしかして貴族!?」

 

「え~、それは無いでしょ姉さん。何で貴族がこんな所に倒れてんのよ」

 

「あ、それもそっか」

 

……冀州とかの名前はともかく、長安が都?確かに発展していないわけではないと思うが、普通なら北京とかが出てくるんじゃないか?

というか、都やら、州という呼び方やら、貴族やら、やたらと時代錯誤な気が……

 

っと、そこまで考えて、三人の会話に出てきた地名を総合すると、俺の中にある仮定が立ってしまった。

だけどそんな事があるわけ無い、と思いつつ、祈るように聞いてみた。

 

「え~、っと、今って、西暦何年?まさか、漢の時代とか、いわないよね?」

 

俺がそういうと、眼鏡の子が訝しげな表情をしながら、もっとも聞きたくなかった答えを

 

 

 

 

 

「せいれき?というのは分からないけれど、漢王朝の時代で間違いないわ。当然でしょ?」

 

 

 

 

 

 

そう、きっぱりと、言い放つのだった。

 

 

 

「……ええぇーーー!?」

その後、三人から詳しく話を聞かせてもらったのだが、どうやら今は本当に後漢末期の時代らしい。

 

詳しく言えば、世の中が乱れ始めた頃……まだ黄巾党みたいな大規模な叛乱こそ起こっていないものの、漢の腐敗が民の生活にまで及び、賊などが跋扈し始めた頃のようだ。

 

「……それで、貴方は千八百年後の未来、大陸から少しはなれた『日本』という国から来た、というわけですか」

 

「ああ、そうなると思う……もっとも、こういっている俺自身、未だに信じられないんだけどね」

 

俺の話……どうやら未来からタイムスリップしたようだ、という話も一応したのだが、眼鏡の子は明らかに訝しげな、真偽を見極めようとするような目をしていた。

 

「……貴方自身でもそうなんだし、はっきり言わせて貰うけれど、全く信じられない話ね。でも、貴方の服や持ち物は見た事も無いようなものだし……」

 

そうやって眼鏡の子と話し合っていると、後ろから声が聞こえてくる。

 

「ちょっと、ちい達を置いて話を進めないでよ!!」

 

「お姉ちゃん、難しい話はよくわかんないし、そんなのどっちでもいいでしょ~?」

 

……どうやら、二人には信じる、信じない以前に話すらよく伝わっていないようだ。

 

「まあ、そっちの二人の言う事も分かるし、確かに証明が出来たとしてもだからどうなるって訳じゃないんだけどね」

 

俺がそう言うと、眼鏡っ子も同意見だったのか、嘆息しながら言う。

 

「はぁ、それもそうだけれど。……それで、もし貴方の言う事が本当だとしたら、これからどうするんですか?」

 

「どうするって……どうしよう?」

 

そう聞かれ、俺は返答に困ってしまう。

何故この時代に来てしまったのかは全く見当が付かないし、どうやったら帰れるのかも分からない。

それどころか、この時代で生きていく事も、土地勘も金銭価値も無い状態では正直難しいかもしれない。

ホントどうしようか……と、俺が途方に暮れていると、桃髪の子がある提案をしてくれた。

 

「ねえねえ、行くアテが無いんだったら、私達と一緒に来ない?」

 

「え?」

突然の提案に驚く俺だったが、彼女は構わず続ける。

 

「私達、大陸を旅する歌手なんだけど、女の子ばっかりの旅って言うのも不安だし、ちょうど荷物をもってくれるような付き人が欲しかったんだよね~。それに、顔も結構好みだし♪」

 

「あ、天和姉さん、名案!!顔はどっちでもいいけど、荷物持ちができれば旅も楽になるしね。人和はどう?」

 

そういって眼鏡の子に話を振る二人。

対する眼鏡っ子は、深く、嘆息しながら答えた。

 

「……はぁ~、姉さん達、勝手に話を進めないの。この人も困ってるでしょう?」

 

「いや、まあ、できる事ならそうしてもらいたいくらいだけど……もちろん、無理にとは言わないけど」

 

そういって、恐る恐る聞いてみる。

 

この世界から帰れる保証も無い今、俺としては彼女達の提案はこれ以上無いぐらいに魅力的ではあるが、嫌がっているのなら無理して着いて行くのも違うと思う。

だが、眼鏡っ子はこちらを一瞥すると、こう答えてくれた。

 

「貴方が嫌でないのなら、私としては構わないわ。女三人旅をするにも物騒な世の中だし」

 

「え、っと……いいのかな?自分で言うのもなんだけど、現状では俺って結構怪しい奴だと思うんだけど……」

 

「本当に怪しい奴なら、そんな事は言わないでしょう?それに話している限りでは危ない人間でもなさそうだし、こんな所に一人で残していく、って言うのも目覚めが悪いしね」

 

「じゃ、けって~い♪」

 

「んじゃ、荷物持ち宜しく~……え、っと……」

 

そこまで言って、言葉に詰まる青髪っ子。

 

「……あ、まだお互い、自己紹介もしてなかったね。俺は北郷一刀って言うんだ。宜しく」

 

「変わった名前ね。姓が北、名が郷、字が一刀……でいいのかしら」

 

俺の名前を聞いて、疑問に思ったのか眼鏡っ子が聞いてくる。

そういえば、この時代では二文字の姓名なんて珍しいだろうし、字もあるものだと思っているのだろう。

 

「俺の居た世界には字は無いんだ。姓が北郷、名が一刀。これだけだよ」

 

「え?それじゃあ、真名も無いの?」

 

「真名?」

 

聞きなれない単語だったので聞き返す。

 

それで、真名について説明してもらったのだが、真名とは自分が信頼した相手にしか託さない、大切な名だという。

 

「へぇ、そんな名前があるんだ」

 

それならば、俺にとっては一刀、と言う名前が真名になるのかもしれない。

そんな事を考えていると、桃髪っ子が「話が逸れたけど」と前置きをして言った。

 

 

「私は張角。真名も、一刀なら天和って呼んでもいいよ~」

 

 

「ちいは張宝。ちいはまだ、心から信用したわけじゃないけど、姉さんが許すなら、地和って呼んでもいいわ!」

 

 

「張梁。姉さん達が許すなら、人和って呼んで。宜しく、一刀さん」

 

 

三人揃って、自己紹介してくれるのだが……俺は、呆然としてしまっていた。

 

「あれ?どうしたの一刀?」

 

「あ、もしかしてちい達の名前を聞いて、光栄のあまりに言葉を失っちゃったんじゃない?」

 

「そんなわけ無いでしょ。いくら大陸一の歌い手を目指しているって言っても、私達はまだまだ無名なんだから……」

 

何か三人がいっているようだったが、俺はそれどころじゃなかった。

 

張角、張宝、張梁……俺が知っているのは、三人の兄弟だったはずだけれど、後漢末期という時代に、その名前を持つ姉妹。

 

もしかしなくても、今後の黄巾の乱の中心人物、太平道の教祖達……!?

 

 

 

 

 

「え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇー――――!!!」

 

 

 

 

 

俺の、今日二度目の絶叫が、蒼天の空に木霊したのだった……。

 


 
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