「ふむ・・・あの人形め、魔王の殺害に失敗したようだ」
「どうする、しかも天魔の魔女の策略で不確定要素も混じったようだぞ」
キエサルヒマ大陸の人々に知られざる一室に、誰何の声が響いた。気配は五つ、薄暗くはっきりとした姿形は解らないがいずれも人の姿形はしていないようだ。
「ふん・・・かの世界ではそろそろ大きな戦が始まるようだ。そこであの魔王が命を落とせばそれでよし、見事勝利し生き残ってもこちらの世界に戻ってくる術などないのだ」
「我らは来たるべき時に備えればそれでよい」
―――彼らはいったい誰で、魔王とは一体誰の事を指し、彼らがいるのは一体どこで、『魔王の殺害に失敗した』人形とは一体何のことなのか―――
一つの事を除いて、キリランシェロが全ての事を知るには5年の歳月と彼の人生という名の生贄が必要だった。
「さて、と・・・」
『牙の塔』の自室のベッドでアザリーは深く息を吐いた。
「とりあえずキリランシェロに援軍を送ったし、後は事が終わった後にあの子たちを回収するだけね」
腕利きの黒魔術士でありながら、時間と精神を操る白魔術士である彼女がキリランシェロの行方不明の原因がある者達の策略である時と気が付いた時、直ちに師であるチャイルドマンと対策を練った。
そしてまず、チャイルドマンが時空を渡る天人の道具を使ってミッドチルダに渡り、『彼ら』が開発しようとしたクリーチャーを消去しようとした(これは結局キリランシェロが倒したが)。そしてアザリーはキリランシェロに切り札を渡した。それが、拳銃―――『ヘイルストーム』である。
(あの拳銃は特別製。『彼ら』が造り、『あの男』に貸与したあの化け物たちを一撃で殺す為の剣―――)
クス、と彼女は笑みを浮かべる。
「『彼ら』も愚かよね。どうせあの子の前に敗れ去る運命だというのに・・・」
「・・・いや、私も『彼ら』の事は何も言えないか。なにせ、あの子の人生を変えてしまったんだもの・・・」
すべてを見通し、自らの運命を知ってしまった魔女は少しだけ悲しげに笑った。
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お久しぶりの投稿です。今回は幕間という形で・・・やはり原作を知らないので、どう書いたらいいか悩んでいるところです。