~城内・一刀の部屋~
『一刀と一姫、双子の兄妹』
一姫は城に運ばれ、一刀の部屋で寝かされていて、一刀は枕元でそんな彼女に付き添っていた。
「北郷、この娘は本当にお前の妹なのか?」
「ああ、俺の双子の妹だ」
秋蘭の問いに答えると春蘭が怒鳴って来る。
「双子だと!馬鹿を言え、お前の妹がこんなに可愛い訳がないであろう!!」
「そうよそうよ!!」
案の定、桂花もそう言ってくる。
「でも言われてみれば何処となく似ている気も」
「お兄ちゃんの妹なら鈴々の新しいお姉ちゃんなのだ」
「ははっ、そうだな」
俺が一姫の額に浮かんでいた汗を拭いていると桂花が突然叫んだ。
「分かりました華琳様!!」
「いきなりどうしたの、桂花?」
「北郷は偽物だったんです!!」
「は?」
何だ?コイツは突然何を言い出すんだ。
「この方こそが真の御遣い様だったんです。この美しさ、そして日の光を受けて眩く光る服、間違いありません!!」
「……いや、服は同じ素材なんだが…」
「言われてみれば」
「うおーーい!!華琳さん。何、同意しようとしてるんですか?」
俺は反論しようとしたが桂花は追撃して来る。
「黙りなさい、この精液袋!!一体いつの間に入れ替わったのよ!?」
「そんな器用な真似が出来るか!!」
俺が怒鳴り声を上げると。
「う、うう~ん」
ようやく一姫が目覚めた様だ。
「はわわ、お目覚めになられたようでしゅ」
目を開き、キョロキョロと当たりを見回した後呟いた。
「……知らない天井だ…」
………まあ、こう言うお約束が好きだったからな。
「大丈夫ですか?」
月が柔かな笑顔で一姫に話しかける。
「えっと…貴女は、貴女達は誰?…ここは何処なの?…私は一体?……!!あっ!!」
周りを見回していた一姫と目があった俺は、少し引きつった笑顔で手を掲げる。
「よ、よお…久しぶりだな一姫」
「お、お、おに…い……」
呆然としていた一姫だが、その瞳は徐々に潤んできてやがて涙が零れて来た。
一姫は寝台から飛び出し、一刀に飛びかかり一刀はその勢いを殺しきれず、後ろに倒れる。
勿論、一姫が怪我をしない様に抱き抱えるのは忘れない。
「お、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃーーんっ!!う、うわあああーーーーん!!」
一姫は一刀にしがみつき、その胸の中で思いっきり泣きだした。
「ど、何処に、何処に行ってたのよーー!!心配したのよ、さ、寂しかったんだがらーーー!!」
「そうか…心配かけてゴメンな」
俺は一姫の背中を抱いて、頭も優しく撫でてやる。
一姫は俺の胸にじゃれつく様に頬を擦りつけてくる。ここまで甘えてくる一姫は久しぶりだな。…まあ、無理もないが。
「お兄ちゃん、もう何処にも行かないよね?」
「いや、その…行くも行かないも、どっちかと言うとお前がこっちに来たんだがな」
「へ?どう言う事?」
「この世界はな、俺達が知っている歴史とはだいぶ違うけど三国志の世界なんだよ」
「三国志の?」
小首を傾げて?マークを浮かべる一姫だが、そこで桃香が声をかけて来た。
「あ、あの~、ご主人様。そろそろ私達の事も紹介してほしいな~、なんて」
「そうね、まずはそこから始めましょう」
華琳もそう言って話を始めようとするのだが、一姫が俺を抱き締める力は段々と強くなっていく。
「お、に、い、ちゃ、ん……ご主人様って何?何プレイ?」
「お、落ち着け……落ち着いて下さい………ちゃんと…説明しますから…」
そう言うとようやく力を緩めてくれた。…もっとも抱きついた手は離してくれなかったが。
ああ、皆の視線が痛い……
「なるほど、つまりお兄ちゃんは天の御遣いとして劉備さん達と一緒に乱世を戦い抜いて三国同盟を成し遂げた訳なのね」
「まあ、そう言う事だ」
「自分で言うのもなんだけど、こんな荒唐無稽な話を随分あっさりと信じるのね」
そう言う華琳に一姫はこれまたあっさりと答える。
「お兄ちゃんが嘘を付いてるかどうかなんて私には簡単に解るもん。嘘を付いてない以上、信じるしかないじゃない」
「ほほ~、妹君様はお館様の事を随分と信用してらっしゃるようですな」
「え~と、その妹君様っていうの堅苦しくてなんかやだな。普通に一姫でいいわよ」
「ならば私の事も真名で桔梗とお呼びくだされ」
「真名?真名って何?」
その質問には華琳が答える。
「真名と言うのはその者をあらわす真の名前、例え誰であろうとも汚す事を許されない聖なる名前、言って見れば私達の誇りその物よ」
「そうなんだ…」
「ええ、だから私の真名も貴女に預けるわ。これからは私の事は華琳と呼びなさい」
「いいの?会ったばかりの私にそんな大事な名前を預けても」
「私達は一刀を信頼してるわ。そして貴女も一刀を信頼し一刀も貴女を信頼している。真名を預ける理由はそれだけで十分よ」
「じゃあ、私も。私の事は桃香って呼んでね、よろしく一姫ちゃん」
「私の事は愛紗とお呼びください。よろしくお願いします、一姫様」
「えっとね、鈴々は鈴々っていうの。よろしくなのだ、一姫お姉ちゃん」
「はわわ、わ、私の事は朱里とお呼びくだしゃい……噛んじゃいました」
「あわわ、わ、私は雛里と申しましゅ……私も噛んじゃったよ」
……な、何…この小っこくてカミカミな女の子達は……だ、抱きしめたい…
「ワタシは焔耶と申します!!よろしくお願いいたします!!」
「よ、よろしくって……近い近い!!」
焔耶は真っ赤な顔で一姫に詰め寄る。まあ、やはりというか焔耶らしい反応だ。
「私は桂花です、桂花、桂花、桂花をよろしく!!」
「は、はあ…よろしくね……」
桂花は…これでこそ桂花と言うべきだろう。
「私は孫策、真名は雪蓮。よろしくね、一姫」
「私は孫権、真名は蓮華だ。よろしく頼む」
「私は小蓮、シャオって呼んでね。それにしても、う~ん。年上の妹か」
「…ちょっと待て!!シャオ、お前何を言う気だ!!」
「え~~、だってシャオは一刀のお后様になるんだもん。だったら一刀の妹はシャオの妹じゃない」
チャキッ
慌てている俺の首筋に冷たい刃が突き付けられる。
「どう言う事なの、お兄ちゃん?」
ゆっくりと振り向いてみると何時の間にか一姫の手には朱雀偃月刀が握られていた。
「なっ!?何時の間に。確か邪魔にならんように部屋の隅に立てかけとった筈なのに」
「納得のいく説明をしてくれるんでしょうね?」
涙目で詰め寄って来る一姫にどう説明しようかと悩んでいると……
「一刀には王としてだけじゃなく大陸の父となるっていう大事な役目があるのよ」
「まあ、はっきり言ってしまえば私達全員一刀に抱かれてるって事よ」
雪蓮さんと華琳さんが思いっきりぶっちゃけてしまいましたとさ。
「お、お兄ちゃん……」
「お、落ち着け一姫、話せば分かる…」
「お兄ちゃんは何時から及川に成り下がったのよーーーーー!!」
「待てーー!!アイツと同列にされるのだけは心外だ!!」
「問答無用ーーー!!」
そう叫ぶと一姫は槍を振りかぶる。
俺はもちろん全力で逃げる。
「待てーーーー!!」
「この状況で待てるかーーー!!」
一姫も槍を振り回しながら追いかけて来る」
「あ、あはは、元気な娘だね…」
「でもまあ、これから面白くなりそうね」
「そうね…(うふふ、全力で私の物にしてあげる)」
三人の王達は追いかけっこを眺めながら笑っている。
「うわあああーーーーん、お兄ちゃんのバカーー、女ったらしーーー、及川ーーー!!」
「だからその表現を止めろーーー!!」
そしてあの二人は、
「ああ~~、い、いけないわ。私には華琳様が…でも……一姫様、いえ、お姉様~~」
「ワタシは桃香様に忠誠を誓ったというのに……しかし、しかし……一姫様…」
ダメだ、この二人。何とかしないと……
「も、もう勘弁してくれ~~~」
「烈風刃波ーーー!!」
「ぎゃああ~~~~~!!」
もう一つの萌将伝、此処に始まる。
続く。
あとがき
と言う訳で、始まりました。
今後もこうやって一シナリオづつ更新する予定です。
本編を元にした物、オリジナルな物、色々書きたい話があります。
メイドとかナースとかゴスロリとか。
後、読んでくれた方には解るでしょうがこの一姫は本編より少し子供っぽくなってますが仕様です、あまり気にされない様に。
一姫✝無双にはもう一つ外√があり、これは他の方とのコラボなのでブログのみの公開となっております。
ではまた今度。
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皆様のご期待通り、お兄ちゃんっ子の一姫に仕上がりました。