No.161542

外史演義 その7

白蓮ちゃんには会いに行きません( ゚∀゚)o彡°

2010-07-29 11:54:43 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:10284   閲覧ユーザー数:7826

 

 

黄巾党を撃退することが出来た俺たち。と言っても俺はないもしていないのだが……。

そして劉備さん……もとい玄徳様はその場で義勇軍を募った。

一応俺の主になったのだから様と呼んでいる。

最初は断られたのだが、そんなことでは他の者たちに示しがつかないという理由で我慢してもらった。

呼び方は親しみを込めて字で呼ぶことにした。

義勇軍を作る理由は、ここ幽州の州牧である劉焉の檄によってではあるのだが、それは切欠に過ぎない。どちらにせよ玄徳様は世に出ていただろう。時期が遅いか早いかだけである。

 

 

黄巾党撃退時には約五百人いた農民兵たちだが、実際に集まったのは三百人程度。

怪我人や死亡者は仕方がないとして、思いのほか多く集まったと思う。

断った人たちの理由も、唯一の男手だとか、老夫婦の一人息子だとかいう理由が大半だった。

それくらいこの村で玄徳様は慕われていた。

 

 

まだまだ出来たばかりの義勇軍ではあるが、軍の人間関係は良好だと思う。

軍のトップがあのような人柄であるのだから当然といえば当然なのかもしれない。

軍での俺のポジションは簡単に言えば雑用である。

兵たちの意見や不満などを聞いてそれを上の方々に伝える役目。その逆もある。

それ以外でも可愛らしい軍師のお二人から字を習って、いつか文官として仕える人物に教育されたり、一騎当千の二人から自分の身くらいは守れるようにと直々に戦闘訓練を施されたりしている。

もはや俺を武官にするのではないかという訓練に最初の頃は、全身筋肉痛で倒れることもしばしば。

その度に心配してくれる玄徳様に涙がキラリ。

領地を持たないうちはしばらくこの生活は変わらないのだろうと思うと、俺の体持つのかなーと心配してしまう。

 

 

基本的に女性主体のこの軍にも男の友人が出来た。

姓は簡、名は雍、字は憲和。

俺の知っている歴史では、劉備の旗揚げ当初から仕えた古参ってくらいだ。

 

 

「あいかわらず玄徳はいい胸を持っているね~」

 

 

簡雍は助平だった。

 

 

「僕はあいつを胸の小さい頃から知っているけど、昔からあいつはもててたんだよね」

 

 

確かにあの容姿だと、小さい頃もさぞかし可愛かったのであろう。

現代でもあのような可愛い子は見たこともなかったし……。

 

 

「それで僕は一度玄徳に告白したんだ!」

「それで?」

 

 

簡雍はその時の事を思い出すかのように語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「玄徳、僕は君が好きだ!」

「うん! 私も好きだよ!」

「そ、それじゃあ――――」

「これからもずっと友達でいようね!」

「えっ……」

 

 

 

 

 

 

 

「あいつの好きは友達としてだったんだーーーー!」

 

 

さすが玄徳様。無意識のうちに振ってしまうとは。

この様子だと被害にあった男の数は凄いものになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに今は幽州琢郡の太守である劉焉の城に向かっての行軍中。

今まで乗ったこともない馬に跨り、必死に慣れよう奮闘中である。

 

 

どうして貧乏義勇軍である劉備軍が馬などを手に入れることができたのかというと、偶然、本当に偶然張世平という馬商人が楼桑村を訪れ、偶然玄徳様が義勇軍を立ち上げたと聞きつけ支援してくれたのである。

本当に偶然の事だった。

やはり商人なのか、張世平はこれを投資だと言った。

いずれ劉備軍が大きくなった時に利子をつけて返済してもらう約束をとりつけたのである。

張世平は馬の他にも資金援助などもしてくれたので、兵士たちは最低限の装備を整えることができたのである。

こうして兵站の整った劉備軍は村人の声援に送られて意気揚々と村をあとにした。

 

 

ちなみに村を去る時に女将さんが弁当を渡してくれた時は思わず涙を流して抱きついてしまった。

旦那さんに殴られてしまったが。

弁当は美味しくいただきました。

この世界に来て色々良くしてくれた女将さんにいつか恩返しがしたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「劉焉様、義勇軍が我らの戦列の端に加わりたいと申して来ております!」

「うむ。規模はどれくらいだ?」

「約三百と申しておりました!」」

「なんじゃ、たったの三百か……。まあよい、通せ」

 

 

兵士の報告を聞いた男――劉焉はその少人数の義勇軍に落胆の色を隠さなかった。

 

 

「良いのですか? その程度の義勇軍など放っておいてもよいかと」

「まあ少ないなりに使い道はあるわ」

 

 

側近と話す劉焉は義勇軍には何の期待もしていないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お主たちが義勇軍を率いている者か?」

「はい! 私がこの義勇軍を率いている劉備です」

 

 

この場にいるのは、劉備、関羽、張飛、諸葛亮、鳳統の五人。

 

 

劉焉とその部下は驚きを隠せなかった。

このような少女たちが義勇軍を立ち上げたとは信じられなかったからだ。

 

 

「私たちは黄巾党に苦しめられている人たちのために立ち上がりました。そしてこの度は村の立札を拝見して、戦列の端に置いていただきたいと思い、馳せ参じました」

 

 

劉備の堂々とした態度に劉焉は彼女たちに強い意志を感じた。

また、その様子を見ていた諸葛亮と鳳統は顔を見合わせて小さく微笑んだ。

なぜなら、謁見の際に劉備が粗相を働かないように指導していたのである。

劉備の台詞も二人が彼女が言いたい事をアレンジしたものだ。

 

 

「ふむ、その心意気は見上げたものだ。では今夜は歓迎の宴を開こうではないか」

 

 

その晩、劉焉は劉備たち五人を迎えて宴を催した。

張飛は宴会という言葉に喜び、諸葛亮と鳳統の二人はどんな思惑があるのかと思案し、関羽は劉備の護衛の事を考えていた。

劉備などは自分たちだけが宴に参加するのを心苦しく思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで劉備殿、貴殿はいかなる出自であるか?」

 

 

宴の最中、これからの方針について話し合っていた劉備と劉焉。

話が途切れたところで、劉焉がふと気になった事を口にした。

 

 

「はい。私は中山靖王劉勝の末裔で御座います」

「なんと! 私と同じく宗室の血筋であったか」

 

 

劉焉の祖先は、遡れば正統な漢室の一族であった。

しかし、劉備には母から知らされただけで正式な系譜などは残っていなかった。

唯一の証拠なるであろう物は、腰に佩いている宝剣、靖王伝家だけである。

 

 

その事を口にすると、劉焉は難しい顔になる。

 

 

「中山靖王劉勝様は、子や孫を含めれば百名を超えると言われておる。じゃから正式な系譜が残っていないとなるとその出自は語らぬ方がよかろう」

「で、でもこの宝剣があります!」

「確かにな。しかしだ、その宝剣さえ持っていれば誰もが宗室の血筋を語れるということじゃ」

「そ、それは……」

 

 

劉備は劉焉の正論に何も言い返すことが出来なかった。

事実、この宝剣が他人の手に渡るようなことがあれば、その時点で劉備が劉勝の末裔であると証明できなくなってしまう。

 

 

「めったに口にせんことじゃな」

「……………………」

 

 

劉焉は盃の中身を一気に呷りその場を去った。

姉の異変に気付いた関羽が来るまで劉備は俯いたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

劉焉の治める街は、良くも悪くも普通だった。

と言っても、他の街を楼桑村しか知らない俺の意見だからあてにならない。

女将さん元気かな?

まあいつまでも女将さんの事ばかり気にしてたら女将さんルートに入りそうだからやめておこう。

 

 

「いいよなぁ玄徳たち。僕たちも宴に参加したいぜ」

 

 

ぶつぶつと文句垂れるのは簡雍だ。

玄徳様たちが城から戻って俺たちに歓迎の宴会があると言って、再び城に戻っていった。

そして特にすることのなかった俺たちは街を散策していた。

 

 

これと言ってすることはないのだが、俺にとって他の街を見て回ることはちょっとした楽しみであった。

しかしここが三国志の世界と言われてもなかなか信じられない。

ところどころ現代チックな店などがあるからだ。

女性用の下着屋があるのにはさすがに驚いた。

簡雍が玄徳様にプレゼントしようとしたのは止めといた。

 

 

「とりあえずラーメンでも食うか」

「そうしようか。僕はチャーシューメンにするよ」

 

 

小腹の空いた俺たちは屋台のラーメン屋に入った。

そこでチャーシューメン二人前を頼んだ俺たち。

 

 

「へい、おまち!」

 

 

先に座っていた客にラーメンが提供される。

なかなか美味しそうな香りで食欲を増長させてくれる。

しかし、そこで問題が起こった。

 

 

「店主!」

「へ、へい」

 

 

隣に座っていた先客がいきなり店主を怒鳴りつけた。

何か不満でもあったのだろうか?

普通に美味しそうなラーメンだと思うのだが。

 

 

「このラーメン、麺が少ないぞ!」

 

 

たんなる量に対する文句だった。

 

 

「し、しかし大盛だとこんなもんですけど」

「確かにそうではある」

 

 

じゃあ何が言いたいのだろう。

そこで客の容姿をよく見てみると驚くほどに美しい女性だった。

整った顔立ち、美しい青髪は肩口で切り揃え一部だけ尻尾のように長い。

そしてやはり目が行くのは、白い着物のような服装から大胆に開いている胸、胸、胸!

玄徳様や関羽ほどではないがなかなか立派なものをお持ちでいらっしゃる。

ちびっこ軍師たちが目に涙を溜めて睨みつけるレベルです。

露出度が高い格好で、美脚にも目がいってしまう仕方がない。

 

 

「じゃあ何が不満なんです?」

 

 

特に量が少ない訳ではなさそうだ。

まさか、麺は麺でもメンマだったり……ってそんなわけないか。

 

 

「麺と言えばメンマであろう!」

「当たったよ!?」

 

 

思わずに声に出してしまった。

すると、こちらに気付いたのか女性が顔をズイっと寄せてくる。

こんな近くに美しい顔があるなんて一刀くん感激です。

おまけに女性らしい良い香りが漂っていて変な気分になっちゃいそうです。

 

 

「やはりお主もメンマが少ないと思うか!」

「えっ? いや、そんなことはないような」

 

 

普通のラーメンじゃそんなもんだろうと思うけど。

すると女性は先程のようにキラキラした瞳ではなく、興味無くしたかのように俺から離れた。

ちょっと残念。

 

 

「お主もそちら側の人間か……」

 

 

どちら側なのだろうか……。

そして再び店主に抗議を始める。

店主としては商売なのだからそう簡単にメンマの量を増やすことが出来ないのだろうか渋っている。

そしてその言い争いを見物しようと野次馬が集まってくる。

簡雍は「玄徳の下着は黒がいいと思うんだ」と妄想している。

 

 

 

なんだこのカオスは。

 

 

 

 

 

 

「あの、俺たちのメンマでよかったらどうぞこちらの方にあげてください」

 

 

劉焉の領地で問題を起こして玄徳様に迷惑をかけるわけにはいかないので俺はおそらく会心の一手であろうメンマ権の譲渡を使った。

 

 

すると女性は再び瞳をキラキラと輝かせた。

 

 

「まあ、人の好意を無駄にするのは私の流儀に反するのでありがたくいただいておこうか」

 

 

どの口がそんなことを言うのだ。

店主に何度もお礼の言葉をいただいた。

人助けっていい気分だ。

ひょっとして玄徳様もスケールは違えどこんな気持ちで世直しを始めたのかもしれないな、と思ったりした。

 

 

「あれ? 僕のメンマが見当たらないな?」

 

 

人助けって気持ちがいいなー。

 

 

「お主のおかげで助かったぞ」

「それはどうも」

 

 

それはどちらかというとあの店主が助かったのだと俺は思う。

同時に食べ終わったので一緒に店を出た俺たち三人。

 

 

「なあ一刀。こいつ誰?」

「えっとメンマさん?」

「姓が麺、名が魔?」

「うん」

 

 

そっと耳打ちしてくる簡雍に適当に答えた。

簡雍は初めて聞く奇怪な名前に興奮していた。

 

 

「この大陸はまだまだ僕の知らないことに満ち溢れていたんだ……!」

 

 

放っておこう。

 

 

「これからあんまり店主を脅さないようにね」

「うむ。約束しよう」

 

 

すっごくいい笑顔をいただきました。

絶対この人またやるよ。

 

 

「それでは私は行くとしよう」

「あっ、それじゃあまた」

 

 

咄嗟に“また”と言ってしまったが、この人とはまたどこかで会う気がしてならない。

 

 

「うむ。またどこかで会おうではないか」

 

 

ではさらば、と言ってそのメンマさんは去っていった。

今思えば名前くらい聞いとけばよかったな……。

 

 

俺たちは後に再会することになる。

その時に本当の名前を聞いて驚嘆するのだった。

 

 

それはまだ先の事だった。

 


 
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