白蓮さんの宣言により公孫賛軍から北郷軍へと変わった私達。
その移行は順調……とはいきませんでした。
太守の経験のないお兄さん。
星ちゃんが言った通り、足りないところは私達で補っていけばいいのですが、それも限界があります。
そこで、白蓮さんがお兄さんの補佐的な立場になってもらい、教育の意味を込めて色々と補佐をしてもらうことにしました。
それに加えて、白蓮さんには大事な役目を負ってもらうことにしました。
それは……。
「なんで、私が伯珪さんに面倒を見てもらわなければならないんですの!!」
そう、袁紹さん達の面倒です。
袁紹さんは城内だけでなく、城下町までは出歩いていいことになりました。
ただし、兵士さんなどの監視役を連れてという条件ですが。
白蓮さんには、その兵士さん達の取り纏め役をお願いすることにしました。
はっきり言えば、袁紹さんの暇つぶし相手ですね。
「貧乏くじだぁ~」
そんな感じに、白蓮さんは嘆いていましたが、字で呼び合う仲ですから上手くいくと私は思っています。
さらに、白蓮さんは将軍として騎馬隊を率いることにもなります。
もしかすると、太守の頃より忙しくなるかもしれません。
次に反対分子への対処です。
いくらお兄さんが天の御遣いとはいえ、今回の交代劇を快く思っていない人もいます。
特に、白蓮さんの身内の中には白蓮さんが太守だからこそという人も少なからずいます。
そう言う人達に安心してもらうには、それなりの役職を与えておくに限ります。
幸いにして、河北四州というお兄さん一人で治めるには大きすぎる領土が私達にはあります。
そのうちの一部の州をその人達に治めてもらうようにしました。
言ってしまえば、これは袁紹さんを退ける前の白蓮さんと同じような立場です。
これを不服に思う人はいないはずです。
そう思っていたのですが、その考えは甘かったようです。
「それは本当か!?」
ある兵士さんからの報告に、白蓮さんが声を荒げました。
私も声には出しませんでしたが、驚きました。
ここまで早く行動するとは思っていなかったからです。
そう、白蓮さんの身内さんに統治を預けた并州と幽州で、反北郷を旗印に反乱軍が決起したと言うことです。
「それで、反乱の規模は?」
「はい。今のところ小規模のようですが、参加する者が意外と多くかなりの規模になることが予想されます」
「そうか……」
白蓮さんは腕を組み何やら考える素振りを見せています。
正直心中は複雑でしょう。
自分のせいでこんな事態になっているという思いがあるのかもしれません。
と、このままではどうしようもないので話を進めようと思います。
「お兄さん、どうしますか~?」
私は軽い感じでお兄さんに聞いてみました。
と言っても回答は何となく想像できていました。
「そうだなぁ」
なんだか他人事のような返事をするお兄さん。
途端に白蓮さんが食いつきます。
「北郷!! もう少し真剣に考えたらどうだ!! 下手をするとまた戦になるんだぞ!!」
「分かっている……分かっているけどさぁ……」
「何やら含みがありそうですな、主殿」
そう言ったのは星ちゃん。
お兄さんが太守となってから、呼び方が名前から主殿に変わりました。
「いや、含みというわけじゃないけど、ずっと一緒にいた仲間なわけじゃないか。話し合いで解決できないかなって……」
「それは無理ですね~」
私は冷たく言いました。
「どうして?」
「相手は反乱軍として実力行使に出てきてます~。その相手と話し合いを持つのであれば、まずは力で相手をねじ伏せる必要があるのですよ~」
そうです。
すでに、お兄さんの考えと相手の考えはまるで違っています。
こちらがいくら話し合いを持とうと思っても、相手が応じる可能性は万に一つもありません。
「どっちにしろ戦いは避けられないわけか」
「そうなりますね~。ただ……」
私はこのまま戦ってもあっさりと勝てるとは思っていないので、含みを持たせるような話し方をしました。
「ただ、何?」
「いえ~、決起するにしてもあまりにも早すぎるので、何か支援のようなものがあるのではないかと~」
「そうだな。こんな短期間に反乱軍など結成できるわけ無い」
「となると、誰かが裏で糸を引いている可能性があるわけか」
「間違いなくそうですね~。そんな事ができるのは~」
「諸侯のうちの誰かか……」
白蓮さんは誰かという曖昧な表現をしましたが、今の情勢を見るにそんな事をするのは一人しかいません。
「おそらく、曹操殿だろうな」
「そうでしょうね~。この反乱に乗じて河北四州を治めるつもりなのでしょう~」
「後ろに曹操軍が控えているとなるとやっかいだぞ!!」
「ただの内乱ではなく大きな戦になってしまうでしょうね~」
「それに、今の我々は曹操軍に勝てるような戦力は持っていないしな」
各武将の力で言えば、曹操軍にもひけは取りません。
ですが、全体的な力で言えば私達はまだ曹操さんに太刀打ちできません。
「北郷!! どうする?」
白蓮さんがお兄さんを煽ります。
その言葉に腕を組んで考え込んだお兄さんが言いました。
「このままだと戦いは避けられないよね?」
「そうだな」
「……だったら逃げるか」
お兄さんは笑いながら言いました。
その言葉に白蓮さんは唖然としてしまい、星ちゃんは苦笑いを浮かべています。
「逃げるって……。どういう事だ!!」
「どういう事って……、このままじゃ戦いになってこっちも相手にも被害が出るだろ?」
「そうだな」
「それに何より、ここで戦いになったら街のみんなに迷惑がかかってしまう。それは避けなきゃな」
「それはそうだが……」
白蓮さんは納得できていないようです。
自分の身内の不始末だからここで片を付けておきたいというのもあるのかもしれません。
「白蓮殿、主殿が決めたことだ。私達はそれに従うしかあるまい」
「そうですよ~。白蓮さんの気持ちも分かりますけど~、今は戦いを避ける方向で考えましょう~」
「……分かった」
私と星ちゃんの言葉で白蓮さんも納得してくれたようです。
「だが、北郷。逃げると言ってもどこに逃げるのだ?」
「そうだなぁ~。風、何かないかな?」
お兄さんが困った表情でこっちを見ました。
「そうですね~。まずは霞さん達が治めている青州に行きましょう~。それから桃香さん達を頼りましょうか~。きっと力になってくれるはずです~」
「よし、それで行こう!! 各人逃げる方向で準備をしてくれ!! 風、街の長老達と話をするから一席設けてくれないか?」
「分かりました~。」
こうして、私達は逃げるための準備に取りかかったのです。
「ちょっと逃げるってどういう事よ!!」
詠さんの口から開口一番飛び出した言葉はお兄さんへの怒鳴り声でした。
普通に考えれば逃げるという選択肢はあり得ませんから、詠さんの怒りも分かります。
ただ、お兄さんの感性は私達のそれとは違っているようですから、それは受け止めなければなりません。
「だってさ、このまま戦うと街のみんなに迷惑がかかるじゃないか」
「何言ってるのよ!! 戦ってそういうものじゃない!!」
「だけど、避けられるものなら避けるのが俺たちにとっても相手にとってもいいじゃないか」
「だからって……」
詠さんからすれば何もせずに尻尾を巻いて逃げるというのが納得できないようです。
自分達が大きくしてきた街という自負もあるのでしょう。
なかなか納得しない詠さんに、この人が声をかけました。
「詠ちゃん、ご主人様に従おうよ……」
そう、月さんです。
詠さんは、月さんには滅法弱いのでこれで納得するでしょう。
「月……。でも……」
月さんの問いかけにも若干の反論を匂わす詠さん。
これは珍しいことです。
それほどまでに、お兄さんの決定に不満があるのでしょう。
そう感じたのか分かりませんが、お兄さんが詠さんに語りかけます。
「詠……。確かに俺達は今から逃げる。けど、これは後退じゃないんだ」
「何言ってるのよ!! 逃げると言うことは後退するって事じゃない!!」
「違う!!」
お兄さんの怒鳴り声に詠さんはもちろん私を含め、その場にいた誰もが驚きました。
「今はここを守ることが出来ない。後ろに曹操が控えている可能性があるならなおさらだ。ここで無理に留まれば俺達はもちろん、街のみんなも被害を受けるだろう。そこまでして勝てればまだいいけど、今回は分からない。俺はそんな賭けをしたくないんだ!!」
「逃げても無理かもしれないじゃない!!」
「少なくとも時間は稼げる。時間があれば事態を打開できる可能性もある」
「それは……そうかもだけど……」
「それに俺は逃げ出すからってここを見捨てるわけじゃないんだ。いつか帰ってくる。その為の前向きな逃げだよ」
「ここに戻ってくるなんて分からないじゃない!!」
「戻って来られるさ。俺を誰だと思ってるんだ?」
そういってお兄さんは満面の笑みを浮かべて言いました。
「俺は『天の御遣い』だぜ!!」
そう言うお兄さんの表情からは絶対の自信が感じられました。
そんなお兄さんを見て、詠さんは頬を赤くしながら言いました。
「わ……分かったわよ!! そこまで言うならボクも協力する!!」
「詠ちゃん~」
詠さんの言葉に月さんが喜びました。
私は安堵と同時に、その場に何か別の感情が沸き起こるのを感じました。
詠さんが納得してくれたのはいいのですが、城内にはもう一人厄介な人がいました。
「ちょっと一刀さん、逃げるってどういう事ですの!!」
そう、袁紹さんです。
今は捕虜に近い立場とはいえ、この人も元は太守や君主という立場にいた人です。
今回の決定に意見の一つも言いたいのでしょう。
「逃げるなんて恥ずかしくないのかしら」
「そうだぜ、アニキ。男ならあたって砕けろだ!!」
「文ちゃん……、砕けちゃダメだと思うけど……」
文醜さんと顔良さんのやり取りは相変わらずです。
しかし、袁紹さんがここまで意見してくるとは思いませんでした。
「本初……。北郷の決定は絶対だぞ」
白蓮さんが袁紹さんに念を押します。
「伯珪さん、そんなの分かっていますわ。……ですけど」
なんだかいつもの袁紹さんらしくありません。
「一刀さん、あなたは自分が手に入れた領土をそんな簡単に手放す事が出来ますの?」
袁紹さんがいつになく真剣な表情でお兄さんに言います。
ひょっとしたらここ冀州は元々袁紹さんが治めていた土地ですから、何か思い入れでもあるのかもしれません。
そんな袁紹さんの問いかけに、お兄さんは少し考えた後言いました。
「俺だって手放したくないけど、今の俺達じゃ守ることは出来ないだろ」
「そんなのやってみなければ分かりませんわ」
「そうだけど、戦をやれば誰かが死ぬ。もしかしたらここにいるみんなが死んでしまうかもしれない。」
「そんなに当たり前ですわ」
「領土は取り戻すことが出来るけど、命は取り戻すことが出来ないじゃないか!!」
「だから逃げるんですの?」
「そうだよ。みんなの命が守れるなら逃げるさ。みんな大事な人だからね。……もちろん、袁紹、君もだよ」
そう言い放つお兄さんを見た袁紹さんは、普段見ないような表情をさせました。
「……そ……そこまで言うなら判りましたわ。猪々子、斗詩、行きますわよ」
「行くって……、麗羽様、どこに行くんですか?」
「私達の逃げる準備ですわよ!!」
「えーー!! アニキにがつんと言ってやるんじゃなかったの!!」
「……そんな事言ってませんわ!!」
「えっ!?」
「文ちゃん、いいじゃない。それじゃ皆さんまたあとで」
急に態度の変わった袁紹さんに疑問を持つ文醜さんをなだめつつ、顔良さんが先導して玉座の間を出て行きました。
「何だ、本初のやつ。えらい変わり様だなぁ」
白蓮さんの言葉に私や星ちゃんは溜息をつきます。
「白蓮殿……、それじゃダメですな」
「星、何がだ?」
「分からなければ、それまででしょう」
星ちゃんの言葉に首を傾げる白蓮さん。
私もある意味良くない雰囲気を感じていました。
「とにかく、袁紹も納得してくれたんだ。急いで逃げる準備を進めてくれ」
「おう」
お兄さんの言葉に、私達は答えました。
袁紹さんとのごたごたがあったすぐ後に、街の長老達との話し合いの場が設けられました。
案の定、長老達からは私達に留まって欲しいと言う発言が出ました。
ですが、そこはお兄さんの説得で納得していただきました。
ならばついて行きたいという言葉もありましたが、それについてもお兄さんに説得してもらい諦めてもらいました。
こうして、街の人達にも納得してもらいました。
さらに、張三姉妹には伝令を送り、青州にて合流できるようにしました。
さいわいにも、反乱軍の足は遅いようです。
思っていた以上に、順調に逃走準備は進みました。
ただ、私はこの必要以上の遅さに何か嫌な感じを持っていました。
逃走準備が完了し、冀州を離れるときが来ました。
まずは青州に向かい、霞さんや華雄さん、張三姉妹と合流。
その後、桃香さんを頼るため徐州に向かうという手筈です。
青州までは何事もなく順調でした。
霞さん達と無事合流し、このまま全てが上手くいくと思っていました。
ところが、その壁は意外なところにありました。
桃香さんのところにはあらかじめ伝令を送っておいて話を通してありました。
そして、受け入れると言う言葉ももらってありました。
ところが、実際に行ってみるとそれは私達の思っていたモノとは違っていました。
「すみませんが、私達はあなた方を受け入れることは出来ません」
諸葛亮さんから発せられた言葉は以前のそれとは大きく異なっていました。
これには、桃香さんも驚いた表情をしていました。
「えー!! 朱里ちゃんどういう事なの?」
「桃香様、どうもこうも先ほど私が話したとおりです」
「すまない。以前俺達は桃香達から受け入れるという言葉と共に書簡も受け取っている。それでもか?」
「はい」
諸葛亮さんの言葉には迷いなど全く感じられませんでした。
「どうして……」
「まず、私達には皆さんを受け入れて養えるほどの蓄えがないのです」
「なるほどな」
全員が来たわけではありませんが、少なくとも一国と同じ規模の人間達を養うとなると、単純に今までより多くの食料が必要になります。
私達も食料などを持ってきてはいますが、それでも限界があります。
「それに……、この国の太守は桃香様です。そこに天の御遣いである北郷さんが来てしまうと民の心は揺れ動いてしまうでしょう」
「それは考えられますね~」
この国の民にとってあがめるべき人物は桃香さんだけでいいのです。
そこにお兄さんが加わってしまうと、お兄さんをあがめてしまう人が出てしまいます。
思想の違いと言うほどではないでしょうが、それによって国が分断すると言う事も十分に考えられます。
「朱里ちゃん、それくらいならなんとかなるんじゃないの?」
「そうだな。足りない分はみんなに働いてもらって……」
「そうなのだ。鈴々はおにいちゃんとまた一緒に遊びたいのだ」
桃香さん、愛紗さん、鈴々ちゃんの三人が諸葛亮さんの説得に当たろうとしています。
ですが、諸葛亮さんの決意は固いようです。
さらにもう一人の軍師、鳳雛こと鳳統さんも諸葛亮さんの意見に賛成のようです。
それから、桃香さん達の押し問答が続きましたが、それを見かねたお兄さんが言いました。
「桃香……、みんなありがとう。でも、諸葛亮さんの意見は至極もっともだ。俺達はまた別の道を考えるよ」
「一刀さん……」
「ただ、せめて数日留まらせてもらえないかな? 次の行き先を検討したいし……」
「……それくらいなら構いませんよ」
「ありがとう」
こうして、私達は別の行き先を検討しなくてはいけなくなりました。
桃香さんから割り当ててもらった一室で、私達は次の行き先の検討を始めました。
「しかし、断られるとはなぁ」
「はい~。これは風にも予測できませんでした~」
「まあ、今更その事を行っても仕方あるまい。風、他に我々を受け入れてくれそうな勢力はあるか?」
「そうですね~。今諸侯の中で私達を受け入れてくれそうなのは、馬騰さん、劉璋さん、劉表さん、それと袁術さんくらいでしょうか~」
「なるほどな」
「ただ~、馬騰さんのところへは曹操さんの治める地を抜けないといけないので、事実上馬騰さんを頼ることは不可能です~」
「そうか……。他の諸侯はどうだ?」
「劉璋さんは民の評判が良くないですね~。劉表さんは老い先短いので家督争いに巻き込まれそうな気がします~」
「ということは……」
「今選択肢で残っているのは袁術さんのみとなりますね~」
「そうか……。ただ、袁術殿となると……」
「そうですね~」
星ちゃんの懸念は、分かりました。
私達の元にいる袁術さんの身内、袁紹さんの事でしょう。
素直に袁術さんの元に行くと言いそうにありません。
「そこは、白蓮さんに頑張ってもらいましょう~」
「私か!?」
突然の私の言葉に白蓮さんが驚きます。
「袁紹さんの面倒は白蓮さんが見ているわけですし~」
「やっぱり貧乏くじだぁ」
そう言ってうなだれる白蓮さんを見て、みんなで笑いました。
「別に構いませんわ」
袁紹さんの口から出た言葉に私達は驚きました。
構わないと言ったのは、袁術さんの元に行くことです。
身内とはいえ、袁術さんの元に行くことに袁紹さんは難色を示すと思っていました。
それがこうもあっさりと肯定されると、どう反応していいか分からなくなります。
「あら、みなさん。何を惚けてますの?」
「それは……なあ?」
袁紹さんの言葉にお兄さんが皆さんを促しますが、誰もどう答えていいか分かりません。
「麗羽様、美羽様の所に行くんですよ?」
「分かっていますわ。それが何だって言うんですの?」
文醜さんが言いましたが、どうにも話が噛み合っていません。
白蓮さんが意を決したように言いました。
「本初、袁術の元に行けば私達は袁術の部下という扱いになるんだぞ?」
「そんなの関係ありませんわ!!」
「えっ?」
「袁家の当主はこの私。美羽さんは私に逆らうことは出来ませんわ」
そう言って高笑いをする袁紹さん。
一気に疲れた表情をする皆さんと苦笑いを浮かべる顔良さん。
高笑いをする袁紹さんを置いて、お兄さんが言いました。
「とりあえず、袁紹は問題無いって事だろ。あとは……」
そう言って、お兄さんは詠さんの方向を見ました。
「ボク達は問題ないよ。元々選択肢なんか無いんだし」
「いや……、そうなんだがここには呂布が居るじゃないか」
そうです、月さんや詠さん、霞さんに華雄さんと呂布さんは元々一緒の軍でした。
なので、思うところもあるだろうという配慮ですが、月さん達は関係無いという感じで言いました。
「確かに、恋さんと私達は同じ所にいました。でも、私は今はご主人様付の侍女です。私の居場所と恋さんの居場所は違います」
「……月がいうならそういうことだね。不本意だけど……」
言葉ではそう言ってますが、あんまりイヤそうな表情をせずに詠さんが言いました。
「そういうこっちゃ。恋は恋、うちらはうちらや」
「そうだな」
霞さんと華雄さんも同意します。
これで、月さん達も問題ないことが確認できました。
「次は……」
そう言ってお兄さんが見たのは天和さん達でした。
「私達は大丈夫だよ!!」
「そうよ!! 袁術の所の兵士なんかちぃの魅力で虜にしちゃうんだから!!」
「えー!! 私の魅力だよ!!」
「お姉ちゃんよりちぃだって!!」
なにやら不毛な言い争いが始まってしまいました。
そんな二人の様子を横目で見ながら人和さんが言いました。
「一刀さん、こんな感じですから大丈夫ですよ」
「そうか。それじゃ、俺達はこれから袁術の元へ向かう!!」
「おう!!」
こうして、私達は桃香さんの元を離れ袁術さんの元へと向かいました。
袁術さんの治める土地への道のりは順調でした。
特に障害もなく、袁術さんの元へと行くことが出来ました。
袁術さんの元へはあらかじめ使者を立てておきました。
ただ、使者を立てても反董卓連合くらいでしか会ったこともない私達があっさり会えるわけもなく、実際に会えるまで何日か必要かと思っていましたが、なぜかすんなり面会できました。
「妾の力を借りたいという者達は、お前達か?」
玉座の間の中央に袁術さん、その横に張勲さん。
そのさらに横には暇そうにしている孫策さんと周瑜さんがいます。
他にも何人か居ますが、有名な人と言えばそのあたりでしょうか。
「ああ。俺達は河北から来た。是非袁術の力を貸して欲しい」
「しかし、妾はそんな暇ないんじゃが……」
「そこを何とか頼む!! 俺達で出来る事なら何でもやるから!!」
「じゃがの~」
お兄さんの必死の訴えに渋る袁術さん。
そんな袁術さんに、張勲さんが何やら耳打ちをします。
すると、それまでの表情が嘘のように明るくなった袁術さんが言いました。
「七乃が言うなら悪くなかろう。良きに計らうのじゃ!!」
「という事は……」
「はいー。皆さんにはお嬢さまの元でたくさん働いてもらいますからねー」
あっさりとした感じに張勲さんが言いました。
こうして、私達は袁術さんの元に身を寄せる事になったのです。
私達が袁術さんの元に身を寄せる事が決まって直ぐに、ある知らせが届きました。
曹操さんが反乱軍を鎮圧し河北四州を支配下に置いたという事です。
あとがき
かなりお待たせしてしまいました。
約3ヶ月ちょっとぶりのアップです。
ストーリーの中軸は出来ているんですけど、やっぱり細かい肉付けが苦手で何度も書き直しているうちにこんなに経ってしまいました。
いつの間にか新作も出ているしどうしようという感じです。
まあ、自分なりに頑張っていきますが、今後萌将伝の影響が出るかもしれません(笑
さて、今回の話ですが、一刀君の支配はあっと言う間に終わりを告げました。
やっぱり白蓮の身内からすれば、いくら天の御遣いといっても、いきなり自分達の主になれと言うのは無理があるんじゃないかなというの気持ちが根幹にあります。
それに華琳からそそのかされれば相手が天の御遣いであっても強気にいけるでしょう。
そんな彼らも最終的には華琳に倒されて終わりでしたが……。
麗羽は原作より若干デレ分を追加してあります。
なので若干違和感があるかもしれません。
あと、月達や天和達との関係ですけど、麗羽はおバカなので気付いていないという事で勘弁して下さい(笑
多分、斗詩は気付いていると思いますが言ってもいい事ないですし、猪々子は言わずもがなという事で。
桃香(というより朱里)に断られるのは、規定事項でした。
正直そのまま桃香と合流しても結局原作と同じような北郷軍になってしまうので、それでは面白みに欠けると思ったためです。
こうやって自分でどんどん敷居を高くしていっているようなそんな気がするのは気のせいでしょうか。
最終的に美羽の所に身を寄せる事になったのは、雪蓮との絡みも出来るんじゃないかなと思ったわけです。
ただ、どのようにやっていくかその辺りの細かい感じはまだまとまっていませんが。。。
次は……河北四州を治めた華琳がどのように動くのか。
そして、美羽の元で雪蓮とどのような絡みを持っていくのか。
その辺を書く形になるのかなと思っています。
またお待たせする事になってしまうかもしれませんが、気長にお待ちいただければ幸いです。
今回もご覧いただきありがとうございました。
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真・恋姫無双の二次小説です。
風の視点で物語は進行していきます。
かなりお待たせしました。
3ヶ月ちょっとぶりの新作です。
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