ぽす、と言う音と共に積み重ねられた本はかなりの量であった。偉大な先人達の残した書物の数々を読み漁り、それを写しては自分也に注釈を付けてきたので、持ち運ぶにも一苦労する量になっていたのである。
鷹が学院で勉強を始めて3ヶ月。真綿が水を吸い込むがごとく知識を吸収する日々が3ヶ月続いたのである。
そろそろ旅を再開しようか、と鷹は考え始めていた。
周辺情勢としては、江夏の戦争の情勢が変化し、徐々に下火になって来た事が大きい。
これには鷹も関わっている。鷹が鍛え上げた1000の兵士達が、戦局を動かす程の戦果を挙げたのである。これにより優勢だった孫呉側(袁術側)は戦線を引き下げざるを得ず、現在は江夏の城の包囲を解いて軍を下げ、柴桑ヘと撤退。黄祖率いる荊州軍がこれを追ったが長江を超えて攻撃しようとはせず、これで戦は一先ず終わりを告げた。
このため、南荊州の情勢が落ち着いたので、長江を下って寿春に向かい、其処から北上して中原や河北を旅しようと考えたのだ。
学んで来た事の全ては本にして、一部は旅に持って行く予定だが、残りの大半は涼州から定期的に報告に来る忍(鷹が育成した間諜部隊、今回の旅で定期的に涼州と連絡を取れる様にしていた)に渡して持ち帰って貰うつもりだ。
考えがまとまり、茴香にその事を告げると名残惜しそうな表情をしながらも、あれこれと旅の支度の手筈を整えてくれると申し出たので素直に甘える事にした。
そして、旅立ちの日・・・の2日前の事である。
鷹が旅立つと聞いて七と所縁から、学院の庭に呼び出されたのである。鷹からすれば、講義の師として感謝していたので、礼を言わねば、と思っていたのだがここで鷹は二人から驚きの要望を受けたのである。
それは即ち
「「私達も旅に連れて行って下さい!!」」
だった。
「あー、とりあえず理由を聞こう・・・なんでまた突然そんな事を?」
「突然って訳じゃないんです。」
「鷹さんに武術を教えて貰いながら、ずっと考えていたんです。」
「「外の世界を、もっと見聞きしたいって。」」
「ふむ、それは解るが、二人なら何も俺と共に行く必要も無いと思うが。」
実際、七と所縁の武は鷹も認める所。山賊程度相手になるはずも無く、路銀さえあれば、気の向くままに旅をする事も可能である。
だが、二人は見聞を広める事と共に、もっと重要な事があった。それが
「鷹さんの事をもっと知りたいんです。」
「俺の事を?」
こくっと頷く七と所縁。
二人共、学院で学ぶ生活が長く続いたが、その生活で大きく動いた出来事があった。それが、鷹との出会いだったのである。
最初は護衛として雇っただけだった。だが、未だ見えない武の底。僅かな間に様々な知識を習得し、新しい問いを考え出して行く知力。何よりも、その存在感。
何故、それほどの存在になれたのか。その強さの源は何なのか。
「で、俺の側に居て知りたい、と?」
「はい!」
「その、いけませんか?」
二人とも、意図した訳では無いが、上目遣い+僅かながら涙目なので、男からすると庇護欲をかき立てられる格好である。それは、鷹でも例外ではなかった。
言うまでもないが、二人とも美女である。それも美女の中でも際立つ程の美女である。それほどの美女二人が、この女の魅力を最大限活かした戦術(?)をすると、大抵男はこれを邪険に出来ない。
それは、鷹でも例外ではなかった。
「・・・旅を終えたら俺は涼州に戻るがそれでも良いか?」
「はい!」「鷹さんに着いて行きます!」
「ふむ、なら構わんさ。路銀にも余裕はあるし・・・一人旅より美女二人侍らせた方が楽しいしな。」
「「~~~ッッッ」」
ちなみに、この鷹の言い回しには、二人を籠絡しようだとか、そう言う意図は全くない。素である。まあ男なら一人旅よりも美女と同伴で旅した方がずっと楽しいだろう、程度の意図なのだが・・・鷹に好意を持ち始めている二人に取っては口説き文句以外の何ものでもない。
しかし、そうした意図が無いのがタチが悪いのであるが、鷹にそんな事が解るはずも無かった。
「にぶちんは罪ですよ、鷹さん。」
「?」
夕食時、呆れ果てた様に優里に鷹は苦言を呈されたのだが、やっぱり解っていない・・・。
もう何と言うか、本当に遅くなり過ぎまして申し訳ありません。(前回とおんなじ)
今回は純粋に、ネタが浮かばず、短い文章なのにこれだけ書くのに二ヶ月近くかかってしまいました・・・むう、早く黄巾の乱まで行かないと・・・。
次回はなるべく今月中に投稿出来る様頑張ります・・・。
それではまた次回でお会いしましょう。
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まずは一言。
ホントー! に申し訳ございません!!! あまりにも遅くなり過ぎました。
今回は難産でした。なのに異様に短いし・・・。