No.164299

また来たのですか?~胡蝶の夢~弐

TAPEtさん

華琳はどんな言い方をするか、どんなことを思うか、私にはよく解りません。

p.S.

萌将伝設定で行こうと思っていたのに、無心に北郷を警備隊隊長にしてしまったので修正しました。

2010-08-08 19:41:35 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2900   閲覧ユーザー数:2607

華琳「…へぇー」

 

それは、驚くわね

 

玄徳「あ、はい、不思議な字ですね。初めて知った人は大体そんな反応です」

 

華琳「そうかしら?」

 

玄徳「はい、何せかの有名な中国後漢の英雄、劉備の字と同じなのですから」

 

華琳「……」

 

そう。

 

玄徳とは劉備、桃香の字。

 

そして、今この男、劉備を知っているように言ったわね。

 

華琳「で、何故そんな字になったのかしら?」

 

玄徳「父親が三国志にすごくはまっていらっしゃるお方でして…字をもらう時、「お前はあの人のようになれ」と仰いましたね」

 

華琳「そう……」

 

玄徳「…それで、失礼でなければ、貴殿の尊名をお伺いしてよろしいでしょうか」

 

華琳「何?私が誰かも知らなくて部屋に入れたというの?」

 

玄徳「恐れながら…しかし、困っている人は力の至る限り助けるというのが、家の嗜みでありまして……」

 

華琳「…まぁいいわ。私の名前は曹操、字は孟徳よ」

 

ありのままに答えた。

 

玄徳「曹、孟徳、ですか…それはまた、奇異なことですね。魏の王の名前と字を持っていらっしゃるとは」

 

華琳「だって本人だもの」

 

玄徳「……はい?」

 

私が言った言葉に、彼は少し呆気にとられていた。

 

華琳「聞こえなかったかしら?私は魏の覇王、曹孟徳よ。あなたのように同姓同名があるかしったことじゃないけれど、私が魏王本人だと言うことは間違いないわ」

 

玄徳「……ぁ…」

 

 

 

玄徳「っとその……」

 

少し返事に迷っていた男は、

 

玄徳「……困りますね…」

 

華琳「何がかしら」

 

玄徳「貴殿の目は、嘘をついてるようには見えません。とかいって、貴殿が狂人なのかと疑うことも無意味だと思われます。ならば、これは一体どういう意味でしょうか」

 

華琳「ありのままの意味よ。それとも、私が狂人か嘘を言っていると思いたいのかしら」

 

玄徳「いや、そういうものでは…しかし、今貴殿がおっしゃっている曹孟徳という人物はは後漢時代の人物、今から約1400年ぐらい以前の人です」

 

華琳「何ですって」

 

心から予想はしていたけれど、まさかここは…

 

玄徳「それに、希代の英雄だった曹孟徳が、女性だったいう話は聞いたこともありません」

 

華琳「…なるほどね」

 

ふと、一刀を初めてあった頃が思い浮かぶ。

 

一刀はあの時こんな気分だったのね。

 

これは何の冗談なのか?って気分。夢なら早く覚めてもらいたいという気分。

 

華琳「そうね…あなたが曹孟徳だという人物を過去の人物で、それに男だと知っているのなら、私が嘘を言っているか、それとも何かの妖ものかと思うことは当然な考えよ」

 

玄徳「しかし、自分の目が正しい限り、貴殿はそれのどっちでもありません」

 

華琳「随分と自身があるようね」

 

玄徳「人の目はその人の全てを語ります。人の目を見ると、その人の大体は解るものです」

 

華琳「で、あなたはどう思うのかしら」

 

玄徳「そうですね。嘘でもなく、狂人でもなければ、自分が何かの妖術にでも呪われているのか、それとも、貴殿の言う言葉を真実だと認めるしかないでしょう」

 

華琳「…妥当な判断ね。それで?」

 

玄徳「……ふーむ」

 

男は口を黙って少し考え込んだ。

 

そんな風に少し待っていたら、先お茶を頼まれた侍女が部屋に入ってきた。

 

侍女「失礼いたします」

 

玄徳「…ああ、ご苦労だった」

 

侍女は湯沸しと杯をお盆で持ってきた

 

玄徳「去っても良い」

 

侍女「はい、では…」

 

侍女が部屋から出た後、玄徳は茶を淹れる準備をした。

 

何だか材料が多い。

 

 

 

淹れたお茶を杯に注いで、私に勧めた。

 

玄徳「どうぞ」

 

華琳「いただきましょう」

 

いい香りがする。

 

すすー

 

玄徳「いかがでしょうか」

 

華琳「悪くないわね。何のお茶かしら」

 

玄徳「六年根の人参に棗(なつめ)、それと、蜂蜜少々。今回の人参はあまり良いものとは言えませんが、いかがでしょう」

 

華琳「悪くないわ。少なくとも飲んで損した気分はしないからいいでしょう」

 

玄徳「それはまた厳しい評価ですね」

 

男は俯いて微笑みながら自分の杯にも茶を注いで、杯ち口につけた。

 

玄徳「…やはり、今年のは良いものにはなれないようですね」

 

お茶を飲んだ男は、少し顔に影ができていた。

 

華琳「で、先に話の続きだけれど。あなたは私をどうするつもりかしら」

 

玄徳「どうする、ですか?…そうですね。貴殿の話が本当だとして、何かの因果かは知りませんが、あなたが過去から来た人物だということを考えれば…」

 

華琳「私の話を信じるというのかしら」

 

玄徳「…どっちかというと、貴殿は自分が嘘をついているとは思わないのですか?」

 

華琳「え?」

 

玄徳「自分が貴殿を監禁して、その自由を奪っているのに、こんな茶番な話をしてあなたを惑わそうをしている、とは思わないのですか?」

 

華琳「………あなたがそれを口にした時点でそれはないでしょう」

 

玄徳「じゃあ、問題ありませんね。でしたら、他に行くところがなければ、こちらで衣食住を提供します」

 

華琳「……」

 

解らないわね。

 

この男が何を考えているのか。

 

侍女「若旦那さま、そろそろお出掛ける時間です」

 

玄徳「ああ、もうそんなになったか。時間が流れるのを忘れていたな」

 

男は席から立ち上がった。

 

玄徳「申し訳ないですが、自分はこれからの日課がありますので…何か足りないものがあったらあの人に頼んでください」

 

男はかさを被って出掛ける準備をした。今更だけど、あの男の髪型はおかしいわね。

 

髪を全部巻き上げて一つに縛ってある。

 

華琳「こんな朝に出掛けるなんて、相当忙しいようね」

 

玄徳「そんなことはありません。私なんか、この村で一番怠け者ですから」

 

侍女「あら、若旦那さま、またそんなことを…」

 

玄徳「私は行く。あの方の世話を頼む」

 

侍女「はい」

 

 

 

 

 

 

 

男が部屋から出て行った後(客を残して先に出て行くなんて、礼儀に反するでしょ?)、私は侍女と一緒に最初にいた部屋に戻ってきた。

 

華琳「……」

 

侍女「…わ、わたくしの顔に何かついていますか?」

 

華琳「…いえ、何でもないわ」

 

あまり私の趣味じゃないわね。

 

華琳「あの男はどこに行ったのかしら」

 

侍女「毎日の日課で、村を巡礼していらっしゃるのです」

 

へぇ、何か家が大きいと思ったら、ここの太守でもあるのかしら。

 

華琳「あの男はここの官僚なの?」

 

侍女「え?ああ、違います。この家は昔からこの村で住んでいた両班(ヤンバン)家門で…」

 

華琳「両班?」

 

何なの、それは?

 

侍女「…あ、あの?」

 

侍女がおかしな顔で私を見る。

 

まさか両班を知らないのかっていう顔ね、あれは。

 

まぁ、偉い地位なことは解るわ。

 

どうやらここでは地域の豪族やらをそう読んでいるみたいね。

 

華琳「で、具体的に巡礼しながら何をするのかしら?」

 

侍女「あ、はい、大したことではなく、働いてる農夫や工人たちに、最近の様子はどうか聞いて回っているのですよ」

 

華琳「それを毎日しているの?」

 

侍女「はい」

 

いいわね。

 

私も毎日そんなことをする暇があるのならいいけど。

 

まぁ、少なくともここじゃやることもないからすごく暇なんだけどね。

 

華琳「そういえば、あの男はここの若旦那と言ったわね。だったらこの家の主人は?」

 

侍女「…あぁ、それは、その…ご主人さまは現在この屋敷にございません。それで若旦那さまが現在家の仕事や、村の管理をなさっているのです」

 

ああ、そういうことね。

 

でも、それを言っている侍女の顔が優れていないわね。

 

華琳「ここの主人はどこに?」

 

侍女「それは……」

 

華琳「いえ、言いづらいものならいいわ。悪いことを聞いたわね。行ってもいいわよ」

 

侍女「あ、はい、何か用事があったらお呼びください」

 

華琳「ええ……」

 

がらり

 

侍女が引き戸を閉まって出て行ったら、私一人になった。

 

 

ここじゃ別にやることもないわね。

 

机にあるのは読むこともできない本だけだし。

 

せっかく暇なのはいいけど、何か他にやることがなければ退屈なだけだわ。

 

……

 

先見た『洪吉童傳』の下の本をみた。

 

「三国志―<<曹操評伝>>」

 

華琳「!!!」

 

私の、本?

 

……

 

私が読んではいけないと思ってはいたけれど、

 

その本から目を離すことができなかった。

 

後代の人たちは、私をどんな風に評価したのかしら…

 

 

私は思わずにその本に手を付けてしまった。

 

 

 

 

「…さ……さま……華琳さま」

 

華琳「!!」

 

秋蘭「またこんなところで寝られたのですか」

 

華琳「秋蘭……」

 

ゆ…め…?

 

華琳「…変な夢だったわ」

 

秋蘭「体の具合はいかがですか?」

 

華琳「大丈夫よ。ありがとう…昨日もまた机の上で寝たようね」

 

秋蘭「はい、…少しは休まれないと、体を壊します。桂花や北郷も心配していますよ?」

 

華琳「ええ、悪かったわ…でも、」

 

秋蘭「?」

 

華琳「うぅーーっ、久しぶりに良く眠れたわ」

 

秋蘭「そうですか?」

 

華琳「ええ…」

 

……そうね。

 

華琳「秋蘭、今日は少し街に出かけましょう?」

 

秋蘭「何か必要なものでも?」

 

華琳「いえ、別に。ただ、最近街がどうなっているか私の目で見てみたいだけよ」

 

秋蘭「解りました。護衛は私と流琉でよろしいですか?」

 

華琳「ええ、頼んだわよ」

 

 

 

そして、あの日はそれでその夢のことを忘れていた。

 

 

 

 

ギィイイ

 

玄徳「…」

 

侍女「若旦那さまー!!大変です!」

 

玄徳「何を騒ぐんだ」

 

侍女「先部屋を覗いて見たら、お客さまの姿が居なくなっていました」

 

玄徳「…そうか…もう戻りになったのか…もう少し話をしてみたかったのだが。お忙しいお方のようだ」

 

侍女「若旦那さま?」

 

玄徳「驚くことはない。部屋を掃除しておけ。また来られるかも知れないからな」

 

侍女「はい?は、はい……」

 

 

 

 

 

玄徳「……曹孟徳…か…」

 

 

 


 
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