No.161738

変わり往くこの世界 11

御尾 樹さん

http://www.tinami.com/view/160236  一話
追記/文頭で文章のおかしい所を修正

2010-07-30 05:43:15 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:672   閲覧ユーザー数:621

  彼等と連絡が取れ、ザンヴァイク・セイヴァール間。リアルトよりも少し東にある

  深い森に辿り着いていた。 連絡では、この辺りで合流する予定の筈。

 目印の一際高い山が見える少し大きめの湖の畔。間違いなくここだが…。

  まだ来ていないのだろうか、俺とリフィル・アルバートと伝達していた者だろう騎士

  一人を連れて周囲を探っている。 夜明け前のまだ少し暗い。霧がかかっている所為か

  周囲の木々が不気味に見え、湖には某剣でもくれそうな精霊が本当に居そうな雰囲気

  を醸し出している。なんとなく視線をアルバートに移すと、懐かしい目でリフィルを

  見ている…出発前に彼女がアルヴァより譲り受け少々年季が入ってるのか、

  修繕された部分が目立つコンポジットアーマー。

  女の身であのハーフアーマーは重いだろうと、アルヴァが渡した物。

 それを纏った彼女が若い頃のアルヴァにでも似ているのだろう。表情がそれを伝えている。

  そんな彼を見ていると、案内してくれた騎士の一人が、懐から小さい鈴を取り出し、

  それを軽く鳴らすと、周囲に小さく響き渡る。

 暫くして、監視していたのだろう者が、木の陰から現れて来た。どうやらセイヴァールの

  生き残りの騎士らしい、鎧の胸元から足元まで垂れた布の刺繍、紋章といえばいいのか、

  セイヴァールのものだと判った。俺達は、その騎士についていき、湖の反対側へと…。

 辿り着き、その目で見たものは良くここまで生き残っていたな…5000近くはいるだろうか。

  それも若い騎士が殆どだ。 俺達は招かれて湖の畔に建てられたテントの様なものの中

  へと、俺もそうだが何より驚いたのは、死んだと思っていた4騎士の内の二人がそこに

  立っていた。一番年長でタワーシールドを背に片手剣を帯剣するプレートメイルの男性と、

 そして、テントの隅で中腰になっている一際大きい男。この調子だと残り二人も…おお!?

  そんな周囲を確認する俺を押しのけて、リフィルが嬉しそうな顔で駆け寄っていった。

 …ま、そりゃそうか。死んだと思っていた連中が生きていた。それもヒュドラと互角に

  やり合う連中。これは嬉しい限りだ。そんな状況に淡い期待を持ったのか、周囲を

  見回すが、その期待に応える人物は…いない。当然だが。

 少し、羨ましそうにリフィル達を見ていたが、そうもしていられない。

  一人でテントの外に出て、周囲にいる騎士達に色々と尋ねてみた。

 やはり、心身ともに疲労しきっているのか、元気そうな返事は返ってこない。

  何より、俺達の中に隻眼の女王が居ない。それに落胆しているのだろう。

 それだけは手に取る様に判る。そんな彼等が逆に俺に尋ねてくる、あの空を飛んでいた

  化物は何なのか…と。アレがザンヴァイクには沢山生息しているのかと。

 怯え、戸惑い…剣を握る力すら無いとも思える落胆ぶりだ。思った以上に酷いな。

  一部の騎士達に、確かに隻眼の女王は来ない。いや、もう彼女に戦う力は無い。

 その事を明確に告げた。それを聞くや否や、酷く深い溜息、落胆を露にした。

  そこに…だが隻眼の女王の力と意志を継いだ姫様なら来ているぞ…と、

 視線をテントに向けると、その騎士達は立ち上がりテントの方へと視線を向け、

  口々に隻眼の女王に娘が…だのなんだのと。

 細かい事は、本人とアルバートから伝えられるだろうから、余り落胆するな。

  片目を瞑り、一人の若い騎士の肩を軽く叩く。 うん、どうやら目に光が戻った様だ

  口々に皆が想像を掻き立てているのだろう。何かを語り合っている。

 さて、こっちはこれで良いとして…。 と、再びテントに戻ると…。

  あーあー…羨ましいこった。嬉しいそうに4騎士の二人と話をしている。

 ま、これで本調子に戻ってくれるなら、願ったり叶ったりだ。

  そんな内の一人、一番年長だろう4騎士の一人が俺に歩み寄って、名を尋ねてきた。

  そういえば、願いは聞いたが互いに名も知らない仲だったわけで…。

 俺は、自分の名前を名乗ると、彼も自分の名前を深く礼を込めて言ってきた。

  リヴェルト=リオニール。どうやらそれが彼の名らしい。

  奥に居る大男は、ハザト=オラン。 …ん? ああリフィルから武器の事を聞いた

  らしく、今回の戦いで、あの化物達相手に勝機はあるのかと…。

 やはり気になるのだろうか、まぁ、戦い方によっては十分に勝機は見出せる。

  それ程までに、リフィルの持つ剣の力が人智を超えている。それを伝えた。

 ま、この時代の人間にとっては…という所だが。 俺の時代でも十分脅威ではあるが、

  それ以上に凶悪なものはゴロゴロあるしな。 軽く笑った瞬間、外で地響きが巻き起こり

  激しい縦揺れが突如起こり、、空から例の化物が!

 と、テントに転げる様に入って言ってきた。 …巡回でもしてるのか奇襲を受けたらしい。

 が! これはチャンス。茶番をお膳立てしてくれる奴が着てくれたわけだ!

  これが鴨が葱背負って…というやつか? 判らないがまぁ、そんな感じだ。

 奥にいるリフィルに駆け寄り、腕を掴みテントの外へと駆け出した。

 目にしたのは、口の周りに陽炎みたいなモヤを出しつつ、周囲を威嚇しているのか、

  二足で立ち両の翼を大きく広げている、茶色い鱗に覆われた竜。

 ワイバーンかと思っていたが、胴が太くドレイクに近い様だ。

  「やるのか? ユタ」

 ゼロブランドを握り締め、竜の前に一歩一歩ゆっくりと間合いを縮めながら周囲を確認する

  リフィルは、そう尋ねてくる。 それに対して、俺は周囲に退避を呼びかけた。

 現状に少々混乱を覚えているのだろうが、

  それでも迅速に竜やリフィル達から離れていく騎士達。俺の背後からもどんどん離れていく。

  「ゼロブランドの機能開始を確認。後退して下さい」

 クリスか、俺も慌てて後退する最中、クリスに一つ尋ねた。

  弾を生成出来るなら貫通性能の高い、

  弾は作り出せないかと。

  「対甲殻生物用徹甲弾。生成します」

 おお!徹甲弾!それだ!それなら撃ち抜くまでいかずとも、ダメージは与えられそうだ。

  更に後退し、狙撃用の補助機能が動いたのか、また右目だけ異様に良くなったので、

  慌てて左目を瞑り、地面に滑りながら片膝をついて振り向き、高熱ガスだろう、

  それを吐こうとする竜の額や顎、喉や胸へと乱射した。

 大ダメージとはいかなくとも、どうやらブレスの妨害は可能な様だ。…くそ。

  これにもっと早く気づいていれば…。いや、気づいていてもクリスが機能停止していた

  から結局は同じ事だったか…。ひたすらブレスを妨害する俺に向けて、何やら驚きの声。

 その直後に、竜の苛立ち・怒りが入り混じった叫びがかき消した。

  周囲の木々の葉がその声から発せられた衝撃波みたいなものだろうか、地面の腐葉土も

 竜を中心に大きく振動していたが、それを止める様にリフィルが地面に剣を突き立てる。

 突き立てられた切っ先から周囲が凍り付き始め、腐葉土から木々へ、

  木々から大気へ、ついに氷の屑。ダイアモンドダストとでもいえばいいのか、

  それが舞い散る中、彼女の周囲に凍気が渦を巻いている。

 しかし、こんな木々が生い茂る中であんな高熱斬りぶちかましたら…。

  そんな心配を他所に、凍気が突然蒸発したかと思うと、俺もそうだが周囲の木々

  一切を吹き飛ばす様な強力な風が起こり、それが全て正面へと。

 その風は渦を巻き、さながら竜巻の様なソレが、

  竜の腹を捕らえまるで水面に石を投げたかの様に、

  何度も水の上を弾き飛ばされ湖の中心へと追いやられた竜。

 場に居た全員が木々に捕まり、今だ収まらぬ風に必死で抵抗しながら、驚きの声すら

  上げられずそれを見ていた。俺もだが。まともに立っていられない。

 追いやった竜が湖に沈みかけている所をリフィルは湖に駆け出し、湖に剣を突き立てる。

  水の温度を奪ったのだろう。湖全体の水を彼女のいる場所から凍てつかせ、

 ついに中央に沈みかけている竜の温度さえ奪ったのか凍結させてしまった。

  完全に氷付いた湖から剣を引き抜き、軽く露払いでもしたのだろう。

 振り下ろすと同時に歓声の様な物が周囲に響き渡り、風が収まりつつある中、若い騎士達は

  リフィルの周囲へと集まっていく。…これは。

  「どうやら私の出る幕は無い様ですねぇ…」

 残念そうに俺の後ろで愚痴を零しつつ、俺に歩み寄ってきたアルバート。

 それに対し、いや、その力の説明で困ってるだろうから。フランヴェールの能力と重ねて

  一つ即興で頼む、と。

  「これは難しい事を。…ですが、お任せください」

 そう言い畏まると、リフィルを囲む凍りついた湖の傍へと竪琴を奏でつつ歩いていった。

 

 

まだ興奮冷めやらぬ中とでも言うのか、若い騎士達はセイヴァールを壊滅させた竜。

  その一頭を瞬く間に倒してのけたリフィルの事を口々に語っていた。

 数多の精霊の恩恵を受けた剣。 か、…我ながら良くいったものだと。

  思わぬ奇襲を受けたが、同時に思わぬ士気の上昇となった。

 下手な茶番よりも上がっただろう。そう思える。…が、あーあ。

  リフィルが大変だな、あっちこっちから質問責めだ。人気者は辛いな。

 さて、これで攻め入る準備は整ったと。 テントに入り一人で俺は考え込む。

 城があるなら、城壁や城門はあるだろう。これはアイシクルフィアで吹き飛ばす。

  その後だな、恐らくはあの竜やらヒュドラもそうだが、リザードマンが

 これでもかと居ると思って良いだろう。 毒弾を打つにも乱戦となる。

  それよりも先に、竜の方をどうにか…。いやいや、先ずは現地について

 見て考えるべきだろう。 想像だけで考えても意味なさそうだ。

  軽く肩をすくめて、テントを出て行くと、丁度テントの前に通りがかったのが、

 4騎士の一人で弓使いの女性だろうな。うん。先にもう一人と、城へ偵察にいっていた

  らしく、城の概観などを書き記したモノを持ってきてくれていた。

 こりゃ助かるとばかりに、テントに招き入れると、先ず挨拶と礼を言ってきた。

  礼の内容はリフィルの事であり、彼女の名前は、ディアナ=ランツァルト。

 何度か話した事のある4騎士の内の一人で、なんとも冷静そうな人である。

  茶色の髪が肩までやや無造作に切り分けてあり、目にかからない長さの前髪。

  左に羽飾りがありそこへ纏めているのか、生え際が見えている。

 見た目、エルフの様に整っているが、残念ながら耳は長くない。

  早速、彼女の書き記したモノ。木を削って作ったんだろう、不恰好なテーブルに

  置いて見てみると…。菱形の城壁、ソレを取り囲む様に堀だろうか。

  進入経路は正面の城門のみ。ただ、城壁の上に無数の竜が羽を休めていたと。

 ぐあー…。やっぱり監視兼大砲がわりに置いてやがるか。

  ともすりゃ、アイシクルフィアで城門ぶち壊して、竜を先に誘い出す。

 いや、二部隊に分けるか…。

  その後色々と、ディアナの見てきた情報を元に作戦を練りつつ夜が更けた。

 

 

んお? どうやらあのまま俺は不恰好な机に寄りかかる様に寝ていた様だ。

  深夜だろう、周囲は暗い。起き上がると足元にマントだろうか、静かに音も立てず

  地面に覆いかぶさる様に落ちた。誰がかけたのか…ディアナか?

  判らないが、落ちたマントを拾い、机の上に置き、伸びを一つ。

 その後ろから何か良い匂いのした湯気が…、視線をそちらに向けると、ディアナが居た。

  どうやら自分で飲もうとしたのだろうか。タイミング良く持ってきたそれを俺に手渡した。

 聞く所だと、監視以外は各自寝ている様だ。まぁ、夜襲という手もあるが、

  土地が明るくない場所で夜襲はちょい危険だ。特に闇夜であの竜を相手にするには

  分が悪い。だもんで決行は明け方。まだ見ぬ化物も居るかもしれないしな。

  「その歳で大変な立場に立ってしまったものだな…君は」

 そう言って、やや心配そうに俺の顔を見てきたが、仕方無いと笑って返す。

  そう仕方ない。未来からの武器。未来からの改変者。ともすれば、

 その未来に出来るだけ近しい者がこちらに居ないと、かなり不利だろうしな。

  俺の予想を超える外道な手を使ってくるかも知れないが、一応考えられる事は

  考えておくべき…だ。

 手に取ったスープを口に運びつつ、頭を抱え、それを心配そうに後ろで立って見ている

  ディアナが急に声を上げたので何事かと振り返ると。

 あろうことか、ディアナの胸を後ろから鷲掴みにしている誰かが居た。

  「ラ…ザ?」

 両目を閉じ、眉間にシワを寄せ、後ろへと突き出した右肘を器用にかわし、

  俺の横に立ってきた男。

  ラザと呼ばれた小柄な…ああ。こいつも4騎士の内の一人だな、見覚えがある。

  短剣を使っていた奴だ。 しかしいきなり女の胸を後ろから鷲掴みにするとは。

  「知ってるかい? ディアナの胸は見た目よりずっとこう…うおっと!」

 何が言いたかったのか良く判るが、それを妨害する様に殴りかかったディアナをかわして

  テントの隅へと。身軽な奴だな…。明らかにディアナは怒っているが…軽く咳払いすると

  俺の方へ向いて彼を紹介してきた。ラザ=リクターン。

 元盗賊から騎士になった奴らしい…そんな奴でもなれるものなのか? 

  それはさておき。ふむ、俺もその見た目より大きいというディアナの…いでぇ!

  殴られた。厚手の服からだと判別しにくい胸に視線を移した瞬間、拳が顔にめり込んだ。

  「全く…。ラザ。妙な事を教えるな」

 ソレに対し、下卑た笑い方をして、俺に男だったら仕方無いよなぁ?と。

  大きく頷いた俺は、再びディアナに殴られるハメとなる。

  「ヒハハ、気に入ったぜ兄ちゃん。どうよこの戦い終わったら…。

    アンシュパイクに良い店があるんだ。一緒にいこうか?」

 お前、女の前でそんな事を平然と言うか!? しかも死亡フラグ立てて大丈夫かコイツ。

  ディアナの視線が怖いので、軽く受け流すと俺は何しにきたのかとラザに尋ねる。

 どうやって進入したのか知らないが、場内の敷地にはリザードマンの群れが

 万を超える数でひしめき合っていたと。万かよ…。頭痛してきたな。

  それを伝えると、彼は油断したディアナの尻を撫でて一目散に逃げて行った。

 怒っただろうディアナもラザを追いかけて。 残された俺はそれを見送り溜息を一つ吐き、

  得られた情報から、考えられるだけ考えて夜が明けた。

 

 

凍結した湖を後にする事、14日程。ついにザンヴァイクの城が小高い丘から一望出来た。

  その城の周りには城下町だろうそれが見えるが…何かおかしい。

 クリスに狙撃の補助機能を動かして貰い、覗き込むと…人が一人も居ない。

  既に城の化物どもにやられたのか? 自国の者も巻き添えにしたのか?

 現状では判らない。くそ…更に俺達は隠れる様に近づき、城周辺がアイシクルフィアの

  補助機能で見える範囲まで来ると…、堀は思ったよりも広く、深い。

  それに良く見ると時折大きな影が揺らいで見える。

  「うーわー…何かいるぞありゃ」

 思わず漏らした声に反応したのか、リフィルが顔を近づけて聞いてきた。

  ソレに対し、堀の中にまた別種の化物が潜んでいるようだと伝えると、

  4騎士と再会出来たからか?自信を取り戻したのだろうリフィルが、

  倒せば済む事と。…いやそりゃそうだが、正体不明能力不明。

 溜息を吐いて、リフィルにそりゃ過信だと軽く咎めると、少し沈んだ表情で

  肩を落とした。あーもう! 両極端だなこの子は!!!

  「照合データ該当無し。未確認水棲生物です」

 クリスのデータにも無しか。そう簡単には攻めさせてくれない…か。

  「先ず、城門の破壊及び、城壁上部の巨大生物の殲滅。

     進路の確保を推奨します」

 ああ、そうくるだろうと思ったよ…と。 伏せて覗き込んでいた俺は立ち上がり、

  リフィルと二人で先ず先手を打つと、リフィルと4騎士に告げる。

 俺達が城門を破壊し、あの竜を全部引きつけた後、全員で城門へ突撃してくれと。

  勿論、堀にいるだろう化物と出てくるだろうトカゲの群れには十分気をつけてくれと。

 周りに人がいなけりゃ、全力であの竜を倒せるしな。…これ以外に手は考えつかない。

  俺とリフィルは、他の連中に待機を命じた後、二人でアイシクルフィアの射程圏内へと

  近づいていった。

  「大丈夫なのか?」

 心配なのか、周囲に気を配りつつ俺に尋ねてきたが、余り大丈夫とはいえない。

  パッと城壁の上を見ると、ガーゴイルの石造みたいに座っている竜が10頭程。

 なるべく開けた所に誘い出して、戦うしか無いだろう。

 そう言うと屈みこんで、クリスに迫撃型を頼むと、クロスボウが真ん中から上下に開き、

  射出口は、口の様に開いて周囲の成分取り込んでいるんだろう。

  どんどん空間が歪んで行く。

  「充填開始、充填まで360秒…対凍結対衝撃ジェル生成展開」

 へいへい。っと、…相変わらず気持ち悪いな。 下がって貰ったリフィルが

  物陰に隠れてこちらを覗き込んでいる。そいやこれ見るのアイツは初めてだわな。

 透明なややねばっこいジェルが体を…これだけは慣れない。

  「充填90%。 照準、合わせ」

 お、外気が寒い所為か早いな! 周囲の地面が凍り付くのを見ながら、

  慌てて右肩に乗せ、左手で砲身をおさえ、

  右腕を外から回しトリガーを握る。

  「充填100%。撃ち方、始め」

 躊躇いもせず、城門に照準を合わせトリガーを引くと、またあのSLの汽笛よりも大きく、

  耳を劈く轟音と共に、射出口の手前で衝撃波が空間を波打たせ、極太の白いレーザーだろう

  それを打ち出し、地面どころか大気までも凍りつかせて城門より僅かに反れた城壁へと

  鈍い音と共に突き刺さり、土煙と瓦礫と爆風を伴い何頭かの竜を巻き添えにして崩れ落ちた。

 俺はというと、撃ち出した衝撃で3mぐらいだろうか、後ろにすっ飛ばれている。

  後ろに衝撃を逃がすとか。物理的な物体を打ち出す衝撃では無く、

  正面で生じたエネルギーとでも言うのか、反動でどうも吹っ飛ばされる様だ。

 頭を軽く打ったが、対衝撃ジェルというもののお陰か、大して痛くも無く。

  心配して駆け寄ってきたリフィルが驚いた顔でこちらを見ている。

 それどころじゃないと、これから1200秒の間、俺は無力。その間逃げ回りつつ竜を全て

  こっちに引き寄せ、時間を稼いだ後、リフィルと共にあの数を全滅させる必要がある。

 さて…、にわか戦術がどこまで通用するか判らんが…やってやるわコラ!

  


 
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