休み時間。飲み物を買いに中庭に行くと、自動販売
機の前で来ヶ谷さんが何やら悩んでいた。
「来ヶ谷さん、どうかしたの?」
「おや、少年。少し気になることがあってな」
来ヶ谷さんが言うには、なにやらおかしなものが陳
列されているらしい。早速自動販売機を見てみると、
確かにおかしなものがあった。
「なにが出るかはお楽しみ、ってやつか……」
見慣れた缶の隣に並ぶ異質な存在。それがどうやら
来ヶ谷さんにとっては気になるものらしい。
「なにが出るんだろうな。タバスコとかか?」
「いや、まずタバスコは缶に入ってないから」
そもそもタバスコは缶に入れていいものなのだろう
か?
「仕方ない、マヨネーズあたりで手を打つとしよう」
「マヨネーズは飲み物じゃないよ」
「じゃあケチャップ」
「あんまり変わってないから!」
「理樹くんは騒がしいな。仕方ないから缶詰のシロップでいいよ」
それもどうかと思ったが、もう突っ込む気も起きなかった。
「よし、じゃあ買ってみるか」
「結局買うんだね」
「そりゃあ気になるからな」
うきうきとしながら、来ヶ谷さんは自動販売機にお金を入れる。ボタンを押すとガコ
ンと音を立てて缶が落ちてきた。
「さて、何が出るかな」
……トマトジュース。
「ふむ、あまり珍しいものでもないが今は飲む気は起きないな。後で小毬君に渡してお
くか」
「じゃあ今度は僕が買ってみるよ」
お金を入れボタンを押す。出てきたのはどこの会社のものか分からない炭酸飲料だっ
た。
「なんだかこれまた普通だね」
「スーパーで安売りしてそうだな」
なんとも不服なまま炭酸飲料を飲んでいると、ヴェルカとストレルカと散歩をしてい
るクドが通りかかった。
「おや、クドリャフカ君。君もなにか買っていかないか?」
「はい? おふたりはなにをしているのですか?」
簡単に説明をする。
「なるほど、おもしろそうです! やってみます!」
ぴょこぴょこと跳ねながら、クドはお金を入れボタンを押す。派手な音を立てて缶が
落ちてきた。
「これはなんでしょう…?」
「商品名が書いてないな」
「開けてみようよ」
言われるがままにクドは缶を開ける。中の色は暗くてよく見えない。
「うーん、においを嗅いでみましょうか」
「そうだな」
クドが缶に顔を近づけようとすると、ヴェルカが近寄ってきた。どうやら缶が珍しい
らしい。しきりに顔を近付けてにおいを嗅ごうとする。
「どうしたましたかーヴェルカ。缶が気になりますか? 嗅いでみます?」
そう言ってクドは缶をヴェルカに近付ける。缶から少し離れてにおいを嗅いだヴェル
カは、猛スピードで逃げだしてしまった。その後ろをストレルカが追いかける。
「ヴェルカ? なにか変なにおいでもしたのでしょうか……」
「クドリャフカ君、これはどうも捨てたほうがいいみたいだ」
来ヶ谷さんが缶の中身を溝へ落とす。何色と形容したらいいのか分からない色をした
液体が溝へ消えていった。
「わ、わふー!? なんでしょうこの液体はっ!」
「確実に飲み物じゃないよね……」
「面白いものも入っていたんだな。どれ、もう一本買って面白いものが出たら真人少年
に飲ませてみよう」
意気揚々と買った次の缶は、クドのものと同じく商品名が書かれていないものだった。
その後、教室に真人の叫び声が響いたのは言うまでもないだろう。
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リトバス短編小説コンテストへの応募作品。自動販売機で何が出るかは買ってのお楽しみ!ってやつがあると気になるよねって話。