No.164971

一刀の記憶喪失物語~蜀√~最終回

戯言使いさん

これで蜀√最終回です。
アンケートのご協力、ありがとうございます。アンケートの答えはまだまだ募集しているので「何のこと?」と思った人は、前の作品を見てくださいねー。

今回はコメディはないです。なぜなら、ネタが思いつかなかったからです。ですが、どうぞよろしくお願いします。

2010-08-11 12:53:35 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:10218   閲覧ユーザー数:8072

 

 

 

 

 

一刀記憶奪還作戦 三人目

 

 

 

挑戦者 月

 

 

数日が過ぎた。

 

桃香の妄言のせいで、さらに怯えるようになってしまった一刀。

 

そんな一刀は一日中、部屋に引きこもるようになっていた。ご飯やお風呂も、月が一緒でなければ全く動かない一刀。そんな一刀に、月はずっとそばにいた。それは、月にとってはまさに幸福な日々だった。大好きな人に頼られる喜びは、何ごとにも変えられないほどの幸せだった。

 

でも・・・・と、月は思った。

 

今も必死に自分の手を握っている一刀を助けてあげたい。

 

そして、月は決心した。

 

 

 

 

 

 

「あの・・・しばらくご主人様と二人きりにしてもらえませんか?」

 

月は散々考えた末、こう申し出た。

 

「だ、だが、もし本気で自殺したがったら、月一人では止められないだろう?」

 

「うん。そうだよ。やっぱり月ちゃんじゃ心配だよ。あのね、華陀さんを呼んだから、あと一週間もすれば来てくれるから、それまでみんなでご主人様を見張れば大丈夫だよ」

 

紫苑と恋の攻めにどうにか耐えきった愛紗と、服の隙間から何故か縄の跡がのぞけている桃香が月の二人を説得する。

 

でも、月は首を横に振って、そして言った。

 

「あの・・・・私、早く戻してあげたいんです」

 

「それは私たちも・・・・」

 

「ご主人様は、ずっと怯えているんです。想像してみてください。記憶を失って、自分のことも忘れて、そして知っている人も誰もいない場所にただ一人いるんですよ?私・・・私なら・・・とっても辛いです・・・・」

 

「月ちゃん・・・・」

 

「だから・・・・お願いします・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様。お庭で散歩しませんか?」

 

「は、はい。あ、でも・・・・その・・・・」

 

「大丈夫です。キチンと手を握ってあげますから」

 

いつものように・・・・と言っても、ここ数日だけのことだが、それが一刀と月の決まりごとになっていた。

 

ゆっくりと庭を歩く二人、その後ろには武将たちが不安そうな視線を向けながら隠れている。

 

「月さんは優しいですね」

 

「へぅ・・・突然どうしたんですか?」

 

「だって、こんな僕のずっと傍に居てくれたんですから。自分でも分かっているんです。自分が変だって。でも・・・・どうしようもないんです。知らない人や怖い人を見ると、どうしても震えが止まらなくて・・・・」

 

「ご主人様・・・・」

 

「でも、怖がりで臆病な僕を、月さんは助けてくれた。だから月さんは優しい人なんです。だから月さんが大好きです」

 

大好きです。と、目を見て言われた。月にとっては、それはとても嬉しいことだった。もちろん、記憶を失う前の一刀にも言われたことがある。でも、今は自分だけに言ってくれている。それはとても嬉しい。もし、このまま一刀が記憶を忘れていたならば、ずっと自分だけを見てくれる。それは・・・夢のような話だ。と、月は思った。

 

でも

 

「・・・・いいえ」

 

と、言って一刀の手を話した。

 

「月さん・・・・」

 

「私も同じでした・・・・人見知りで、人が怖くて、いつも詠ちゃんや恋ちゃんたちに守って貰っていました。でも、ある日悪い人に騙されて、そして戦って・・・・そして、私は敵に捕まりました。きっと、殺されるだろうって思っていました。でも、当時、敵だったご主人様は「無実の人は殺せないよ」って笑って・・・・命ばかりか、私を他の人から守ってくださったんです。最初はとても怖かったです。だって、今まで敵だった国の中に居るんですから。周りの人が、みんな私を殺そうとしている・・・そんなことも考えました。でも、いつもそんな時、ご主人様が励ましてくれたんです!手を握ってくれたんです!頭を撫でてくれたんです!だから私は強くなれたんです!優しくなれたんです!だから・・・・だから・・・・」

 

月はずっと思っていたことがあった。

 

もし、私が騙されず、戦も起らず、今も王として国を治めていたら・・・・きっと、自分は弱いままだろうと。それは駄目だ。

 

戦が起きた。人がいっぱい死んだ。それを見た時、私はこんなにもいっぱいの人に支えられて生きてきたことに、ようやく気がつけた。

 

だから、月は一刀に助けられた時に誓った。

 

一刀の支えになろう。どんなに不安でも。どんなに怖くても。

 

一刀のためだけに生きて、一刀のために死にたい。

 

今・・・・月は幸せだった。

 

大好きな人が自分を頼ってくれている。ずっと傍に居てくれる。

 

でも、月はそんな自分の幸せより、大好きな人が怯え、怖がっていることが辛い。

 

 

 

 

 

だから、

 

 

 

 

 

 

だから、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一刀さんも・・・・頑張りましょう♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の目には、涙がたまっていた。でも、それでも月は笑っていた。今、自分の幸せを手放すことになっているにも関わらず、笑顔だった。

 

一刀は一瞬、月を泣かせたことに不安になっていたが、それでも自分を怖がらせないように、そして元気付けようと笑顔でいる月に、一刀は決心して、そして大きく息をすって答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀の記憶は、意外と簡単に治った。

 

あれから、一刀はねねを呼び、もう一度後頭部にキックをしてもらったのだ。

 

いつものように、不意打ちではないキックは、その時の一刀には恐怖だった。でも、決心した一刀は強く、そして無事に記憶を取り戻した。

 

しかし、記憶喪失であった時の記憶はなく、月にべったりなどということはなかった。でも、月はまたいつものように生活している一刀を見て、いつものように笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

そして、記憶が戻って数日がたったある日。

 

「ご、ご主人様~、ちょっと手を引っ張らないでくださいよぉ」

 

「いいじゃんいいじゃん!今日はせっかくの休みなんだからさ!」

 

「へぅ・・・」

 

手を強引に引っ張っていこうとする一刀と、手を引っ張られて少し焦り気味な月の姿があった。しかし、その二人はいつもと違う。

 

「あの・・・メイド服でなくていいのですか・・・?」

 

そう。今日の月は、年頃の街娘のような可愛い服を着ていた。これは一刀が今日のために月にプレゼントしたものだった。

 

「だーかーら、今日はメイドとしてじゃなくて、月と外に出かけるんだからさ」

 

「ですがご主人様・・・・」

 

「・・・一刀」

 

「はい?」

 

「今日は俺のこと、一刀って呼ぶこと」

 

「へぅ!そ、そんなの・・・・」

 

「これは命令だよ」

 

「へぅ・・・・・か、一刀さん・・・・」

 

「うん。よろしい」

 

と、一刀はいつものように明るい笑顔で月の頭を撫でた。少し強引で痛かったが、月にはとても心地よく感じた。

 

「ですが・・・どうして急に私を街に連れていこうと思ったのですか?」

 

「んー・・・どうしてだろ。お礼?」

 

「お礼なんておかしいです・・・・お世話になっているのは私ですし・・・・それに、詠ちゃんだって・・・・」

 

「んー・・・・そりゃあ、詠にも世話にはなってるけど・・・・月は特別かな?」

 

「と、特別ですか?」

 

 

 

 

「そ、俺の大事な支えだからね。月は」

 

 

 

 

 

・・・自分も、支えになれた。大好きな人の、支えになれた。

 

嬉しくて、ちょっと月は泣きそうになったけど、耐えた。一刀を不安にさせたくないからだ。だから、泣く代わりに、とびっきりの・・・・普段の上品は笑顔ではなく、まるで恋する乙女のような、そんな恥ずかしさと嬉しさの混じった笑顔で、一刀に言った。

 

 

 

 

 

「そんなこと言って・・・・どうせ他の人にも言っているんですよね?一刀さん!」

 

 

 

 

 

・・・またちょっとだけ、強くなれた月なのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけシリーズ

 

 

 

 

 

 

『もし、夢が叶ったら』

 

 

 

桂花の場合

 

 

 

 

 

「やったわ!日ごろの成果が実って、バカ春蘭に負けないぐらいの巨乳になったわ!さっそく華琳さまにご報告しなくちゃ!華琳さまーー!!」

 

「あら。どうしたのかしら。桂花」

 

「華琳さま!私の胸が大きくなりました!これによって、さらに華琳さまの閨でのご要望をお答えできるでしょう」

 

「やったわね。愛してるわ。桂花」

 

「あぁ・・・華琳さま~」

 

「おーい。何してるんだ?」

 

「げっ!北郷。なんで居るのよ」

 

「別にいいじゃないか。それより・・・・げっへっへ。桂花。俺のために胸を大きくしたのか・・・げっへっへ、よしよし、可愛がってやるぜ・・・げっへっへ」

 

「うわぁ!こっちにこないでよ変態!」

 

「桂花!今こそセクシーポーズ&セクシービームを使う時よ!」

 

「か、華琳さま!?」

 

「天の国より伝わるセクシーポーズとセクシービームは、ロリ巨乳のみ許された伝説の技らしいわ。それを食らった男は、その女の奴隷となるのよ!さぁ、今のあなたはロリ巨乳!あなたなら出来るわ!」

 

「か、華琳さまが言うなら・・・・・えっと・・・・・セクシーポーズ!!」

 

「ぐわぁ!なんてセクシーなんだ!体が思うように動かないぜ」

 

「そしてとどめの・・・・セクシービーム!!」

 

「ぐわぁ!やられーたー。これからは桂花さまの奴隷として一生過ごしていきます・・・・」

 

「本当かしら?それじゃあ、もう私の華琳さまには近づかないでよねっ!」

 

「はい。僕には桂花さまさえ居れば他に何も要りません・・・・」

 

「ふふっ、北郷。世界でもっともお似合いのカップルは何かしら」

 

「それは華琳さまと桂花さまです。お似合いです。バカ春蘭なんかよりもお似合いです」

 

「よく出来たわ。これからは私の奴隷として頑張りなさい。ご褒美に今夜は閨でたっぷり可愛がってあげるわ・・・」

 

「あぁ・・・桂花さま~」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!・・・・夢かぁ」

 

 

 

桂花は起き上がると、自分の胸を触ってみる。当然、ツルペタ。その現実を悲しく思いながらも、さっきの夢のことが忘れられず、鏡の前に立ってみる。

 

 

「えっと・・・・確かこんな感じで・・・・せくしーぽーず!・・・・・・あら、意外と可愛いじゃない。ふん!やっぱり胸なんてなくても、私が華琳さまに相応しい美女であることは変わりないわね!」

 

思いのほか、新鮮で可愛い姿に、ちょっと自信が出た桂花は、いつもの服を着替え、華琳さまとの閨の時用の寝具に身を包んだ。

 

「せくすーぼーず!せくしーびーむ!・・・・・うふ、やっぱりいい感じじゃない。もしかしたら、これを北郷にやれば・・・・うふふふ」

 

 

 

ガチャ|д・)つ|)(ドアが開く)

 

 

 

「あのさ・・・今日は華琳に休みを取らせよう。なんか今日のあいつは変だ。愛と野望の魔法少女って・・・・野望ってなんだよ。だから、今日は華琳を休みに・・・・」

 

 

「せくしーぽーず!・・・・・・北郷?」

 

「( ´゚д゚`)」

 

「あ、違うの!これは違うの!これは・・・・その・・・・・そうだ!北郷!これでも食らいなさい!・・・・必殺、せくしーびーむ!」

 

「( ´゚д゚`)」

 

「あ、あれ?せくしーびーむ!せくしーびーむ!」

 

極度の恥ずかしさと、興奮のせいで、どこか変になってしまった桂花。でも、本人からしてみれば、どうして夢のようにセクシービームが聞かないのかと不思議に思っていた。その理由は、今の桂花はロリではあっても、ロリ巨乳ではなかったからだ。・・・・まぁ、もしロリ巨乳でも無駄だったろうが。

 

「せくしーびーむ!・・・・ほら、これで私の奴隷になったでしょ!?」

 

「( ゚Д゚)・・・・・・((-ω-。)(。-ω-))フルフル」

 

「あ、あれ・・・・北郷?何か言いなさいよ」

 

「・・・・・・・ ・ウワァァ━━━━━。゚(゚´Д`゚)゚。━━━━━ン!!!! 」

 

バタン(ドアが閉まる)

 

 

「ちょ、ちょっと何か言いなさいよ!え、何これ。私バカみたいじゃない。え、ちょっと!」

 

 

 

 

 

こんな時・・・・・どんな顔をすればいいのか分からない

 

 

 

泣くしかないだろ(ノToT)ノ┫:・'.::・┻┻:・'.::・

 

 

 

 

 

 

さて、これで蜀√は終わりましたー。次は呉√です。ですが、ネタがなくなってきて、もはや記憶喪失では説明できないような事態ですが、そこはスルーで。

アンケートの集計は呉√の最終回の時に発表します。なので、それまではずっと募集中です。みなさん。ご協力感謝します。

 

 

 

 

次回予告!!

蓮華のお尻のせいで記憶を失ってしまった一刀。今度は爽やかハンサムーボーイでも、ネガティブ死にたがり屋でもなく、もはや記憶喪失では説明できない事態に!?

 

 

 

どんな一刀なのか、このダイジェスト版での会話の相手は誰なのか、それは次回で分かります。

 

 

 

 

 

(ちょっと紹介ダイジェスト)

 

 

 

 

「えっと・・・これからお世話は私がさせてもらいますね。よろしくお願いします。かじゅとさま」

 

「・・・?よろしくおねがいします、巨乳のお姉ちゃん」

 

「きょ、巨乳!?ホントですか!?やった、実は毎日自分で揉んで大きくしようとしていたんですが、あまり自分では分からなくて、でもかじゅとさまにそう言って貰えると自信が・・・」

 

「・・・・ごめん」

 

「はい?」

 

「ちょっと嘘ついた」

 

「なんですとー!!」

 

 

 

 

 

 

 

「巨尻お姉ちゃん」

 

「なぁ!?私は巨尻ではないぞ!断じてないぞ!別に下着の紐がすぐに緩んだりもしないし、スカートのお尻の部分が変に張ったりもしてないぞ!第一、私が巨尻では祭は・・・・」

 

「・・・・ごめん」

 

「ほ、ほら。やっぱり違う・・・」

 

「・・・・嘘はつけない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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