No.165676

雲の向こう、君に会いに-魏伝- 二十七章【誓い-1-】

月千一夜さん

お待たせしました
二十七章、投稿します
誓い編の導入てきな感じになっております

2010-08-14 15:51:21 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:34992   閲覧ユーザー数:26199

「馬鹿よ・・・」

 

強く・・・ただ強く、私は『ソレ』を抱きしめる

彼が書き綴ったソレは、とても冷たく

 

そして・・・重い

 

「ほんと・・・馬鹿よ」

 

再度呟き・・・私は窓の外

その先に広がる、空を見つめた

 

その色が、その青が・・・今は、ただ辛い

 

「一刀」

 

零れたのは、彼の名前

ただひたすら、苦しみながらも・・・怯えながらも

私達の為に戦い続けた、大馬鹿の名前

私達にただの一言も言うことなく、笑い続けた男の名前

 

 

胸が痛い

 

息が・・・上手くできない

 

目が、熱い

 

 

「馬鹿一刀・・・」

 

気づいた時には、もう遅かった

込み上げた想いは、『涙』となってとめどなく溢れ出してくる

 

 

私だけじゃない

彼を愛した者達は皆、同じように涙を流していた

 

 

「あ・・・はは」

 

思わず、こぼれた笑い

私は再び、窓の向こう・・・青く澄んだ空を見つめた

 

「見なさいよ一刀

貴方・・・本当に幸せ者よ

こんなにもたくさんの人に愛されているのだから」

 

すっと、はなしたソレ

一刀の日記を机に置き、撫でながら呟く

日の光に照らされたソレは、心なしか温かく感じた

 

「こんなにも想われていたのよ?

本当に・・・幸せ者ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ああ・・・そうだな~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え・・・?」

 

ふいに頭の奥・・・彼の声が響いた気がした

気のせい、よね

 

でも、そんなことはどうでもいいわ

 

その声が、私に少し・・・ほんの少しだけ、勇気をくれた気がしたから

 

だから・・・

 

 

 

「私にできることが、まだあるかもしれない」

 

やろう・・・私に、私達に出来ることを

 

「もう何もかも遅いのかもしれない・・・私達に出来ることなんて、もうこれっぽっちも残っていないのかもしれない」

 

それでも・・・

 

 

「私は、諦めたくない」

 

 

見つめた青は、先ほどよりも心強く見える

涙は止まっていた

今なら、私は・・・また一歩踏み出せる

 

「もうこれ以上・・・後悔だけはしたくないから」

 

伸ばした手、その先に輝く太陽に・・・彼の笑顔をうつしながら

私は、静かに決意する

 

 

彼の物語は、もう終わろうとしている

 

その終わりがたとえどんな形になろうとも

 

私は・・・もう、後悔だけはしたくなかった

 

 

「次は私が頑張る番・・・そうでしょ?」

 

 

 

静かに・・・終わりゆく、物語の途中

 

私は・・・ようやく、その一歩を踏み出すことができたのだ

 

 

 

 

「私は、貴方を諦めないわ」

 

 

 

 

 

 

~これは・・・私が、大切なモノを失うまでの物語~

 

 

 

 

《雲の向こう、君に会いに-魏伝-》

二十七章【最終章・誓い編~1~】 

 †想いを受け止め、乙女は歌う†

 

 

「華佗・・・」

 

広間に、私の声が響く

それだけで、視線が私に集まってくるのを感じた

 

「なんだ?」

 

それを、華佗も感じたのだろう

心なしか、表情が強張っているように見える

いや・・・あるいは、気づいているのかもしれない

 

これから、私が何を聞こうとしているのかを・・・

 

 

「一つ、聞いてもいいかしら?」

 

「質問の内容にもよるな」

 

そう言って、彼は肩を竦める

やっぱり、わかっているのね

そう思いながら、私は彼の瞳を真っ直ぐに見つめ・・・ゆっくりと言葉を紡いだ

 

 

 

「一刀が貴方に託したという、『最期の賭け』・・・それについて、教えてくれないかしら?」

 

 

 

『やはりか』と、彼は溜め息をついた

思ったとおり、彼は私の言いたいことがわかっていたようだ

 

ゆっくりと一度、天井を見上げる彼

 

それから彼は私の一言にたいし・・・首を横に振った

 

 

「残念だが、それは言えない」

 

「貴様っ!」

 

瞬間、華佗に向け春蘭が武器を構える

それを私は、手で制した

 

「春蘭、やめなさい」

 

「華琳様・・・しかしっ!」

 

「いいから、少し落ち着いてちょうだい」

 

「・・・御意」

 

渋々、といった様子で春蘭は武器を下ろす

その様子に苦笑し、それからすぐ視線を華佗へと戻した

 

 

「理由を、聞いてもいいかしら?」

 

「ああ、それなら構わない」

 

言って、華佗は前に歩み出る

 

「一刀が俺に託したのは、『アイツの想い』そのものだと言ってもいい

そんな大切な想いを、みだりに他の者に話すなんて俺にはできない

なにより、これは俺と一刀の・・・男の約束だ」

 

「男の約束・・・ねぇ」

 

「ああ、そうだ

だから俺は誰にも言わないし、そして・・・」

 

 

言いながら、彼は拳を強く握り締めた

その込められた力の強さは、震える拳を見ればわかる

 

 

 

「約束したからな

俺が、絶対に『繋げて』やると

俺のことを信じてくれた・・・一刀の想いに応えるためにも」

 

 

そう言って、彼は静かに歩みだす

広間の出口に向かって、だ

 

 

「俺は自分を信じるし、何よりもアイツのあの笑顔を信じている

だから、君達も信じればいい

アイツの言葉を、想いを・・・な」

 

 

そう言葉を残して、彼は広間を後にした

残されたのは、三国の者達だけ

私は一度周りを見回し、それから一度だけ頷いた

 

 

「呉や蜀の皆には悪いのだけれど・・・今日はもう、解散ということでいいかしら?

気持ちの整理が必要な者もいることだし

勿論、私も含めて・・・よ」

 

言いながら、私はチラリと視線を横にずらす

そこには、顔を真っ青にさせ・・・今にも倒れるのではと心配になってしまうほどにフラフラとする、桂花の姿があった

彼女もまた、酷く後悔の念に苛まれているのだろう

知らぬとはいえ、彼に向かって・・・あんなことを言ってしまったのだから

 

桂花だけじゃない

凪も・・・季衣も・・・皆、顔色が悪い

このような状態では、これからについての話なんてできるわけがない

 

 

時間は、もう限りなく零に近い

だけど・・・このままでは、きっと同じだ

 

 

「とにかく、今日はもう解散にするわ

各自、明日に備え体を休めなさい」

 

 

私の言葉

力なく頷く者達の姿に・・・酷く胸が痛んだ

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

「秋蘭・・・」

 

「なんだ、姉者」

 

部屋の中、私の言葉に秋蘭は力なく顔をあげる

その目元には、微かに涙のあとがあった

 

「北郷は、本当に馬鹿だな」

 

「ああ、そうだな」

 

 

そう言って、私と秋蘭は顔を見合わせ・・・笑う

乾いた、きっと本当の笑いとは違う

 

偽者の笑い

 

 

「北郷は馬鹿だ」

 

「ああ」

 

「大馬鹿者だ」

 

「そうだ、大馬鹿者だ」

 

そうだ

あいつは、本当に馬鹿だ

普段私の事を馬鹿というが、お前のほうが馬鹿ではないか

大馬鹿だ

 

なんで、一人で黙っていたのだ

 

あの日、味もしない・・・吐き気がするだけの酒を、何故笑って飲んでいたのだ

 

なんで、何も言わなかったのだ

 

嘘ばかり、つきおって・・・本当に、最低な奴だ

 

 

 

 

だけど・・・

 

 

 

 

 

「それでも、私は北郷を・・・一刀を愛している」

 

「ああ、そうだな

私も、あいつを愛している」

 

 

愛している

 

本当に最低で、本当にどうしようもないくらい種馬で

 

だけど、私はアイツの笑顔が大好きで

 

アイツのことが・・・一刀のことが大好きなんだ

 

 

「だから、やれることをやってみようと思う

もう、こんな苦しい思いはいやだから」

 

「姉者・・・」

 

秋蘭の瞳が大きく開かれる

そんな秋蘭にむかって、私は笑って見せた

 

 

「私は馬鹿だから、なにをやったらいいのかなんてよくわからん

だが、このまま黙ってアイツを逝かせるほど大馬鹿ではないぞ」

 

「姉者・・・あぁ、そうだな」

 

私の言葉に、秋蘭も笑った

さっきまでとは違う

本当の笑顔

 

 

 

 

 

 

 

~春想い、秋焦がれ・・・~

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「なんだ・・・?」

 

ふと・・・何か、頭の中で声のようなものが響いた気がした

それは秋蘭も同じようで、二人で一緒に部屋の中を見回した

 

だが当然、私達以外には誰もいない

 

「気のせい・・・か?」

 

秋蘭がそう言って、首を傾げる

気のせい・・・なのか?

 

しかし、今の声は・・・

 

 

 

「一刀・・・?」

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

「真桜・・・」

 

「凪、なんや?」

 

 

部屋へと向かう途中、私の言葉に・・・真桜は、ゆっくりと目元の赤くなった顔を向ける

さっきまで泣いていたのがまるわかりな顔

でもそれは私も沙和も同じだから、何も言わないでおいた

 

それよりも、他に言いたいことがあったから・・・

 

 

「真桜、ありがとう」

 

「うぉっ!? なんやねん、いきなり!」

 

「凪ちゃん!?」

 

 

真桜に向かって、深く頭を下げる

その行動に、真桜と沙和は酷く驚いているようだった

 

だが私は、そのまま話を続ける

 

 

「私達の想いを、隊長に届けてくれたんだ・・・こんなのじゃ、足りないくらいだ」

 

「凪・・・」

 

「本当に、ありがとう」

 

 

もう一度言って、私は再び頭を下げた

そんな私の肩に、温かな感触

真桜が、私の肩を掴んでいたのだ

 

そして、私の顔をグッとあげさせる

 

 

 

「凪・・・まさか、あの程度で満足しとるんか?」

 

「なに・・・?」

 

 

真桜の言葉に、私も沙和も首を傾げる

その様子を見て、真桜が溜め息をついていた

 

 

「アカン、アカンで二人とも

それでも本当に、北郷隊の一員かいな」

 

「な、なんだいきなりっ!」

 

「そうなの! ちゃんと説明してなのっ!」

 

大げさに、わざとらしく言う真桜

その言い方に、私も沙和もイラつきを覚える

そんな私達のことを尻目に、真桜は再び溜め息をついていた

 

 

「ウチはまだ、満足しとらんで

きっと、まだウチに出来ることがある・・・そんな気がするんや」

 

言って、真桜は両手を大きく広げる

そして、私と沙和を見つめ・・・言ったのだ

 

 

 

「凪たちは、諦めきれるんか!?

隊長のことを、大好きな人んことを・・・諦めるんか!?

このまま、消えてくんを黙って見てるんか!!?」

 

「真桜・・・」

 

「真桜ちゃん・・・」

 

「ウチは嫌やで・・・そんなん、絶対にアカン!

もう、あんな辛い思いしとうないもん」

 

 

涙を流しながら、真桜は叫ぶ

 

ああ・・・真桜の言うとおりだ

 

 

諦めたくない

失いたくない

離れたくない

 

 

その想いが、真桜を突き動かしたんだ

 

だったらきっと、私達も・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~三羽の鳥は、日を目指して・・・~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・?」

 

「あ・・・」

 

「今のは・・・」

 

声が・・・聴こえた

 

頭の中、優しく響くこの声を・・・私は知っている

 

聞き間違えるはずはない

 

だって、この声は・・・

 

 

 

 

「隊長・・・」

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

「アホ一刀・・・」

 

部屋の中

寝台に寝転がり、ウチは小さく呟く

胸が・・・めっちゃ苦しい

 

「ホンマ、アホやで」

 

呟いて、体を起こす

窓の向こうは、もうすっかり暗くなっとった

星はみえへん

変わりに夜空に浮かぶんは、まん丸のお月さん

 

そういえば、一刀が日記に書いとったなぁ

月にまで拒絶されたらって・・・

 

 

「この綺麗なお月さんが見えへんようになるなんて・・・ウチには耐えられへんわ」

 

 

言ってから、つくづく思う

一刀は、ホンマに恐かったんやと

 

 

味がせえへん

匂いも感じへん

触っても、わからんようになった

 

そして・・・光も音も、全部無くしてもうた

 

 

 

『そっか、俺・・・ちゃんと【ココ】にいるんだな』

 

 

 

せやけど、一刀は・・・笑っとった

ウチらの為に笑っとったんや

 

 

「は、はは・・・」

 

 

なんやねん

 

せやったら、ウチは・・・その想いに、応えなあかんのちゃうか?

こないに一人で、後悔しとる場合やないんとちゃうんか?

 

このままやったら、ウチは・・・

 

 

「また、後悔するんやないか?」

 

 

そう言って、ウチは寝台から飛び出した

それから、思い切り自分の頬を叩く

 

程よい痛みが、ウチの頭をすっきりさせてくれる

 

 

「何をするとか、したらええとか・・・そんな細かい話は後や

まずは動かんと、話にならへんしな」

 

 

そうや

ウチは、もう後悔しとうない

それ以前に、ウチは・・・一刀のことを、諦めたくないんや

 

ウチがただ一人愛した男のことを

 

 

 

「せやから、今は何でもええ・・・ウチにできることを、探してみるんや」

 

決意し、ウチは歩みだした

その瞬間・・・

 

 

 

 

 

 

~約束は、この空へとのせて・・・~

 

 

 

 

 

 

 

「な・・・っ?」

 

響く、聞きなれた声

慌てて周りを見るけど、この部屋にはウチ以外には誰もおらん

 

気のせい・・・?

せやけど、今の声は・・・

 

 

 

 

「一刀?」

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

「流琉・・・」

 

「季衣、どうしたの?」

 

二人で抱き合うように寝台にもぐり込んで、少したったころ

季衣に名前を呼ばれ、私は軽く返事をかえす

 

 

「ボクね・・・兄ちゃんのこと、大好きだよ」

 

「季衣・・・」

 

にっと笑い、言ったこの言葉

私は少し不意をつかれてしまった

 

だって、ついさっきまで季衣は・・・私と二人で、ずっと泣いていたんだから

今だって、きっと目が赤いままだと思う

声も、心なしかかすれている

 

けれど、季衣は笑っている

 

 

どうして?

どうして、笑っていられるの?

 

 

湧き上がる疑問

だけどそれは、すぐに消え去ってしまった

 

 

「ボクね、兄ちゃんの為に何か出来ないかなって・・・ずっと考えてたんだ」

 

「え・・・?」

 

 

季衣の言葉

私は、言葉を失ってしまう

 

 

「このまんまで、本当にいいのかなって・・・ずっと思ってたんだ

ボクはこのまま、兄ちゃんが消えるのを黙って見てるしかないのかなって

ずっと、泣きながら思ってた」

 

「季衣・・・」

 

 

 

季衣は、ずっと考えていたんだ

泣きながら

ずっと、このままでいいのかって

何かできないかって、ずっと考えていたんだ

 

それなのに、私は・・・

 

 

 

「一緒に、考えよう」

 

「流琉?」

 

寝台から体を起こして、私はそう言った

そんな私の様子に季衣は驚いてたけど、私は気にせず話を続けた

 

 

「何か・・・兄様を助ける方法がないか、一緒に考えよう」

 

「流琉・・・うんっ!」

 

 

いっぱい後悔した

 

いっぱい泣いた

 

それくらい、私も季衣も・・・兄様のことが大好きだった

 

だからこそ、このままじゃダメなんだ

 

このままだと私たちはまた、後悔してしまう

失ってしまう

 

そんなの、嫌だから・・・

 

 

 

 

 

「頑張ろうね、季衣」

 

「うん、頑張ろう流琉」

 

 

 

兄様の頑張りを、勇気を・・・ちょっとだけ分けてください

 

私たちも、頑張るから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~繋いだ手、想いを込めて・・・~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぇっ・・・?」

 

「えっ?」

 

思った瞬間、響いたのは・・・聞き覚えのある声

私の一番大好きな声

 

これは・・・

 

 

 

 

「兄様・・・?」

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

「桂花、大丈夫ですか?」

 

「ええ、ありがとう稟」

 

稟ちゃんの言葉に、桂花ちゃんは先ほどよりはマシになった顔色で言います

だけど椅子に力なく座るその様子を見るかぎり、、まだ大丈夫とは言いがたいようです

 

「お水、飲みますか~?」

 

「ありがとう」

 

風の差し出した水を手に取り、ちびっと口に含む桂花ちゃん

桂花ちゃんはそれを机に置くと、深い溜め息をつきました

 

視線は窓の向こう・・・夜空に浮かぶ、綺麗な月に向けられています

 

 

「今日は、綺麗な月ね」

 

 

そう言って、桂花ちゃんは笑いました

その手を、月へと伸ばして・・・笑ったのです

 

 

「ホント・・・馬鹿よ」

 

「桂花・・・?」

 

「私は、きっと・・・甘えていたのね

アイツなら大丈夫だって、ずっと甘えていたのよ」

 

「桂花ちゃん・・・」

 

 

月を見つめたまま、桂花ちゃんは話し始めました

アイツが誰のことを指すのかなんて、聞くまでもありません

 

「初めて会ったとき、なんであんな奴が華琳様のお傍にいるのか理解できなかったわ

あんな奴が、なんでって・・・いっつも、アイツに悪口ばっかいって

 

けど・・・いつのまにか、すっかり変わってしまった」

 

変わってしまった

そう言った時の桂花ちゃんの表情は、今まで見たことがないほどに・・・穏かなもので

風と稟ちゃんは、目が離せなくなってしまいます

 

 

「私は、あの時間を・・・好きになっていた」

 

 

 

 

 

 

 

 

『こんの、全身精液男っ!!』

 

『だぁ、だからそれはやめろっての!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、あの空間が好きだった

アイツとの時間が、きっと・・・大好きだった」

 

 

言いながら、桂花ちゃんは涙を流していました

 

様々な感情が、想いが溢れ出したのです

 

気づくのが遅すぎたと・・・後悔の念に、胸が張り裂けそうになったのでしょう

 

 

 

風も・・・泣いていました

 

風は、知っていたんです

他の人たちよりも、随分と早くから

 

でも、風は何もしませんでした

お兄さんの想いの邪魔はしたくないと・・・自分に言い聞かせて

 

 

風は、馬鹿です

 

 

本当は、何かできたんじゃないか?

もっと、他に方法があったんじゃないかと

今更になって、思うのですから

きっと、これからも・・・ずっと、思い続けるのでしょう

 

ずっと、風を縛りつづけるのでしょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~日が昇ろうとも、空はいつでも・・・~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぇ・・・」

 

「あ・・・」

 

「・・・今のは?」

 

 

それは、突然のことでした

響いたのです・・・風の、風達の頭の中に

 

聞き覚えのある、優しげな声が

 

だけど、風達以外には・・・ここにはいません

 

空耳?

 

でも、今の声は確かに・・・

 

 

 

 

 

「お兄さん・・・」

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

「一刀・・・どうなっちゃうんだろうね」

 

「うん」

 

 

天和姉さんの言葉に、地和姉さんは力なく頷く

仕方のないことだ

 

ようやく・・・ようやく、私達の夢が叶ったのに

それを一番喜んでほしい人が、もうすぐ・・・私達の前からいなくなろうとしている

 

それが辛くて、悲しくて

 

地和姉さんも天和姉さんも・・・そして、私も泣いた

 

 

正直な話、最初は・・・華琳さん達の事を恨んだ

 

なんであんなに近くにいたのに、今までずっと気づけなかったんだと

本当は、あの場で責め立てたかった

 

 

だけど・・・結局、できなかった

 

 

あの日記を読む皆の気持ちが、あの日記の話を聞く皆の心が

痛い程にわかってしまったから

 

 

目の前で愛する人が消えようとしている

そのことに気づけなかったという、強い後悔の念が・・・伝わってきたから

 

 

私は何も言えず、ただ涙を流すことしかできなかったのだ

 

 

「一刀さん・・・」

 

 

もう何度目になるかわからない呟き

彼の名前が、今は・・・こうして、口にするだけで辛い

だけど、こうやって呟かないと・・・目の前から、消えてしまいそうで胸が苦しくなる

だから、また私は呟くのだ

 

「一刀さん」

 

 

夢は叶った?

そんなの嘘だ

 

だって、そこには一刀さんがいない

 

こんなの、認めたくない

 

私は・・・

 

 

 

 

「一刀さん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~君を見守り、歌を謳う・・・~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え・・・?」

 

「っ・・・」

 

「今の・・・」

 

私達三人の声が重なった

それから、同じように部屋を見回す

 

聴こえた気がしたのだ

 

声が・・・聞き覚えのある声が

 

聞き間違い?

 

幻聴?

 

でも、今の声は・・・

 

 

 

 

「一刀さん?」

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

「ふぅ・・・」

 

部屋の中、灯りは点けたままで・・・私は寝台に寝転がる

 

 

今日は、色々ありすぎた

 

呉の宿将、黄蓋の登場

託された、一刀の日記

ソコに込められた、いくつもの想い

襲いくる、激しい後悔の波

 

 

「ふふ、本当に・・・色々、あったわ」

 

言いながら思い浮かべるのは、愛しい彼の姿

もういつ消えてもおかしくない、その笑顔が、その姿が・・・全てが辛い

 

今日はあれからずっと考えていた

自分に何ができるのかを

だけど、結局・・・答えはでなかった

何もわからないまま、今日という日が終わろうとしている

 

 

「それでも・・・私は諦めない」

 

 

諦めたくない

このまま、終わらせたくない

 

「後悔だけは、したくないから・・・」

 

もう、あのような思いは繰り返したくない

繰り返してはいけない

 

だから、私は足掻くのだろう

 

 

未だに、わからないことだらけなのに

 

一刀を蝕む【拒絶】の正体がなんなのか

何故、一刀がそんな目に合わなければならないのか

 

何も、わかっていない

 

ただ漠然と、一刀がもうすぐいなくなってしまう

そのことだけは理解していた

 

それでも、私は歩みを止めない

 

 

 

不様なのかもしれない

滑稽に見えるかもしれない

 

 

だけど、このまま黙って・・・彼が消えるのを待つよりは、ずっとマシだ

 

そうでしょ?

 

 

「一刀・・・」

 

見上げた天井・・・そこに、彼の姿を思い浮かべ

 

私は、再び彼の名を呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~どぅふふふふふふ・・・流石は、曹操ちゃんねん♪~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ・・・誰!?」

 

突如、部屋に響いたのは・・・不気味な声

異様に野太く、鳥肌がたってしまった

 

私は慌てて寝台から飛び起き、部屋の片隅に置いてあった『絶』を手に取る

 

 

「姿を見せなさい・・・」

 

「あらぁ~ん、そんなに警戒しなくてもいいじゃな~い?」

 

 

私の言葉に反応し再び響く声

妙に腹の立つその声は、先ほどに比べ、明らかに近くなっている

 

だけど、未だにその姿が見つけられない

 

 

「早く、姿を見せなさいっ!」

 

「んもう、そんなにカリカリしなくても今いくわよん♪

ぶるああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」

 

「っ!!!!??」

 

 

響く、凄まじい雄叫び

粉々に吹き飛ぶ、部屋の窓

 

そこに現れた・・・

 

 

 

 

 

「初めまして、曹操ちゃん♪」

 

 

 

 

 

 

筋骨隆々の・・・布一枚しか穿いていない化け物(変態)

 

サァッと、血の気が引いていく

 

ていうか、待ってちょうだい・・・何、コイツ?

 

 

 

「どぅふふふふ・・・ようやく会えたわん♪」

 

 

 

そう言って、不気味に笑う化け物

 

あ、もう駄目・・・限界

 

 

 

 

「華琳様っ!

今の音はいったい・・・!!?」

 

 

意識が遠のいていく

その最後・・・聞こえたのは、春蘭の声

私はソレを最後に、意識を闇の中に放り出した

 

 

「なんてことだ、華琳様が・・・」

 

 

 

 

 

「立ったまま・・・気絶している」

 

 

 

 

★あとがき★

 

大変お待たせいたしましたw

最終章・誓い編のスタートですww

いや~、大変でした

仕事が鬼すぎて、もう中々進まないってねww

 

報告の方でもいいましたが、これは全四話構成

残すところ、あと3話となります

ここまで、本当に色々あったなぁと早くも思い出を振り返ったりしていますww

 

尚、今回から下手ですが挿絵付きで投稿していきますw

何気に、ここで一番時間を使ったっていうwwww

 

ていうか、チョウセンとかマジ無理だww

キミオト♪での扱いより、かなり難しいよもうww

シリアス向いてないよ、コイツwwww

 

もう、ゴールしてもいいよね?Ww

 

それでは、残り3話・・・またお会いしましょうww


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
173
24

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択